- 更新日 : 2024年7月16日
インセンティブとは?意味や手当・報奨金との違い、事例を解説
インセンティブとは、「営業職や販売職の人に、自身の成果に応じて給与に上乗せして支払う報酬」というのをよく聞きます。しかし、インセンティブは金銭的なものだけではなく、他にもいろいろな種類があります。
今回は、インセンティブの意味・目的、手当・報奨金との違い、メリット・デメリットや簡単に導入事例について見ていきます。
目次
インセンティブとは?
インセンティブとは、「報奨」や「刺激」という意味で使われています。では、会社ではどのような意味で使われ、また、どんな目的で使われているのでしょうか。まずは、インセンティブの意味や目的について見ていきます。
インセンティブの意味
インセンティブは「報奨」「刺激」という意味ですが、会社では、「従業員にやる気を起こさせるような動機づけ」という意味で使われています。具体的に言うと、「社員の個々の成果に応じて給料以外に報奨金を出す」という例がわかりやすいでしょう。
インセンティブの目的
インセンティブの目的は、会社自体のモチベーションをアップさせることです。また、社員の労働に関する意欲を向上させることによって会社の売上げのアップを見込むこともあります。
会社と労働者の間に良好な関係を築けるのもインセンティブの目的の一つで、そのために会社はインセンティブ制度を設けています。
インセンティブの身近な例
ここでは、インセンティブの身近な例を見ていきます。社員の意欲を向上させるためには、インセンティブを与えることが効果的です。
報奨金制度
インセンティブ制度として一般的に用いられているのが報奨金制度です。個人の成果や実績に応じて金銭を受け取ることができます。保険業、販売業、不動産業の営業職など、目に見える仕事の成果に対して適用されることが多いです。
表彰制度
会社内の表彰制度をつくり、社員の仕事に対する成果や努力を評価し、評価の高い社員を表彰する制度です。仕事の成果が目に見える職種だけではなく、成果が目に見えづらいアパレル販売職やコールセンター勤務者、研究職などにも対応できます。
表彰を受けることで、「認められたい」という欲求が高まり、モチベーションのアップにつながるでしょう。
リーダー制度
年齢や勤続年数に関係なく、自分の能力や仕事の成果が認められれば、誰でもリーダー職に就くことができる制度です。
「誰でもリーダーになれる」という制度なので、若手や勤続年数の短い社員もモチベーションがアップし、会社全体の生産性の向上に貢献することができます。
インセンティブと歩合制・報奨金・手当との違い
インセンティブと似たような言葉に「歩合制」「報奨金」「手当」があります。それぞれインセンティブ制度とどのような違いがあるのかについて解説します。
歩合制とインセンティブ制度の違い
歩合制は、実績に応じて報酬が発生する制度です。例えば、「販売実績を1件上げるごとに10,000円の報酬が発生する」などです。
対して、インセンティブ制度は、目標を達成することにより報酬が発生する制度です。例えば、「売上目標200万円を達成したら、通常の給料+売上の5%を報酬として受け取れる」などです。
報酬の発生状況が、実績に応じて発生する成果報酬なのか、目標の達成で発生するのかという違いがあります。
報奨金とインセンティブ制度の違い
報奨金はインセンティブと同様の意味で使用されています。報奨金は、「貢献や努力を奨励するために支給される金銭」です。インセンティブも同様の意味ですので、どちらも同じような使い方をされています。
ただし、会社によってそれぞれの意味を異なる解釈で使っている場合もありますので、分けて使用している場合は注意しましょう。
手当とインセンティブ制度の違い
手当は、給与の中で基本給とは別に支給される賃金を指します。具体的には住宅手当、役職手当や通勤手当などがあります。これらは、毎月決まった金額が支給されます。
対して、インセンティブは、社員の努力や頑張りに対して支払われるものです。したがって、制度としては別のものです。
インセンティブ制度のメリット
ここからは、インセンティブ制度を導入することについてのメリットを見ていきます。
仕事の成果が正当に評価される
インセンティブ制度は、達成目標が具体的に設定され、その達成目標に向かって意欲的に行動し成果を出します。目に見える形で進めることができ、自分の成果を周りからも認めてもらうことができます。
「従業員にやる気を起こさせるような動機づけ」という部分で、仕事の成果が正当に評価される点がメリットの一つです。
社員のモチベーションの向上
インセンティブ制度の導入で成果に応じた報酬が得られるようになると、社員のモチベーションが上がるため、働く意欲が高まって成果につながる場面が多くなります。
社員の労働意欲が向上して、生産性のアップが期待できることにより、会社にとっても大きなメリットになります。
実績に応じて給与に反映される
インセンティブ制度は自身の努力と実績によって高額な給与を目指せる制度です。
年齢や勤続年数は関係ありませんので、報酬に反映されるインセンティブ制度がある会社で働けば、若くても高収入を目指せるところはメリットと言えるでしょう。
インセンティブ制度のデメリット
インセンティブ制度はメリットばかりあるわけではありません。デメリットにはどのようなものがあるのか、見ていきましょう。
収入に変動があり不安定になりがち
インセンティブ制度によって収入アップが見込めるメリットがある反面、成果を出せなかった場合は、収入が伸びないため、月によって収入がばらつく可能性があります。安定志向の社員にとっては、この不安定な収入変動はデメリットに感じてしまうでしょう。
自分の成果に固執してしまう
インセンティブに固執するあまり、目先の目標達成に目が向いてしまい、インセンティブに関係のない仕事が進まなくなることもあります。また、自分の成果にばかり固執してしまい、チームワークを乱してしまう可能性がある点もデメリットです。
ノウハウが共有されず組織の意識が薄れる
チームの中でインセンティブを意識し過ぎてしまうことによって、下記のようなデメリットが出てくる場合があります。
- 回りのことを考えず個人で突き進んでしまい、組織としてのパフォーマンスが低下してしまう
- チームワークが悪くなり、生産性が下がってしまう
インセンティブの5つの種類
インセンティブと聞くと、金銭的なインセンティブを想像しますが、実際には金銭や物品以外のインセンティブもあります。インセンティブの種類を5つ紹介します。
物質的インセンティブ(金銭)
物質的インセンティブは、金銭や物品のインセンティブで、「金銭的インセンティブ」とも言われます。よく聞く例としては、営業職で目標を上回る成績を上げた社員に報奨金が与えられるケースです。
金銭的な報酬が多いですが、会社によっては賞品や物品が与えられる場合もあります。
評価的インセンティブ(表彰)
評価的インセンティブとは、社員の「評価されたい」という尊厳欲求を刺激してやる気を引き出し、会社は社員の働きを評価するインセンティブです。
昇進・昇格の機会を与えられる、社内で表彰される、上司や同僚などから褒められることなどが該当します。
人的インセンティブ
雰囲気の良い組織で仕事がしたい、尊敬する人と一緒に働きたいなど、人に関するインセンティブのことを人的インセンティブと言います。社員の不満が起きないように社員間の関係性を円滑にすることで、仕事のやる気を高めていきます。
職場の人間関係は仕事の生産性に大きな影響を与えます。人的インセンティブを提供している企業で勤務できれば、自らの努力によって職場環境を変えるチャンスができます。
理念的インセンティブ(企業理念)
理念的インセンティブは、企業理念や目指すべき方向性、価値観に賛同してもらうことで、社員の労働意欲を高め、組織への貢献を促すインセンティブです。
会社の理念や価値観が組織に浸透し、社員自身の仕事が会社や社会にどのように貢献しているかがわかるようになると、生産性が高まります。
自己実現的インセンティブ
会社が社員の望むキャリアを後押ししたり、自己実現のチャンスを与えたりしてモチベーションを高めるインセンティブを自己実現的インセンティブと言います。社員が達成感を味わうことによりキャリアアップにつながります。
インセンティブ制度の導入事例
インセンティブ制度を取り入れている企業の実際の導入事例を何社か見てみましょう。
ディップ株式会社の事例
求人サイトで有名なディップ株式会社は、コンサルティング営業職の人にインセンティブ制度を取り入れています。
コンサルティング営業職は、毎月の個人や組織の目標の達成状況により、インセンティブを受け取ることができます。2020年度には、実に全営業職の98%がインセンティブを受け取っているとのことです。
ディップ株式会社は表彰制度も設けており、月・四半期・半期・通期と、一定期間ごとの表彰制度があります。また、「通期表彰」の受賞者には報奨旅行も授与されるそうで、2022年度には130名の社員がハワイ旅行を授与されました。
他にも永年勤続表彰制度など、社員のモチベーションをアップさせる魅力的な制度が多くあります。
フォルシア株式会社の事例
情報検索テクノロジーの開発・サービスを行っているフォルシア株式会社は少し変わったインセンティブ制度を導入しています。会社の利益に貢献した社員に、利益の一部を公平に分けたいという想いから生まれた3C制度があります。
会社収益への貢献度=Contribution、業務に対する責任感・貢献度=Commitment、会社への安定的関与=Consistency。
これら3つの“C”に基づき、3C対象者全員に「あなたに総額●●●●万円のボーナスを自分を除く3C対象者に分配する権限があったとしたら、それぞれにいくらずつ分配しますか」というシートにそれぞれ分配額を記入してもらい、その結果を集約して特別賞与額を決定して対象社員に支払うという制度です。
会社の一部の人による決定ではなく、共に働く社員相互間の評価の結果によるインセンティブ制度という独自性があります。
会社がさらに成長できるよう、その成長に貢献することが社員にも還元されるような仕組みになっています。
OWNDAYS株式会社の事例
最後は、メガネやサングラスの製造販売を行っているOWNDAYS株式会社が行っているインセンティブです。
人員不足の店舗の募集ランクを5段階に分けて、1カ月間(最長3カ月間)の勤務を行うことで募集店舗の人員不足の状況に応じて5~15万円のインセンティブが支給される「社内出稼ぎ制度」が始まりました(2022年12月現在)。
この制度は人員不足を補うだけではなく、一時的な社員の賃上げにもつながり、社員と会社の双方にメリットのある制度です。
社員はこの制度を自身で選択できることで自立とモチベーションの向上につながります。また、会社は人員不足の課題の解決になるだけではなく、社員の自発性やエンゲージメントの向上につながるため、双方にメリットがあります。
参考:“社内出稼ぎ制度”導入のOWNDAYS、他店舗勤務の社員に最大15万円を付与。「人手不足解消」と「一時的な賃上げ」を可能に|HRpro
インセンティブ制度を有効活用していきましょう
インセンティブは、社員にとってモチベーションを向上させ、収入増につながるとてもメリットのある制度です。また、会社にとっても社員の士気が上がることは、生産性の向上や職場の活性化につながるメリットがあります。
とは言え、逆にインセンティブに固執し過ぎると、チームワークを乱す、組織としてのパフォーマンスを落とすなどのデメリットにもつながります。
適度なインセンティブの設定により、会社も社員もWin-Winの関係になれるように制度設計をしていきましょう。
インセンティブの論文を含め、インセンティブについてより詳しい方はこちらの記事もご参考ください。
【HR Journey】インセンティブの意味や使い方を簡単に紹介!
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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