• 作成日 : 2021年11月5日

上場のメリットとデメリット、上場するための条件とは?

上場というと「大手企業が多い」「株価がつく」「給料がいい」など、良いイメージを持つ人は多いでしょう。しかし、具体的に上場企業と非上場企業の違いや、そもそも上場の条件は何かと問われると、少し考えてしまう人も多いのではないでしょうか。

上場を目標にする企業は少なくありません。上場はメリットが注目されがちですが、デメリットもあります。そこでこの記事では、上場のメリットやデメリット、また上場するための条件から具体的な手続きまで解説します。上場を検討している企業の方は、方針を定める際の参考にしてください。

上場(IPO)とは?

上場とは、「株式会社が発行する株式を証券取引所で売買できるようにすること」で、新規株式公開(IPO:Initial Public Offering)と同じ意味になります。

「○○社の株価が上昇しました」というニュースが流れることがありますが、それは○○社は上場しており、証券取引所で売買されているからこそ株価が上下していることになります。なお、企業が上場するには、証券取引所に申請を行い、審査をクリアする必要があります。

上場のメリット・デメリットは? 具体例を用いて解説

華やかに見える上場には、メリットだけでなく、デメリットも存在します。両面を把握した上で、上場すべきかどうか検討することが大切です。

上場のメリット

株式を証券取引所で売買できるようにすることを「上場」といいます。では、上場すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。上場のメリットについて解説していきましょう。

資金調達力が向上する

ひとつ目のメリットは「資金調達力が向上する」こと。株式会社などは株式を発行し、投資家に株式を購入してもらうことで、資金調達を行います。株式自体は、上場・未上場に関わらず発行することは可能です。しかし、上場企業と未上場企業の違いは、株式の「買い手」にあります。

上場企業の株式→証券取引所を通じて投資家が自由に購入できる
未上場企業の株式→当事者間で企業から直接購入する必要がある

未上場企業の場合、株式を買ってくれる人を自力で見つけなければなりません。そしてその買い手からのみの企業評価によって資金調達の金額が決まります。

一方、上場企業の株式は証券取引所で売買できるため、不特定多数の人たちが市場で株式を購入します。つまり、上場すると自分で株主を探す必要がなく、市場から大きな資金を調達できるようになるため、資金調達力が向上します。

管理体制が強化・充実する

2つ目のメリットは「管理体制が強化・充実する」ことです。上場するには、証券取引所の審査に通らなければなりません。例えば、審査には「企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」という項目があります。この項目をクリアするためには、株主へ正しい財務報告を行うための内部統制の構築や、株主総会や取締役会の運用の徹底、予算と実績が乖離しないための予実管理体制などを構築していく必要があります。

このように審査を受ける過程において、必然的に社内の管理体制を強化・充実させなければなりません。その結果、上場した際には非上場のときと比べて、優良な管理体制が構築されているのです。

知名度向上による従業員のモチベーションUPと優秀な人材確保

3つ目のメリットは「知名度向上による従業員のモチベーションUPと優秀な人材確保」です。上場企業は、情報公開を広く行うため、知名度が高くなります。そうすると必然的に求職者からの認知度も高くなり、優秀で多様なスキルを持つ人材が集まりやすくなります。

また日本の全企業において厳しい審査をクリアし、上場できている企業は0.1%にも届きません。こうした「日本でも数少ない上場企業で働いている」という意識は、従業員のモチベーションアップにもつながるでしょう。

上場のデメリット

上場にはさまざまなメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。メリットだけでなく、デメリットも把握しましょう。

上場するにはコストがかかる

上場に関するコストは莫大です。上場準備~上場後まで例えば下記のようなコストがかかります。

【上場前(年間)】

  • 監査法人への支払い:500万円~2,000万円程度
  • 証券会社への支払い:200万円~500万円程度
  • 株式事務代行機関への支払い:400万円前後
  • 証券印刷会社への支払い:500万円程度
  • コンサルティング会社への支払い:500万円~1,500万円程度(必要に応じて)
  • その他管理体制を拡充するための人件費 など

【上場時】

  • 上場審査料:東証一部・二部は400万円、マザーズ・ジャスダック市場は200万円
  • 登録免除料:資本組入額×7/1,000
  • 証券会社へ成功報酬の支払い:0万円~500万円程度 など

【上場後(年間)】

  • 年間上場料:48万円~456万円(時価総額により異なる)
  • 監査法人への支払い:1000万円~2000万円程度
  • 株式事務代行機関への支払い:400万円前後
  • 証券印刷会社への支払い:500万円程度
  • 株主総会の運営費用 など

そのほかにも、上場企業には有価証券報告書などの情報の開示義務が課されるなど、開示に関わるさまざまなコストもかかってきます。

株主への対応・対策が必要になる

上場すると不特定多数の人たちが企業の株主になりますが、株主は経営方針や業務内容に関して企業に意見することができます。ただし、株主は必ずしも友好的とは限りません。株主の立場から経営や株価対策に関する注文をする、いわゆる「物言う株主」への対策も必要です。過去にはある大企業が物言う株主により、部門の分離独立を強く要求された事例もあります。このような株主に対する対応や対策といった見えないコストも上場のデメリットになります。

また、上場すると投資家に向けて有価証券報告書や、四半期報告書などの情報を適時開示することが求められます。そのための体制づくりや費用がかかることもデメリットのひとつといえるでしょう。

買収されるリスクや買収対策コストが生じる

上場すると、不特定多数の人たちが市場で株式を購入できるようになることから、買収されるリスクに常にさらされることになります。とくに企業は、経営権を奪う目的で仕掛けられる「敵対的買収」を防がなければなりません。そのためには買収防衛策を講じなければならず、その対策には多くのコストが発生します。このように上場したがために、買収のリスクやコスト、対策が必要になる状況も起こりえるのです。

上場するための条件は?

上場するためには多額の費用を用意するほか、厳しい審査に通らなければなりません。審査には以下の2つの基準・要件があります。

1.実質審査基準

企業の姿勢や体制などが上場できる基準を超えているかを審査する

2.形式要件

株主数や時価総額など具体的な数字を審査する

上記2点をクリアできれば、上場することができます。

各市場の「形式要件」について

定性的な側面もある実質審査基準に比べ、形式要件は定量的な側面からの審査です。形式要件は上場する市場によって異なります。以下、日本取引所グループが運営する市場別の形式要件の一部を確認してみましょう。

 東証一部東証二部ジャスダックマザーズ
株主数800人以上400人以上150人以上
時価総額250億円以上--
純資産の額連結資産の額が50億円以上連結純資産が黒字-
単元株式数100株となる見込みがあること

(参考)日本取引所グループ|上場審査基準

上記のほかにも、「利益の額」や「流通株式」などさまざまな要件をクリアしなければなりません。

詳しい要件については日本取引所グループ|上場審査基準をご確認ください。

上場するためにまずはやるべきこと

上記が上場のメリット・デメリットと条件について説明しました。さて、ここからは上場するためにまずはやるべきことについて説明します。やるべきことは、2つあります。

1.ショートレビューを受ける

まずは監査法人などによるショートレビューを受けましょう。ショートレビューとは、予備調査や短期調査とも呼ばれ、監査法人などが上場に向けて、企業の課題を洗い出す作業です。

ショートレビューを受けることで、会社の現状とともに上場までにすべきことや、ロードマップが見えてきます。

<ショートレビューのチェックポイント例>

  • コーポレート・ガバナンスや組織・規程の整備などの経営管理制度
  • 中期経営計画や予算、月次決算制度などの利益管理制度
  • 関連当事者などとの取引に関する考え方等

 
上場までのスケジュールを加味すると、ショートレビューは上場目標年度の3期以上前には受けておきましょう。

2.資本政策を考える

上場するにあたり、資本政策は早めに取り掛かりましょう。資本政策とは、株主構成や発行済株式数などを踏まえて、どのように資金調達をするのか、その計画のことです。

資本政策は、主幹事証券会社や会計事務所、ベンチャーキャピタルなどからサポートを受けながら立案・実行していきます。ただし、最終的な資本政策の決定は社長が行います。したがって社長は以下の項目について、よく検討しておかなければなりません。

<社長が検討すべき項目>

  • 資金調達の方法:どのような方法で誰から、いくら資金を調達するのか
  • 株式構成:誰にどの程度株式を保有してもらうのか
  • インセンティブ制度:誰にどのような方法で、いくらインセンティブを与えるのか
  • 創業者利益:創業者がどのタイミングでどれくらい株式を売却するのか
  • 事業承継:事業承継を行うための対策はどうするのか

 
資本政策は、上場予定の3年前頃より立案し、実行していきましょう。

メリット・デメリットを理解して、上場を目指すかどうか決めましょう

上場には「資金調達力が向上する」などのメリットのほか、「上場を維持するコストがかかる」などのデメリットがあることがわかりました。これらメリット・デメリットを勘案した上で、上場を目指すかどうか検討してみてください。上場は、企業を大きく飛躍させる有効な手段です。上場に向けて動き出すのであれば、まずはショートレビューを受け、資本政策を考えることから動き出してみましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
上場までの道のりガイド

監修:伊藤達也 (伊藤達也税理士事務所)

伊藤達也税理士事務所
2013年、EY新日本有限責任監査法人金融事業部に入所。証券会社、インターネットメディア事業などの法定監査だけでなくIPO支援や内部統制構築支援に従事。また、創業手帳株式会社、弁護士ドットコム株式会社にてバックオフィス全般及び資金調達業務に従事。会計、税務、内部統制にかかる業務を行う中で、直接会社にサービスを提供するコンサルティングサービスに意義を見出し、2021年事務所設立。慶應義塾大学経済学部卒。