- 作成日 : 2025年4月2日
業務可視化とは?メリットや方法、事例を解説
経営のムダを省き、業務効率化を図りたいと考えている企業にとって、業務の可視化は有効な方法です。課題やボトルネックが明らかになり、従業員間のコミュニケーションがスムーズになる効果が期待できます。
この記事では、業務可視化のメリットや手順、成功させるポイントを紹介します。
業務の可視化とは
業務の可視化とは、企業や組織における業務プロセスを明確にし、理解できる状態にすることです。業務の停滞や属人化、生産性の低下に悩む企業にとっては、業務プロセスを明らかにすることで、自社やチームの課題を特定し、無駄を省く手立てを講じることができます。
業務の可視化には、通常、業務の流れや各業務の関連性を図示する手法が用いられます。例えば、フローチャートやスイムレーン図などの視覚的な表現を使うことで、自社の業務の全体像が把握しやすくなります。
業務を可視化するメリット
業務可視化の導入にはさまざまなメリットが伴います。今後のビジネス運営において重要な戦略として位置づけるために、可視化のメリットを見ていきましょう。
無駄を省き、リソースを効率的に配置することができる
業務可視化のプロセスにおいて、フローチャートやダイアグラムを用いて業務の流れを視覚化することで、どの段階で時間がかかっているのか、どのプロセスが重複しているのかを簡単に把握できます。その結果、無駄な業務や非効率な作業が特定されます。
それらを基に業務フローを整理し、必要のない会議や手続き、二重の確認プロセスを省いて最も集中させるべき場所にリソースを投下できるようになります。
経営陣や担当者は、可視化されたデータを根拠に、具体的な改善策を立案しやすくなります。
属人化を排除し、品質が向上する
属人化とは、業務が特定の社員のスキルや知識に依存する状態のことです。この状態だと、社員が退職したり、休職したりした際に業務が滞るリスクがあります。業務可視化により、業務フローや手順書を可視化することで、業務プロセスや知識が共有され、誰がどのような業務を行っているのかが明確になります。他のメンバーでも業務を引き継ぎやすくなります。
業務の各ステップで誰でも品質チェックを容易に行えるようになり、一貫性を保つことができます。例えば、サービスや製品の品質管理においては、業務の流れを可視化することにより、品質基準に対する遵守を確認しやすくなります。
コスト削減できる
業務の可視化により、時間や資源の浪費を減少させることができます。業務フローを可視化すると、重複する作業や不必要なプロセスを排除し、作業時間を短縮することができます。
さらに、業務可視化はチームのメンバー間の情報共有を促進します。コミュニケーションの効率化は誤解や認識のずれによる遅延を減らし、業務全体の生産性の向上につながります。
また、業務プロセスが明確になることで、外注先や必要な資材・備品の選定についても最適な判断ができるようになります。より良いコストパフォーマンスを実現する選択が可能になります。
内部統制が強化される
業務可視化により各担当者が自分の役割と責任を理解しやすくなると、仕事の進捗や結果に対してより責任を持つようになります。特定のプロセスで発生している遅延やエラーを可視化することで、原因を迅速に特定し、適切な対策を講じることが可能になります。
また、業務の透明性が向上するため、不正行為の防止効果も期待できます。各工程がどのように進められているかを追跡し、不適切な行動を抑止することができます。データによる可視化は、どの職務がどのような判断や行動を行ったかを示し、監査機能の強化にも役立ちます。
業務可視化の方法
業務可視化の具体的なステップを詳しく解説していきます。
現状のタスクと担当者の洗い出し
現状のタスクと担当者を洗い出すことは、業務を可視化するための第一歩です。
まずは、現在の業務で行われているタスクをリストアップしてみましょう。これには、日常的に行われるルーチンタスクやプロジェクトに関連する業務が含まれます。タスクを明確にすることで、業務全体に果たす役割を見極めることができます。
タスクを洗い出す際には、チームメンバー全員に自分の役割や日常的に行っている業務を聞いてみましょう。メンバーが意識していない業務も明らかになります。また、業務用の文書や報告書を確認し、記録に残された内容からも情報を得ることができます。
次に、それらのタスクに対して、現在の担当者は誰なのか整理します。各タスクに対して担当者の知識やスキルを確認することで、業務における得意分野やボトルネックを把握することもできます。
その後は、それらのタスクを整理し、優先順位を付けることが必要です。すべてのタスクが同じ重要度を持っているわけではなく、ビジネスの目標に対する影響度や緊急性を考慮することが求められます。優先順位を付けることで、リソースの配分や時間の使い方が最適化できます。
改善点や課題の発見
前のステップで把握した現状を基に、業務フローを分析し、どの部分で時間がかかっているのか、無駄な手間が発生しているのかを特定します。実際に業務を行っている担当者からのリアルな意見も取り入れましょう。ミーティングやヒアリングを通じて、現場の実情を正確に把握することが本質的な理解をもたらします。
実行可能な改善施策の検討
発見した課題を踏まえ、どのような改善施策が実行可能かを検討します。タスクの自動化、業務プロセスの簡略化、役割の明確化など、さまざまなアプローチが考えられます。短期的に実施できる施策と、長期的な視点での計画を分けて考えることが大切です。
改善策を立案した後は、実行可能なものにするために関係者との協議が欠かせません。関係者とは、業務を実際に運営している担当者や関連部門のスタッフです。この段階におけるコミュニケーションが、スムーズなフローの構築につながります。
計画の実施とモニタリング
計画を実行に移し、業務の可視化が効果的に機能しているかを確認し、必要に応じて調整を行います。
まず、測定可能な目標を設定し、アクションプランを策定します。新たな業務フローや責任者をしっかりと定め、誰が何をするのかを分かりやすく周知することが大切です。
進行状況やパフォーマンスに問題が無いか、こまめに進捗会議を開催し、KPI(重要業績評価指標)を設定しながら分析を行います。業務を実施するチームメンバーからの意見や改善提案をフィードバックとして収集し、さらに必要な改善策を迅速に講じるプロセスを繰り返していきます。
業務可視化を成功させるポイント
業務可視化を成功に導くポイントを解説します。
目的を具体的に定めてチーム全員に共有する
業務可視化を行う際、最も重要なポイントは目的を明確にし、チーム全員に共有することです。目的が見えない状態では、業務の可視化は単なる作業となってしまいます。
目的は「効率化を図る」や「業務状況を把握する」といった抽象的なものではなく、「プロジェクトの進捗を明確にするため」や「ボトルネックを特定するため」といったように、具体的な成果をイメージできる形で示しましょう。次に、目的をチーム全体で共有します。フロー図やチャートを使用し、言葉だけでは伝えきれない情報を直感的に理解できるように工夫すると効果的です。同じ目標を持つことで、メンバーが自身の業務の重要性を理解し、積極的に可視化に取り組むようになります。
改善フローをマニュアル化して周知する
可視化のプロセスで業務フローが改善されたら、マニュアル化します。業務手順が標準化され、個人差によるばらつきが減少します。新しいメンバーや、異動したメンバーにもスムーズに業務を引き継ぐことができるため、業務の滞りを防ぐ効果もあります。
マニュアル化したら、周知を徹底して、これまでの可視化のプロセスの効果を最大限に高めましょう。社内イントラネットに掲載する、研修を行う、ワークショップを開催するなど、さまざまな方法で従業員に情報を届けることが大切です。
マニュアル作成後、定量的な指標を用いて評価を行うことで、効果を確認し、更なる改善に向けたアプローチを検討することが求められます。
労務管理もあわせて行う
業務可視化を進める際には、従業員の業務内容を明確にすることだけでなく、業務がどのように労務に影響を与えるのかを理解する必要があります。例えば、業務量が過剰であれば残業が増え、結果的に労働環境が悪化することがあります。業務可視化によって浮かび上がった課題をすぐに労務管理に反映させることで、結果的に社員の働きやすさと生産性が向上します。
プロセスを効率化できるツールの活用
業務を可視化するためにはさまざまな種類のツールが利用できます。例えば、タスク管理ツールやプロジェクト管理ツールを使用することで、進行状況を一目で把握できるようになります。また、チャートツールも業務の重複や無駄な工程の削減に効果的です。
各種ツールのチャット機能やコメント機能により、チーム間のコミュニケーションが円滑になることもあります。チームの特性や業務内容に合わせて最適なツールを選ぶことで、より効果的な業務可視化が実現します。
業務可視化に活用できるツール
業務可視化を効果的に進めるには、実用的なツールを選ぶことが重要です。タスク管理、情報共有、プロジェクト進行の透明化を実現するサービスを導入することで、業務の流れを把握し、効率化を促進できます。
ここでは、業務可視化に役立つ主要なツールの特徴や活用シーンを紹介します。
Notion
Notionは、メモ、ドキュメント管理、タスク管理、データベース機能を兼ね備えたオールインワンの業務可視化ツールです。カスタマイズ可能なダッシュボードを活用し、業務の進捗状況やタスクの担当者、プロジェクト全体の流れを視覚的に把握できます。
チーム全体でリアルタイム編集が可能なため、特定の人に依存せず、誰でも作業の経緯や最新情報を確認しやすくなります。また、最新のAIアシスタント機能により、ドキュメント作成やタスク管理の効率も向上しており、タスク管理と情報共有を一元化したい企業におすすめです。
Backlog
Backlogは、プロジェクト管理に特化したツールです。タスクの進捗状況をガントチャートやカンバン形式で視覚的に把握でき、ソフトウェア開発やデザイン業務など複数タスクが並行するプロジェクトで真価を発揮します。充実した課題管理機能により、バグトラッキングや仕様変更の履歴を簡単に追跡可能です。
さらに、Backlogには課題ごとのコメント機能があり、チーム内のコミュニケーションを円滑にします。特にタスク管理の強化を目指す企業にとって、理想的な選択肢といえるでしょう。
Asana
Asanaは、プロジェクト管理とチームコラボレーションをスムーズに実現するツールです。タスクをリスト、ボード、タイムラインなどさまざまな形式で整理でき、進捗状況を一目で把握できます。また、便利な自動化機能によって、繰り返し発生するタスクも効率よく処理できる点も特徴です。
さらに多数のツールとの連携にも対応しており、既存のワークフローへのシームレスな統合を実現しています。プロジェクト全体の可視化と業務フローの最適化を目指す企業にとって、効果的なサービスといえるでしょう。
Stock
Stockは、ITの専門知識がない企業向けに最適化された情報共有ツールで、ドキュメントや議事録、マニュアルをストックする用途に適しています。シンプルなUIで直感的に操作でき、情報が埋もれにくい設計です。タスク管理よりも、ナレッジ共有や文書管理を中心に業務可視化を行いたい企業におすすめです。情報共有の属人化を防ぎたい中小企業にも向いており、日本企業の業務スタイルに合わせた機能が充実しています。
Confluence
Confluenceは、ドキュメント管理やナレッジ共有に強みを持つツールで、チームでのコラボレーションを促進します。Jiraとの連携により、アジャイル開発やプロジェクト管理とも相性が良く、エンジニアリングチームを中心に幅広く利用されている特徴の一つです。SlackやGoogleドライブなどの外部ツールとの連携が可能で、より柔軟な業務の運用が可能です。業務マニュアルやプロジェクトの進捗を一元管理したい企業に適しており、直感的なページ構造を活かし、必要な情報を自由に整理できます。
業務可視化の事例
業務可視化は、業界や職種によって適用方法が異なります。ここでは、「営業活動」と「製品開発」の2つの具体的な業務を例に、可視化の効果を紹介します。
営業活動における業務可視化の事例
例えば、営業担当ごとにアプローチ方法が異なり、成約率にばらつきがある場合、どの手法が効果的なのかを正確に把握するのは容易ではありません。
そこで、CRMを導入して商談の進捗や顧客対応履歴を一元管理することで、データに基づいた営業活動が実現できます。成約率の高い営業担当者の成功パターンを分析し、効果的な営業プロセスを構築すれば、チーム全体の成果向上につながるでしょう。
その結果、成約率が向上するだけでなく、経験や勘に頼らない営業手法が確立され、新人の育成や営業力の底上げにも貢献します。
製品開発における業務可視化の事例
開発プロセスが部門ごとに分断され、情報共有が不十分なために納期遅延が発生している場合、どこに課題があるのかを特定するのは容易ではありません。
そこで、業務可視化のツールやシステムを導入し、ガントチャートを活用して開発の進捗状況を可視化していきます。これによって、各工程の担当者と期限が明確になり、タスクの遅れを早期に発見できる体制が整います。部門間の連携は強化され、開発スピードも向上し、最終的には、納期の遵守率が改善され、プロジェクト全体の管理精度の向上にもつながっていきます。
まとめ
業務可視化は、労力が必要なプロセスですが、効果的に実施すれば成長戦略となります。課題の把握、改善フローのマニュアル化、労務管理との統合などのプロセスを丁寧に実施すれば、組織全体の効率が高まります。本記事で紹介したポイントを意識して、持続的な成長を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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