• 作成日 : 2025年5月7日

ヘルプデスクツールとは?選ぶポイントやおすすめのツールを紹介

ヘルプデスク業務の効率化や品質向上を図るには、専用のヘルプデスクツールの活用が有効です。ツールを正しく導入・運用すれば、問い合わせ対応のスピードアップや情報共有の円滑化など多くのメリットが得られます。

本記事では、ヘルプデスクツール導入のメリットや選び方の基準、おすすめのツール・導入時の注意点について解説します。

ヘルプデスクツール導入のメリット

ヘルプデスクツールを導入すると、問い合わせ対応に関してさまざまなメリットがあり、ヘルプデスク業務全般で改善が期待できます。ここでは主なメリットを解説します。

情報の一元管理とチーム内共有の容易化

ヘルプデスクツール最大のメリットの一つは、問い合わせ関連情報を一元管理しチーム全員で共有できることです。ツール上に顧客からの問い合わせ内容や対応履歴、顧客情報を蓄積することで、担当者はリアルタイムに対応状況を把握できます。これにより対応の二重処理や抜け漏れを防ぎ、「誰がどの問い合わせに対応しているか」をチーム全員が共有可能です。

過去の問い合わせ履歴もワンクリックで参照できるため、繰り返し発生する問題に対して前回の対応を踏まえたブレないサポートができます。同じユーザーから複数回類似の問い合わせがあった場合でも、履歴を確認することで矛盾のない一貫した回答が可能になります。このように情報を一箇所に集約できることは、ヘルプデスク業務の土台を強化する大きなメリットです。

問い合わせ対応の効率化と自動化

ヘルプデスクツールは、問い合わせ対応プロセスの効率化にも役立ちます。多くのツールには自動割り当て機能が備わっており、問い合わせ内容に応じて適切な担当者へチケットを自動振り分けできます。これにより手作業で担当者に引き継ぐ手間が省け、対応開始までの時間を短縮できます。

また、定型回答のテンプレート機能を活用すれば、よくある質問への返信を定型化し迅速に対応できます。一から毎回文章を考える必要がなくなり、担当者ごとに回答の品質がばらつくのも防げます。さらに、問い合わせ内容を分類・集計して頻出する質問をFAQやチャットボットに反映させることも可能で、対応すべき問い合わせ件数そのものを減らすことにもつながります。

業務効率が上がれば人員リソースに余裕が生まれ、結果的にヘルプデスク対応にかかるコスト削減効果も期待できます。このように、ツール導入は人手に頼った対応の無駄を省き自動化できる部分を増やすことで、ヘルプデスク全体の生産性向上に大きく貢献します。

対応品質の均一化と属人化の防止

ヘルプデスクツールの導入は、対応品質の底上げと均一化にも役立ちます。従来、担当者ごとの経験やスキルに依存していた対応も、ツール上にナレッジ(対応ノウハウ)を蓄積し共有することで誰でも一定水準の回答ができるようになります。特定の社員だけが詳しい内容を抱え込む属人化を防ぎ、チーム全体でノウハウを共有できる環境が整います。

さらに、テンプレート機能により回答内容を標準化すれば、担当者による対応のばらつきも解消されます。新人オペレーターでもテンプレートを参照して回答すればベテランと遜色ない対応が可能となり、顧客対応の品質が一定水準で保たれます。また、対応履歴がデータベース化されていることで、新人が過去のベストプラクティスを学びやすくなるという効果もあります。

このようにツール導入は対応品質の平準化につながり、結果的に顧客満足度が向上します。

ヘルプデスクツールの活用事例

ヘルプデスクツールはさまざまな業種や用途で活用されており、それぞれの現場で課題解決に役立っています。ここでは業種・用途別の活用事例として、社内ヘルプデスクでの事例と顧客向けサポートでの事例を中心に紹介します。

社内ヘルプデスク

まず、社内向けのヘルプデスクでの活用事例です。大企業では社員数が多く、情シス(情報システム)部門など社内ヘルプデスクに寄せられる問い合わせも膨大です。

ある保険会社のグループ企業では、社内ヘルプデスク担当への問い合わせ負荷が増大したことを受け、AIチャットボットを導入しました。初めにヘルプデスク関連のFAQ約200問を用意しチャットボットに学習させたところ、運用開始後は定型的な質問の多くを自動回答できるようになり、担当者の負担が大きく軽減されたといいます。

また別の例では、楽器の小売業界において新サービス開始時に店舗スタッフから本社への問い合わせが急増したケースがあります。対応マニュアルの情報量が膨大になったため現場で消化しきれず問い合わせが殺到したのですが、ここでもAIチャットボットを社内ポータルに導入し、店舗スタッフ自ら必要情報を検索できるようにしました。その結果、本社ヘルプデスクへの問い合わせ件数は週に約50件から1~2件程度に激減しています。

これらの事例は、社内ヘルプデスクにおいてナレッジ共有と自己解決支援がいかに効果を発揮するかを示しています。ヘルプデスクツールを活用してFAQデータベースを整備し、社員が自己解決できる環境を作ることが社内問い合わせ対応の効率化に繋がる好例と言えるでしょう。

小売・サービス業界での顧客サポート

次に、顧客対応にヘルプデスクツールを活用している事例です。小売・サービス業では消費者からの問い合わせ対応を円滑に行うことが重要で、大量の問い合わせを的確に捌く必要があります。

コスメ・美容の口コミサイト「@cosme」を運営する株式会社アイスタイルでは、従来メール対応で重複返信や対応漏れが発生し、どこでミスが起きているか把握しづらい状況でした。この問題を解決するため、メール問い合わせ管理に特化したヘルプデスクツール「Mail Dealer」を導入しています。ツール導入後は、顧客ごとのメールを一括表示できる機能や、メールに伝言メモを残せるコメント機能によって担当者間の引き継ぎが簡素化されました。さらに、大量の問い合わせメールを分析することで「ユーザーが@cosmeに求めていること」を抽出し、サービス改善にも役立てています。

また、フードデリバリー事業を展開するある企業では、将来的なチャネル拡大を見据えてマルチチャネル対応可能な「Re:lation」というツールを採用しました。現場の使いやすさを最優先に選定した結果、多少のトレーニングは必要だったものの新人スタッフでも迷わず操作できる仕組みを整え、教育コストの削減に成功しています。メール・電話・チャットとチャネルが増えてもツール上で一元管理できるため、「返信漏れ」や「重複対応」といった問題もゼロにできたとのことです。

これらの事例から、顧客サポート業務においてヘルプデスクツールは問い合わせ対応の抜け漏れ防止やマルチチャネル対応の効率化に威力を発揮することが分かります。消費者向けサービスでは問い合わせ件数が多いため、ツールを活用した一元管理で対応品質とスピードを維持している点が注目されます。

製造業における大規模サポート

最後に、製造業でのヘルプデスクツール活用事例です。メーカー企業では、製品を利用する顧客や取引先からの問い合わせ対応が重要になります。

世界的タイヤメーカーの株式会社ブリヂストンでは、毎月3,000件に及ぶお問い合わせを本社の15名のメンバーで対応していました。膨大な問い合わせ対応業務を少しでも楽にするため、同社はヘルプデスクツール「Freshdesk」を導入しています。Freshdeskを使って問い合わせ窓口をマルチチャネル化し(メールや電話だけでなくWebフォーム等も統合)、タイムリーな応答を実現しました。

また、SLA(サービス水準)の基準に沿ってチケットを自動的に担当振り分けするワークフローを構築し、案件ごとの優先度に応じた迅速な対応が可能になっています。さらに同社では、Freshdeskに搭載されたFAQナレッジやチャットボット機能も積極的に活用し、問い合わせ対応をスケールアップ(拡張)しています。蓄積されたデータの分析・可視化も行い、対応プロセスのボトルネックを洗い出して運用の効率化を継続的に進めた結果、顧客満足度の向上にも成功しました。

この事例は、大量の問い合わせを抱える大企業でもヘルプデスクツールを駆使することで高品質なサポートを維持できることを示しています。製造業のように技術的な質問やクレームが多岐にわたる場合でも、ツール上で情報管理・自動化・分析を行うことで、少人数でも迅速かつ的確な対応を継続できている点が参考になるでしょう。

ヘルプデスクツールの選び方

現在、市場にはさまざまなヘルプデスクツールが存在しており、自社に最適なものを選定するにはいくつかのポイントを押さえる必要があります。以下では、ツール選定時に注目すべきポイントを解説します。

現場で使いやすい操作性と機能

まず注目したいのは、ツールの操作性(ユーザーインターフェースの使いやすさ)です。ヘルプデスク担当者が日常的に使う管理画面が直感的で分かりやすいことは、導入後の定着に不可欠です。問い合わせ内容を一覧表示する画面は、一目で要件が把握できるレイアウトであることが望ましく、各チケットのステータスや対応方法もすぐ確認できる必要があります。

操作が複雑だったり煩雑だったりすると、かえって業務効率が下がってしまうため注意が必要です。加えて、搭載機能が自社の求めるものかも重要な選定基準です。例えば、回答テンプレートを自由に登録できる機能や、問い合わせデータを集計・分析するレポート機能、顧客向けのFAQ作成機能など、ヘルプデスク業務を支える便利な機能がツールごとに異なります。自社の課題(対応の遅れなのか、ナレッジ共有なのか等)に合致した機能を持つ製品を選ぶようにしましょう。

現場が使いこなせる操作性と解決したい課題に直結する機能を兼ね備えたツールこそが、最適な選択肢となります。

自社のチャネル対応状況と他システムとの連携

次に考慮すべきは、そのツールが自社の利用する問い合わせチャネルに対応しているかです。問い合わせ手段は企業によってさまざまで、電話・メールに加え、最近ではチャット(Webチャット、LINEなど)やSNS経由の問い合わせも増えています。現在使っているチャネルはもちろん、将来的に増やす可能性のあるチャネルも見据えて、できるだけ幅広いチャネルを一元管理できるツールを選ぶと安心です。

たとえ今はメール対応中心でも、今後チャットやSNS対応が必要になるかもしれません。その点、マルチチャネル対応かどうかは重要な確認ポイントです。

また、日本企業の場合は日本語への対応は必須ですが、グローバル展開している企業であれば英語をはじめ多言語対応の有無も確認しましょう。問い合わせが必ずしも日本語だけとは限らないため、ユーザーの言語に合わせて対応できるツールであることが理想です。

さらに、既存システムとの連携性も基準となります。例えば顧客管理(CRM)や営業支援システムと連携できれば、ヘルプデスクから顧客の購入履歴や契約状況を即座に参照でき、より的確な対応が可能です。反対にツールが社内システムと孤立していると、データの二重入力や照合に手間取ってしまいます。

こうしたチャネル適合性と他システム連携の観点から、自社環境との相性を見極めることが大切です。

将来の拡張性とサポート体制

ヘルプデスクツールの提供形態にも注目しましょう。多くはクラウドサービス(SaaS)として提供されていますが、製品によってはオンプレミス(自社サーバー設置型)も選択可能です。自社のセキュリティポリシーやITインフラ、人員体制によっては、オンプレミス型の方が適する場合もあります。

一方でクラウド型は初期導入が容易で常に最新版が使える利点があります。自社の予算や方針に合わせて最適な形態を選びましょう。また、ツールのカスタマイズ性や拡張性も重要な基準です。運用が長期化すると組織や業務フローの変化に伴い、当初不要だった機能が必要になることもあります。その際に柔軟に機能追加・拡張ができるツールだと、環境の変化に合わせて使い続けることができます。

オプション機能が充実しているか、API連携などで機能拡張が可能か、といった点もチェックしましょう。さらに、ツール提供元のサポート体制も見逃せません。導入後の問い合わせ対応や不具合時のサポートが手厚いかどうか、事前に評判を確認するのがおすすめです。

可能であれば無料トライアル期間が設けられているツールを選び、実際に操作感を試してみるとよいでしょう。無料お試し期間中に自社の業務にマッチするか評価すれば、導入後に「思ったものと違う」というリスクを下げられます。

このように、提供形態・拡張性・サポートといった観点から、ツールの将来にわたる使いやすさを見定めることが、後悔しない製品選定のポイントです。

ヘルプデスクツールおすすめ5選

顧客対応や社内ITサポートを効率化し、サービス品質を向上させるためにも、自社の用途に合ったヘルプデスクツールを選びましょう。ツールごとの対象用途や主な機能を比較し、最適なヘルプデスクソリューション選びの参考にしてください。

Zendesk(ゼンデスク)

対象用途

主にカスタマーサポート向けの万能ヘルプデスクです。顧客対応はもちろん、社内ITサポートにも応用可能で、企業規模や業界を問わず導入されています。顧客体験(CX)と従業員体験(EX)双方の向上を目指した設計で、外部顧客対応から社内問い合わせ管理まで幅広く活用できます。

主な機能

オムニチャネル対応のチケット管理を特長とし、メール・チャット・音声通話・SNSなど複数チャネルの問い合わせを一元管理できます。直感的なエージェント用ワークスペースで顧客の問い合わせ履歴を統合表示し、迅速な対応を支援します。また、ナレッジベースやコミュニティ機能、1,500以上の外部アプリ連携、ワークフロー自動化、AI搭載のチャットボットなど豊富な機能拡張が可能です。

SLA(サービス水準契約)管理やレポーティング分析機能も備え、大規模なサポート運用にも耐えうる柔軟性があります。

料金プラン

無料プランはありません(14日間の無料トライアルあり)。有料プランはエージェント1人あたり月額約2,500円からと比較的リーズナブルな価格から利用できます。基本的なチケットシステム機能を提供する「Support Team」プランやより高度な機能を備えた「Support Professional」プランがあります。

複数チャネル対応の包括的なZendesk Suiteプランも提供されており、より充実した機能を求める場合はSuite版(月額約8,000円~)の検討もおすすめです。

Freshdesk(フレッシュデスク)

対象用途

中小企業からエンタープライズまで幅広いカスタマーサポートに適したクラウド型ヘルプデスクです。シンプルな操作性と手厚い機能で、メールやチャット中心の小規模サポートチームから複数拠点の大規模コールセンターまで対応できます。顧客からの問い合わせ管理を効率化し、対応漏れや重複対応を防ぐ仕組みが整っています。

主な機能

共有メールボックス型のチケット管理により、チーム全員で顧客対応状況を把握できます。マルチチャネル対応でメール、ライブチャット、電話、SNSなどあらゆる問い合わせ窓口を一元管理可能です。また、AIを活用した自動返信やチケット分類機能により対応速度と正確さを向上させることができます。

ナレッジベース作成、SLA管理、レポート・分析機能、顧客満足度調査(CSAT)などサポート業務を支援する機能も豊富です。必要に応じてWhatsApp連携やチャットボット(Freddy AI)などの拡張も可能です。

料金プラン

料金プラン: 無料プランあり(Freeプランはエージェント数無制限で基本的なメール問い合わせ管理等が利用可能)。有料版は1ユーザーあたり月額約2,000円から利用でき、年払い契約で割引があります。小規模チーム向けの「Growth」プランが月額約2,000円から、標準的な機能を備えた「Pro」プランは約6,500円、高度な機能を含む「Enterprise」プランは約10,500円となっています。

無料プランから開始して必要に応じ上位プランへ拡張することも容易です。

※価格はいずれも1ユーザーあたり・月額(年契約時)で、2025年情報。

Jira Service Management(ジラ・サービスマネジメント)

対象用途

社内ITサポートやITサービス管理(ITSM)に特化したヘルプデスクツールです。開発ツールで有名なAtlassian社が提供しており、ITヘルプデスクや社内問い合わせ対応、システム障害対応などに強みを持ちます。もちろん外部向けのカスタマーサポートにも利用可能ですが、特にIT部門が社内のリクエストを捌くサービスデスク用途で導入する企業が多いです。

開発チームとの連携も容易なため、DevOpsや社内の課題管理と統合したサポート体制を構築できます。

主な機能

ITIL準拠のインシデント管理・問題管理・変更管理・サービス要求管理など、ITサービスマネジメントに必要な機能を網羅しています。メールやWebポータル、チャット経由の問い合わせを一元管理し、ワークフローエンジンによる承認プロセスやエスカレーションの自動化が可能です。Jiraプラットフォーム上に構築されているため、ソフトウェア開発で使われるJiraやConfluence(ナレッジ管理)との統合に優れ、社内ITと開発部門が連携して課題解決に当たれます。

また、サービスカタログ機能や資産管理(CMDB)機能もあり、社内のハードウェア・ソフトウェア管理にも活用できます。レポート機能ではチケット対応時間や稼働状況を分析でき、継続的なサービス改善に役立ちます。

料金プラン

永続無料プランあり(最大3名のエージェントまで無料)。無料版でも問い合わせ管理や基本的なITSM機能を利用できますが、SLAや監査ログなど一部機能は有料版のみです。有料プランはStandardがエージェント1人あたり月額約2,380円、Premiumが約5,350円です(1~15名の場合の参考価格)。

Standardプランで日本語サポートや250GBストレージが含まれ、Premiumプランでは99.9%の稼働保証や無制限ストレージが付属します。なお、無料トライアルはStandardが7日間、Premiumは30日間提供されます。

Zoho Desk(ゾーホーデスク)

対象用途

中小企業~中堅企業の顧客サポートに適したコストパフォーマンスの高いヘルプデスクツールです。低価格ながら機能が充実しており、メール・電話・チャット・SNSといった複数チャネルからの問い合わせ対応を一元化したい企業に向いています。BtoC/BtoB問わず幅広い業種で利用されており、特に費用を抑えつつもしっかりとしたサポート体制を構築したい企業に支持されています。

初期費用ゼロで開始でき、必要に応じて柔軟にプランアップグレード可能な点も魅力です。

主な機能

オムニチャネルサポートを提供し、顧客からの問い合わせを単一のダッシュボードで管理できます。メールやWebフォーム経由の問い合わせ対応はもちろん、チャットやSNS連携も可能で、問い合わせをステータスや優先度に応じて自動分類・エスカレーションするチケットシステムを備えます。また、AIアシスタント「Zia」による自動応答・分類機能も特徴的で、問い合わせ内容と言語から顧客の感情を分析し、適切な担当者への自動ルーティングやタグ付けを行ってくれます。

ナレッジベースとコミュニティフォーラムの構築機能、顧客満足度調査、レポート分析、SLA管理、マルチブランド対応(ブランドごとに別ポータル設定)など、上位プランでは高度なサポート運用も実現できます。

料金プラン

無料プランあり(エージェント3名まで)。無料版でもメール問い合わせ管理やナレッジベース構築など必要最低限の機能が利用できます。有料プランはスタンダードが1ユーザー月額1,680円、プロフェッショナルが月額2,760円、エンタープライズが月額4,800円と低価格に設定されています。

15日間の無料トライアルも提供されています。基本機能で十分なら無料プラン、より多機能が必要ならスタンダード以上と、段階的に選べるのも便利です。高機能を必要としない中小規模のカスタマーサポートには有力な選択肢と言えるでしょう。

Salesforce Service Cloud(セールスフォース・サービスクラウド)

対象用途

エンタープライズ企業のカスタマーサポートに最適な統合型プラットフォームです。CRM大手のSalesforceが提供する顧客サービス向けクラウドで、営業・マーケティング情報と連携した高度なサポートを実現できます。主にBtoB企業やコールセンターでの導入実績が豊富で、大量の顧客問い合わせや複雑なケース管理を行う組織に向いています。

顧客ごとの契約情報や過去の商談履歴と紐づけたサポートが可能なため、サポートと営業を一体化したカスタマーサクセスを推進できます。

主な機能

あらゆるチャネルを統合したサービスコンソールにより、オペレーターは単一の画面で電話・メール・チャット・SNSなど全チャネルからの問い合わせに迅速かつ適切に対応できます。AIによる自動回答支援を活用して担当者の対応時間を短縮しつつ、ケースの優先度付けや次のアクション提案を行うことも可能です。また、Salesforceの他製品(営業支援やフィールドサービス等)と組み合わせてニーズに合わせたカスタムソリューションを構築できる柔軟性も備えています。

機能としてはケース管理、ナレッジベース、チャットボット、IVR電話自動応答、顧客コミュニティ、フィールドサービス連携、ワークフロー自動化、Slack連携による社内エスカレーションなど多岐にわたります。充実したレポート/ダッシュボード機能やAI予測による顧客満足度スコアリングなど、エンタープライズ向けならではの高度な機能が揃っています。

料金プラン

無料プランはありませんが、30日間の無料トライアルが用意されています。有料ライセンスはエディション(機能パッケージ)ごとのユーザー単位課金です。エントリー向けのStarterエディションがユーザーあたり月額3,000円、標準的なProfessionalエディションが月額9,600円、高度な機能を備えたEnterpriseエディションが月額19,800円、最上位のUnlimitedエディションは月額39,600円となっています。

さらにAI・データ分析機能を強化した「Unlimited+ (Einstein 1 Service)」が月額60,000円と設定されています。高額ではありますが、顧客規模の大きい企業や高度なサポート運用が必要な組織にとっては、それに見合う統合力と拡張性を備えたソリューションです。CRM一体型のプラットフォームであることから、営業・マーケ部門とサービス部門を横断したデータ活用が可能になる点も付加価値と言えるでしょう。

ヘルプデスクツール導入時の注意点

ヘルプデスクツールの導入を成功させるには、ツールを購入・設定するだけでは不十分です。現場への浸透や運用定着まで見据えた計画と準備が必要で、いくつか注意すべきポイントがあります。ここでは、ヘルプデスクツール導入時に押さえておきたい注意点を解説します。

充分な研修と運用フローを整備する

ヘルプデスクツールを導入する際は、担当スタッフへの研修を徹底することが重要です。便利な機能が数多く搭載されていても、オペレーターがそれらを正しく理解し使いこなせなければ意味がありません。いくら優れたツールでも、使い手が機能を活用できなければ宝の持ち腐れとなり、無駄な投資に終わってしまう可能性があります。

そうした事態を避けるため、導入時にはツールの操作方法や運用ルールについてしっかりとした初期研修を行いましょう。問い合わせ対応の流れをツール上でどう処理するか手順書を作成し、全員に共有します。加えて、役割分担(一次対応は誰が行い、エスカレーションはどうするか等)やチケットのステータス管理ルールなど、運用フローを標準化しておくことも大切です。標準的な業務フローを確立して全スタッフに周知し、必要に応じてロールプレイング研修を実施することで、対応品質のばらつきを抑えることができます。

このように、ツール導入前後の充分な教育と運用設計によって、現場にスムーズに定着させることが成功の鍵となります。

導入後の継続的なメンテナンスと更新を行う

ヘルプデスクツールは導入して終わりではありません。むしろ導入後こそ、運用状況を見ながら設定やコンテンツの見直しを行っていく必要があります。問い合わせの傾向は時と共に変化するため、ツールに登録したテンプレート回答やFAQも定期的に更新しなければ、現状に合わない情報になってしまいます。

新たに追加された機能があれば確認して活用し、ツール自体のアップデートも適宜適用していきましょう。また、万が一ツールの不具合やトラブルでシステムが止まってしまうと、問い合わせ対応が滞り重大な影響を及ぼす可能性があります。そのため、導入後の保守・メンテナンス体制を怠らないことが肝心です。

ツール提供ベンダーからのサポート情報をチェックし、必要に応じて問い合わせやアップデート対応ができるよう内部でも管理者を置くと安心です。さらに、問い合わせデータのバックアップやエクスポート方法も把握しておき、万一の障害時に備えると良いでしょう。

以上のように、常にツールを最新かつ最適な状態に保つ意識を持つことが、長期的な運用では欠かせません。

運用上の工夫をツール任せにしない

ヘルプデスクツールを導入すれば業務効率化が期待できますが、全てをツール任せにするのではなく運用上の工夫も並行して行うことが大切です。どんな問い合わせにもオペレーターが回答していると、ツールを使っても業務量が思ったほど減らないケースがあります。そこで、顧客や社員が自己解決できる環境を整えることも検討しましょう。

WebサイトにFAQページを用意してよくある質問と回答を掲載し、問い合わせ前に参照してもらうよう促す方法があります。同じ内容の問い合わせが何度も寄せられる状況を避けるには、有用な情報を公開しセルフサービスを促進することが有効です。また、チャットボットを導入できる場合は、営業時間外の自動応答や簡易な質問への即時回答を実現でき、オペレーターの負担軽減につながります。

このように、ツール導入後も業務プロセスの改善策を継続して講じることで、ヘルプデスクツールの効果を最大限に引き出すことができます。システムに頼るだけでなく、人員配置の見直しや情報発信の強化なども合わせて行い、総合的にサポート体制を向上させましょう。

まとめ

ヘルプデスクツールは、問い合わせ管理システムにとどまらず、業務効率化や顧客満足度の向上を実現するために重要なツールです。対応履歴やナレッジを一元管理することで、属人化を防ぎ、誰でも一定品質のサポートを提供できるようになります。自社に合ったツールを選ぶためには、業務フローや問い合わせチャネル、必要な機能、現場での使いやすさなどを多角的に検討することが欠かせません。

まずは無料トライアルなどを活用し、現場でのフィット感を確かめることが成功の第一歩です。ヘルプデスク業務の質を高めるためにも、最適なツールの導入を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。


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