- 作成日 : 2025年7月17日
働き方改革を推進するITツールとは?導入に失敗しないためのポイントや成功事例も解説
少子高齢化による労働人口の減少や、価値観の多様化が進む現代において、企業の持続的な成長には働き方改革への取り組みが不可欠です。そして、その改革を成功に導く鍵こそが、自社の課題に合ったIT・ICTツールの戦略的な導入です。
しかし、やみくもにツールを導入しても「機能が複雑で使われない」「現場の課題と合っていなかった」という失敗に陥りがちです。
この記事では、働き方改革を推進する主要なITツールを目的別に分かりやすく分類し、具体的なツール例を挙げながら解説します。さらに、失敗しないためのツールの選び方から、実際の成功事例、導入後の効果まで紹介します。
目次
なぜ今、働き方改革ツールが必要なのか
働き方改革とは、単に労働時間を短縮することだけが目的ではありません。「生産性の向上」「時間外労働の削減」「柔軟な働き方の実現」を通じて、従業員がやりがいを感じながら働ける環境を整え、企業全体の成長を目指す取り組みです。
この改革を実現する上で、IT(情報技術)やICT(情報通信技術)を活用したツールは、もはや必要不可欠な存在です。
- 業務プロセスの効率化
定型業務の自動化や情報共有の円滑化で、無駄な時間を削減します。 - コミュニケーションの活性化
場所や時間にとらわれない連携を可能にし、意思決定を迅速化します。 - 多様な働き方の実現
テレワークやフレックスタイム制といった制度を支える基盤となります。
抽象的な目標を具体的な業務改善に落とし込むための実践的な手段として、これらのITツールの戦略的な活用が求められているのです。
働き方改革を推進するITツール
働き方改革を推進し、その効果を具現化するためには、目的に応じたさまざまなツールを戦略的に活用することが重要です。ここでは、主要なツールカテゴリとその具体的な活用法、期待される効果について解説します。
1. コミュニケーションの課題を解決するツール
現代のビジネス環境、特にテレワークや分散型チームが一般化する中で、円滑なコミュニケーションは業務遂行の生命線です。
この課題に対応するのが、Web会議システムやビジネスチャットツールです。
- Web会議システム (Zoom、Google Meet、Microsoft Teamsなど)
映像と音声で、遠隔地の相手とも対面に近い会議を実現します。資料共有や録画機能を使えば、情報共有の質も向上します。 - チャットツール (Slack、Chatworkなど)
メールよりも迅速で手軽なコミュニケーションが可能です。プロジェクトごとにグループを作成したり、ファイル共有をしたりすることで、情報の整理とスピーディーな連携を支援します。
2. チームの連携を強化するツール
組織全体の生産性を向上させるためには、部門や個人が持つ知識や情報を効率的に共有し、チームとして連携して業務に取り組むことが不可欠です。これを支援するのが、ナレッジ共有ツール、オンラインストレージ、グループウェアといったコラボレーションツールです。
- グループウェア (Microsoft 365、Google Workspaceなど)
スケジュール管理、施設予約、掲示板、ワークフローといった多岐にわたる機能を統合的に提供し、組織内の情報共有とコミュニケーションのハブとなります。 - オンラインストレージ (Dropbox、Google Drive、Boxなど)
ファイルやデータをクラウド上で安全に保存・共有するためのサービスです。テレワーク環境下においても、場所を選ばずに必要なファイルにアクセスできるため、業務の継続性を確保する上で重要な役割を果たします。
3. 属人化を防ぐナレッジ共有ツール
ナレッジ共有ツール(Notion、Confluence、社内Wikiなど)は、個人の持つノウハウや業務マニュアル、議事録などを一元管理し、組織全体の知的資産として活用します。特に、高精度な検索機能を備えたツールは、情報検索にかかる時間を大幅に短縮し、業務効率を向上させます。
4. 業務の抜け漏れを防ぐタスク管理ツール
タスク管理ツール(Trello、Asana、Backlog、Jiraなど)は、個人やチームのタスクを一覧化し、担当者、期限、優先度、進捗状況などを可視化します。カンバン方式やガントチャートなど、多様な表示形式でプロジェクト全体の流れを把握しやすくします。これにより、業務の透明性向上、責任の明確化、ボトルネックの早期発見といった効果が期待できます。
5. 正確な労務管理を実現する勤怠管理システム
勤怠管理システム(マネーフォワード クラウド勤怠、KING OF TIME、ジョブカン勤怠管理など)は、従業員の出退勤時刻や残業時間などをデジタルで記録・管理します。ICカード認証やスマートフォンアプリなど多様な打刻方法に対応し、テレワークや直行直帰にも柔軟に対応できます。システムの導入により、客観的な労働時間把握 、法令遵守の徹底、勤怠データ集計の自動化による業務効率化が実現します。
6. 申請・承認を迅速化するワークフローシステム
ワークフローシステムは、稟議書や経費精算など、社内のあらゆる申請・承認プロセスを電子化します。紙の書類を回覧する必要がなくなり、承認時間を大幅に短縮します。いつ誰が承認したかの記録が残るため、内部統制の強化にもつながります。
7. 定型業務を自動化するRPA・AI活用ツール
労働力不足が深刻化する中で、生産性を飛躍的に向上させる切り札がRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI(人工知能)です。
- RPA
データ入力や転記、帳票作成といったPC上の定型作業を自動化する技術です。人為的なミスを防ぎ、業務時間を大幅に削減します。 - AI活用ツール
需要予測などのデータ分析や、議事録・報告書の自動作成など、RPAより高度な判断を伴う業務を支援します。
8. 特定業務を効率化する専門ツール
特定の業務プロセスをデジタル化し、効率と質を向上させます。
- 電子契約システム
契約書の作成から締結、保管までをオンラインで完結させ、印紙代や郵送コストを削減します。 - 受付システム
来客対応を自動化・無人化し、受付業務の工数を削減します。
働き方改革ツールの比較一覧表
自社の課題を解決するのはどのツールか、以下の表で確認してみましょう。
ツールカテゴリ | こんな課題・目的におすすめ | 期待される効果 | 選定時のポイント |
---|---|---|---|
コミュニケーション | 意思疎通を円滑にしたい、会議を効率化したい、テレワークでの連携を強化したい | 意思決定の迅速化、情報共有の円滑化、コスト削減 | セキュリティ、操作性、既存システムとの連携性 |
コラボレーション | 情報を一元化したい、チームワークを高めたい、ペーパーレス化を進めたい | 業務ノウハウの共有、生産性向上、ペーパーレス化 | アクセス権限管理、検索機能の精度、モバイル対応 |
タスク・進捗管理 | 業務の進捗を見える化したい、納期遅れや抜け漏れを防ぎたい | 生産性向上、ボトルネックの特定、責任の明確化 | 他ツールとの連携性、レポート機能、カスタマイズ性 |
勤怠管理 | 労働時間を正確に把握したい、多様な働き方に対応したい、給与計算を効率化したい | 法令遵守、労務管理の効率化、多様な働き方への対応 | 法改正への対応、打刻方法の多様性、サポート体制 |
ワークフローシステム | 申請・承認の時間を短縮したい、内部統制を強化したい | 業務効率化、コスト削減、ペーパーレス化 | 承認ルート設定の柔軟性、フォーム作成の容易さ |
RPA・AI活用 | 単純作業の時間を削減したい、人為的なミスをなくしたい、データに基づいた意思決定をしたい | 大幅な時間・コスト削減、生産性の飛躍的向上 | 費用対効果、自動化対象業務との適合性、セキュリティ |
特定業務の効率化 | 専門的な業務のプロセスを効率化したい、質を向上させたい | 専門業務の質の向上、プロセスの効率化、コスト削減、信頼性の向上 | 特定業務との適合性、専門的な内容の正確性 |
働き方改革に失敗しないツールの選び方
効果的なツールを導入するためには、流行や機能の多さだけで選ぶのではなく、慎重なプロセスを踏むことが重要です。
1. 課題を洗い出して目的を明確化する
最も重要な最初のステップです。「コミュニケーション不足で手戻りが多い」「データ入力に毎月10時間かかっている」など、解決したい課題と、ツール導入によって達成したい目的(KGI/KPI)を具体的に定義します。これが曖昧なままでは、最適なツールは選べません。
2. 従業員にとっての使いやすさを検証する
どんなに高機能でも、従業員が使えなければ意味がありません。ITツールに不慣れな従業員でも直感的に操作できるかという視点は不可欠です。多くのツールには無料トライアル期間があるので、必ず導入部門の従業員に実際に使ってもらい、フィードバックを集めましょう。
3. セキュリティとサポート体制を確認する
クラウドサービスを利用する上で、セキュリティ対策は企業の信頼を守る生命線です。データの暗号化、アクセス制限、二要素認証などの機能が備わっているかを確認しましょう。また、トラブル発生時に迅速に対応してくれる充実したサポート体制があるかも、長期的に安心して利用するための重要なポイントです。
4. 費用対効果(ROI)と将来性を評価する
初期費用や月額料金だけでなく、導入によって「どれだけの時間が削減できるか」「どれだけ生産性が向上するか」といった費用対効果を総合的に判断します。また、会社の成長に合わせてユーザー数や機能を追加できるかといった将来の拡張性も考慮に入れることで、長期的な投資価値が高まります。
5. 既存システムとの連携を確認する
すでに社内で利用しているツールと連携できるかも重要な確認項目です。ツール間でデータがスムーズに連携できれば、二重入力の手間が省け、さらなる業務効率化が期待できます。
働き方改革ツールの導入に成功した企業事例
働き方改革ツールを導入することで、企業は具体的にどのような効果を得られるのでしょうか。ここでは、具体的なデータや成功事例を紹介します。
生産性向上・業務時間削減の事例
パーソルホールディングス株式会社の調査によると、ITツールを導入した企業の65.1%が「生産性が向上した」と回答しています。また、テレワークの導入も、通勤時間がなくなることなどから労働時間の削減につながるというデータがあります。特にRPAやAIといった自動化ツールは劇的な時間削減効果をもたらし、あるIT企業ではAI技術の活用により月間200時間以上の業務削減と残業時間2割減を実現した事例もあります。
多様な働き方の実現と従業員満足度向上の事例
働き方改革ツールは、テレワークやフレックスタイム制といった多様な働き方を実現する基盤となり、従業員満足度の向上につながります。日本生産性本部の調査では、テレワーカーの約82.6%が「現在のテレワークでの働き方に満足している」と回答しています。企業事例として、日本航空(JAL)では、テレワークを導入した社員の満足度が98%に達しました。
自社に合ったツール導入で働き方改革を一歩先へ
本記事では、働き方改革を成功に導くためのITツールの種類から選び方、成功事例までを網羅的に解説しました。
働き方改革は、企業の持続的成長に不可欠な経営課題です。そして、その推進力となるのが、コミュニケーションツールやコラボレーションツール、RPAといったデジタルソリューションです。
最も重要なのは、自社の課題を明確にし、従業員が使いやすく、安全に運用できる最適なツールを選び抜くことです。働き方改革は一度きりのイベントではなく、継続的な取り組みです。技術の進歩を取り入れながら、常により良い働き方を模索していく必要があります。
この記事が、働き方改革を力強く前進させるための一助となれば幸いです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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