• 更新日 : 2022年8月26日

ストックオプション発行が株価に与える影響は?導入時の注意点も説明

「東証上場会社コーポレート・ガバナンス白書2021」によると、ストックオプション制度を導入している企業は東証一部(現在のプライム市場)のうち28.6%、マザーズ(現在のグロース市場)は85.0%です。しかし、株価への影響を心配する経営者の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、ストックオプションが株価に与える影響だけでなく、ストックオプションを導入する際に知っておきたい注意点についても解説します。正しい知識を身につけてストックオプションの導入を検討していきましょう。

ストックオプションとは

ストックオプション発行が株価に与える影響は?導入時の注意点も説明

ストックオプションとは、あらかじめ決められた金額で株式を買える権利のことです。例えば、ストックオプションにて1株2,000円で購入できる権利を付与された場合、1年後に1株5,000円になったとしても1株2,000円で買えます。つまり、1株5,000円のときに買って売れば1株3,000円の利益が得られるのです。

注意したいのは、ストックオプションには期限があることです。ストックオプションで株式を購入することを権利行使と呼び、権利行使できる期間は、あらかじめ決められています。また購入できる株式数も決められており、決められた株式数を超えて権利行使することはできない点を理解しておきましょう。

もちろん株価が下がるケースもありますが、権利付与されても実際に権利行使しなければ、権利付与された従業員の損失にはなりません。

ストックオプションについて、より詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてみてください。
ストックオプションとは?発行前に知っておきたい仕組みやメリットを徹底解説!

ストックオプション発行が株価に与える影響

ストックオプション発行が株価に与える影響は?導入時の注意点も説明
これからストックオプションの導入を考えている場合、ストックオプションの発行による自社の株価変動が気になることでしょう。せっかく従業員のインセンティブのためにストックオプションを導入しても、株価が下がってしまっては意味がありません。ここではストックオプションの発行が株価に与える影響を考えてみます。

株価の上昇

ストックオプションの発行により、株価が上昇する可能性もあると考えられています。この後詳しく説明していきますが、ストックオプションを導入すると従業員にとってインセンティブとなるため、仕事に対するモチベーションが上がります。モチベーションが上がることで営業成績もよりよくなり、株価も上昇する相乗効果を得られる仕組みです。

また、投資家に「この企業は従業員の福利厚生を大切にしている」と将来への見込みを高く評価してもらえれば、営業成績アップを見込まれて株式が買われ、株価が上昇する可能性もあります。

株価の下落

一般的にストックオプションを発行すると、発行済株式総数が増加するため1株あたりの純利益や純資産が低くなり、既存の株主の株の価値が低下し株価の下落を招く可能性もあります。株価が下がることで、投資家による売り注文が増加するとさらに株価が下落する原因となってしまいます。

しかしこれは理論上の話で、実際には営業成績の向上や、投資家にストックオプションの導入を正しく理解してもらうことで株価の下落を抑えることも可能です。そもそもストックオプションの発行数が少ない場合は、株価に影響しないケースもあります。

ストックオプションのメリット

ストックオプション発行が株価に与える影響は?導入時の注意点も説明
ここまで、ストックオプション導入による株価の変動について説明してきました。では、ストックオプションを導入することで、自社にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。ストックオプションのメリットには、主に以下のものが挙げられます。

  • 従業員のモチベーション維持になる
  • 成功報酬を導入できる
  • 優秀な人材の確保ができる

ストックオプションは株価が上昇した際に、その分従業員へ還元される仕組みです。営業実績によって株価が上がるため、従業員のモチベーション維持につながります。それに伴い、優秀な人材の確保にも優位に働きます。ストックオプションはインセンティブになるため、優秀な人材の流出を止めたり、集めたりするのに効果的です。

また、企業の負担なしで成功報酬制度を導入できるのも、ストックオプションのメリットです。給与や賞与とは異なり、あらかじめ決められた報酬ではなく、営業成績に応じた報酬として利用できます。

ストックオプションのデメリット

ストックオプション発行が株価に与える影響は?導入時の注意点も説明
ストッオプションには多くのメリットもありますが、導入によるデメリットも理解しておく必要があります。導入前に知っておきたい主なデメリットは、以下のとおりです。

  • 株価下落のリスク
  • 株価低迷によるモチベーションの低下
  • ストックオプション行使後の人材流出

ストックオプションを導入する場合、発行済株式総数が増える可能性があるため株価下落のリスクも考えなくてはなりません。ただし、必ずしもストックオプション導入で株価下落が起きるわけではないため、下落リスクを正しく理解したうえで導入しましょう。

メリットでも紹介したとおり、ストックオプションは従業員のモチベーション維持になります。一方で、株価が低迷してしまった場合はモチベーションが低下する可能性もあります。株価が大きく上がった場合でも、ストックオプションを行使して利益を得た優秀な人材が流出するケースも考える必要があるでしょう。

ストックオプションの導入が向いている企業

ストックオプション発行が株価に与える影響は?導入時の注意点も説明
ストックオプション導入前に、自社がこの制度に向いているのかを検討しましょう。従業員のモチベーションが上がり、営業成績がアップする可能性もある制度ですが、すべての企業に向いているわけではないのです。

また、取締役に対して付与する場合は株主総会での決議がなされている、社員に対してのみ付与する場合は定款に制度の取り決めが明記されている必要があります。

これらを踏まえてストックオプションの導入が向いているのは、将来業績の上がる可能性がある、IPOを目指す非上場企業です。非上場の中小企業は、これから業績が右上がりになる可能性もあり、株価上昇にも期待できます。IPO(Initial Public Offering新規株式公開)を目指し、これから業績を伸ばそうと考えている場合は、高い給与や賞与、充実した福利厚生は準備できないかもしれません。

しかしストックオプションなら、手元に資金がなくても上場に向け従業員のモチベーションを高められます。「小さな企業だからストックオプションの導入は無謀かも」とは思わず、ぜひ導入を検討してみてください。

また、「優秀な人材を採用したい」「退職金として活用したい」という上場企業にも、ストックオプションの導入は向いています。ストックオプションを福利厚生として利用し、従業員の満足度を上げ、人材確保や退職金への活用として利用できるでしょう。

ストックオプションに関する注意点

ストックオプション発行が株価に与える影響は?導入時の注意点も説明
ストックオプション導入の際は、以下の点に注意が必要です。

  • 付与上限がある
  • 発行回数によって税制非適格と判断される可能性もある

ここでは、ストックオプション導入に関する注意点をそれぞれ説明します。

付与上限がある

ストックオプションには付与上限があり、発行済株式数の10~15%程度が上限とされています。一度発行してしまうと、基本的には先述の行使期限をすぎるまで権利付与は取り消せません。無限に発行できるものではないため、誰にどれくらい発行するのかを慎重に検討する必要があります。

実はIPO等により、ストックオプションは誰にどれくらい付与されているのかが公表されます。そのため、付与上限により偏った付与の仕方をしてしまうと、不公平感によって従業員の関係に軋轢を生むリスクにもなる点に注意しましょう。

発行回数を1回にまとめる

ストックオプションを税制適格にするために、発行回数は1回にまとめましょう。複数回に分けて発行すると、税制非適格と判断される可能性があるためです。租税特別措置法に定められた要件を満たしたストックオプションは、税制適格ストックオプションとして扱われます。税制適格ストックオプションは権利付与時でなく、権利行使時に課税を遅らせるものです。つまり、権利付与による従業員の負担を軽減し、権利行使した場合にのみ課税されます。

しかしこの税制適格ストップオプションの判断は、発行のたびにおこなわれます。そのため、発行回数が多いと税制非適格と判断されるリスクが高まるという仕組みです。

まとめ

ストックオプションは、東証一部上場会社の3割以上が導入している制度です。IPOを目指す中小企業のモチベーション維持や優秀な人材の確保など、多くのメリットがあります。一方でデメリットもあるため、この記事で紹介した注意点に留意し、ストックオプションの導入を検討していきましょう。

よくある質問

ストックオプションの発行によって株価はどう変動する?

ストックオプションを発行すると、発行済株式総数が増えるため1株あたりの純資産や純利益が下がり、株価は下がるのが一般的です。

しかし、ストックオプションで発行される株式数が少ないときは、株価に大きな影響はありません。それどころか、従業員のモチベーションアップにつながり、営業成績が向上するケースもあると考えられています。

ストックオプション発行で株価が上昇するのはなぜ?

前述のとおり、ストックオプションの発行により理論上は株価が下がります。しかし営業成績が伸びたり、投資家に評価されたりして株価が上昇するケースもあります。

営業成績が伸びると1株あたりの純利益が増えるため、株価が増加する仕組みです。また、投資家に注目されたり、高い評価を得たりをすることで買い注文が増え、株価が上昇します。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
広告

監修:中川崇

田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。