• 作成日 : 2024年3月29日

コーポレートファイナンスとは?企業価値の指標や算出方法、資金調達方法を解説

企業価値を向上させるためには、適切な資金調達を行い、事業に投資して成長していくことが極めて重要です。
「コーポレートファイナンス」は、これらをはじめ企業価値の最大化に向けて必要な手法や理論を組み合わせた活動です。
今回はこのコーポレートファイナンスに関する基本的な知識、メリット・デメリット、そして企業価値評価の方法や資金調達方法ついても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

コーポレートファイナンスとは

コーポレートファイナンスは、企業財務または企業金融ともいわれ、企業価値を最大化するための活動のことです。
市場から資金を調達し、事業への投資を行い、調達元に資金を返済・還元するプロセスが含まれています。
狭義には金融機関や金融市場から必要な資金を調達することを指すケースもあります。

コーポレートファイナンスのメリット

企業の信用力が担保として機能するため、金融機関や投資家からの資金調達が比較的容易である点がメリットです。
この手法を用いることで、企業は投資可能な資金を増やし、業績向上を図りつつ企業価値を向上させることができます。

コーポレートファイナンスのデメリット

企業の信用力を担保にしているため借入可能な金額が制限されることです。
また、もしも借入をした企業が返済できなくなった場合、企業の財産が差し押さえられる可能性があります。

コーポレートファイナンスで企業価値を算出する指標や方法

この章ではコーポレートファイナンスにおいて企業価値を算出するための計算方法について解説します。

NPV

NPVは「正味現在価値」を示す指標で、投資の意思決定において重要なものです。
投資額に対して将来期待される価値を算出し、その評価がプラスであれば投資価値があるとされます。

NPVの概要を理解するためには、まずPV(現在価値)の概念が前提となります。PVは、将来のキャッシュフローの現在価値を示します。

NPVは投資額に対して期待される将来のキャッシュフローを現在価値で評価し、その数値から投資金額を差し引いて算出します。この差額がプラスであれば、投資価値があると評価されます。逆に、差額がマイナスであれば、投資価値がないと判断されます。

また、複数の投資対象がある場合には、NPVの数値が大きいほど将来的なリターンが期待できるとされます。

IRR

IRRとは、投資から生じる将来のキャッシュフローを今の価値に換算したとき、その合計が投資した額と同じになるような割引率を指します。この割引率を使うと、将来の収益を今の価値で評価できます。

投資のIRRが高い場合、それは投資が早くから利益を生む可能性が高いことを意味します。これは、時間が経つとお金の価値が変わるためです。

例えば、今10万円を投資して、将来に1万円の利益が出る場合、将来の11万円は今の価値では10万円とみなされます。
その逆も同じで、将来の10万円は、今の価値では約9.09万円とみなされます。このような考え方に基づくと、IRRが高いほど、その投資の価値があると判断されます。

DCF法

ディスカウントキャッシュフロー方式(DCF法)は企業価値を評価するための主要な手法の一つです。この手法では、企業が生み出すキャッシュフローに焦点を当てます。具体的にはフリーキャッシュフローを現在価値に割り引くことで企業価値を計算します。

上場企業の企業価値をDCF法で算出することにより、株価が企業価値と比べて過大か過小かなど、株式市場の影響を受けない企業の本質的な価値を判断することができます。

コーポレートファイナンスにおける資金調達方法

コーポレートファイナンスにおける資金調達手段は多岐にわたります。
以下に示す方法で調達した資金を有益な投資に回すことで、企業価値を拡大することが可能です。

資産の売却

不動産・有価証券・営業車など、あまり使われていない資産を売却して資金を調達する方法です。

株式の発行

株式会社の場合、株を発行して資金を調達するという手法があります。

この方法では、株主となる人からの出資を受け入れ、資金を得ることができます。
株式の発行による資金調達には、返済の義務がないという利点があり、資金の有効な運用につながります。ただし通常、株主に対して株式の保有割合に応じて配当を支払う必要があるという点には留意する必要があります。

ベンチャーキャピタル(VC)からの出資

資金調達の手段の一つとして、「ベンチャーキャピタル(VC)」からの出資の受け入れが考えられます。

ベンチャーキャピタルは、成長が期待される企業に出資を行う団体で、複数の投資家から資金を調達し、企業に投資します。この方法も株式の発行と同じく「出資」ですので、返済の必要はありません。

ただし、この手法では株式の譲渡が不可欠であり、それに伴う「経営への干渉」が生じる可能性があります。また、出資を受けるには所定の審査を通過する必要があることは留意しておくべき点です。

エンジェル投資家からの出資

エンジェル投資家は「新しく起業した企業をサポートするために投資を行う個人投資家」のことです。これは個人が投資を行う形態なので、出資額は大きくない傾向があります。
ただし、「ベンチャーキャピタル」のような厳格な審査がなく、マッチングが成立すれば知名度の低い企業でも出資が受けられる可能性があります。

エンジェル投資から受ける資金は返済の義務は発生しませんが、配当や株式のリターンを提供する必要があります。

助成金、補助金の活用

新しく事業を始める際には、国や地方公共団体からの「助成金」「補助金」を活用することもできます。

日本では、新しいビジネスを始めるときに利用できる助成金や補助金が数多く存在し、起業の際に重要なサポートとなります。これらは融資ではないため、返済の必要はありません。

ただし、審査が必要であり、確実に受給できるわけではありません。
また、これらの支援は特定の「用途」に限られている場合がありますので、利用する前にどのような目的に使えるのかを確認しておくことが重要です。

社債の発行

「社債」とは、企業が投資家から資金を借り入れる手段で、事業資金の調達に活用される方法です。社債は実質的な「借金」であり、一定の期間が経過した後には利子と元本を返済(償還)する必要があります。

社債には大規模なものから中規模のものまであり、また、投資家が49人以下の少数の人々に発行される「少人数私募債」と呼ばれるものも存在します。この少人数私募債は、企業関係者など特定の人々に向けて発行され、手続きが簡便で無担保での発行が可能です。

特に、発行金額が1億円未満の場合や中小企業にとっては、少人数私募債が最も利用しやすい社債となります。

融資を受ける

企業がコーポレートファイナンスで資金を調達する手段として、一般的には「金融機関からの融資」がよく選ばれます。

この方法では、企業の信用力が高いほど融資を受けやすくなりますが、審査が必要です。多額の資金調達が一度に可能なため、事業における設備投資などに積極的に利用されています。

ただし、融資は借りたお金を返済しなければならないため、返済義務が発生します。
また、元本に対して利息が発生するため、返済額は借りた金額よりも多くなる点に留意する必要があります。

まとめ

コーポレートファイナンスでは、適切な資金調達方法や投資判断を見つけ出すことが極めて重要です。
適正な金利で資金を調達し、収益性の高い事業やプロジェクトに投資することで、持続可能な企業活動を実現できます。
コーポレートファイナンスを巧みに活用することは、黒字を維持し続けるために欠かせない要素であるといえます。


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