• 作成日 : 2025年7月17日

エクセルで案件管理は可能?活用のポイントや注意点を解説

案件ごとの進捗や情報を整理する「案件管理」は、営業や業務管理の効率化に欠かせない作業です。専用ツールを使わずに、エクセルで手軽に管理を始めたいと考える方も多いのではないでしょうか。

本記事では、エクセルの初心者でも取り組みやすい案件管理の基本から、テンプレートの使い方、便利な関数や機能、さらにはエクセル運用の限界と代替ツールを解説します。業務効率化の第一歩として、ぜひ活用のヒントを見つけてください。

案件管理の基本とエクセル活用

案件管理とは、ビジネスにおける案件(取引やプロジェクトなど)の進捗や情報を整理・把握することです。デジタルツールを用いて案件の状況を可視化し、チームで情報共有することで、営業活動の効率化やマネジメント精度の向上、成約率アップなどにつなげます。

案件管理とは

案件管理とは、案件に関する情報(営業の進捗状況、顧客情報、タスクの状態など)を一元的に記録・管理して可視化する取り組みのことです。エクセルなどのデジタルツールを使って行い、情報共有の円滑化や業務効率の向上を目的として実施されます。適切に案件管理を行えば、進捗に関する事務作業が効率化され、意思決定の迅速化やチームの協働促進、業務の属人化防止にもつながります。

エクセルで案件管理は可能?

案件管理はエクセルでも可能で、多くの企業が実際にエクセルを活用しています。ただし、エクセルはあくまで表計算ソフトであり案件管理専用ツールではないため、使い勝手や機能面には限界があります。必要なデータ抽出や自動集計には高度なスキルが必要で、ファイル共有にも手間がかかるなど効率化に限界があります。より高い効果を求める場合は、専用ツールの活用も検討すると良いでしょう。

エクセルで案件管理を行うメリット

専用の管理ソフトではなくエクセルを使って案件管理を行うことには、手軽さや低コストといったメリットがあります。ここでは、エクセルで案件管理を行う主なメリットを解説します。

導入コストがかからない

エクセルを用いた案件管理の大きなメリットは、導入コストがほとんどかからないことです。多くの企業ではPCにエクセルが標準インストール済みで、新たにソフトを購入したりサービスに加入したりする必要がありません。既に環境が整っている場合は追加費用ゼロで始められ、エクセル運用では月額料金などのランニングコストも基本的に発生しません。このように初期投資や維持費を抑えられる点は大きな利点です。

使い慣れたツールで始めやすい

エクセルは多くの社会人が日常的に使い慣れたツールであるため、新たにエクセルで案件管理を導入しても特別な研修なしで現場にスムーズに浸透させることができます。使い慣れたツールゆえに教育の手間がかからず、メンバーの抵抗感も少ない点は大きなメリットです。さらに、エクセルは広く普及しているぶん使い方や活用例に関する情報がインターネット上に豊富に公開されています。困ったときも調べれば解決策が見つかりやすく、初心者でも工夫しながら案件管理を進めやすいでしょう。

カスタマイズが容易で柔軟性が高い

エクセルは汎用性が高く、管理項目やレイアウトを自由にカスタマイズできる点も魅力です。必要に応じて列を追加したり計算式を組んだりと、エクセルなら柔軟に調整できます。さらに、案件管理に役立つエクセルテンプレートやノウハウも数多く公開されているため、専門知識がなくても既存のひな形を利用して手軽に管理表を作成できます。

エクセルで案件管理を行う際の注意点

便利なエクセルによる案件管理ですが、留意すべきデメリットや限界も存在します。これらを理解せずに運用すると、かえって非効率になったり管理が上手くいかなくなったりする恐れもあります。ここでは、エクセルで案件管理を行う際に注意したい代表的なポイントを解説します。

リアルタイム共有がしづらい

エクセルはローカルファイルを前提としているため、複数人で同時に編集・閲覧するリアルタイム共有が苦手です。他のメンバーと情報を共有するにはファイルを保存してメール等で配布するといった手段が必要になり、その結果、最新版の所在が分からなくなったり異なる版が併存したりする問題が起こりがちです。このように情報の即時共有が難しい点は、スピードが求められる現場では大きな障壁となります。

自動化しづらく手作業が増える

エクセルでの案件管理には、自動化や効率化の面で限界があることにも注意が必要です。例えば、案件の進捗更新やデータ集計を自動化するにはマクロ(エクセルの自動処理機能)の作成など高度なスキルが求められます。プログラミング知識がない環境ではマクロを作れず、結果として一件一件を手作業で処理することになりがちです。そのため、提出されたエクセルファイルを集計・報告するのに時間がかかり、専用ツールと比較して余計な工数が発生してしまいます。

エクセルで運用する際は、こうした自動化困難による作業負荷増大も念頭に置かなければなりません。

データ管理や大規模運用での限界

エクセルは案件管理専用のシステムではないため、扱えるデータ量や運用規模に限界があります。データが増えるにつれて、必要な情報を時系列で追跡したり過去の履歴を参照したりするのが難しくなるでしょう。例えば、特定の顧客ごとの営業履歴をエクセルで把握するには、あらかじめ顧客別にデータを整理しておくか後からフィルターで抽出するといった手間がかかります。

また、エクセルは他システムとリアルタイムで連携しづらく、営業支援ツールや会計ソフトなど別システム間で常に情報共有できないため、二重入力や部署間の情報断絶を招きがちです。少人数での利用には問題なくとも、案件やメンバーが増えてくるとエクセルだけでは対応しきれなくなる場合がある点にも注意しましょう。

エクセルで案件管理を始める方法と活用ポイント

では、実際にエクセルで案件管理を行うにはどのようにすれば良いでしょうか。初心者でも取り組みやすい方法として、あらかじめ用意された無料テンプレートの活用や、エクセルの基本機能(関数やフィルターなど)を使った管理方法があります。ここでは、エクセルで案件管理表を作成・運用する手順とポイントを解説します。

無料テンプレートを活用して案件管理

エクセル初心者には、既存のテンプレートを利用する方法が手軽でおすすめです。Microsoftが提供している公式テンプレートをはじめ、インターネット上には案件管理に使える無料のエクセルテンプレートが多数公開されています。これらのテンプレートには、案件管理に適した項目や書式、グラフ、プルダウンメニュー(選択式の入力項目)などが含まれており、ダウンロード後に自社のデータを入力するだけで実用的な管理シートが完成します。

例えば、Microsoft公式サイトからダウンロードできる「売上管理表」や「顧客管理表」といったテンプレートを使えば、必要な項目や計算式があらかじめ組み込まれているため、ゼロから作り込むより格段にスムーズに案件管理を始められるでしょう。

案件管理表を自作するポイント

自社の業務内容に合った案件管理表を一から作成することも可能です。エクセルで新規ブックを開いたら、管理したい情報の項目(列)を決めて見出し行に入力しましょう。例えば「案件名」「顧客名」「担当者」「進捗状況」「次回アクション」などは一般的によく管理される項目です。自社の業種や業務内容に応じて必要な項目を選定してください。項目を決めたら、セル幅の調整や罫線(枠線)の設定、色の塗りつぶしなどを行い、表として見やすいフォーマットに整えます。

あとは各案件について決めた項目ごとに情報を入力していけば、基本的な案件管理表の完成です。なお、複数メンバーで同一のエクセルファイルを更新・共有する場合は、入力ルールを事前に定めておくことも重要になります。例えば、日付や数値の表記形式を統一する、セルの結合を禁止するといったルールをチームで決めて周知しておけば、誰が入力してもデータが乱れにくく管理ミスを防げます。

エクセルの基本機能を活用して効率化

エクセルには、案件管理に役立つ便利な機能が多数備わっています。フィルター機能を使えば、特定の条件に合致する案件だけを表示できるため、多数のデータから必要な情報を素早く抽出可能です。例えば担当者やステータスで絞り込んで一覧表示すれば、該当案件の状況をすぐ確認できます。また、関数(数式)を活用すれば集計や計算を自動化できます。

例えばCOUNTIF関数を使えば、指定した条件(「完了」など)に該当する案件の件数を自動的にカウント可能です。「=COUNTIF(範囲, “完了”)」と設定しておけば、完了済み案件の件数を常に集計できます。

さらにSUM関数を使えば複数案件の売上見込額など数値データを合計できます。こうした機能を組み合わせて活用すれば、手作業を減らして案件管理の精度とスピードを向上させることができます。加えて、条件付き書式を使えば期限切れの案件を自動で赤色表示するといった視覚的な注意喚起も可能です。重要なタスクの見落とし防止のためにも、エクセル標準機能を積極的に活用すると良いでしょう。

エクセルでの管理の限界と代替ツールの紹介

エクセルでも案件管理は可能ですが、状況によっては他のツールを使った方が効率的なケースもあります。最後に、エクセルでの管理に限界を感じた場合に検討したい代替手段として、Googleスプレッドシートと専用の案件管理ツールを紹介します。

Googleスプレッドシートによるクラウド共有

エクセルによく似た操作感で、しかも無料で利用できるクラウド型の表計算ツールにGoogleスプレッドシートがあります。

Googleスプレッドシートはデータをクラウド上で管理するため、複数人が同時に一つのシートを編集しても矛盾が生じにくく、リアルタイムで最新情報を共有できます。ファイルの受け渡しやバージョン不一致のストレスを減らし、チーム全員が常に最新の案件状況を把握できます。

ただし、Googleスプレッドシートもエクセルと同様に汎用的な表計算ソフトであり、案件管理に特化した機能は持ち合わせていません。顧客ごとの詳細分析や長期間にわたる案件推移の管理など、高度な用途にはどうしても限界があります。小規模チームでリアルタイム共有を重視する場合には有力ですが、案件数や管理項目が増えてきたら専用ツールの導入を検討すべきでしょう。

専用の案件管理ツールの活用

案件が多かったり、より高度で効率的な管理を目指したりする場合には、専用の案件管理ツール(システム)の活用が効果的です。営業案件の管理にはCRM/SFA(顧客管理・営業支援システム)、プロジェクトやタスクの管理にはTrelloやBacklog、Asanaといったプロジェクト管理ツールなど、用途に応じて様々なサービスがあります。これらを導入すると、各担当者はデータ入力や報告の負担が減ってコア業務に集中できるようになり、マネージャーは案件進捗をリアルタイムに把握して的確な指示・判断を下せるようになります。

世界的に利用されているSalesforceなどのCRMでは、案件管理機能はもちろん顧客情報の一元管理や見込み客管理、ファイル共有、売上予測の自動計算といった多彩な機能が充実しており、業種や企業規模を問わず活用されています。また、中小企業向けに低価格で導入できるものから大企業向けの高機能なものまで、様々なツールが提供されています。

専用ツールの導入にはコストや移行の手間もかかりますが、案件管理に費やす時間と労力を大幅に削減し、結果的に業務効率と成約率の向上が期待できます。エクセルでの管理に課題を感じたら、こうしたツールへの移行も前向きに検討してみてください。

案件管理をエクセルで始めるなら、基本と限界を理解することが大切

エクセルは初心者でも扱いやすく、導入コストを抑えて案件管理を始められる便利なツールです。テンプレートや基本機能を活用すれば、進捗管理や情報整理も可能です。一方で、共有のしづらさや自動化の難しさ、大規模運用での限界など注意すべき点もあります。管理する案件が増えた場合や、リアルタイムでの共有が必要な場合は、Googleスプレッドシートや専用の案件管理ツールへの移行も選択肢となります。まずは自分の業務スタイルに合った方法で始めてみましょう。


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