• 作成日 : 2022年10月21日

コーポレートガバナンス・コードの基本原則5つ!特徴や改訂のポイントを説明

コーポレートガバナンス・コードの基本原則5つ!特徴や改訂のポイントを説明

2014年6月に政府は日本企業の稼ぐ力を取り戻すべく「日本再興戦略」を策定し、具体的施策のひとつとして「コーポレートガバナンス・コード」作成を掲げました。しかし、そもそもコーポレートガバナンスとは何かを理解しきれていない人も少なくありません。

本記事ではコーポレートガバナンス・コードとは何か、また、2回の改正で上場企業に求められている者は何かであるかがわかります。上場を検討している経営者は、ぜひ参考にしてください。

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コーポレートガバナンスとは

コーポレートガバナンス・コードの基本原則5つ!特徴や改訂のポイントを説明

コーポレートガバナンスとは一般的に「企業統治」と訳され、企業は出資している株主のもので経営者のものではないというスタンスで経営を監視する仕組みのことです。具体的な取り組みとしては、社外取締役や社外監査役等社外の管理者による経営の監視や取締役と執行役の分離、社内ルールの明確化などが挙げられます。

コーポレートガバナンスを強化することで企業の社会的な信頼性および価値の向上につながっていきます。企業側と株主の関係が良好であることは消費者の購買行動にも影響を与え、企業にとって重要な仕組みといえるでしょう。

コーポレートガバナンス・コードとは

コーポレートガバナンス・コードの基本原則5つ!特徴や改訂のポイントを説明

コーポレートガバナンス・コードとは、企業が顧客や株主、社員や地域社会等の立場を踏まえた上で、透明で公正、かつ迅速で果断な意思決定を行うための原則や指針を表したものです。「Corporate Governance」の頭文字を取ってCGコードと略す場合もあります。

コーポレートガバナンス・コードは実効的な企業統治の実現に役立つ主要な原則を取りまとめたものです。主要な原則が適切に実践されることは、それぞれの会社において持続的な成長と中長期的な企業価値が向上のための自律的な対応が図られることを通じて会社や投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与すると考えられています。

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コーポレートガバナンス・コードが制定された背景

コーポレートガバナンス・コードの基本原則5つ!特徴や改訂のポイントを説明

2014年6月、政府は「『日本再興戦略』改訂2014-未来への挑戦-」を閣議決定しました。日本企業の持つ稼ぐ力を養うために決定されたもので、新たに講ずべき具体的施策のひとつとして「コーポレートガバナンス・コード」の策定を掲げました。本文には「持続的成長に向けた企業の自律的な取組を促すため、東京証券取引所が、新たにコーポレートガバナンス・コードを策定する。」と明記されています。

東京証券取引所は金融庁と共同して有識者会議におい、基本的な考え方を取りまとめ、翌年2015年6月に策定され、上場会社に適用されました。企業価値の向上や収益力の強化を図ることで企業は持続的成長の取り組みを行っています。

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コーポレートガバナンス・コードの基本原則5つ

コーポレートガバナンス・コードの基本原則5つ!特徴や改訂のポイントを説明

コーポレートガバナンス・コードの基本原則は5つあります。

  • 株主の権利・平等性の確保
  • 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
  • 適切な情報開示と透明性の確保
  • 取締役会等の責務
  • 株主との対話

それぞれについて詳しく見ていきましょう。なお、ここで言う「ステークホルダー」とは、何らかの形で企業と利害関係にある人や組織のことを指します。

株主の権利・平等性の確保

株主の権利・平等性の確保とは、上場会社は株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行い、株主が権利を適切に行使できるように整備を行うことをいいます。

具体例として上場会社は少数株主を含めたすべての株主に対して平等に権利行使されるよう充分配慮を行い、株主総会で株主が適切な判断を下せるよう必要な情報は必要に応じて提供することがあります。

株主以外のステークホルダーとの適切な協働

株主以外のステークホルダーとの適切な協働とは、上場会社は持続的な成長および中長期的な企業価値の創出は株主以外のステークホルダー(従業員や顧客、取引先、債権者、地域社会など)によるリソースの提供や貢献の結果であることを認識することです。

企業が守るべき法令の遵守はもとより、企業倫理や地球環境、社会貢献等に対する考え方を含めて経営理念を制定したりしています。

適切な情報開示と透明性の確保

適切な情報開示と透明性の確保とは、上場会社は、会社の財務情報や、経営戦略やリスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むことをいいます。

ひとつの例として、株主およびステークホルダーにとって重要と判断される情報について非財務情報を含めた自社のウェブサイトや東京証券取引所等のウェブサイトなどを通じて、積極的に情報開示を行ったりしています。

取締役会等の責務

取締役会等の責務とは、上場会社の取締役会は株主に対する説明責任などを踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促して収益力・資本効率等の改善を図るべく役割・責務を適切に果たすことをいいます。

監督機能と業務執行機能の分離を行ったり、独立社外取締役を専任したりするほか、実効性の高い監督の実現に取り組んでいる事例があります。

株主との対話

株主との対話とは、上場会社の経営陣は株主総会の場以外でも株主との間で建設的な対話を行うべきことをいいます。経営陣は株主との対話を通じて株主の関心や懸念に耳を傾け、経営陣は経営方針などをわかりやすく株主を含むステークホルダーに説明しなければなりません。

具体的な施策例として、アナリストや機関投資家向けに決算説明会や第2四半期決算説明会を開催したり、株主向けには株主総会後経営陣が出席し株主懇親会を実施したりしています。

コーポレートガバナンス・コードの特徴

コーポレートガバナンス・コードの基本原則5つ!特徴や改訂のポイントを説明

コーポレートガバナンス・コードの特徴としてプリンシプルベース・アプローチ(原則主義)とコンプライ・オア・エクスプレイン(comply or explain)の手法を採用しています。それぞれの特徴を理解しなければ、法令違反に該当してしまう可能性もあるため注意が必要です。

プリンシプルベース・アプローチを採用している

プリンシプルベース・アプローチとは、原則のみを考えて詳細についてはそれぞれの上場会社に判断をゆだねる手法です。つまり、細かいことは上場企業が決めていいというものです。

反意語としてルールベース・アプローチ(細則主義)があります。上場会社のとるべき行動などを細かくルール化して定める手法です。市場は常に変動しており、細かなルールを大元が設定しても実情に合わなくなる可能性があります。ルールベース・アプローチを採用することで、上場会社はコーポレートガバナンス・コードの原則の趣旨を理解し、自社状況に合わせて判断・適用できるのです。

コンプライ・オア・エクスプレインを採用している

もうひとつの特徴に、コンプライ・オア・エクスプレイン(comply or explain)を採用している点があります。コーポレートガバナンス・コードの原則を実施しないもののうち本来実施する必要があるものについて、株主やステークホルダーなどに対して実施しない理由を説明しなければならないという決まりです。

こちらはプリンシプルベース・アプローチとは異なり、すべての上場会社はコーポレートガバナンス・コードの原則を実施しない理由を証券取引所に報告する義務があります。

コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない場合の措置

コーポレートガバナンス・コードの基本原則5つ!特徴や改訂のポイントを説明

コーポレートガバナンス・コードは「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない場合、理由を説明するのか)の手法を採用しています。各原則を実施しないからといってなんらかの罰則が科されることは、本記事執筆時点ではありません。ただし各原則を実施しない場合、上場会社は理由をガバナンス報告書での説明が上場規則で定められているのです。

一方で、上場会社がコーポレートガバナンスに関する報告書での説明がない場合、公表措置等の対象となる可能性があります。企業行動規範の「遵守すべき事項」に上場会社が違反したうえで改善の必要性が高いと認められると、証券取引所は該当の上場会社に対してその後の経過および改善措置を記載した改善報告書の提出を求めることとしています。

証券取引所からの指示があったにもかかわらず該当の上場会社が改善報告書の提出の求めに応じない場合、上場契約において重大な違反を行ったとして上場廃止となるため、注意しなければなりません。

コーポレートガバナンス・コード改訂の流れ

コーポレートガバナンス・コードの基本原則5つ!特徴や改訂のポイントを説明

コーポレートガバナンス・コードが2015年に制定されて以降、これまで2度改訂されました。それぞれ時代の変化にあわせて改訂されており、徐々に具体的になっている部分もあります。代表的な2018年と2021年の改定を見ていきましょう。

2018年の改定

企業と投資家との対話を通じてコーポレートガバナンス改革をより実質的なものへと深化させていくため、またコードの改訂が提言されたことを踏まえて、提言に沿って改定されました。

2021年の改定

コロナ禍やそれに伴う働き方の変革、コロナにおける企業戦略の検討などの課題に向き合っていた時期。近年世界的な課題となっているESGやSDGs、サステナビリティ・気候変動対応などの課題があり、企業の存在意義の再確認が求められました。さらに2022年に東京証券取引所が「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」に市場区分されることも手伝って改定に至りました。

2021年に改訂されたコーポレートガバナンス・コードのポイント

コーポレートガバナンス・コードの基本原則5つ!特徴や改訂のポイントを説明

2021年に改定されたコーポレートガバナンス・コードのポイントとして、押さえておくべき以下の3点があります。

  • 取締役会の機能発揮
  • 企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保
  • サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取り組み

それぞれの詳細を詳しく解説します。

取締役会の機能発揮

取締役会の機能発揮として、以下の点をあげています。

  • プライム市場上場企業におい、独立社外取締役を3分の1以上の選任し、必要であれば過半数の選任の検討が望ましい
  • プライム市場上場会社は構成員の過半数を独立社外取締役が占める指名委員会や報酬委員会の設置が望ましい
  • 中長期的経営の方向性や事業戦略と照らして、必要なスキルが確保されているのかは重要。各取締役の有するスキルを開示することにより適切な取締役会が機能発揮できる

 

取締役会の機能が迅速かつ実効性のあるものにするために規定されています。社外取締役の存在が形式的にならないために、細かく規定が設けられたのも特徴です。

企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保

企業の中核人材に多様性(ダイバーシティ)を持たせることが求められています。それらを確保するには、経営陣の意識改革が必要とされており、以下のポイントでの実行が求められています。

  • コロナ後の不連続な変化に対応し、新たな成長を実現するには、経営陣にも多様な視点や価値観が必要
  • 取締役会や経営陣を支える管理者層にジェンダーや国際性、職歴、年齢等の多様性(ダイバーシティ)が確保され、中核人材が経験を重ねて取締役や経営陣に登用されるしくみを構築するのが必要
  • 将来的に女性、外国人、中途採用者の管理職への登用、中核人材の登用における多様性の確保についての考え方や自主的かつ測定可能な目標を明示
  • 多様性の確保に向けた人材育成、社内環境整備方針を実施状況とあわせて開示

サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取り組み

改定されたコーポレートガバナンス・コードでは、上場会社にサステナビリティに関して基本的な方針を策定するほか、その取り組みの開示を求めています。

  • 中長期的な企業価値に向けて、リスクとしてではなく、収益機会としてサステナビリティに注目
  • サステナビリティは従来要素の強かったE(環境)より、近年の人的資本の投資等のS(社会)の要素に有用性も指摘されており、効果的な取り組みが望ましい
  • 従来は「取締役会はサステナビリティの課題に積極的・能動的に取り組むよう検討すべきである」という記述が、今回の改定で「検討を深めるべきである」と踏み込んだ表現となっており、上場会社はさらなるサステナビリティを促進してもらいたいといった表現に変化している

 

サステナビリティをリスクと捉える企業も少なくはなく、その考え方にストップをかけた形です。文言も一部変更されており、今後の企業経営に欠かせない要素となるでしょう。

まとめ

コーポレートガバナンス・コードは、2015年に東京証券取引所と金融庁とで策定された上場会社が遵守する決まりがあり、5つの基本原則のほかコンプライ・オア・エクスプレインを採用しているなどの細かいポイントがあります。しかし、正当な理由を説明すれば基本原則を遵守する必要はないため、そこまで恐れることではないでしょう。

上場を検討する場合、コーポレートガバナンス・コードを理解することが必須です。会社は経営者だけのものでないことを認識し、コーポレートガバナンス・コードの基本事項を理解して上場を目指す参考としていただければ幸いです。

よくある質問

コーポレートガバナンス・コードとは?

コーポレートガバナンス・コードとは、企業が顧客や株主・社員や地域社会などの立場を踏まえた上で、透明で公正かつ迅速で果断な意思決定を行うための仕組みを意味します。

コーポレートガバナンス・コードの基本原則とは?

コーポレートガバナンス・コードの基本原則は5つあり、 株主の権利・平等性の確保、 株主以外のステークホルダーとの適切な協働、適切な情報開示と透明性の確保、取締役会等の責務、株主との対話です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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