• 作成日 : 2022年10月26日

内部統制におけるアサーションとは?構成要素6つを具体例とともに説明

内部統制におけるアサーションとは?構成要素6つを具体例とともに説明

近年のコンプライアンスや法令の遵守することに対する企業を見る世間の目は厳しくなってきています。この風潮に対応するためのひとつの方法として、企業は内部統制を構築することが推奨されています。その中でも特にアサーションの存在が無視できません。

本記事では、内部統制の目的や基本的要素についてと財務諸表などの正しさを構成する要素である内部統制におけるアサーションについて解説します。内部統制について知識を深めたいと考えている経営者や内部統制担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

そもそも内部統制とは

内部統制におけるアサーションとは?構成要素6つを具体例とともに説明

内部統制とは、金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」によると、次のように記されています。

内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される。

引用:金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)

企業が経営目的や事業目的を達成するためには、必要なルールを制定してしくみを整備しなければなりません。また、運用において法令やルールが守られているのかを監視して不祥事を防ぐことも重要です。

目的

内部統制の目的は次の4つが記されています。

  • 業務の有効性及び効率性
  • 財務報告の信頼性
  • 事業活動に関わる法令等の遵守
  • 資産の保全
  • 4点についてそれぞれ解説します。

  • 業務の有効性および効率性
  • 事業活動の目的の達成のためには、業務の有効性および効率性を高める必要があります。企業の業務を無駄なく正確に行うことは内部統制が必要とされる目的のひとつであるからです。非効率な業務は時間およびコストを発生させ、企業経営を悪化させる要因となります。

    実際に業務に携わっている当事者にとって気づきにくいため、 業務の有効性および効率性を確保するには、内部統制により客観的に検証する視点が必要です。

  • 財務報告の信頼性
  • 財務報告の信頼性は、内部統制において重要な目的です。財務諸表は、企業の経営状況を判断するうえで重要な資料であります。財務諸表が粉飾決算など虚偽の記載を行うと、投資家や銀行は判断を誤り、信用の失墜を招きます。正しい財務報告が証明できると、投資家や銀行から信頼されます。資金調達が可能となるでしょう。信頼が担保できるよう財務報告は正確に行わなければなりません。

  • 事業活動に関わる法令などの遵守
  • 企業は事業活動によって利益を得ますが、法令を逸脱しての事業活動は不祥事にもつながります。最終的に企業の信用は落ち、やがて淘汰されるでしょう。事業を行ううえで法令遵守は企業が存続するために必要です。コンプライアンスが軽視されないよう企業内で法令遵守のルールを確立することも、内部統制の大事な目的であるといえるでしょう。

  • 資産の保全
  • 企業は資産を運用し事業活動を行って利益を得ます。つまり、事業運営を行うためには、企業は資産の保全が不可欠であり、同時に資産の保全は内部統制の目的です。資産の保全が不適切であれば、資産に不足が生じる場合があります。利害関係者に損害を及ぼし、結果として企業は信用を失うことにつながるでしょう。企業は資産管理に透明性を持たせることで、企業は資産を効率良く運用することが可能となり、健全な事業運営が見込まれます。

    基本的要素

    内部統制の基本的要素は次の6つが明記されています。

  • 統制環境
  • リスクの評価と対応
  • 統制活動
  • 情報と伝達
  • モニタリング(監視活動)
  • IT(情報技術)への対応
  • これら6点を詳しく見ていきましょう。

  • 統制環境
  • 統制環境とは、組織の気風を決定し、組織の人々にたいして統制の意識に影響を与え、内部統制のほかの要素の基礎となすともに規律や構造を提供するものです。統制環境の意識づけがされていない、あるいは統制環境が機能していないとほかの5つの要素は浸透していきません。どれだけ優れた社内規則を作っても、遵守意識が低いと内部統制の機能は果たせない恐れがあります。

  • リスクの評価と対応
  • 経営目標の達成を阻害する要因となるものをリスクとして識別し、識別されたリスクが企業に及ぼす影響を識別、分析、評価して企業内で共有し、分析して得た結果をもとにリスクに対しどのように対応し検討すべきかについて企業は策を講じておくことがリスクの評価と対応です。

  • 統制活動
  • 統制活動とは、経営者の方針に則った指示や命令を指示通りに各部門の担当者が業務遂行を行うことです。統制活動には、マニュアル作成や整備、権限や職責の付与、職務の配分などが網羅されています。業務を分担することで従業員間での業務における相互の監視、けん制機能が働きます。

  • 情報と伝達
  • 企業の中には様々な情報が出てきますが、まず、その中で真実かつ公正な情報を特定し組織の中で必要なものと認識した場合は情報を加工し、処理伝達できるようにします。情報は会社内外に適切に伝わるようにする必要があります。これが情報と伝達です。

  • モニタリング
  • 内部統制が目的通りに的確かつ有効に遂行されているのかをチェックする点でモニタリングはとても重要です。モニタリングには2つの手法があり、部門ごとで責任者クラスが検証や評価するモニタリングと、外部の監査部門が第三者的な視点よりチェックするモニタリングとがあります。

  • ITへの対応
  • 内部統制の目的を達成するには、ITの対応は不可欠です。実際にITが適切に使用されているのかチェックする必要があります。チェックには2つの要素があり、IT活用により業務の効率化が図れているのか、もう一つは、ITを間違いなく運用されているかです。IT導入しても間違った運用では事業運営に大きな損失を与えかねません。

    ここまで解説した4つの目的と6つの要素については、以下の記事で詳しく解説しています。

    内部統制とは?4つの目的や6つの基本的要素を分かりやすく解説

    内部統制におけるアサーションとは

    内部統制におけるアサーションとは?構成要素6つを具体例とともに説明

    アサーション(assertion)は日本語に訳すると「主張」です。しかし、内部統制におけるアサーションの意味とは異なります。内部統制においてはアサーションを「経営者の主張」と訳される場合があります。かつて公認会計士協会においてアサーションを「経営者の主張」と訳していたために浸透したとされていますが、はっきりしたことはわかりません。

    内部統制におけるアサーションとは、財務諸表などの正しさを構成する要素のことを指します。内部統制を構築するとき、リスクの存在する業務に対し不正を防ぐためにリスクにどう向き合い、業務に対して不正を防ぐための活動を組み込む必要があります。統制活動をどのような狙いで正しさを確保するのかを示すのがアサーションです。

    コミュニケーションスキルのアサーションとは異なる

    「アサーション」という言葉はコミュニケーションスキルのひとつとして使われることがあります。コミュニケーションスキルのアサーションとは、穏やかな口調で相手の考えを否定せずまた攻撃的にならず、お互いの意思を尊重しながら自分の意見や考えを述べる手法です。

    もちろん、内部統制における意味ではありません。財務諸表などの正しさを構成する要素としての意味を持つ内部統制におけるアサーションとは、指すものも意味も異なるため注意してください。

    内部統制のアサーションを構成する要素6つ

    内部統制におけるアサーションとは?構成要素6つを具体例とともに説明

    内部統制におけるアサーションを構成する要素は6つあります。それが以下の要素です。

  • 実在性
  • 網羅性
  • 権利と義務の帰属
  • 評価の妥当性
  • 期間配分の適切性
  • 表示の妥当性
  • ここでは、6つの要素となるものを詳しく説明します。

    実在性

    実在性とは、資産や負債が実際に存在すること、または実際取引や会計事象が発生していることです。

    財務諸表に記載されている取引が実際に存在していることがほかの5つの要素の前提となります。現金預金において帳簿上の残高と実際の残高が一致しているのか、また製品が販売可能な状態で保存・保管されているのか、といった点です。

    網羅性

    網羅性とは計上されるべき資産や負債、取引などがもれなくすべて計上されていることをいいます。保有している資産がすべて計上されていない場合や、計上されている以上の金額の負債を保有している場合、網羅性を欠くこととなってしまいます。具体的には、期末時点で取引の事実があるにもかかわらず、未計上となっている場合がこれに該当します。仕入があるのにもかかわらず買掛金などが未計上といった場合です。

    権利と義務の帰属

    権利と義務の帰属とは、貸借対照表上に計上されている資産に対する権利や負債に対する義務が会社に帰属していることをいいます。権利関係を確認する等により、会社の権利と義務の帰属についてチェックすることが必要です。

    貸借対照表上で計上している商品が自社倉庫にはあるものの、所有者は見ただけではわからない場合です。実際にだれが所有している資産であるのか確認の必要があります。

    評価の妥当性

    評価の妥当性とは、資産および負債を適正な価格で計上しているのかという点です。将来の対価および負担に見合った金額を計上しなければなりません。

    具体例として、期末時の商品で、商品が摩耗していたり劣化していたりする場合は棚卸資産の金額をへらす必要があることもあります。市場性のある有価証券においては、時価基準による評価に変動があった場合再評価を行い適切に計上しなければなりません。

    期間配分の適切性

    期間配分の適切性とは取引や会計事象が正しい会計期間で計上されているか、あるいは収益や費用が適切な期間で計上しているかということを指します。期間外の会計事象は記載しないことが原則です。例えば、減価償却のように固定資産の金額において、取得費用から耐用年数や償却方法に応じて減額する必要があります。

    表示の妥当性

    表示の妥当性とは、資産や負債をはじめとする財務諸表の表示が適切な項目に表記されているのかということをいいます。例を挙げると1年以内に完済される借入金において、固定負債でなく流動負債に分類されているのかという事例は表示の妥当性にあたります。

    まとめ

    内部統制において4つの目的が達成されなければなりません。それには構成される6つの基本的要素を遂行することが必要です。また内部統制にはアサーションという、財務諸表などの正しさを構成する6つの要素( 実在性、網羅性、権利と義務の帰属、評価の妥当性、期間配分の適切性、表示の妥当性)があり、要素が多く複雑である点に注意しましょう。

    内部統制を構築するとき、リスクにどう向き合い、リスクが存在する業務は何なのかを明確にしておくことをおすすめします。内部統制を構築する以上、業務をしっかりと「見える化」しておくことが重要です。

    よくある質問

    内部統制におけるアサーションとは?

    内部統制におけるアサーションとは、財務諸表などの正しさを構成する要素のことを指します。内部統制を構築するとき、リスクにどう向き合い、不正を防ぐための活動を組み込み、統制活動をどのような狙いで正しさを確保するのかを示すのがアサーションです。

    アサーションを構成する要素は?

    アサーションを構成する要素として6つの要素があります。

  • 実在性
  • 実在性とは、資産や負債が実際に存在すること、または実際取引や会計事象が発生していることです。
  • 網羅性
  • 網羅性とは計上されるべき資産や負債、取引などがもれなくすべて計上されていることをいいます。
  • 権利と義務の帰属
  • 権利と義務の帰属とは、貸借対照表上に計上されている資産に対する権利や負債に対する義務が会社に帰属していることです。
  • 評価の妥当性
  • 評価の妥当性とは、資産および負債を適正な価格で計上しているのかという点です。将来の対価および負担に見合った金額を計上する必要があります。
  • 期間配分の適切性
  • 期間配分の適切性とは取引や会計事象が正しい会計期間で計上されているか、あるいは収益や費用が適切な期間で計上しているかということを指します。期間外の会計事象は記載しないことが原則です。
  • 表示の妥当性
  • 表示の妥当性とは、資産や負債をはじめとする財務諸表の表示が適切な項目に表記されているのかということをいいます。


    ※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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    内部統制を構築する5ステップを解説

    監修:中川崇

    田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。