- 作成日 : 2025年8月19日
すぐできる社内の情報共有のやり方とは?課題と改善策、ツールを紹介
社内の情報共有のやり方が確立されていないと、情報の漏れや属人化が起こり、業務の効率が下がります。単にコミュニケーション不足が原因なのではなく、情報共有の「仕組み」に課題があるケースがほとんどです。
加えて、使いにくいツールや曖昧なルールも、従業員の情報共有を妨げる要因となります。この記事では、社内情報共有がうまくいかない理由や、改善のための方法や実践しやすいツールの選び方、成功事例をわかりやすく解説します。自社の課題を解決するヒントが見つかると幸いです。
社内の情報共有とは?
社内情報共有とは、業務に必要な情報や知識、ノウハウ、各種資料、対応履歴などを社内で迅速に伝え合い、誰もが必要なときに活用できる状態に整えることです。単に口頭で伝える・ファイルを渡すだけでなく、「再現性」と「活用可能性」の高い情報が整備されていることが重要です。共有の質が高まれば、業務の効率や再現性も向上します。
たとえば、営業が収集した顧客のニーズや過去案件の提案書が蓄積されていれば、新人や別の部署の担当者でも同様の提案を迅速に行えます。こうした情報が個人だけではなく、社内で活かされる状態を「情報共有が機能している」と言えます。
なぜ今、情報共有の見直しが求められているのか
リモートワークの拡大や非同期(リアルタイムでない)コミュニケーションの増加により、従来のように「隣で声をかければ済む」状況は減少しています。対面による偶発的な情報共有が減ったことで、仕組みやルールが整っていない組織では、伝達ミスや業務の停滞が起こりやすくなっています。働き方の変化によって、情報共有のあり方も見直しが必要になっています。また、特定の社員しか知らない情報や、個人フォルダに埋もれたファイルがそのまま放置されていると、担当者が急に休職・退職した場合に業務が止まってしまう可能性もあります。
情報が属人化すると、業務継続に支障をきたすリスクも高まります。属人化を防ぎ、業務の安定性を高めるには、「見える化」と「整理された情報の蓄積」が欠かせません。こうした情報環境の整備こそが、これからの時代に合った情報共有の基本といえるでしょう。誰が見ても内容が理解でき、必要なときにすぐ見つけられる状態を整えることが必要です。
社内の情報共有によくある課題とは?
社内の情報共有が滞る原因は、ツールの問題だけでなく、心理的な障壁や組織構造の問題が複雑に絡み合っています。情報が「流れない」「たまらない」「活用されない」背景には、いくつかの典型的な課題が存在します。
情報の漏れや抜けが起きる
共有ルールが不明確だと、必要な情報が届かなくなります。
「誰が、いつ、どの情報を、どのように共有するか」が定まっていないと、伝える・伝わるの基準が属人的になり、重要な情報が共有されなかったり、遅れて伝わったりすることが起こります。結果として、意思決定に必要な情報が不足したり、対応が後手に回る事態を招きかねません。
例えば、営業部からのフィードバックが製品改善チームに届かないまま、同じミスが繰り返されるといったケースです。
業務の属人化をまねく
情報が一部の社員に集中すると、業務がその人頼みになります。担当者しか知らない資料や対応方法がある状態では、急な休職や退職時に業務が止まる可能性があります。また、別の人が代替するにも情報の所在や内容が不明確なままでは、業務の質を保てません。
こうした属人化は、チーム全体の負荷を増やし、持続可能性を損なう原因となります。
情報共有が面倒に感じられる
共有が面倒に感じられると、情報は自然と流れなくなります。「どこに書けばよいかわからない」「ツールの操作が難しい」「共有しても意味がないと言われそう」など、心理的・運用的なハードルは想像以上に高いものです。特に、情報共有が評価される文化でない場合、共有は“負担”と見なされがちです。
その結果、個人に閉じた情報が増え、組織としての学習・改善の機会を逃してしまいます。
すぐできる!社内情報共有のやり方
大がかりなツールを導入しなくても、社内情報共有は改善できます。まずは、日々の会議や報告、ファイル管理の進め方を少し見直すところから始めてみましょう。
具体的な方法として、以下の4つが挙げられます。
- 定例会議の運営方法を見直す
- 日報や週報のフォーマットを工夫する
- 社内Wikiや共有フォルダを整理する
- 1on1ミーティングを定期的に実施する
詳しく見ていきましょう。
定例会議の運営方法を見直す
会議を情報共有の場として活用するには、準備と共有の精度を高めましょう。アジェンダ(議題)を事前に共有することで、参加者は目的を理解した上で会議に臨めます。これにより、話が脱線するのを防ぎ、議論の質も上がります。
会議終了後は、必ず議事録を作成し、決定事項・担当者・対応期限を明記して共有しましょう。議事録は、参加できなかったメンバーへの伝達手段にもなり、情報の抜けを防ぐのに役立ちます。
日報や週報のフォーマットを工夫する
行動記録を羅列するような書き方で終わらせず、「気づき」や「学び」を共有できる欄を設けましょう。たとえば、「他部署にも共有したい内容」や「今後に活かしたいこと」を記入する欄を追加することで、知識が自然と組織全体に広がる環境が生まれます。
成功事例だけでなく、失敗から得たことも共有できるフォーマットにすることで、組織内のナレッジも蓄積し、業務の質が向上します。
社内Wikiや共有フォルダを整理する
情報を探す手間を減らすには、保管場所を「見える化」する必要があります。フォルダ構成が複雑だと、必要な情報にたどり着くのに時間がかかり、結果として情報が活用されなくなります。
業務マニュアルや申請書のテンプレート、FAQなどは、1か所に集約してアクセスしやすくしましょう。社内Wikiや共有ドライブに「ここを見ればわかる」場所を定めることで、情報が生きた資産になります。
1on1ミーティングを定期的に実施する
1対1の対話は、見えにくい情報を引き出す場として有効です。上司と部下が定期的に対話することで、進捗だけでなく業務の課題や不安も共有しやすくなります。
「報告」だけで終わらせず、「相談」や「提案」が自然にできる空気をつくることで、チーム全体の信頼関係が強まり、情報がスムーズに流れる組織風土を育てられるでしょう。
共有のタイミングとルールを定める
情報共有の“タイミング”をあらかじめ決めておくと、抜けや遅れを防げます。「議事録は翌営業日の午前中までに共有」「日報は終業時に提出」「毎週月曜に周知事項を更新」など、具体的なルールを設けることがポイントです。
週次・月次での情報棚卸しや定期的なリマインドを設けることで、共有が形骸化せず、常に最新の情報にアップデートされます。
情報の保管場所を一元化する
情報が複数の場所に分散していると、探す手間がかかり非効率です。「ここを見れば必要な情報がそろっている」という“公式な保管場所”を社内で定めましょう。たとえば、社内サーバーの特定フォルダや、ナレッジツール、Googleドライブなどのクラウドストレージが挙げられます。
その際は、フォルダ構造やファイル名の付け方にもルールを設けると、誰でも直感的に探しやすくなります。
社内情報共有を効率化するツール
情報共有を効率化するには、ツールの活用が効果的です。目的や利用シーンに合ったツールを選ぶことで、共有の習慣づけや情報の整理がしやすくなります。
ビジネスチャットでリアルタイムにやり取りする
ビジネスチャットは、スピード感のある部署やプロジェクトごとの情報共有に適しています。
SlackやMicrosoft Teams、Chatworkなどのチャットツールは、メールよりも手軽にやり取りでき、部門ごとのチャンネルを使えば情報が流れすぎるのを防ぐこともできます。また、「メンション機能」や「スタンプリアクション」などにより、誰が情報を見たのかが可視化され、コミュニケーションのすれ違いも減らせます。通知を自動化したり、絵文字でリアクションするなど、気軽にコミュニケーションできるのも魅力です。
議事録やナレッジの一次共有にも便利です。
マニュアル作成・ナレッジ共有ツールで知識を蓄積する
情報の蓄積と再利用には、ナレッジ管理に特化したツールが有効です。たとえば、KibelaやNotePM、esaなどの社内Wiki系ツールは、業務マニュアルやQ&A、過去事例などの情報を整理・検索しやすい形で「ストック型」に蓄積できます。あとから検索したり、だれもが更新できるため、社内ノウハウを継続的に育てるには非常に適しています。ページ単位での閲覧権限管理もでき、安心して運用できます。
「属人化の解消」や「新人教育の効率化」にもつながります。
エクセルやスプレッドシートを使って共有する
普段使っているツールも、工夫次第で立派な情報共有手段になります。GoogleスプレッドシートやExcelの共有機能を使えば、プロジェクトの進捗表、週報集計、対応履歴リストなども、チーム全員で同時に閲覧・編集できます。共有フォルダ上でバージョン管理や権限設定を行うことで、「誰が・いつ・どこを変更したか」も追えるため、情報の透明性が高まります。
ITツールに不慣れな職場でも導入しやすいのが利点です。
タスク管理ツールで進捗を「見える化」する
情報の「抜け」を防ぐには、タスクの見える化も欠かせません。Backlog、Trello、Asana、Notionなどのタスク管理ツールは、誰が何を担当していて、どこまで進んでいるかを一目で把握できるため、プロジェクトやチーム単位での情報共有に向いています。
とくに複数人で進めるプロジェクトでは、口頭やチャットだけでは見落とされやすい情報も、ボード形式やリスト化によって可視化され、責任の所在も明確になります。
社内ポータルで正式な情報を一括管理する
全社的なアナウンスには、Garoonやdesknet’s NEOといった社内ポータルが有効です。人事通達、制度改定、社内行事などの情報を1か所に集約することで、周知漏れを防ぎ、組織全体の一体感も高められます。
社内情報共有ツールの選び方
社内情報共有ツールは、目的・機能・使いやすさを軸に選ぶことが大切です。現場の業務フローと合わないツールは、結局使われなくなり、形骸化してしまう恐れがあります。最初に検討すべきなのは、無料ツールか有料ツールかという点です。無料ツールは初期費用がかからず、Slackのフリープラン(メッセージ閲覧期間や機能制限あり)やGoogleスプレッドシートのように、すぐに導入できる手軽さがあります。小規模なチームや試験的な運用には適しており、導入のハードルも低いため、多くの企業で活用されています。
ただし、無料であるがゆえに、機能の制限やセキュリティ面の不安、トラブル時にサポートが受けられないといった懸念もあります。これに対して、有料ツールは一定のコストこそかかりますが、ユーザー数や保存容量の制限が緩和され、アクセス制御やログ管理などの企業向け機能も充実しています。サポート体制も整っており、特に顧客情報や社外秘のデータを扱う業務では、有料ツールを選んだ方が安全で現実的な選択となるでしょう。
ツールを選ぶ際には、「現場で本当に使われるかどうか」が重要な判断軸です。たとえ機能が豊富でも、操作が複雑だったり、業務の流れに合わなければ定着しません。選定時に確認しておきたい主なポイントは、次の3つです。
- ITに不慣れな社員でも直感的に操作できるか
- 他ツールと連携しやすいか(チャット、スケジューラ、ドキュメント管理など)
- アクセス制限や監査ログなど、セキュリティ機能が十分かどうか
また、Excelや共有フォルダに頼った情報管理を行っている企業では、運用面で限界を感じていることも多いはずです。たとえば、「どれが最新版かわからない」「探したいファイルがすぐに見つからない」といった問題は、日常的に起こりやすいものです。こうした課題を感じている場合は、検索性や履歴管理に優れた専用ツールへの移行を検討することで、情報共有の質を大きく高められるでしょう。
最終的に重視すべきは、「社員が迷わず使えるかどうか」「日常業務に無理なく組み込めるか」という点です。導入目的と現場の実態がしっかり合致しているかどうかを見極めてツールを選びましょう。
社内の情報共有を仕組み化する方法
社内情報共有は「やり方を決めるだけ」で終わらせず、継続的に実行できる仕組みに落とし込むことが欠かせません。共有のルール・形式・運用方法を整えることで、自然と組織内に定着していきます。
情報共有のルールを整える
情報共有を習慣化するためには、「何を(What)」「いつまでに(When)」「誰が(Who)」「どこに(Where)」「どのように(How)」共有するのかを明確に定義しましょう。
たとえば、「商談後の議事録は会議終了24時間以内に、担当者がプロジェクト管理ツールにアップロードする」といった具体的なルールを定めることで、属人的な判断を排除できます。ルールはシンプルかつ明確にすることがポイントです。複雑なルールは形骸化を招きやすいため、誰が見てもすぐに理解できるようにしましょう。
情報の保管場所を一元化する
あわせて、情報の保管場所も一本化しておく必要があります。チャットツール、メール、個人のPC、共有サーバーなど、情報がさまざまな場所に散在していると、必要な時に探し出すことができません。
「この情報なら、必ずここにある」という保管場所を一つに定め、全社員に徹底させましょう。
運用を推進する担当者を置く
新しい仕組みを導入した当初は、使い方に関する問い合わせや、ルールが浸透していない社員へのフォローなどが必要になります。各部署に情報共有を推進する担当者やアンバサダーのような役割を置くことで、導入がスムーズに進み、現場の意見を吸い上げて改善につなげやすくなります。
経営層も率先して活用する
経営陣が情報共有の重要性を唱えるだけでは不十分で、自らはツールを使わなかったり、情報をオープンにしなかったりすれば、社員の士気は上がりません。社長や役員が自ら積極的に情報を発信し、社員の投稿に反応を示すことで、「情報共有は会社にとって大切な活動である」というメッセージが組織全体に伝わり、文化として根付いていくでしょう。仕組み化とは、ルールを作るだけでなく「続けられる環境を整えること」です。使いやすさと現場への配慮を両立しながら、小さな改善を積み重ねることが、持続可能な情報共有体制を生み出します。
参考になる社内情報共有の成功事例
仕組みとツールをうまく活用することで、実際に課題を解決し、成長を遂げた企業は数多くあります。ここでは、公表されている情報をもとに、2つの企業の成功事例を紹介します。
1. 株式会社星野リゾート
グローバルな競合との差別化を図るため、星野リゾートは「全社員IT人材化計画」を推進しています。その核となるのが、現場スタッフ自身が使えるノーコードツール「kintone」です。これまで電話やExcelなどに散在していた顧客からのリクエストや社内公募といった情報が、現場の手で開発されたkintoneアプリに一元化されました。情報システム部門によるルール整備や教育といった支援のもと、属人的だったノウハウがリアルタイムで共有される仕組みが構築され、部署間のコミュニケーションも円滑に。現場主導で情報共有のあり方が改善され、組織全体のスピード向上という大きな成果につながっています。
2. 株式会社メルカリ
急成長を遂げるメルカリでは、従業員1,000人超という組織拡大に伴い、「情報格差」の発生やオープンな組織カルチャーが薄まることへの懸念がありました。その解決策として、同社はSlackをコミュニケーション基盤に据え、「原則すべての情報をオープンにする」というルールを徹底。個人情報を除くほとんどのやり取りを誰でも閲覧できるチャンネルで行うことで、経営層から現場まで風通しの良い環境を維持しています。また、情報過多を防ぐため不要なチャンネルからの退出を推奨する「Leave Day」を設けるなど、情報の自己管理を促すユニークな文化も特徴です。このオープンな情報共有が、意思決定を現場に任せる文化を支え、組織の生産性向上を支えています。
社内の情報共有を定着させて業務効率を高めよう
社内の情報共有は、業務効率の向上や属人化の防止、組織の一体感づくりに欠かせません。うまくいかない原因を明確にし、ルール・ツール・仕組みを整えることで、継続的な改善が可能になります。大切なのは、現場で「使われる仕組み」にすること。今日からできる取り組みから始め、自社に合った方法を継続的に育てていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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