• 作成日 : 2025年5月7日

リモートワークのセキュリティリスクは?気を付けることや対策を解説

リモートワークの普及により、企業は新たな働き方を取り入れていますが、同時にセキュリティリスクも増加しています。従業員がさまざまな場所で業務を行うことで、情報漏洩や不正アクセスの危険性が高まります。

この記事ではリモートワークの実施により発生しうるリスクと解決策、企業がとるべきセキュリティ対策について解説します。

リモートワークのセキュリティリスクとは

リモートワークの普及が進む中で、企業におけるセキュリティリスクが新たな課題として顕在化しています。どのようなリスクがあるのか見ていきましょう。

社用端末の紛失・盗難

リモートワークの環境において、社用端末の紛失や盗難は深刻なセキュリティリスクです。自宅やカフェなどの公共の場で仕事をすることが増える中、端末が盗まれるリスクはますます高まっています。

リモートワーカーは、社用端末を常に身近で使用し、公共の場では目の届く範囲内に置くようにする必要があります。端末を長時間放置することがないよう、一時的に席を離れる際には、必ず持ち歩くようにしましょう。

次に、デバイスに対してロック機能を設定し、一定時間操作が無かった場合に自動的にロックされるようにすることが重要です。万が一紛失した場合でも、不正アクセスのリスクを減少させることができます。

さらに、ハードディスクやストレージへのデータ暗号化も推奨されます。端末が盗まれた場合でも、データが簡単には取り出せないようになります。

また、リモートワイプ機能を活用することも、有効です。リモートでデータを消去することができれば、機密情報が流出する危険性を一層低減できます。

企業内ネットワークへの不正アクセス

企業内ネットワークへの不正アクセスは、自宅やカフェなどオフィス外から作業を行う際に顕在化しやすく、企業情報の漏洩や改ざんを引き起こす可能性があります。

リモートワークの環境では、社員がインターネット接続を介して企業のシステムにアクセスするため、悪意ある第三者がアクセスを試みるリスクが増大します。例えば、サイバー攻撃の手法としてフィッシングやパスワードのリスト攻撃などです。

企業は、不正アクセスを防ぐために多段階のセキュリティ対策を講じる必要があります。具体的な対策として、まず多要素認証の導入があります。

多要素認証は、パスワードだけでなく、他の情報やデバイスを利用してユーザーの認証を行う方法です。例えば、スマートフォンに送信される確認コードを利用することで、パスワードが漏洩した場合でも不正アクセスを防ぐことができます。

また、企業のネットワークにアクセスする際は、VPN(仮想プライベートネットワーク)を使用することが推奨されます。VPNはデータ通信を暗号化し、セキュリティを強化する効果があるため、公共のWi-Fi環境でも安全にアクセスできます。このような技術を活用することは、リモートワークの安全性を高める鍵となります。

脆弱なネットワークからの情報漏洩

公共のWi-Fiなどセキュリティ対策が不十分なネットワークでは、悪意のある第三者が簡単にデータを盗み出すことが可能です。前述したように、VPNを使用することで、リモートワーカーは公共のネットワーク越しでも企業専用の安全なトンネルを通じてデータを送受信できます。

次に、強力なパスワードの設定と定期的な変更を促すことが重要です。パスワードは他の人に推測されにくいものを選び、個々のアカウントごとに異なるものを使用することが求められます。二段階認証の導入も有効な対策です。

マルウエア感染

マルウエアは、悪意を持ったソフトウェア全般を指し、個人情報や機密情報を盗むために利用されることが多いです。代表的なものとして、ウイルス、ワーム、トロイの木馬、ランサムウェアなどがあり、データを破壊したり、情報を盗み取ったりします。

電子メールの添付ファイルやリンクをクリックすることで感染する場合や、感染したサイトを訪問した際に自動的にダウンロードされることがあります。また、ソフトウェアのアップデートを無視したり、不正なアプリケーションをインストールする際にもリスクが高まります。

リモートワークの環境では、従来のオフィス勤務に比べて、従業員が使用するデバイスやネットワークの種類が多様化し、結果としてセキュリティの脆弱性が増しています。自宅のWi-Fiが適切に設定されていなかったり、不正アクセスにさらされた場合、マルウエアが侵入するリスクが高まります。

従業員が使用するすべてのデバイスに対して最新のウイルス対策ソフトをインストールし、常に更新を行うことが基本となります。

企業全体としてのセキュリティポリシーを厳格にし、マルウエア感染のリスクを最小限に抑える取り組みを進めることが、安全な業務運営に繋がります。

経営者が実施すべきリモートワークのセキュリティ対策

リモートワークのもたらすリスクについて適切な対策を講じないと、重要なデータが危険にさらされる可能性があります。ここでは経営者が実施するべき対策について解説します。

セキュリティポリシーの策定

セキュリティポリシーの策定は、企業がテレワークを効果的かつ安全に実施するために不可欠です。セキュリティポリシーは、情報セキュリティに関する基本的な方針やルールを定め、全従業員が理解し遵守するべきガイドラインとなります。

効果的なセキュリティポリシーを策定するためには、以下の重要な項目に留意する必要があります。

まず過去のインシデントデータや統計に基づくリスクアセスメントを行うことが重要です。情報を元に、自社におけるリスクを洗い出し、対策を考案することが求められます。

さらに、ポリシーには行動基準が必要です。リモート環境で使用するデバイスの管理方法、データの扱いに関するルール、社外との通信に関する方針などを明確にし、従業員が容易に理解できる形で提示することが重要です。

これにより、全社員が自らの役割を認識し、安全に業務を遂行できるようになります。

インシデント対応計画の策定

インシデント対応計画とは、発生する可能性のあるセキュリティインシデントに迅速かつ効果的に対応するための戦略です。この計画を策定することで、組織のセキュリティを強化し、リスクを最小限に抑えることができます。

まず、直面する可能性のあるセキュリティインシデントの種類を明確に理解することが必要です。例えば、データ漏えいや不正アクセス、マルウェア感染などです。これらのインシデントが発生した場合、どのような影響が出るかを考慮し、事業に対する影響レベルを評価することが重要です。

どのインシデントに優先順位をつけて対応すべきかを明確にし、インシデントごとに対応の優先度を設定することで、リソース配分の最適化を図ることができます。

また、インシデント対応計画を実行するためには、専門的な知識と経験を持つ人材で構成されたチームを編成する必要があります。このチームには、システムやセキュリティに精通した管理者や関連部門のスタッフを含めることが望ましいです。緊急時に迅速に対応できるよう、定期的に訓練を行い、チームの実践的なスキルを磨いていきます。

セキュリティ管理者が実施すべきリモートワークのセキュリティ対策

セキュリティ管理者は、経営者が策定したガイドラインを具体的なアクションに移していく役目を担います。実施すべき対策は以下のとおりです。

セキュリティ関連の規定の周知

セキュリティ関連の規定を周知し、従業員の意識を高めることは、テレワークにおけるセキュリティの強化に直結します。組織のセキュリティを確保するためには、セキュリティ関連の規定を周知徹底する必要があります。規定が効果的に周知されると、従業員一人ひとりが自らの責任を自覚し、セキュリティ意識の向上が期待できます。

規定の周知には多様な方法が考えられます。オンライン研修の実施や、定期的なセキュリティニュースレターの配信など、従業員がいつでもアクセスできる形での情報提供が有効です。加えて、社内ポータルサイトに関連情報を集約し、従業員が簡単に参照できるようにすることで、日常的に規定を意識させる工夫が求められます。

さらに、規定を一方的に伝えるのではなく、従業員からのフィードバックを受け付けることも重要です。従業員の意見や疑問点を反映させることで、より実態に即した規定を整備する調整が可能になり、全体の理解度向上にも役立ちます。

テレワーク端末や利用状況の管理

テレワークを行う従業員が使用する端末については、従業員による自宅端末の利用を禁じ、企業が提供するデバイスの利用を原則とするのが効果的です。業務に必要なソフトウェアのみをインストールすることができ、外部からの攻撃リスクを大幅に軽減できます。

さらに、利用状況を定期的にチェックする体制の整備も重要です。セキュリティ管理者が月ごとに端末のログを確認し、異常なアクセスや不正な接続が行われていないかを確認します。業務時間外のアクセスに対しては注意が必要であり、不審な動きが発見された場合は、迅速に対応することが求められます。

このような管理体制を担当者が構築することで、企業内のデータは安全に保たれ、テレワーク環境での業務を円滑に推進できます。

不要なアプリのインストールの制限

サイバー攻撃の多くは、悪質なアプリが原因です。何をインストールするかは組織全体のセキュリティに直結するため、厳重な管理が必要です。

まず、社員に対して使用可能なアプリケーションのリストを明示し、リスト以外のアプリケーションのインストールを禁止します。このリストは定期的に見直しを行う必要があります。新しいアプリケーションが登場する中で、必要性を評価し続けることがセキュリティの向上につながります。

次に、アプリケーションインストールの監視と管理も不可欠です。例えば、企業が管理するデバイスにアプリのインストール履歴を記録するソフトウェアを導入することが考えられます。誰がいつどのアプリをインストールしたかを追跡でき、不適切な行動があった場合には対処することが可能です。

さらに、従業員への教育も重要な要素です。テレワーク勤務者に対しては、どのようなアプリケーションが安全であり、どのようなものが危険かについての理解を深めるために、定期的なトレーニングを実施することが推奨されます。

機器やソフトウェアのアップデート周知

業務で利用する機器やソフトウェアに最新のアップデートを適用することで、既知の脆弱性を修正し、サイバー攻撃から組織の情報を守ることができます。アップデートには、新機能の追加や既知のセキュリティホールへの対策が含まれています。

セキュリティの担当者は、最新のソフトウェアのバージョン情報やアップデート手順を従業員へ周知する必要があります。社内のニュースレターやメールを用いて、アップデートの内容がどのようにセキュリティを向上させるかを具体的に示すことで、従業員の理解が得られやすくなります。また、社内研修を通じてアップデートの重要性を強調し、自発的に行動を促すことも一つの方法です。

さらに、アップデートを管理・周知するためのツールを導入することも有効です。企業向けの管理ソフトウェアを使うことで、全てのデバイスにおけるアップデートの状況を一元管理し、必要なパッチが適用されているかを確認できます。

従業員が実施すべきセキュリティ対策

リモートワークを行う従業員が実施すべきセキュリティ対策や注意点を解説します。

セキュリティ関連のルールを守った業務遂行

従業員は自社のセキュリティポリシーを理解し、それに基づいて日常業務を遂行することが求められます。規定に従ったデータの取り扱いや、情報の保存方法、そしてインシデントの定義や対応策について熟知することが必要です。

自社のセキュリティドキュメントは通常、イントラネットや専用ポータルサイトに掲載されています。定期的に資料を確認し、更新があった場合には速やかに内容を把握することが必要です。ルールを遵守することは、個々の従業員自身を守ることにもつながります。例えば、セキュリティ違反が発生した場合、自身が関与していたことで責任を問われることもあります。セキュリティルールを守ることは、自助につながるだけでなく、職場全体の安全性を高めることになります。

暗号化された安全な通信経路の利用

業務に関連するデータを安全にやり取りするために、暗号化された通信経路の利用を徹底しましょう。通信が暗号化されていない場合、外部からの不正アクセスや情報漏洩のリスクが高まります。

VPNを使用することで、インターネット接続を暗号化し、公共のWi-Fiネットワークを経由しても安全に業務が行えます。また、Webサイトへの接続時にSSL/TLSが適用されている場合、URLの先頭に「https://」が表示され、通信が保護されていることが示されます。これらを使用することで、データが悪意のある攻撃者によって傍受されるリスクを大きく減少させることができます。

リモートワーク環境では、自分自身の業務だけでなく、会社全体のセキュリティに責任を持ち、適切な方法で情報を取り扱うことが、今後ますます重要視されていくでしょう。

アカウントやパスワードの適切な管理

不適切なアカウント管理は情報漏洩や不正アクセスのリスクを高めます。

アカウント管理においては、各個人が持つアカウントに対して唯一のパスワードを用いることが大切です。同一のパスワードを複数のサイトやサービスで使用すると、いずれか一つがハッキングされた際に、他のアカウントも危険にさらされます。

次に、パスワードの複雑さも重要です。簡単に推測できるパスワード(例:自分の誕生日や名前)を設定することは避け、アルファベットの大文字、小文字、数字、記号を組み合わせたものを選ぶようにしましょう。悪意のある第三者からの攻撃防止に効果的です。

また、定期的なパスワード変更を行うこともセキュリティ強化には欠かせません。

アカウントやパスワードの管理には専用のパスワード管理ツールを利用することを検討しましょう。これらのツールは、安全にパスワードを保存し、自動入力機能も持つため、複雑なパスワードを記憶する手間を省けます。データ漏洩のリスクを大幅に低減しながら、利便性を向上させることができます。

データの閲覧・編集権限の設定

リモートワーク環境では、データへのアクセスにおけるリスクが増大するため、従業員は自分の職務に関連のない機密データにアクセスすることは避けなければなりません。

データやツールへのアクセス・編集が許可される範囲を適切に制限し、定期的に権限の見直しや更新を行うことが重要です。

企業内の異なる部門間での情報のやり取りが増える中で、各部署の担当者が権限について正しく理解し合うことが必要です。

データのアクセスや編集権限に関する意識の向上を徹底することで、セキュリティの脅威を最小限に抑え、より安全な作業環境を実現することが可能になります。

インシデント発生時の速やかな報告

リモートワーク環境では、不審なメールやファイル、疑わしいリンクなど様々なセキュリティ上のリスクが存在します。インシデントが発生した場合、早急に報告することで迅速な問題解決を促し、さらなるリスクを未然に防ぐ助けとなります。

報告のプロセスとしては、まず、従業員は発生したインシデントの内容やもたらす影響を正確に把握します。その後、定められた手順に従い、システム・セキュリティ管理者や関連部署に情報を迅速に伝えます。このプロセスが円滑に機能することで、組織としての対応力が高まります。

また、報告した後は、管理者からの指示に従い必要な対応を行い、さらなるリスクの拡大を防ぐことが求められます。問題を早期に特定して防止策を打ち出すことで、組織全体の信頼性や安全性を保てます。

まとめ

リモートワークの普及に伴い、企業のセキュリティ対策強化は必須となりました。経営者・セキュリティ管理者・従業員がそれぞれの立場でセキュリティ意識を高めることで、安全なリモートワーク環境を維持できます。

この記事で紹介した対策を参考に企業の信頼性を高めつつ、柔軟な働き方の導入を推進していきましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事