• 作成日 : 2022年6月23日

ストックオプションの税金の計算方法は?確定申告に必要な書類も紹介

ストックオプションの税金の計算方法は?確定申告に必要な書類も紹介

ストックオプションを利用するにあたって、いくつかの注意点があり、そのひとつに税金があります。ストックオプションの種類によっては、多額の税金を取られてしまう可能性があるのです。

今回はストックオプションの概要と税金が発生するタイミング、種類ごとの税金の計算方法と注意点を解説します。ストックオプションを利用しようと考えているものの、税金に関することがわからない方は、ぜひ参考にしてください。

ストックオプションとは

ストックオプションとは、自社の株式の購入をあらかじめ予約できる権利のことです。映画の前売り券だと考えればわかりやすいでしょう。購入予約するのが株式かチケットかの違いです。

ストックオプションを活用することで、自社の成長に応じたインセンティブが受けられます。つまり、従業員などの頑張り次第でいくらの利益を獲得できるかが決まる制度なのです。

ストックオプションで税金が発生するタイミング

ストックオプションは主に3つの種類があります。簡単な解説を交えながら紹介します。

  • 税制非適格ストックオプション
    株発行時に払込が不要な無償型と呼ばれるもの。厳しい要件がない代わり、税金がかかるシーンが2度ある。
  • 税制適格ストックオプション
    租税特別措置法第29条の2の要件をクリアした無償型ストックオプション。税金が必要なシーンは1回しかないが、要件が厳しめに設定されている。
  • 有償ストックオプション
    新株発行時に払込が必要なストックオプション。ベンチャー企業などで採用されている。

上記3種類にはどこかのタイミングで税金が発生するという共通点があります。以下は、税金が発生するタイミングを表にまとめたものです。

種類権利行使時株式譲渡時
税制非適格ストックオプション税金が発生する税金が発生する
税制適格ストックオプション税金が発生しない税金が発生する
有償ストックオプション税金が発生しない税金が発生する

権利行使時(購入時)には原則として給与所得としての課税が、株式譲渡時(売却時)には譲渡所得として課税対象になります。それぞれ課税されるタイミングと税率が違うため、頭に入れておきましょう。

ストックオプションの税制優遇措置が適用される要件

ストックオプションのうち「税制適格ストックオプション」は、税制の優遇措置、つまり税金がかかるシーンが少なく設定されています。しかし、前の章で簡単に触れたとおり要件が厳しく、ひとつでもクリアをしていない場合は税制適格ストックオプションとして認められません。

税制の優遇措置を受けるためには以下の要件をクリアしている必要があります。

  • 発行価格
    新株発行時に無償であること。
  • 付与対象者
    会社およびその子会社の取締役・執行役・使用人であること。令和元年からは社外高度人材も対象となったが、監査役・会計参与や社外高度人材以外の社外人材には権利を付与できない。ちなみに社外高度人材とは、資格取得から3年の実務経験を持つ弁護士、3年以上の実務経験を持つ博士号取得者など一定の条件を満たした人物をいう。
  • 権利行使期間
    新株予約権の付与が決まった2年後~10年後までの8年間で権利を行使しなければならない。この期間内に権利を利用して購入した株式以外は対象外となる。
  • 権利行使価額
    1株当たりの価額は、新株予約権にかかる契約を結んだ時点の時価以上でなければならない。1円ストックオプションなどは対象に含まれない。ちなみに1円ストックオプションとは、行使価格(購入価格)を1円に設定した無償税制非適格ストックオプションの活用型のこと。退職金としてよく使われる。
  • 譲渡禁止規定
    第三者への譲渡が禁止になっている。
  • 権利行使限度額
    1年間の上限額は1,200万円以内。万が一超えてしまった場合は、超過分だけではなく権利行使に支払った金額全体が課税対象となる。
  • 保管委託
    権利を行使して取得した株式を保管する証券会社などを定めなければならない。

非常に厳しい要件ではあるものの、うまく運用できれば税金の発生を売却時の1回にとどめることができます。税制適格ストックオプションの詳しい解説は、以下の記事でも解説しています。ぜひ参考にしてください。

税制適格ストックオプションとは何?要件やメリット2つを解説

ストックオプションで発生する税金の計算方法

ストックオプションで発生する税金の計算は、ストックオプションの種類によって違います。それぞれの税額の算出方法を、実際の数字を使って詳しく解説します。

なお、詳細を解説するにあたって所得税の税率をおさえておかなければなりません。実際の計算の場合は以下の表を見て、自身がどれに当てはまるのかをチェックして計算してください。本記事では税率33%を見本として使用します。

課税対象額税率
195万円未満5%
195万円~330万円未満
10%
330万円~695万円未満20%
695万円~900万円未満23%
900万円~1,800万円未満33%
1,800万円~4,000万円未満40%
4,000万円~45%

税制非適格ストックオプション

税制非適格ストックオプションは、権利行使時(購入時)には給与所得として(そうでないこともあります)、売却時には譲渡所得として税金を計算する必要があります。もし権利行使後の株式が証券会社の特別口座※に入っていれば、損益計算を個人でする必要がなく、源泉徴収の対象となる場合もあります。

※特別口座とは、2009年に施行された株券電子化までに証券保管振替機構、通称「ほふり」に預けられなかった上場会社の株券について、株主の権利を守るために金融機関に開設された口座のことです。

それぞれの計算式は概算では次のとおりです(なお、説明を簡単にするために省きましたが、実際は復興所得税が課されます。また、所得税率は金額に応じて上昇しますので、実際はこれよりも大きい金額となります。給与所得控除は計算に入れていません)。

(権利行使時):(権利行使時の株価 – 行使価額)× 個数 ×(所得税率 + 住民税率10%)
(株式譲渡時):(株式譲渡時の株価 – 行使時の株価)× 個数 ×(所得税率15% + 住民税率5%)

実際の数字を当てはめて計算してみましょう。

まず権利行使時です。1株2,000円の株式を200円の行使価額で1万株取得した場合は次のとおりになります。

(2,000円 – 200円)× 1万株 ×(所得税率33% + 住民税率10%)=772万円

権利行使時に適用される税率は、所得税と住民税を合わせて10~55%で計算されます。給与所得額が大きければ大きいほど、課税額が大きくなると覚えておきましょう。

続いて、株式譲渡時の税金の算出方法です。株式譲渡時の株価が4,000円の場合を想定して計算しています。

(4,000円 – 2,000円)×1万株 ×(所得税率15% + 住民税率5%) =400万円

株式譲渡時の税率は、給与所得に関係なく20%となっています。合計すると1,172万円が課税されることになるのです。

【税制非適格ストックオプションの課税のタイミングと課税対象】

ストックオプションの税金の計算方法は?確定申告に必要な書類も紹介

税制適格ストックオプション

税制適格ストックオプションは、権利行使時に税金が発生しません。ただし、株式譲渡時に譲渡所得にかかわる税金が発生するため、以下の計算式を覚えておきましょう。

(権利行使時):なし
(株式譲渡時):(株式譲渡時の株価 – 行使価額)× 個数 × (所得税率15% + 住民税率5%)

先述の例を参考に計算してみると、税制非適格ストックオプションと税額に差が出てくることがわかります。条件を同じにした場合の計算結果は以下のとおりです。

(4,000円 – 200円)× 1万株 ×(所得税率15% + 住民税率5%)=760万円

1回の税額は大きく見えるものの、税制非適格ストックオプションと比較すると400万円程度税負担が軽くなっています。繰り返しになりますが、税制適格ストックオプションとして認められるためには厳しい要件をクリアしている必要があります。

【税制適格ストックオプションの課税のタイミングと課税対象】

ストックオプションの税金の計算方法は?確定申告に必要な書類も紹介

有償ストックオプション

最後に有償ストックオプションの税額計算です。基本的には税制適格ストックオプションの税率計算とほぼ同じですが、計算時に発行時払込額(株を発行するときに企業に払う金額)を含めて計算しなければならない違いがあります。計算式にしてみると、次のとおりです。

(権利行使時):なし
(株式譲渡時):(株式譲渡時の株価 – 行使価額 – 発行価額)× 個数 × (所得税率15% + 住民税率5%)

有償ストックオプションは、その名のとおりストックオプションの付与権限を与えられた際に発行価額が必要になります。税制適格ストックオプションの計算には存在しなかった、発行価額を計算式に含めなければなりません。

実際に数字を当てはめてみましょう。今回の発行価額は10円/個と仮定します。

(4,000円 – 2,000円 – 10円)× 1万株 ×(所得税率15% + 住民税率5%)=398万円

税額だけ見ると一番税金が安い仕組みに見えますが、発行価額が発生している点を忘れてはいけません。今回使用した例でも、発行価額だけで10万円に相当します。企業によって発行価額は変動する点に注意しましょう。

【有償ストックオプションの課税のタイミングと課税対象】

ストックオプションの税金の計算方法は?確定申告に必要な書類も紹介

ストックオプションで発生した税金の確定申告に必要な書類

ストックオプションで得られた損益は、確定申告で申告する必要があります。ストックオプションの種類を問わず、以下の4点が必要です。

    • 申告書B第一表
    • 申告書B第二表
    • 申告書第三表(分離課税用)
    • 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書

ただし、税制適格ストックオプションの場合、4つ目の資料の末尾に「特定権利行使株式分及び特定投資株式分がある場合」と記載があるものを使用してください。

【税制適格ストックオプションで使用する「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」のタイトル部分】

ストックオプションの税金の計算方法は?確定申告に必要な書類も紹介

出典:国税庁

【税制適格ストックオプション以外で使用する「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」のタイトル部分】

ストックオプションの税金の計算方法は?確定申告に必要な書類も紹介

出典:国税庁

ストックオプションの税金に関する注意点

ストックオプションの税金に関しては、以下の注意点があります。

  • 特定口座での管理は確定申告が不要な場合もある
  • 申告漏れは追加で徴税される可能性がある

この2つの注意点は連動しているものです。勘違いや漏れがないように注意しましょう。

特定口座での管理は確定申告が不要な場合もある

特定口座とは、投資に関係する金融商品を保管するための口座です。この特定口座でストックオプションにより取得した株式が譲渡された場合、確定申告が不要な場合もあります。

厳密には、源泉徴収ありの特定口座から譲渡した場合、確定申告が不要になります。理由は口座がある金融機関が個人の代わりに損益計算をし「年間取引報告書※」を作成するためです。源泉徴収なしの特定口座は個人での確定申告が必要です。

※年間取引報告書とは、特定口座を開設している人の年間の株取引の計算を記載した報告書のことです。

申告漏れは追加で徴税される可能性がある

万が一ストックオプションで発生した税金を申告しなかった、あるいは申告漏れがあった場合、追加で税金を徴収される可能性があります。修正申告することで書面上は正しくできますが、タイミングによって次のように追加徴税され、また延滞税も課せられますのでるため、注意が必要です。

修正申告のタイミング50万円以下の税金の部分50万円を越えた税金の部分
税務調査の事前通知前税額の5%税額の5%
事前通知後から税務調査まで税額の10%税額の15%
税務調査後税額の15%税額の20%

(参考:国税庁
税務調査の事前通知前に申告漏れに気が付いた場合、速やかに修正申告をしましょう。もし税務署が悪質だと判断した場合、さらに高額な追徴課税を科せられる可能性もあります。

まとめ

ストックオプションの税金の計算方法は、ストックオプションの種類によって少しずつ違います。確定申告では間違いがないように計算・記載しなければ、追徴課税を受ける可能性も否定できません。落ち着いて税金を計算し、提出前には入念にチェックするようにしましょう。

よくある質問

ストックオプションとは?

自社の株式を予め決まった価格で購入できる権利のことです。いくつかの要素で「税制適格ストックオプション」「税制非適格ストックオプション」「有償ストックオプション」の3種類に大別されます。

ストックオプションで税金が発生するのはいつ?

「税制非適格ストックオプション」は権利行使時と株式譲渡時の2回、それ以外は株式譲渡時の1回だけ課税されます。ただし、それぞれ計算式が異なるため、同じ金額であっても税額が変動するのです。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:中川崇

田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。