- 作成日 : 2025年7月17日
1on1ミーティングに効果的なシートとは?書き方やテンプレートの活用術も解説
近年、人材育成や組織活性化の手法として、1on1ミーティングを導入する企業が増えています。しかし、「何を話せばいいかわからない」「形式的であまり効果を感じない」といった声も聞かれます。その課題を解決し、1on1ミーティングをより有意義なものにするために、専用シートの活用が有効です。
この記事では、1on1ミーティングで使うシートの基本的な役割から、効果的な進め方や活用法、導入・運用のポイントまで、網羅的に解説します。
目次
1on1ミーティングに効果的なシートとは
1on1ミーティングで使うシートとは、上司と部下が1対1で行うミーティング(1on1)の内容を記録し、対話を促進するためのテンプレートやフォーマットのことです。単なる議事録ではなく、以下のような役割を担います。
- 対話の構造化
話すべきテーマやアジェンダを明確にし、議論が脱線したり、重要な点が漏れたりするのを防ぎます。 - 事前準備の促進
事前にシートに記入することで、上司・部下双方がミーティングの目的を意識し、準備を整えることができます。 - 記録と振り返り
話し合った内容、決定事項、ネクストアクションなどを記録し、後から振り返ったり、継続的なフォローアップに役立てたりします。 - 認識の共有
対話の内容を可視化することで、上司と部下の間の認識のズレを防ぎます。
働き方の多様化や価値観の変化に伴い、従来の一律的なマネジメントだけでは、従業員のエンゲージメントやパフォーマンスを引き出すことが難しくなっています。個々の状況やキャリア観に寄り添った対話が求められる中で、1on1ミーティングの重要性が高まっています。
しかし、質の高い1on1を継続的に行うことは容易ではありません。そこで、対話の質を担保し、継続性を支援するツールとして、1on1ミーティング用のシートが注目されています。このようなテンプレートを活用することで、経験の浅いマネージャーでも効果的な1on1を進めやすくなり、組織全体のコミュニケーション改善にも繋がります。
1on1ミーティングでシートを活用するメリット
1on1ミーティングでシートを活用することで、以下のようなメリットが期待できます。
対話の質を向上できる
事前にアジェンダを設定し、シートに沿って対話を進めることで、話すべき内容が明確になります。「何を話そうか」と迷う時間が減り、より本質的な議論に集中できます。また、部下も事前に話したいことを整理できるため、より深い対話が生まれやすくなります。
目標達成や成長を促進できる
業務の進捗確認だけでなく、目標設定、キャリアプラン、スキル開発などについて定期的に対話することが可能になります。シートに目標やアクションプランを記録し、継続的に進捗を確認することで、部下の目標達成意欲を高め、着実な成長をサポートします。
認識のズレを防止できる
口頭でのやり取りだけでは、後になって「言った」「言わない」といった認識の齟齬が生じる可能性があります。シートに話し合った内容や決定事項を記録することで、共通認識を形成し、認識のズレを防ぎます。また、過去の記録を見返すことで、部下の変化や成長を把握することも可能です。
心理的安全性が高まる
シートを活用して対話のテーマを事前に共有したり、部下が安心して話せる雰囲気を作ったりすることで、心理的安全性が高まります。部下は「ここでは自分の考えや悩みを話しても大丈夫だ」と感じ、本音で意見を伝えやすくなります。これは、信頼関係の構築に不可欠な要素です。
1on1ミーティングのシートの書き方・必要項目
1on1ミーティングで使うシートのフォーマットは、目的や組織文化によって様々ですが、一般的に含まれると効果的な項目を紹介します。すべてを記入する必要はなく、自社の状況や目的に応じてカスタマイズすることが大切です。
基本情報(日時、参加者など)
いつ、誰と行ったミーティングなのかを明確にするための基本情報です。継続的な記録として管理する上で、必要不可欠な項目です。
- 実施日時
- 参加者(上司・部下)
- 場所(対面、オンラインなど)
アジェンダ・テーマ
その日のミーティングで話したい主要なテーマを記載します。事前に上司・部下双方で記入し、共有しておくことが理想的です。
前回からの進捗・確認事項
前回の1on1で決定したアクションプランや課題が、その後どうなったかを確認する項目です。対話の継続性を保ち、PDCAサイクルを機能させる上で重要です。
- 前回のアクションの進捗状況
- 持ち越しとなった課題の確認
課題・相談事項
部下が現在抱えている業務上の課題、人間関係の悩み、個人的な相談などを自由に記入できる欄です。上司はこれをもとに、具体的な支援やアドバイスを行います。
- 業務上の困難、ボトルネック
- チームや他部署との連携に関する課題
- 個人的な悩みや相談(話せる範囲で)
目標設定・キャリアに関する対話
中長期的な視点での対話項目です。部下の目標達成に向けたサポートや、キャリアに関する意向を確認し、支援策を検討します。
- 短期・中長期の目標設定と進捗確認
- キャリアパスに関する希望や考え
- 挑戦したい業務や学習したいスキル
健康状態・コンディション
部下の心身の健康状態やモチベーションを確認する項目です。プライベートな内容に踏み込む際は配慮が必要ですが、変化にいち早く気づき、適切に対応するために役立ちます。
- 体調やメンタルの状況
- 業務負荷やストレスの度合い
- モチベーションの変化
ネクストアクション・決定事項
今回のミーティングで決定したことや、次回までに実施する具体的な行動を明確にする項目です。誰が、いつまでに、何を行うのかを具体的に記載します。
- 決定事項の要約
- 具体的なアクションプラン(担当者、期限)
フリーコメント・メモ欄
上記項目に当てはまらない内容や、ミーティング中の気づきなどを自由に書き留めるスペースです。
シートを活用した1on1ミーティングの進め方
シートを作成するだけでなく、それをどのように使うかが重要です。効果を最大化するための、ミーティング前・中・後の使い方を解説します。
事前準備
1on1ミーティングの効果を最大化するためには、事前の準備が極めて重要です。部下は次回のミーティングで話したいテーマや相談事項、確認したい進捗などを事前にシートへ記入します。上司は共有されたシートを確認し、部下の状況を把握した上で、自身が話したいテーマやフィードバックを追記します。シートは、遅くとも前日までに共有し、当日のアジェンダについて共通認識を持つことで、限られた時間を有効に活用し、目的意識の高い対話を実現できます。
ミーティング当日
ミーティング当日は、まず事前に共有したシートのアジェンダを確認し、優先順位や時間配分について双方で合意します。シートは対話のガイドとして活用しますが、項目を読み上げるだけで終わらせず、それをきっかけとして議論を深掘りすることが肝要です。部下の話に真摯に耳を傾け、質問を通じて内省や気づきを促しましょう。話し合った内容の要点、決定事項、具体的なネクストアクションは、その場でシートに簡潔に記録し、認識の齟齬が生じないようにします。
ミーティング後
ミーティングが終了したら、できるだけ速やかに話し合った内容のメモを整理し、正式な記録としてシートを整理・保存します。完成したシートは上司・部下双方で共有し、いつでもアクセス可能な状態にしておくことが大切です。これにより、決定事項の確認や振り返りが容易になります。シートに記載されたネクストアクションは、各自が責任を持って実行に移します。この一連の記録とアクションの実行が、次回の1on1での進捗確認の土台となり、継続的な改善と成長のサイクルを回していきます。
1on1ミーティング用のシート導入・運用のポイント
シートを形骸化させず、効果的に運用していくためのポイントをいくつか紹介します。
目的を明確にし、共有する
なぜ1on1ミーティングでシートを使うのか、その目的(例:対話の質向上、成長支援、信頼関係構築など)を上司・部下双方で明確に理解し、共有することが重要です。「やらされ感」ではなく、双方にとって有益なツールであるという認識を持つことが、積極的な活用に繋がります。
シンプルなフォーマットから始める
最初から完璧なシートを目指す必要はありません。まずは必要最低限の項目に絞ったシンプルなフォーマットで開始し、運用しながら改善していくのが良いでしょう。項目が多すぎると、記入が負担になったり、対話が窮屈になったりする可能性があります。
テンプレートを活用して効率化を図る
ゼロからシートを作成するのは手間がかかるため、Web上や各種ツールにあるテンプレートを活用するのがおすすめです。様々な目的や状況に合わせたテンプレートが豊富に存在します。これらを活用することで、シート作成の手間を省き、効果的な1on1に必要な基本的な項目を押さえることができます。ただし、テンプレートはあくまで雛形なので、自社の目的や文化に合わせてカスタマイズすることが重要です。
継続的なフィードバックと改善を行う
シートの使い勝手や効果について、定期的に上司・部下双方からフィードバックを得る機会を設けましょう。「この項目は使いにくい」「もっとこういう情報が欲しい」といった意見を反映し、継続的にフォーマットや運用方法を見直すことが重要です。
1on1ミーティングで積極的にシートを活用しましょう
1on1ミーティングで使うシートは、上司と部下の対話の質を高め、個人の成長と組織の活性化を促進するための強力なツールです。しかし、単にシートを用意するだけでは効果は限定的であり、その目的を理解し、効果的な使い方を実践することが重要です。
今回ご紹介した項目や運用ポイントを参考に、自社の状況に合った1on1ミーティング用の効果的なシートを作成・活用し、より有意義な1on1を実現してください。シートを通じて対話が深まることで、上司と部下の信頼関係が強化され、従業員のエンゲージメント向上にも繋がるはずです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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