- 作成日 : 2025年8月19日
報連相と確連報(かくれんぼう)の違いとは? 意味や指導方法を解説
報連相(ほうれんそう)と確連報(かくれんぼう)は、いずれも職場での情報伝達の質を高めるための考え方です。報連相はビジネスの基本とされてきましたが、「もう古い」と指摘されることもあります。一方、確連報はその見落としやすい落とし穴を明らかにし、伝達ミスを防ぐための視点として注目されています。この記事では、報連相と確連報(かくれんぼう)の違いをはじめ、向いている場面や指導方法、他のスローガンとの違いまで、わかりやすく解説します。
目次
報連相と確連報(かくれんぼう)の違い
報連相(ほうれんそう)と確連報(かくれんぼう)は、いずれも情報共有を円滑にするための考え方ですが、両者の大きな違いは、情報伝達の「出発点」にあります。報連相は、業務を進めたあとに上司へ結果や状況を伝える「報告」に重きを置くのに対し、確連報は業務に入る前に「確認」から始めることを特徴としています。
確連報では仕事の方向性を上司とすり合わせたうえで着手することで、認識のズレや手戻りを未然に防ぎます。
つまり、事後に報告することを起点とするのが報連相、事前に確認することを起点とするのが確連報です。この「コミュニケーションの出発点」の違いこそが、両者の本質的な差といえるでしょう。
報連相(ほうれんそう)とは
報連相は、「報告」「連絡」「相談」の3要素からなり、業務の状況を共有するための伝達手法です。部下が上司の業務の指示を受けて遂行し、その進捗や結果を上司に伝えるという一連の流れに基づいています。
「報告」は指示に対する結果の伝達、「連絡」は関係者への事実共有、そして「相談」は業務遂行中に生じた疑問や問題点の解消を求めることです。長らく日本のビジネスの基本として、新入社員研修などでも教えられてきました。
確連報(かくれんぼう)とは
確連報(かくれんぼう)は、「確認」「連絡」「報告」の順に進める情報共有の考え方です。本記事では「確認」を起点とする「確連報」について解説します。
最大の特徴は、業務に取りかかる前に、まず上司と部下の間で目的やゴール、進め方などを相互に「確認」する点から始まることです。この事前のすり合わせにより、認識のズレやその後の手戻りといったコミュニケーションエラーを未然に防ぐことを目的としています。
以下の表で両者の違いを比較してみましょう。
項目 | 報連相(ほうれんそう) | 確連報(かくれんぼう) |
---|---|---|
構成要素 | 報告・連絡・相談 | 確認・連絡・報告 |
起点 | 事後(業務が進んでから伝える) | 事前(業務を始める前に確認する) |
主な目的 | 情報の共有・上司への報告 | 認識のズレや手戻りの防止 |
主体 | 発信者(主に部下) | 双方向(部下と上司での認識すり合わせ) |
タイミング | 業務中〜終了後に伝える | 業務着手前に確認し、その後も連絡・報告を継続 |
向いている場面 | 日常の業務報告、新入社員研修 | プロジェクト開始時、誤解が起きやすい業務、連携作業など |
リスク | 伝えたつもり・聞いた気になっている | 確認が曖昧だと初動が遅れたり、責任の所在が不明になる場合も |
報連相に確連報(かくれんぼう)を加えるメリットを会話例で比較
報連相の型に従って伝えたとしても、受け手に内容が正しく届いていないケースは少なくありません。特に新入社員や若手社員の間では、「何を」「誰に」「なぜ伝えるのか」があいまいなまま発信してしまうことが多く、報連相だけでは伝達ミスを防げない場面が出てきます。
一方で、確連報の視点を取り入れると、業務の目的や背景を最初に確認することで方向性のズレを防ぎ、進行中も必要な情報を明確に伝えられるようになります。
ここでは、実際の職場で起こりがちなやりとりを2つの会話パターンで比較しながら、確連報を加えるメリットを解説します。
伝えたつもりが通じていない報連相のケース
新入社員A:「昨日の件、部長に報告しました」 上司B:「“昨日の件”って、どの案件?」 新入社員A:「あの、◯◯社の打ち合わせのやつです」 上司B:「それ、結局どうなったの?何が決まったか聞いてないけど」 新入社員A:「えっと、特に大きな問題はなかったです」 上司B:「いや、それじゃ分からない。何が話されて、どう合意したのかをちゃんと書いてくれないと…」 |
これは、報連相の「報告」や「連絡」を行ったつもりでも、情報の中身があいまいなまま伝わってしまっている例です。
問題としては、報告の中に主語(誰が)・目的(何のために)・結果(どうなったか)が明記されていない点です。
誰と何を話し、どのような結論が出たのかが不明瞭なため、上司はその報告をもとに判断を下すことができません。
つまり、「伝えるべき情報の質」が伴っていなければ、“報告したつもり”に過ぎず、結果として業務の連携や意思決定が滞ってしまいます。
報連相に確連報を加えたケース
業務開始前(確認) 新入社員A:「本日の◯◯社との打ち合わせですが、目的は価格交渉で間違いないでしょうか?合意を目指すのは見積単価で合っていますか?」 上司B:「その通り。あと、納期についても確認しておいて」 業務中(連絡) 新入社員A(チャット):「打ち合わせ終了しました。価格は当社提示を了承、納期は先方で社内調整中です。明日中に正式な回答をもらえる予定です」 業務後(報告) 新入社員A(メール): 件名:【商談報告】6/30 ◯◯社 打ち合わせ結果 本文:本日10時より実施した打ち合わせにて、価格については当社の提案どおりで合意済となりました。納期に関しては7/5を想定、7/1に正式回答予定です。担当は営業部・田中様。議事録を添付しておりますのでご確認ください。 |
このように確連報の視点を取り入れることで、業務開始時に「目的」や「判断基準」を上司とすり合わせたうえで行動し、その後もポイントを押さえて連絡・報告ができるようになります。
上司と部下の認識が一致していれば、不要な確認や言い直しが減り、情報伝達の正確さ・スピード・再現性が向上します。
報連相と確連報は、両方が必要
報連相だけでは、形式を守っていても「伝えたつもり」「聞いた気になっている」といったズレが起きがちです。確連報の視点を加えることで、「伝えたのに伝わっていなかった」事象を客観的に分析し、組織内の伝達を本質から改善できます。
報連相と確連報(かくれんぼう)の指導方法
新入社員や若手社員にコミュニケーションの基本を指導する際は、報連相か確連報のどちらかに偏るのではなく、両方の特性をバランスよく組み合わせて教えることが効果的です。
まずは報連相を「行動の型」として教え、そのうえで確連報を「思考の視点」として補完していく、という2段階のアプローチを意識しましょう。
1. 「報連相」で基本の型を教える
最初に、仕事の基本動作として報連相の型を身につけさせます。報告・連絡・相談の役割とタイミングを正しく理解することで、情報を整理し、必要な行動に結びつける力が養われていきます。
「誰に」「何を」「いつ」伝えるべきかを事前に整理する練習を重ね、報告メールや口頭報告の内容をテンプレート化して反復指導すると、実践力が安定していきます。
たとえば、「報告メールを送る前に、“目的・結果・今後の対応”の3点が含まれているか、一緒に確認してみよう」といった声かけは、報告の質を高めるうえで有効です。
2. 「確連報」で振り返りの視点を加える
報連相の型だけを教えていると、「報告=済ませるべき作業」と捉えられ、“伝えたつもり”で終わってしまうケースが少なくありません。
そこで、応用として確連報の視点を活用し、「なぜ伝わらなかったのか」を自分で考えられるよう指導していきます。
効果的な方法としては、あえて「うまく伝わらなかった報告」の場面をロールプレイで再現し、その内容を一緒に分析することが挙げられます。
たとえば、「今の報告、どの部分が伝わりにくかったと思う? もし最初にこの仕事の目的を“確認”していたら、伝え方は変わっていたかな?」という問いかけを使えば、相手に合わせた伝達の必要性に気づかせやすくなります。
指導者が日常で意識したい、気づきを促す問いかけ
研修だけでなく、日々の業務の中で、上司や先輩からの継続的なフィードバックによって深まっていくものです。指導の場面では、形式的な注意よりも、「気づき」を引き出す問いかけを心がけましょう。
- 失敗を学びの機会に変える
部下が「報告したのに怒られた」と落ち込んでいたら、「報告の内容で、相手が知りたかった情報が抜けていたのかもね」と一緒に原因を考える。 - 自分の認識を客観視させる
「この仕事、そもそもどういう目的でやっていたか、もう一度確認してみようか?」と問いかけ、認識のズレに自ら気づかせる。 - 相手の視点を持たせる
「今の報告、もし君が逆の立場で聞いたら、すぐに理解できたかな?」と問い、独りよがりな伝え方になっていないか振り返らせる。
こうした問いかけを朝礼や1on1の場などで日常的に繰り返すことで、部下や若手社員は、報連相で伝えるだけでなく、確連報のように“伝わったかどうか”を自ら確認する視点を持ち始めます。
「おひたし」「こまつな」など他スローガンとの違い
報連相や確連報(かくれんぼう)とあわせて、職場の情報伝達や人間関係づくりの意識を高める手段として、「おひたし」や「こまつな」といったスローガンも使われます。
いずれもコミュニケーションを円滑にするための工夫ですが、目的やアプローチの視点が異なります。それぞれの役割を理解し、補完的に活用することで、相乗効果が生まれやすくなります。
目的や役割の違い
報連相や確連報は、業務の情報を正確に伝えるための行動フレームです。内容の構造や手順を明確にし、伝達の抜けやズレを防ぐことを目的としています。
一方で、おひたしやこまつなは、発信しやすい空気づくりや心理的安全性の確保を目的としたスローガンです。たとえば、おひたしは「怒らない・否定しない・助ける・指示する・叱る」の頭文字をとったもので、部下が話しかけやすい上司であるための心構えを表しています。
こまつなは、「困ったら・使える人に・投げる(協力を求める)」という意味で、業務上の困難を一人で抱え込まず、適切な相手に助けを求める行動を促す言葉です。相談をためらわない風土づくりや、チーム内での協力体制の強化に役立ちます。報連相の中でも特に相談の部分と親和性が高く、実行のハードルを下げるための行動指針として有効です。
組み合わせて活用することが効果的
報連相や確連報は構造や型を示す実務的な枠組みであり、おひたしやこまつなはそれを支えるマインドや環境づくりの視点です。どちらか一方に偏るのではなく、両方を組み合わせることで、仕組みと雰囲気の両面からコミュニケーションの質を高めることができます。
たとえば、新人研修ではまず報連相の型を教えたうえで、こまつなを活用して相談のハードルを下げ、さらに確連報で振り返りや改善の意識を育てる、といった段階的な導入が考えられます。
報連相と確連報の理解と活用がコミュニケーションの質を高める
報連相と確連報(かくれんぼう)は、どちらも職場における円滑な情報共有に欠かせない考え方です。報連相で伝える行動の型を習慣づけ、確連報で伝達のズレや抜けを振り返る視点を持つことで、コミュニケーションの精度が大きく向上します。
さらに、おひたしやこまつなといったスローガンを組み合わせれば、安心して伝え合える土壌も整います。伝えることに加え、「伝わること」を意識する組織づくりが、仕事の質を支える基盤となるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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