• 更新日 : 2023年11月9日

6つの上場廃止基準をわかりやすく解説|適確性に欠けた場合の措置も紹介

6つの上場廃止基準をわかりやすく解説|適確性に欠けた場合の措置も紹介

「上場廃止」という仕組みは、投資家を保護する目的で作られました。とはいえ、上場廃止になると取引がしにくくなることはわかっていても、「どのような基準で上場廃止になるのか」については詳しく理解していない人もいるでしょう。
本記事では、上場廃止となる6つの基準を解説していきます。さらに、デメリットが注目されがちな上場廃止のメリットについても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。

上場廃止とは

6つの上場廃止基準をわかりやすく解説|適確性に欠けた場合の措置も紹介

上場廃止とは、証券取引所が取り決める基準に該当したり、上場している会社が自主的に申請したりすることで、取引所で株式等の売買が終了することです。上場廃止が決まった会社の株式は「整理銘柄」に指定されて、投資家に「上場廃止すること」を周知する期間が設けられます。そして一定期間、売買がおこなわれた後、上場廃止が実施されるのです。
上場廃止の基準は、証券取引所が定めています。日本には東京、名古屋、福岡、札幌に4つの取引所があり、各々が上場廃止の基準を設けているのです。本記事では、国内の取引金額の大半を占める東京証券取引所の基準を紹介します。

上場廃止の基準

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上場廃止の基準は、投資家を守るために東京証券取引所を傘下に含む日本取引所グループ(JPX)が定めています。上場廃止の主な基準は、以下の6つです。

  • 上場維持基準への不適合
  • 有価証券報告書の提出遅延
  • 虚偽記載又は不適正意見等
  • 特設注意市場銘柄等
  • 上場契約違反等
  • その他

上場廃止の基準①上場維持基準への不適合

上場維持基準を下回ってしまうと、上場廃止となる恐れがあります。上場維持基準は、8つの項目と3つの市場区分により、以下のように定められています。

上場維持基準東証プライム市場東証スタンダード市場東証グロース市場
株主数800人以上400人以上150人以上
流通株式数20,000単位以上2,000単位以上1,000単位以上
時価総額--上場から10年経過後40億円以上
流通株式時価総額100億円以上10億円以上5億円以上
売買代金1日平均売買代金2,000万円以上--
売買高-月平均売買高10単位以上月平均売買高10単位以上
流通株式比率35%以上25%以上25%以上
純資産の額純資産が正

出所:日本取引所グループの上場維持基準(2023年10月23日時点)

プライム市場やスタンダード市場、グロース市場のすべてで上場を維持するためには純資産が正である必要があり、債務超過になると上場維持基準に抵触し、廃止となるため注意が必要です。
上場維持基準を下回ってしまった場合、原則1年以内に基準を満たさないと上場廃止となります。基準を下回ったことが発覚した場合、3ヶ月以内に改善するための取り組みや実施計画の提出が必要です。
また、流通株式比率が35%未満(プライム市場の場合)となった場合にも上場廃止となるため、資産だけではなく、大株主の持ち分の割合にも配慮しなければなりません。

上場廃止の基準②有価証券報告書の提出遅延

有価証券報告書とは、株式を発行する上場企業が開示する書類であり、決算の状況がまとめられたものです。投資家が判断を誤らないようにするために、有価証券報告書が用いられます。有価証券報告書は、事業の年度が終了した3ヶ月以内の提出が義務付けられています。締め切りから1ヶ月経ったあとでも提出が間に合わないと遅延となり、上場廃止の基準に該当するので留意しておきましょう。

上場廃止の基準③虚偽記載又は不適正意見等

虚偽記載または不適正意見は、有価証券報告書などに重大な事実とは異なる記載があったり、監査法人による意見が表明されなかったり、財務諸表に重大な誤りがあるとして不適正である意見が表明された場合などが該当します。例えば、実際には商品を販売していないのに、売れたと偽り架空の売上を計上して、有価証券報告書の中の財務諸表に反映することなどです。

上場廃止の基準④特設注意市場銘柄等

特設注意市場銘柄に指定され、内部管理体制が改善される見込みがない判定されると、上場廃止の基準に該当します。取引所が内部管理体制を改善する必要が高いと判断した会社は、投資家に注意を促すために特設注意市場銘柄等に指定されます。取引所が重視しているのは、その会社が法律を守って事業をおこなっているか、売上や利益に偽りがないかという点です。

特設注意市場銘柄に指定されると、通常の取引銘柄とは区別されて取引が行われます。過去の例を挙げると、大手の電機会社が不適切な会計処理があったとして特設注意市場銘に指定されました。

上場廃止の基準⑤上場契約違反等

株式を上場する際に、会社と取引所がやりとりした契約や宣誓などに違反した場合、上場契約違反等に該当します。取引所が宣誓に違反し、「上場するのに適切でない」と判断すると、該当する会社は1年以内にあらためて審査を受けて、合格する必要があります。

上場廃止の基準⑥その他

他にも、以下のような上場廃止の基準があります。

  • 銀行取引の停止
  • 破産手続・再生手続・更生手続
  • 事業活動の停止
  • 不適当な合併等
  • 株主の権利の不当な制限
  • 完全子会社化
  • 反社会的勢力の関与

このように、投資家が安心して投資できるか否かに関わる事項は、上場廃止の基準に該当するのです。

上場廃止の主な原因

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上場廃止となる代表的な原因は以下の通りです。

  • 上場廃止の基準に該当
  • 親会社の傘下におさめる子会社化
  • 他の会社との合弁
  • 経営破綻
  • 自主的に上場廃止を申請

経営破綻により上場廃止になる事例は、実際は多くはありません。
2022年には78社の会社が上場廃止となっています。
ほとんどは完全子会社化や合併といった、経営破綻以外の理由になります。
自分が株式投資している会社が上場廃止となったと知れば、誰もが焦ると思いますが、決して悪い理由であるとは限りません。会社のホームページなどを確認して、上場廃止の理由を自分で調べることが重要です。

上場廃止のデメリット

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上場廃止には、3つのデメリットがあります。

・資金調達の手段が減る

株式の売買によって実現できた、多額の資金を短期に調達できる手段を失います。

・株主の信用を損なう可能性がある

整理銘柄に指定されると株価が下落して、投資家が損失を被る可能性があります。

・会社のブランドイメージに影響を与える

取引先や一般消費者に後ろ向きの印象を与えて、商品やサービスの売上に影響する恐れがあります。
上場廃止するにあたっては、事業を継続するための資金調達の目途をつけておくことが重要です。また、投資家や一般消費者が混乱しないように、上場廃止の理由を明らかにするといった配慮があるとよいでしょう。

上場廃止のメリット

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上場廃止をする会社には、デメリットだけでなく3つのメリットもあります。

・上場を維持するコストの削減につながる

株主に公開するための財務状況の整理や、監査法人への支払いといったコストを削減できます。

・経営の自由度が高まる

株主の意向を伺うことが不要になるので、迅速な経営判断ができます。

・敵対的な買収を回避できる

株式を自由に売買できなくなるので、会社の外部から経営に関与されるリスクを減らせます。
上場していると、経営者は株価を上げる目的や、株主の評価を得るために、短期的な利益を気にしなくてはなりません。しかし、上場廃止して株式を非公開にすることで、外部から会社の経営に及ばされる影響を減らすことができます。その結果、経営者は中長期的な視点で経営に打ち込むことができるのです

 

 

上場企業として適確性がないと審査された場合の措置

6つの上場廃止基準をわかりやすく解説|適確性に欠けた場合の措置も紹介
上場廃止に至らないまでも、取引所が上場企業としての適正がないと判断した会社に対しては、以下の措置が取られます。

改善報告書/改善状況報告書

投資判断をするための情報が適切な時期に開示されない、といった不備の再発防止を目的に会社が提出する書類です。

特設注意市場銘柄

内部管理体制に問題があり、改善の必要が高いと判断されて通常の銘柄とは区別されて取引される銘柄です。

公表措置

投資判断をするための情報が適切な時期に開示されない等の違反行為が世間一般に公表されることです。

上場契約違約金

社会的な信用を損なう行為をした会社に課せられる罰金です。
取引所が措置をとっても会社が応じない、または改善が見られない場合は、上場廃止の基準に該当する恐れがあります。

まとめ

取引所で株式等の売買が終了する上場廃止には、6つの基準があります。上場廃止の基準は、公益や投資家を保護する観点から定められています。上場廃止する会社にとって、中長期的な視点で経営に打ち込める点がメリットです。
実は、経営破綻が上場廃止の原因となる事例は多くありません。同業他社や、関心を持っている会社が上場廃止となったときは、なぜ上場廃止となったのか理由を探ってみると良いでしょう。
上場廃止には、悪い面だけでなく良い面もあります。それでも、自社の上場廃止を避けたいのであれば、これまで通りの健全な企業活動を維持していくようにしてください。

よくある質問

上場廃止のメリットとは?

上場廃止には3つのメリットがあります。

  • 上場を維持するコストの削減につながる
  • 経営の自由度が高まる
  • 敵対的な買収を回避できる

  • 以上のことから、経営者は中長期的な視点で経営に打ち込めるようになるといえます。

    上場廃止のデメリットとは?

    上場廃止には3つのデメリットがあります。

  • 資金調達の手段が減る
  • 株主の信用を損なう可能性がある
  • 会社のブランドイメージに影響を与える

  • 投資家や取引先などに混乱を与えないように、上場廃止の理由を開示するといった配慮があると良いでしょう。

    上場が廃止される基準には何がある?

    公益や投資家を保護する観点から6つの基準が定められています。

  • 上場維持基準への不適合
  • 有価証券報告書の提出遅延
  • 虚偽記載又は不適正意見等
  • 特設注意市場銘柄等
  • 上場契約違反等
  • その他

  • ※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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