- 作成日 : 2024年7月24日
株式譲渡制限会社とは?メリット・デメリットや譲渡の流れを解説
株式譲渡制限会社と公開会社の違いについて興味を持っている方もいらっしゃるかと思います。
本記事では、株式譲渡制限会社の特徴やメリット、デメリットについて詳しく解説します。また上場会社は上場審査基準により譲渡制限株式を発行できないため、株式譲渡制限会社を公開会社にするための方法も合わせて解説します。
株式譲渡制限会社とは
株式譲渡制限会社は株主構成の安定などを目的に、特に中小企業や家族経営の企業において利用されています。本章では、概要と公開会社との違いを説明します。
株式譲渡制限会社とは?
株式譲渡制限会社とは、発行する全ての株式に対して譲渡制限がある会社を指します。
株式を譲渡するには、取締役会または株主総会の承認が必要です。このような仕組みは、株主の構成を安定させ、経営のコントロールを保つために設けられています。そのため、非公開会社と呼ばれることもあります。
公開会社との違い
公開会社とは、発行する株式のうち1株でも譲渡制限が付されていない株式が存在する会社を指します。公開会社では株式を自由に譲渡できるため、株主構成が流動的になります。
株式譲渡制限会社になるには
これから設立する会社を株式譲渡制限会社にする場合、特別な手続きは必要なく、設立時の定款に株式譲渡に関する承認機関(取締役会または株主総会)の承認が必要である旨を記載するだけで済みます。
株式譲渡の可否を決定するのは通常、取締役会が設置されている会社では取締役会、取締役会がない会社では株主総会です。
株式譲渡制限会社のメリット
本章では株式譲渡制限会社の主なメリットについて解説します。
メリット1:役員や任期管理の柔軟性が高まる
役員の任期は通常、取締役が2年、監査役が4年です。一方、株式譲渡制限会社では定款により最大で10年まで延長できます。
これにより役員の任期管理が柔軟になり、経営の自由度が向上します。また、役員の資格を株主に限定することも可能で、家族経営に適しています。
メリット2:取締役会などの手続きを簡素化できる
公開会社では取締役会の設置が義務付けられており、監査役の配置も必要です。また取締役会は年4回以上開催しなければならず、これに伴う役員報酬と運用コストがかかります。
一方、株式譲渡制限会社ではこれらの義務がないため、株主総会を中心とする機関設計を行うことで、会社運営の効率化とコスト削減を同時に実現できます。
メリット3:株主総会の開催手続きを簡便化できる
株式譲渡制限会社では株主総会の招集通知は通常1週間前までに発送すればよいとされています。公開会社は2週間前までとされているため、より柔軟に運営できる点はメリットだといえます。
株式譲渡制限会社のデメリット
株式譲渡制限会社には多くのメリットがありますが、同時に特有のデメリットも存在します。
デメリット1:資金調達が難しい場合がある
株式市場での売買は難しいので、大規模な資金調達が難しいケースも少なくありません。一般的に株式譲渡制限会社は主に金融機関からの融資を受けて資金調達を行うことが多く、資金を調達する方法は限られています。
事業の拡大や新たな投資を行いたい場合、その手段が制限されることがあります。
デメリット2:経営に不透明な部分がある
株式譲渡制限会社は、経営に関する情報公開が不十分である点が問題とされることがあります。ステークホルダーとの信頼関係の構築を妨げてしまうことで、企業価値に悪影響を与える可能性も考えられます。
デメリット3:株式買取請求権が行使されるケースがある
株式買取請求権は、株式の譲渡を会社が承認しなかった場合に株主が行使できる権利です。
株主がこの権利を行使すると、会社に公正な価格で株式を買い取る義務が生じます。この場合、会社は一定期間内に株主へ買い取りの対象となる株式の数などを通知しなければいけません。期限を過ぎた場合、自動的に株式の譲渡が承認されたものと見なされます。
株式買取請求権の行使により、公正な価格の算定について会社と株主が対立し、訴訟に発展する場合もあります。特に中小企業や新設会社で、株主が少数である場合や経営者が主要株主である場合、これは大きな負担となります。
譲渡制限株式の譲渡手続き
一般的に、株式譲渡制限会社の株式を譲渡する際には、株主総会または取締役会からの承認が必要です。自分が所有する株式を譲渡したい場合は、まず株式取得希望者との株式譲渡契約書を作成し、その後会社に譲渡の承認を求めます。
譲渡制限株式の譲渡申請が提出されたら、株式譲渡制限会社は定款に基づき株主総会や取締役会などで審議を行います。この審議で承認が得られれば、制限のある株式を第三者に譲渡することができます。
また、例外的な方法として、株主総会や取締役会以外の機関や人物によって譲渡の承認や否決ができるよう、定款で事前に規定することもできます。例えば、株式譲渡には代表取締役の承認が必要だと定めておけば、代表取締役が承認を行うことで株式の譲渡手続きが進行します。
株式譲渡制限会社を公開会社にするための手続き
株式譲渡制限会社を公開会社にすることは企業にとって大きな転機ですが、移行には、手続きが必要となります。
本章では、株式譲渡制限会社が公開会社へと移行する際の具体的な手続きについて詳しく説明します。
株式譲渡制限会社を公開会社に変えるタイミング
株式譲渡制限会社を公開会社に移行させる必要があるケースの例としては、株式市場への上場が挙げられます。会社が設立された当初は株式譲渡制限会社の形態で運営し、後に株式市場に上場する際に株式譲渡制限会社から公開会社への変更を行うケースもあります。
上場会社は上場審査基準により譲渡制限株式を発行できないため、発行している全ての株式の譲渡制限を解除しなければなりません。
譲渡制限を廃止する必要性
上場会社は上場審査基準により譲渡制限株式を発行できませんので、発行している全ての株式の譲渡制限を無くさなければなりません。
また、株主総会の特別決議を経て制限を撤廃するよう定款を変更すると、それに伴い現在の取締役や監査役の任期が自動的に終了します。
取締役会と監査役の設置が必要
株式譲渡制限会社を公開会社に変更する際には、取締役会の設置と監査役の選任が必要です。現在、取締役が3人未満であれば3人以上の取締役を選出し、監査役が不在であれば、1人以上の監査役を選任する必要があります。
発行可能株式総数の変更が必要なケースも
株式譲渡制限会社を公開会社に移行する場合、株式の発行枠に関する規定を変更します。
株式の発行可能総数について、株式譲渡制限会社には制限がありませんが、公開会社に移行すると、発行可能な株式総数は発行済株式総数の4倍までに制限されます。
もし現在の発行可能株式総数が発行済株式総数の4倍を超えている場合は、登記変更によって発行可能株式総数を調整する手続きが必要です。
まとめ
株式譲渡制限会社は、日本の会社法に基づく特別な形態の株式会社です。株式の譲渡に制限を設けることで、意思決定の安定性を維持することができます。
この形態は特に中小企業や家族経営の企業において広く利用されており、株主構成をコントロールしやすくすることで、経営の円滑な運営を支援します。設立や運営に特有の特徴があり法的な規制も存在しますが、それらを理解し適切に活用することで企業に多くのメリットをもたらすことができます。
しかしこれらのメリットを享受するためには、企業は法的要件を満たしつつ、適切なガバナンスを維持することが不可欠です。株式譲渡制限会社の特徴と手続きを正しく理解し、企業運営に活かしていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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