• 更新日 : 2025年7月1日

AXをビジネスコンサルティングに活用するには?アイデアや具体例を解説

企業がAX(AIトランスフォーメーション)を進める際、外部の専門知識を持つコンサルティングを活用することも一つの手です。AIを導入しても活用しきれないという企業の課題に対し、外部の専門家が技術とビジネスを橋渡ししてくれます。

この記事では、AX推進におけるコンサルティングの活用方法、提供される支援、メリット、注意点までをわかりやすく解説します。

AX(AIトランスフォーメーション)とは

AX(AI Transformation)とは、AI(人工知能)を事業の根幹に取り入れ、業務プロセスやビジネスモデルそのものを変革し、新たな価値を生み出す取り組みです。

ITツールを導入して業務を効率化するDX(デジタルトランスフォーメーション)から一歩進み、AIによるデータ分析や需要予測などを通じて、企業の意思決定そのものを高度化させることを目指します。

たとえば、顧客データから需要をAIが予測し、最適な生産・在庫管理を実現する、といった能動的な価値創造がAXの目指す姿です。

AX推進にコンサルティングはどう活用できる?

コンサルタントは、企業のAI導入における現状分析から戦略立案まで幅広く支援できます。業務プロセスの棚卸し、AI適用領域の特定、優先順位付け、投資対効果の試算など、経営視点でのAI活用計画を策定します。

特に経営管理領域では、予算策定や実績分析の自動化、予測精度向上などの具体的な改善提案が可能です。

以下では、その活用例をいくつか紹介します。

AX/DXを推進する専門人材の不足を補う

AXを推進するには、AI技術やデータサイエンスの知識はもちろん、それをビジネス課題の解決に結びつける応用力が求められます。多くの企業にとって、これらのスキルセットをすべて兼ね備えた人材を内部で確保するのは簡単ではありません。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発行した「DX動向2024」によれば、特にAI分野の人材不足感は顕著で、「AI関連の人材が不足している」と回答した企業は2023年度で62.4%にも上りました。

人材確保の手段として多くの企業が自社内での育成や中途採用でこの課題を解決しようと試みていますが、人材育成への投資は十分に進んでいません。育成方針が定まらなかったり、そもそも育成予算を確保できなかったりするケースも多く、理想と現実の間に大きなギャップが生じています。

コンサルティングの活用は、この「人材不足」と「人材育成」という二つの課題を同時に解決する有効な手段です。自社で採用や育成が追いつかない専門家の知見やスキルを、必要な期間だけ、プロジェクト単位で確保できます。この専門人材の不足を補い、プロジェクトを力強くけん引する役割を担います。

出典:DX動向2024|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

客観的な視点で経営課題を整理する

長年続けてきた業務プロセスや組織内の常識は、内部の人間だけではなかなか見直しにくいものです。「手作業や紙ベースの業務が多く非効率」「データは蓄積しているものの、分析や活用が進んでいない」「長年の継ぎ足しで既存システムが複雑化・老朽化している」といった課題は、まさにその典型例でしょう。

第三者であるコンサルタントがプロジェクトに加わることで、こうした社内のしがらみにとらわれず、業務プロセスや組織の課題が客観的に浮き彫りになります。「これはこういうものだ」と思い込んでいた業務が、実は大きな非効率を生んでいることに気づかされるケースも少なくありません。

最新の技術動向や補助金情報を入手する

AI関連技術の進化はめざましく、自社だけで最新情報を追いかけるのは大変な労力です。また、国や自治体はDXやAI導入を支援するさまざまな補助金・助成金制度を用意しています。コンサルタントは、こうした最新の技術トレンドや、活用可能な公的支援制度に関する情報を提供してくれます。これにより、有利な条件でAXを推進できる可能性があります。

失敗のリスクを抑え投資対効果を高める

「ITへの投資はしているが、その成果が具体的に見えず、評価もできていない」という悩みもあるでしょう。手探りでAXを進めた結果、効果の出ないITツールに多額の投資をしてしまったり、プロジェクトが頓挫してしまったりするリスクは避けたいところです。

経験豊富なコンサルタントは、過去の事例から成功・失敗のパターンを熟知しています。彼らの知見を活用することで、こうした失敗を回避し、限られた経営資源を最も効果的な分野に集中させ、投資対効果を最大化することが期待できるでしょう。

経営層と現場の認識ギャップを埋める

AXのような全社的な変革では、経営層が描くビジョンと、日々の業務を行う現場との間に、認識のズレや温度差が生まれがちです。「AIで売上を倍増させたい」という経営層の想いに対し、現場は「具体的に何をすればよいのかわからない」「今の業務で手一杯だ」と感じることは少なくありません。

コンサルタントは、この両者の間に立つ「翻訳家」や「調整役」の役割を担います。経営の言葉を現場が理解できる具体的なタスクに落とし込み、逆に現場が抱える課題や懸念点を経営層に正しく伝えることで、認識の溝を埋めていきます。これにより、全社的な合意形成がスムーズに進み、組織一丸となって変革に取り組む体制が整うでしょう。

意思決定のスピードを高める

「DXを推進したいが、どこから手をつけるべきかわからない」といった、デジタル化の方向性に迷っている状態では、貴重な時間が過ぎていくだけです。急速に変化するビジネス環境では、意思決定のスピードは企業の競争力を大きく左右します。

コンサルタントは、豊富なデータや過去の多様な事例に基づき、意思決定に必要な情報と論点をスピーディーに提供します。選択肢ごとのメリット・デメリットを整理し、合理的な結論を導くサポートをすることで、経営者は迷う時間を減らし、的確かつ迅速に次の一手を打てるようになります。

一般的なAX支援・コンサルティングの内容とは?

コンサルティングで受けられるAX支援とは、戦略策定のような最上流から、具体的なシステム導入、さらには組織文化の変革まで多岐にわたります。

企業の状況や課題に応じて、現状分析から導入後の保守サポートまで、一貫した支援を受けることが可能です。

経営課題に紐づくAI戦略を策定する

まず、企業の事業目標や経営課題を深く分析し、それを解決するための「AI戦略」と具体的なロードマップを策定します。「競合に勝ちたい」「生産性を上げたい」といった漠然とした要望に対し、現状のITシステムや業務プロセスの分析を通じて課題を抽出し、「どの事業の、どの部分に、どのAI技術を適用すれば、どれだけの効果が見込めるか」という具体的な計画に落とし込みます。投資対効果の高い領域を見極め、全社で取り組むべき優先順位を明確にするのです。

データ活用基盤の構築を支援する

AIがその能力を発揮するためには、学習の元となる「データ」が整備されていることが大前提です。しかし、多くの企業ではデータが各システムに分散していたり、形式が統一されていなかったりと、すぐに使える状態ではありません。コンサルティングは、社内に散らばるデータの収集・統合から分析基盤の構築までを支援します。これにより、データに基づいた客観的な意思決定(データドリブン)が可能な組織体質への変革を促します。

事業成長を支えるクラウド環境の導入を支援する

AX推進の基盤として、柔軟性と拡張性に優れたクラウド環境は不可欠です。コンサルティングでは、企業の要件に合わせて最適なクラウドソリューションを選定し、導入から運用までをサポートします。サーバーの管理といった負担を軽減し、必要な時に必要なだけリソースを使えるようにすることで、コストの最適化とビジネスの成長スピードに合わせたスケーラビリティを実現します。データ基盤やAI開発環境をクラウド上に構築することで、場所を選ばない効率的な働き方にもつながります。

業務プロセスのデジタル化を実行する

策定したAI戦略をもとに、具体的な業務改革へと進みます。コンサルタントは、現状の業務フローを可視化し、どこにボトルネックがあるのかを特定したうえで、AIやデジタルツールを活用した新しい業務プロセスの設計から導入までを支援します。例えば、経理部門であればAI-OCRとRPAを組み合わせて請求書処理を自動化したり、営業部門であればAIを用いて顧客データを分析し、成約確度の高い見込み客リストを作成したりするなど、業務の自動化と効率化を実現します。

全従業員のデジタルスキルを向上させる

優れた戦略やシステムを導入しても、それを使いこなす「人」が育たなければ変革は成功しません。コンサルティングは、従業員のデジタルスキル向上のための研修やワークショップを企画・提供します。経営層から現場の従業員まで、それぞれの階層に応じたリテラシー教育を行うことで、組織全体のITスキルを底上げし、全社一丸となってAXを推進する文化を醸成します。

導入後のシステム運用と改善をサポートする

AXは、システムを導入して終わりではありません。ビジネス環境の変化や新しい技術の登場に合わせて、継続的に改善していくことが求められます。コンサルティングは、導入後のシステムの安定稼働を支える保守サポートはもちろん、効果測定や利用者からのフィードバックをふまえた改善提案も行います。長期的な視点で伴走し、投資効果を最大化するための持続的なサポートが受けられます。

AXに強いコンサルティング会社を選ぶには?

コンサルティングの成果は、どの会社をパートナーに選ぶかで大きく変わります。自社の課題や文化に合い、信頼してプロジェクトを任せられる会社を慎重に選定することが、AX成功の第一歩です。

実績と専門性を確認する

まず、自社の業界や解決したい課題領域での支援実績が豊富かどうかを確認しましょう。たとえば「AI導入支援」や「業務プロセスのデジタル化」「DX戦略立案とロードマップ策定」など、どのフェーズを得意とするかを見極めましょう。また、AIやクラウド技術に関する知見だけでなく、業務改革・人材育成・定着支援などビジネスサイドの理解があるかも重要です。可能であれば、担当コンサルタントと直接話し、その知識と視野の広さを確かめるとよいでしょう。

自社の文化や現場との相性を見る

コンサルタントは、プロジェクト期間中、自社の社員と密に連携するパートナーです。そのため、提案内容の質だけでなく、話しやすさ・共感力・進め方など、社風との相性も非常に大切です。

現場の納得感を得られなければ、どれだけ優れたAI戦略でも定着は難しくなります。複数の会社と比較し、「一緒に走れるかどうか」という直感も含めて判断しましょう。

導入後まで見据えた“伴走型支援”があるか

AXは導入して終わりではなく、継続的な運用・改善を通じて成果につながります。そのため、運用改善や効果測定、リテラシー教育など、プロジェクト完了後も現場に寄り添った支援体制があるかを確認しましょう。

たとえば画像のように、「現状分析」「AI導入支援」「人材教育」「運用保守」までワンストップで対応できる会社なら、長期的なパートナーとして心強い存在になります。

AX推進にコンサルティングで成果を上げるポイント

AX(AIトランスフォーメーション)のコンサルティングを導入すればすぐに成果が出る、というわけではありません。

むしろ、企業側の関わり方や準備次第で、プロジェクトの成否は大きく変わります。ここでは、AXを成功に導くために押さえておきたい3つの注意点を紹介します。

コンサルタントに“丸投げ”しない

最も避けるべきは、コンサルタントにすべてを「丸投げ」してしまうことです。コンサルタントはAXの専門家ですが、会社の業務や製品、顧客のことを深く理解しているのは、社内の人間です。

自社の担当者もプロジェクトの当事者として深く関与し、コンサルタントと対等な立場で議論を交わす必要があります。

主体性を持つことで、コンサルタントの提案を鵜呑みにせず、自社にとって本当に正しい判断を下せるようになります。そして何より、プロジェクト終了後にノウハウが社内に蓄積されるという大きな財産が残ります。

社内の協力体制を整える

AXは、多くの場合、部署横断的な取り組みとなります。経理、営業、製造といった各部門の協力なしには進められません。プロジェクトを始める前に、経営トップがAXの重要性を全社に伝え、社内の理解と協力を得ることが大切です。そして、各部門からキーパーソンを選び、プロジェクトチームをつくることで、スムーズな推進体制が整います。

成果の基準(KPI)を明確にしておく

プロジェクトの開始前に、「何を達成するためのプロジェクトなのか」を測るために具体的な指標(KPI:重要業績評価指標)をコンサルティング会社と合意しておきましょう。

「半年後までに、AI-OCRによる請求書処理の時間を50%削減する」「1年後までに、AIによる需要予測の精度を20%向上させ、在庫を15%削減する」といった具合です。

この共通のゴールがあることで、プロジェクトの進捗が可視化され、関係者の意識も統一されます。

AXを推進するにはコンサルティングとの関わり方が重要

AIを活用した企業変革であるAXは、戦略の立案から業務改革、人材育成、運用改善に至るまで多くの要素が絡み合う複雑な取り組みです。

そのため、外部の専門家であるコンサルタントとの連携が、大きな推進力となります。

ただし、成果を得るには単に依頼するだけではなく、企業側の姿勢や準備も欠かせません。主体的に関与し、社内の体制を整え、明確な目標を共有することが、プロジェクトの成否を左右します。

コンサルティングを効果的に活用しながら、自社の強みを伸ばし、課題を乗り越えていくことこそが、AXを持続的な成長へとつなげる要となるでしょう。


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