- 作成日 : 2025年7月17日
テレワークでチャットを活用するには?ツールの比較やよくある課題の対処法を解説
テレワークが普及する中、社内外とのコミュニケーション手段として「チャット」は欠かせない存在になっています。在宅勤務を含むテレワーク環境では、対面でのやり取りが難しいため、チャットツールを活用した円滑な情報共有が重要です。
本記事では、テレワークにおけるチャットの基本から代表的なツールの特徴比較、管理者・従業員それぞれの課題と対処法、効果的な活用ポイントを解説します。
目次
テレワークにおけるチャットの基本
まずテレワークの定義ですが、総務省ではテレワークを「ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義しています。つまりインターネットやデジタル技術を活用して、オフィス以外のどこからでも仕事ができる働き方がテレワークです。
そしてチャットは、本来スマートフォンやPC上でテキストメッセージをやり取りする通信手段です。ビジネスにおいてはメールに代わる迅速な連絡手段として注目されています。テレワーク下では雑談やちょっとした相談など対面でできていたコミュニケーションが減りがちですが、チャットを使えば手軽にメッセージを送り合い、情報共有や意思疎通を図ることができます。
ビジネスチャットツールは主に社内外の情報伝達に特化したもので、社内SNS(企業内ソーシャルメディア)とは区別されます。社内SNSが社員同士の交流や社内コミュニケーションの活性化を目的とするのに対し、ビジネスチャットは業務連絡や情報共有の効率化に重点を置いたツールです。テキストメッセージだけでなくファイルの送受信、グループチャット、音声・ビデオ通話、タスク管理との連携など、多彩な機能を備えており、テレワーク中のコミュニケーションに役立ちます。
テレワークのチャットで利用される主なツール
テレワークの拡大に伴い、ビジネスチャットツールの重要性が高まっています。中でも、Slack、Microsoft Teams、Chatworkは代表的な選択肢として多くの企業に利用されています。それぞれの特徴や活用シーンを知ることで、自社に合ったツールを検討しやすくなります。
Slack
Slackは高い拡張性と外部連携機能を備えた米国発のチャットツールで、IT企業やエンジニアを中心に支持されています。社内の通知や自動処理をBotで実行できるほか、プロジェクトやチームごとにチャンネルを分けて管理できるのが特徴です。ファイル共有、音声通話、ビデオ会議も可能で、過去のメッセージ検索も高機能です。ただし、機能が豊富な分、操作に慣れが必要で、ITに不慣れな人にはハードルがある場合もあります。無料プランは制限があるため、本格的な利用には有料プラン(月額1,050円~)が一般的です。
Microsoft Teams
Microsoft TeamsはMicrosoft 365に統合されたチャットツールで、OutlookやWordなどとの連携がスムーズです。チャット、会議、ファイル共有、タスク管理まで一つのアプリで完結するのが強みで、既存のMicrosoft製品を利用している企業にとって導入しやすい環境が整っています。日本企業の導入率も高く、2021年のある調査では利用率94%を記録しました。一方、機能が多い分動作が重く感じられる場合があり、Microsoft以外の外部サービスとの連携は限定的です。
Chatwork
Chatworkは日本発のビジネスチャットで、シンプルな操作性と日本語対応のしやすさが魅力です。中小企業やベンチャーを中心に導入が進み、ToDo機能や既読確認など、国内ビジネスに合った機能を持ちます。ITに不慣れな社員でも使いやすく、導入から定着までのスピードが早いのも特徴です。価格も手ごろで、ビジネスプランは月数百円程度から利用可能です。ただし、連携可能な外部サービスはやや限定的で、大企業や高度な業務統合を目指す場面では不足を感じる可能性もあります。
その他の選択肢
この他にもLINE WORKSやGoogle Chatなど、業種や用途に応じて活用されているチャットツールがあります。スマートフォン中心の現場やGoogle Workspaceとの統合を重視する企業など、導入環境に応じてツールを選ぶことが重要です。
管理者が直面するテレワークにおけるチャットの課題と対処法
テレワークにおいてチャットは欠かせないツールですが、導入や運用にあたり管理者が直面する課題も少なくありません。ここでは代表的な4つの課題とその対応策を整理して紹介します。
ツールの浸透・定着の難しさ
新しいチャットツールを導入しても、ITに不慣れな社員が多いと定着しにくく、社内の情報共有が分断される恐れがあります。
この課題に対しては、導入初期にしっかりと研修を行い、操作マニュアルを配布することが効果的です。管理者自身が積極的にツールを使いこなし、模範となる使い方を示すことで、現場にも浸透しやすくなります。ITスキルに差がある場合は、機能の多さよりも使いやすさを重視したツール選定も重要です。アンケートを通じて利用状況や課題を把握し、運用改善に活かすことも定着促進につながります。
コミュニケーションの質と生産性管理
チャットは便利な反面、通知が多すぎたり無秩序な会話が増えると集中力が下がり、生産性に影響します。これを防ぐには、業務連絡のルールを整備し、重要な議論がログに残る形で行われるよう意識づける必要があります。管理者は履歴を必要に応じて確認できる体制を整え、業務の進行状況を把握します。ただし監視のしすぎは信頼関係を損なうため、あくまでフォロー目的として活用することが大切です。
情報漏えい・セキュリティの不安
テレワークでは私用端末や自宅ネットワークからの接続が発生し、セキュリティ上のリスクが高まります。対策としては、会社支給のデバイスやVPN、多要素認証の活用、アクセス制御の徹底が有効です。また、業務上のやりとりは会社指定のチャットツールを使い、私的な連絡手段を使わないというルールの周知も重要です。主要ツールには暗号化や監査ログ機能が備わっており、こうした機能を適切に活用することで安全性を高められます。
雑談やノンビジネス利用への対処
チャットの手軽さから雑談が増えることもありますが、適度なやりとりはチームの関係性を深める一方、過剰になると業務の妨げになります。このバランスを取るためには、雑談専用チャンネルを設けたり、注意喚起のガイドラインを設けるとよいでしょう。厳しいルールではなく、自主性を尊重しつつ、業務連絡はピン留めなどで埋もれない工夫をすることで、健全な運用が期待できます。
従業員が直面するテレワーク チャットの課題と対処法
テレワーク環境ではチャットが欠かせないツールとなる一方で、従業員にとっての課題もあります。ここでは、よくある4つの課題とその対処法を紹介します。
コミュニケーション不足・孤独感
対面の機会が減ることで、相談や雑談がしづらくなり、孤独感や疎外感を覚える人もいます。こうした不安は、チャットでちょっとした声かけを心がけることで軽減できます。「週末はどうでしたか?」といった一言でも相手の安心感につながります。また、雑談用チャットルームやバーチャルランチ会など、交流の場を提案することでチームワークの維持にもつながります。
情報過多・常時対応のプレッシャー
チャットは便利な反面、頻繁な通知や即時対応への圧力がストレスとなる場合があります。このような場合には、通知設定を調整し、メンションがあったときのみ通知されるようにするなどの工夫が効果的です。勤務時間外はチャットアプリを閉じ、明確に「対応は〇時まで」と伝えることで、精神的な区切りをつけることができます。こうした自己防衛は、健全な働き方を保つうえで大切です。
テキストによる誤解・ミスコミュニケーション
文字だけのやりとりでは意図が伝わりづらく、誤解が生じることがあります。丁寧な表現を心がけるほか、絵文字やスタンプを使うことで、雰囲気を和らげる効果があります。また、「この理解で合っていますか?」と確認のメッセージを送ることも有効です。疑問点があれば遠慮せずに尋ねる習慣をつけ、必要ならば短い通話での確認も活用しましょう。
オン・オフの切り替えと自己管理
自宅勤務では業務と私生活の区別がつきにくく、常に「つながっていなければ」と感じやすい傾向があります。この課題には、始業・終業のチャット報告などで自分自身にけじめをつける方法が効果的です。周囲への退勤のサインにもなり、余計な連絡を防ぐ助けになります。業務後はパソコンやスマートフォンの電源を落とすなど、物理的に仕事から離れる工夫も必要です。こうした習慣を持つことで、長期的な健康とパフォーマンスを維持できます。
テレワークのチャット導入のコツ
テレワークでチャットを導入する際は、ツール選定から定着支援まで段階的な工夫が求められます。以下のポイントを押さえることで、社内に無理なくチャット文化を根付かせることができます。
自社に合ったツールを選ぶ
ツールにはそれぞれ特徴があります。例えば、少人数であればシンプルなChatwork、大規模組織やOffice製品との連携が重要ならTeamsなど、目的や現場のITリテラシーに応じて選ぶことが大切です。使いやすさを重視し、現場の声を反映することで導入のハードルが下がります。
小規模から段階的に展開する
導入は一斉ではなく、特定部署やプロジェクトから試すスモールスタートが効果的です。成功体験を積み、推進リーダーを立てて社内にノウハウを共有する体制を整えるとスムーズです。管理職が率先して活用する姿勢も、社内の利用促進につながります。
利便性を体感できる仕掛けを用意する
チャットの利便性を実感してもらうには、メール配信をチャットに切り替える、日報や朝会をチャットで行う、Botを活用するなどの工夫が有効です。日々の業務の中で「便利」と感じる瞬間を増やすことが、自然な定着につながります。
テレワークのチャット利用ルールの策定
テレワークにおいてチャットを円滑に運用するためには、社内で統一された利用ルールが欠かせません。ここでは、実務に役立つガイドラインの主要項目について紹介します。
利用範囲と用途の明確化
チャットを使う場面と、メールや電話を使う場面を事前に区別しておくと混乱を防げます。例えば、社内連絡はチャットを原則とし、対外的な文書や緊急時はメールや電話を使うなどの基準を設けることで、情報の整理と使い分けが明確になります。
チャット内の基本ルール
メッセージの送り方やマナーも統一しておくと、読み手の負担を軽減できます。メンションは必要な人に絞る、話題は分けて送る、長文は要点を先に書く、重要な内容は既読確認を求めるなど、わかりやすいやりとりを心がけましょう。ファイル送信時のルール(パスワード付きZipなど)も合わせて明記すると安心です。
勤務時間外の対応
チャットは便利な一方で、勤務時間外まで通知が届くことによるストレスもあります。「○時以降の送信は控える」「返信は翌営業日で可」など、対応時間の目安をガイドラインに明示しておくことで、従業員が安心して休める環境が整います。
情報の整理と保存
チャットは情報が流れやすいため、決定事項や議事録などは特定のチャンネルで管理し、定期的にWiki等へ移すといった運用が必要です。ログの保存方法や期間も定めておき、必要な情報に後からアクセスできる仕組みを構築しましょう。
セキュリティと権限管理
情報漏えい防止の観点から、チャットの権限設定や外部共有の手順も明文化しておくことが大切です。例えば、社外メンバーの招待には承認を求める、機密情報は限定チャネル内で扱うなど、安全に運用できるルールづくりが求められます。
テレワークのチャットにおけるマナー
テレワーク時代において、チャットは日常的なコミュニケーション手段ですが、ビジネスで使う以上は適切なマナーを守る必要があります。ここでは、チャット利用時に意識したいマナーの基本を紹介します。
丁寧な言葉遣いと挨拶
社外や目上の相手には「お世話になっております」など丁寧な書き出しが好印象を与えます。社内ではややカジュアルな文体も許容されますが、状況に応じて文体を使い分けることが大切です。
メッセージは簡潔で明確に
要点を押さえた端的な表現を心がけ、結論を先に述べると伝わりやすくなります。複数の話題を一度に送らず、メッセージは用件ごとに分けるのが望ましいです。
リアクションと返信の工夫
「了解です」「後ほど回答します」などの一言が、相手への安心感につながります。即時の返信を強要せず、互いに余裕を持ったやりとりを心がけましょう。
誤解を防止する感情表現
怒りや不満の感情はテキストでは伝わりすぎるため注意が必要です。難しい内容はチャットでなく、ビデオ通話や音声通話で伝える方が誤解を防げます。
送信タイミングに配慮する
昼休みや終業間際の連絡は避け、緊急性がない限り相手の業務を妨げないよう配慮しましょう。過度なメンションやスタンプの連続送信も控えるよう心掛けます。
チャットの活用でテレワークの生産性を高めよう
テレワークにおけるチャット活用は「働き方改革」を技術面から支える中心的存在として今後も発展していきます。チャットツール同士の垣根も次第に低くなり、異なるプラットフォーム間でもスムーズにやり取りできるような互換性の向上も期待されます。企業にとっては、単にツールを導入するだけでなく、その先の運用や組織文化作りまで含めた包括的な戦略が求められるでしょう。テレワーク時代においてチャットをいかに上手く活用するかが、コミュニケーションの質ひいては企業全体の生産性を左右すると言っても過言ではありません。自社に最適な形でチャットを取り入れていくことが、これからの働き方の成功要因の一つになるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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