- 更新日 : 2024年7月3日
ナレッジとは?意味やビジネスでの使い方・重要な理由を解説
ビジネスにおけるナレッジとは、「付加価値のある知識・経験」や「事例」を指す言葉です。ナレッジを活用する「ナレッジマネジメント」を徹底することで、生産性や顧客満足度の向上につなげることができます。本記事では、ナレッジの意味やビジネスでの使い方、ナレッジマネジメントが重要な理由について解説します。
目次
ナレッジとは?
ナレッジとは、「知識」や「知見」を示す「knowledge」を日本語読みした言葉です。一般的には書籍などのテキストベースの資料から得られる「知識」を指しますが、ビジネスにおいては「付加価値のある知識・経験」や「事例」などの意味で使われることもあります。
ビジネスシーンにおけるナレッジについては、「ビジネスシーンでのナレッジの使い方」で後述します。
ナレッジとノウハウ、スキルとの違い
前述のように、ナレッジとは「知識」を意味する言葉です。このナレッジと似た言葉にノウハウとスキルがありますが、これらはそれぞれ異なる意味を持っています。
ノウハウは実体験から得る知識や情報であり、スキルは体験や訓練によって獲得した技術を指す言葉です。ここでは、ナレッジとノウハウ、スキルの違いを詳しく解説します。
ノウハウとの違い
ナレッジと同じく、ノウハウも「知識」という意味を持つ言葉です。しかし、ナレッジは蓄積された過去の知識が含まれるのに対し、ノウハウは、特定のタスクを実行するための「実体験に基づく知識や情報」を意味するのが一般的です。
そもそもノウハウとは、「方法を知る」という言葉が語源になっていることを知ると、実体験から来る知識や情報であるという点をイメージしやすいでしょう。
例えば、職人の手仕事を実際に教えてもらいながら学んだ知識は、テキストなどを通じて獲得することが難しい知識であることからノウハウと表現できます。ノウハウは実体験を通して獲得する必要があるため、ナレッジよりも範囲が限定的になりやすいという特徴があります。以上のことから、ナレッジは「知っている」、ノウハウは「どのように行うかを知っている」と表現できます。
スキルとの違い
スキルとは、「技術」や「技能」を表す英単語の「skill」から来ている言葉です。スキルは実体験や訓練によって獲得した特定のタスクを実行するための具体的な技術・能力のことを指しており、ナレッジのようにテキストを読むだけで獲得できる知識とは異なります。
例えば、「プログラミングの知識」は、プログラミングの基本的な考え方やプログラミング言語の特徴など、テキストを読むだけでも獲得できる知識であることから、ナレッジに分類されます。
一方、「プログラミングのスキル」は、実際にプログラミングを行い、コードを記述して動作するプログラムを制作することによって獲得した知識・技術のことを指します。これがスキルと呼ばれるものです。ナレッジの「知っている」という意味に対し、スキルは「実際に行うことができる」と表現できるでしょう。
ビジネスシーンでのナレッジの使い方
ビジネスシーンにおけるナレッジは、単に「知識」という意味で使われることはそれほど多くなく、「事例」や「付加価値のある情報」などの意味合いで使われることが多いといえます。
過去に実施した施策から得た知見や経験、技術などをナレッジとして蓄積し、企業や従業員の成長につなげたり、現場の生産性向上に役立てたりすることが可能です。
例えば、ある企業に「工場の生産性向上ナレッジ」というナレッジが蓄積されていたとします。この場合のナレッジとは、過去に工場の生産性を高めるために実施した施策で特に効果があったものや、生産性向上のための具体的なスキル・技術などをまとめた資料を指しています。
このようにさまざまなナレッジを蓄積していくことで、日々の業務をより効率的にこなし、コスト削減にもつなげることができます。
ビジネスでよく使われるナレッジの関連語
ビジネスでよく使われるナレッジの関連語に、ナレッジマネジメントやナレッジベース、ナレッジワーカーなどがあります。それぞれの違いを押さえておくことで、ビジネスにナレッジを活用する際に混同せず、スムーズに施策を展開することが可能になります。
ここでは、3つの関連語について詳しく解説します。
ナレッジマネジメント
ナレッジマネジメントとは、組織全体でナレッジを活用する経営手法の一つです。
前述のように、ナレッジとは「知識」「事例」や「付加価値のある情報」を意味します。企業にとって有益な事例や付加価値のある情報を組織全体で共有し、経営に活かしていくことによって、生産性の向上や業務効率の改善、労働負担の軽減などを目指すのがナレッジマネジメントの目的です。
ナレッジマネジメントの代表例としては、マニュアル作成や社内ヘルプデスクに寄せられた質問のQ&A化などが挙げられます。過去に現場が獲得してきたさまざまな知識を資料としてデータベース化することで、誰でも知識を参照できるようになり、組織全体の生産性や業務効率が高まると期待できます。
ナレッジマネジメントで活用するナレッジは「暗黙知」と「形式知」という2つの知識に分類されます。暗黙知は個人の経験に由来する、言語化が困難な知識を指します。一方の形式知は、暗黙知を言語化したり、図やイラストで表現したりして、誰にでも理解できる形に落とし込んだ知識です。
ナレッジマネジメントとは、「暗黙知」を「形式知」に作り替える作業を指しているともいえるでしょう。
ナレッジベース
ナレッジベースとは、「ナレッジ+データベース」に由来する造語です。他の呼び方として「知識ベース」という言葉が使われることもあります。
ナレッジベースは、企業が自社の業務に関する知見をまとめたデータベースを指すものです。一般的には社内のみで参照される知識・技術であり、社外秘として取り扱われることが多いといえます。
ナレッジベースを構築することで、社内の従業員が誰でも自社独自の知識にアクセスできるようになり、有益な知識を簡単に活用できるようになります。長い時間をかけてさまざまなナレッジを蓄積し続けていけば、ナレッジベースの価値はさらに向上し、より高い効果を発揮します。
ナレッジワーカー
ナレッジワーカーとは、「ナレッジ+ワーカー(労働者)」から作られた言葉で、「知的生産物を作り出す労働者」という意味を持っています。
ナレッジワーカーは自身が持つさまざまな知識や技術を活用して、より付加価値の高い生産物を生み出します。例えばシステムを構築・販売するIT企業において、高いプログラミングスキルを持つナレッジワーカーは、自社の既存製品を自身のスキルによって改修し、さらに高い価値を持つ製品に作り替えることができます。
このように、自身の知識・スキルによって自社の価値をさらに高める存在を総称して、ナレッジワーカーと呼んでいます。
企業がナレッジマネジメントを重要視する理由
企業がナレッジマネジメントを重視する理由としては、仕事や業務の属人化防止や、組織全体の情報共有の効率化、業務の生産性・スキル向上などが挙げられます。また、顧客重視の観点から、顧客満足度の向上も重要な目的の一つです。
ここでは、企業が自社の知識・スキルをナレッジ化する重要性について解説します。
仕事や業務の属人化を防ぐ
ナレッジマネジメントを行うことによって、仕事や業務の属人化を防げます。ナレッジマネジメントが徹底されていない現場においては、「特定の担当者でなければ業務を処理できない」という状況が常態化していることが多々あります。このような現場では、担当者が外出や休暇などで現場を離れていると業務を処理できず、納期遅れや顧客からのクレームの要因になりかねません。また、担当者の労働負担が重くなりやすいという問題もあります。
ナレッジマネジメントを徹底することで、1人の担当者に業務を依存することなく、誰でも業務を処理することが可能です。これによって、属人化の解消につながります。
組織全体の情報共有が効率化できる
組織全体の情報共有を効率化できることも、ナレッジマネジメントの強みの一つです。組織にはさまざまな知識やスキルを持った人材が在籍していますが、個々の知識がナレッジ化されていない状態では、従業員同士がどのような知識を持っているのか、過去にどのような業務を経験したのかを知ることはできません。
例えば、ある従業員Aがプレゼン用の資料を作成するとき、過去に従業員Bが同じ題材で資料を作成したことがあったとしても、共有されていなければ従業員Aはその存在を知らず、1から新しい資料を作成する必要があります。このような状況において適切なナレッジマネジメントが行われていれば、従業員Aは従業員Bが過去に作成した資料を土台として、資料作成を効率化できます。
業務の生産性、スキルが上がる
ナレッジマネジメントは、業務の生産性やスキル向上に役立ちます。過去に組織の従業員が獲得した知識や技術を共有することで、まだその知識や技術を獲得していない他の従業員が学びやすくなってスキルが向上したり、現在の業務への取り組み方を見直して生産性を高めたりするきっかけになります。
独学で1から知識を身につけるよりも短時間で生産性を高めたり、スキルを獲得したりできるようになるため、企業としても教育コスト削減につながります。
顧客満足度が向上する
ナレッジマネジメントによって組織の生産性や従業員のスキルが向上すれば、顧客満足度も向上します。
例えば組織の属人化が解消されて顧客対応のスピードが上がると、顧客にとってはスムーズに対応してもらえていると感じられて、企業に対する評価は高まるでしょう。工場などで生産速度が上がれば、納期の短縮につながり、顧客のもとに商品が届くまでの期間が早まって満足度の向上につながります。
このように、ナレッジマネジメントによる生産性やスキルの向上は、顧客満足度の向上に直結しているのです。
ナレッジの蓄積に役立つ情報共有ツール
組織のナレッジの蓄積には、情報共有ツールを活用するのが効果的です。情報共有ツールにはさまざまなものがありますが、代表的なものとしては、ビジネスチャットやファイル共有型のツール、Web会議ツールなどが挙げられます。
ここでは、日本国内でもよく使われている5つの情報共有ツールをご紹介します。
Slack(スラック)
Slackとは、ビジネスチャット形式の情報共有ツールです。会話したいプロジェクトやチーム、部門、メンバーなどを指定して「チャンネル」を作成し、個別にテキストチャットやファイルの送受信を行えるのが特徴となっています。
デスクトップ上で通知を受信することもできるため、最新のメッセージを見逃すことなくスムーズに反応できるのもうれしいポイントです。ワークフローやSFAなど、多種多様なツールやアプリと連携できるため、組織のポータルとして使うこともできます。
Chatwork(チャットワーク)
Chatworkも、ビジネスチャット形式の情報共有ツールです。Chatworkではグループを作成して指定したメンバーをチャットに追加し、そのグループ内で自由にテキストベースの会話を行うことができます。ファイル共有やタスク管理も行えるため、社内外の気軽なやり取りに重宝します。
音声通話・ビデオ通話機能を使うとChatwork内で通話を行うこともできるため、グループ内で会議を行う用途にも利用できます。
Evernote(エバーノート)
Evernoteは、ファイル共有型の情報共有ツールです。「ノート」を作成することで任意のテキストを記述したり、ファイルを追加したりできるため、プロジェクト内の共有事項を保存しておくのに役立ちます。
複数のメンバーでファイルを共有して共同編集も可能なので、一つの資料を同時に編集する必要がある組織にもおすすめです。
インターネットに接続できればどこからでもノートを閲覧できることから、リモートワークが中心のプロジェクトなどにも効果的です。
Microsoft Teams(マイクロソフト チームズ)
Microsoft Teamsは、Microsoft社が提供する、Web会議機能を中心とした総合ビジネスツールです。プロジェクトに追加されたメンバー同士でビデオ会議を行ったり、WordなどのOfficeファイルを共同編集したり、ストレージにファイルを保存したりすることができます。
チャット機能も備わっており、複数のメンバー同士でテキストベースの会話を行ったり、1対1のプライベートなメッセージを送信したりすることも可能です。
Zoom(ズーム)
Zoomはクラウド型のWeb会議ツールで、パソコンやタブレット、スマートフォンなど、さまざまな端末から複数人がWeb会議に参加できます。ミーティングIDやパスワードを共有するだけで場所を選ばずにコミュニケーションが取れるため、リモートワークにも重宝します。
URLを共有するだけで誰でも参加可能で、録画機能も備わっているため、ナレッジとしてアーカイブを残す際にも便利です。
ナレッジマネジメントの目的を理解し、自社に合った情報共有ツールを導入しよう
ビジネスシーンにおいて「付加価値のある知識・経験」や「事例」を指すナレッジは、組織の生産性や顧客満足度の向上を図る上で重要な資料となります。
組織のさまざまなナレッジを集約して誰でも容易に活用できる体制を整えるには、情報共有ツールの導入が効果的です。ビジネスチャット形式やファイル共有形式、Web会議ツールなど多様な情報共有ツールがあるため、自社のナレッジの内容や組織体制なども考慮しながら、適したものを選定しましょう。
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