• 更新日 : 2023年10月5日

コーポレートガバナンス・コードとは?基本原則や特徴・改定ポイントを解説

2014年6月に政府は日本企業の稼ぐ力を取り戻すべく「日本再興戦略」を策定し、具体的施策のひとつとして「コーポレートガバナンス・コード」作成を掲げました。しかし、そもそもコーポレートガバナンスとは何かを理解しきれていない人も少なくありません。

本記事ではコーポレートガバナンス・コードとは何か、また、2回の改正で上場企業に求められている者は何かであるかがわかります。上場を検討している経営者は、ぜひ参考にしてください。

コーポレートガバナンス・コードとは

コーポレートガバナンス・コードとは?基本原則や特徴・改定ポイントを解説

コーポレートガバナンス・コードとは、東証が定めたルールであり、企業経営の透明性や公正性を高め、企業の持続的な成長や価値の向上を目指すための取り組みのことです。また「Corporate Governance」の頭文字を取ってCGコードと略す場合もあります。
実効的な企業統治の実現に役立つ主要な原則を取りまとめたものです。
また、コーポレートガバナンス・コードと似ている言葉にコーポレートガバナンス(企業統治)があり、簡単に説明すると、企業の経営状況を監視する仕組みです。
他にも、イギリスで制定されたスチュワードシップコードというガイドラインもあります。
詳しくは次章で解説します。

コーポレートガバナンスとは

コーポレートガバナンスとは企業統治と訳される言葉で、会社が、株主や顧客などの考えを取り入れて、公平・迅速に決断するためのルールを示したものです。
株主や会社に関わる人々の利益を高めるため、企業のトラブルを防ぎ、会社の価値を長期的に上げることを目指しています。
なお、コーポレートガバナンス・コードにおけるコーポレートガバナンスは以下のように定義されています。
「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する
引用:コーポレートガバナンス・コード ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~ (改訂案)

スチュワードシップコードとの違い

スチュワードシップコードとは、2010年にイギリスで定められた、金融機関を中心にした投資家の理想的な振る舞いを示すガイドラインのことです。金融危機が深刻化した原因は、金融機関が投資した企業の経営を十分に監視していなかったことだと考え、対策として設置されました。
スチュワードシップコードとコーポレートガバナンス・コードの違いは、対象者や目的です。スチュワードシップコードは主に機関投資家を対象としているのに対して、コーポレートガバナンス・コードは主に上場企業自体を対象としています。
またスチュワードシップコードは、投資家が投資先企業の経営に対して責任ある態度で関わり、そのための指針や行動原則を提供することが目的です。

一方でコーポレートガバナンス・コードは、企業の透明性や公正性を高め、企業の成長や価値の向上を目指す取り組みやルールを設定することを目的としています。

コーポレートガバナンス・コードが制定された背景

コーポレートガバナンス・コードとは?基本原則や特徴・改定ポイントを解説

2014年6月、政府は「『日本再興戦略』改訂2014-未来への挑戦-」を閣議決定しました。日本企業の持つ稼ぐ力を養うために決定されたもので、新たに講ずべき具体的施策のひとつとして「コーポレートガバナンス・コード」の策定を掲げました。本文には「持続的成長に向けた企業の自律的な取組を促すため、東京証券取引所が、新たにコーポレートガバナンス・コードを策定する。」と明記されています。

東京証券取引所は金融庁と共同して有識者会議において、基本的な考え方を取りまとめ、翌年2015年6月に策定され、上場会社に適用されました。企業価値の向上や収益力の強化を図ることで企業は持続的成長の取り組みを行っています。

コーポレートガバナンス・コードの基本原則5つ

コーポレートガバナンス・コードとは?基本原則や特徴・改定ポイントを解説

コーポレートガバナンス・コードの基本原則は5つあります。

  • 株主の権利・平等性の確保
  • 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
  • 適切な情報開示と透明性の確保
  • 取締役会等の責務
  • 株主との対話

それぞれについて詳しく見ていきましょう。なお、ここで言う「ステークホルダー」とは、何らかの形で企業と利害関係にある人や組織のことを指します。

株主の権利・平等性の確保

株主の権利・平等性の確保とは、上場会社が株主の権利を実質的に確保されるよう適切に対応することで、株主もまた権利を適切に行使できるよう整備を行うことをいいます。

具体例として上場会社は少数株主を含めたすべての株主に対して平等に権利行使されるよう充分配慮を行い、株主総会で株主が適切な判断を下せるよう必要な情報は必要に応じて提供することがあります。

株式会社東京証券取引所で定義されている基本原則は主に以下のとおりです。

上場会社は、株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行うとともに、株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うべきである。 また、上場会社は、株主の実質的な平等性を確保すべきである。 少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使に係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分に配慮を行うべきである。

引用:コーポレートガバナンス・コード ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~

株主以外のステークホルダーとの適切な協働

株主以外のステークホルダーとの適切な協働とは、上場会社は持続的な成長および中長期的な企業価値の創出は株主以外のステークホルダー(従業員や顧客、取引先、債権者、地域社会など)によるリソースの提供や貢献の結果であることを認識することです。

企業が守るべき法令の遵守はもとより、企業倫理や地球環境、社会貢献等に対する考え方を含めて経営理念を制定したりしています。

株式会社東京証券取引所で定義されている基本原則は主に以下のとおりです。

上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働に努めるべきである。

取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮すべきである。

引用:コーポレートガバナンス・コード ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~

適切な情報開示と透明性の確保

適切な情報開示と透明性の確保とは、上場会社は、会社の財務情報や、経営戦略やリスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むことをいいます。

ひとつの例として、株主およびステークホルダーにとって重要と判断される情報について非財務情報を含めた自社のウェブサイトや東京証券取引所等のウェブサイトなどを通じて、積極的に情報開示を行ったりしています。

株式会社東京証券取引所で定義されている基本原則は主に以下のとおりです。

上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。

その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。

引用:コーポレートガバナンス・コード ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~

取締役会等の責務

取締役会等の責務とは、上場会社の取締役会は株主に対する説明責任などを踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促して収益力・資本効率等の改善を図るべく役割・責務を適切に果たすことをいいます。

監督機能と業務執行機能の分離を行ったり、独立社外取締役を専任したりするほか、実効性の高い監督の実現に取り組んでいる事例があります。

株式会社東京証券取引所で定義されている基本原則は、主に以下のとおりです。

上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべく、

(1) 企業戦略等の大きな方向性を示すこと
(2) 経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと
(3) 独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと をはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。

こうした役割・責務は、監査役会設置会社(その役割・責務の一部は監査役及び監査役会が担うこととなる)、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社など、いずれの機関設計を採用する場合にも、等しく適切に果たされるべきである。

引用:コーポレートガバナンス・コード ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~

株主との対話

株主との対話とは、上場会社の経営陣は株主総会の場以外でも株主との間で建設的な対話を行うべきことをいいます。経営陣は株主との対話を通じて株主の関心や懸念に耳を傾け、経営陣は経営方針などをわかりやすく株主を含むステークホルダーに説明しなければなりません。

具体的な施策例として、アナリストや機関投資家向けに決算説明会や第2四半期決算説明会を開催したり、株主向けには株主総会後経営陣が出席し株主懇親会を実施したりしています。

株式会社東京証券取引所で定義されている基本原則は以下のとおりです。

上場会社は、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主総会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うべきである。

経営陣幹部・取締役(社外取締役を含む)は、こうした対話を通じて株主の声に耳を傾け、その関心・懸念に正当な関心を払うとともに、自らの経営方針を株主に分かりやすい形で明確に説明しその理解を得る努力を行い、株主を含むステークホルダーの立場に関するバランスのとれた理解と、そうした理解を踏まえた適切な対応に努めるべきである。

引用:コーポレートガバナンス・コード ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~

コーポレートガバナンス・コードの一覧

コーポレートガバナンス・コードとは?基本原則や特徴・改定ポイントを解説
コーポレートガバナンス・コードの構成は以下のとおりです。

第1章 株主の権利・平等性の確保
【基本原則1】
【基本原則1-1. 株主の権利の確保】
【基本原則1-2. 株主総会における権利行使】
【基本原則1-3. 資本政策の基本的な方針】
【基本原則1-4. 政策保有株式】
【基本原則1-5. いわゆる買収防衛策】
【基本原則1-6. 株主の利益を害する可能性のある資本政策】
【基本原則1-7. 関連当事者間の取引】第2章 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
【基本原則2】
【基本原則2-1. 中長期的な企業価値向上の基礎となる経営理念の策定】
【基本原則2-2. 会社の行動準則の策定・実践】
【基本原則2-3. 社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題】
【基本原則2-4. 女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保】
【基本原則2-5. 内部通報】
【基本原則2-6. 企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮】第3章 適切な情報開示と透明性の確保
【基本原則3】
【基本原則3-1. 情報開示の充実】
【基本原則3-2. 外部会計監査人】第4章 取締役会等の責務
【基本原則4】
【基本原則4-1. 取締役会の役割・責務(1)】
【基本原則4-2. 取締役会の役割・責務(2)】
【基本原則4-3. 取締役会の役割・責務(3)】
【基本原則4-4. 監査役及び監査役会の役割・責務】
【基本原則4-5. 取締役・監査役等の受託者責任】
【基本原則4-6. 経営の監督と執行】
【基本原則4-7. 独立社外取締役の役割・責務】
【基本原則4-8. 独立社外取締役の有効な活用】
【基本原則4-9. 独立社外取締役の独立性判断基準及び資質】
【基本原則4-10. 任意の仕組みの活用】
【基本原則4-11. 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】
【基本原則4-12. 取締役会における審議の活性化】
【基本原則4-13. 情報入手と支援体制】
【基本原則4-14. 取締役・監査役のトレーニング】第5章 株主との対話
【基本原則5】
【基本原則5-1. 株主との建設的な対話に関する方針】
【基本原則5-2. 経営戦略や経営方針の策定・公表】

引用:コーポレートガバナンス・コード ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~

コーポレートガバナンス・コードの特徴

コーポレートガバナンス・コードとは?基本原則や特徴・改定ポイントを解説

コーポレートガバナンス・コードの特徴としてプリンシプルベース・アプローチ(原則主義)とコンプライ・オア・エクスプレイン(comply or explain)の手法を採用しています。それぞれの特徴を理解しなければ、法令違反に該当してしまう可能性もあるため注意が必要です。

プリンシプルベース・アプローチを採用している

プリンシプルベース・アプローチとは、原則のみを考えて詳細についてはそれぞれの上場会社に判断をゆだねる手法です。つまり、細かいことは上場企業が決めていいというものです。

反意語としてルールベース・アプローチ(細則主義)があります。上場会社のとるべき行動などを細かくルール化して定める手法です。市場は常に変動しており、細かなルールを大元が設定しても実情に合わなくなる可能性があります。ルールベース・アプローチを採用することで、上場会社はコーポレートガバナンス・コードの原則の趣旨を理解し、自社状況に合わせて判断・適用できるのです。

コンプライ・オア・エクスプレインを採用している

もうひとつの特徴に、コンプライ・オア・エクスプレイン(comply or explain)を採用している点があります。コーポレートガバナンス・コードの原則を実施しないもののうち本来実施する必要があるものについて、株主やステークホルダーなどに対して実施しない理由を説明しなければならないという決まりです。

こちらはプリンシプルベース・アプローチとは異なり、すべての上場会社はコーポレートガバナンス・コードの原則を実施しない理由を証券取引所に報告する義務があります。

コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない場合の措置

コーポレートガバナンス・コードとは?基本原則や特徴・改定ポイントを解説

コーポレートガバナンス・コードは「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない場合、理由を説明するのか)の手法を採用しています。各原則を実施しないからといってなんらかの罰則が科されることは、本記事執筆時点ではありません。ただし各原則を実施しない場合、上場会社は理由をガバナンス報告書での説明が上場規則で定められているのです。

一方で、上場会社がコーポレートガバナンスに関する報告書での説明がない場合、公表措置等の対象となる可能性があります。企業行動規範の「遵守すべき事項」に上場会社が違反したうえで改善の必要性が高いと認められると、証券取引所は該当の上場会社に対してその後の経過および改善措置を記載した改善報告書の提出を求めることとしています。

証券取引所からの指示があったにもかかわらず該当の上場会社が改善報告書の提出の求めに応じない場合、上場契約において重大な違反を行ったとして上場廃止となるため、注意しなければなりません。

コーポレートガバナンス・コード改訂の流れ

コーポレートガバナンス・コードとは?基本原則や特徴・改定ポイントを解説

コーポレートガバナンス・コードが2015年に制定されて以降、これまで二度改訂されました。それぞれ時代の変化にあわせて改訂されており、徐々に具体的になっている部分もあります。コーポレートガバナンスは3年ごとに改訂されており、次回は2024年に改訂予定です。

ここでは、2018年と2021年の代表的な改定を見ていきましょう。

2018年の改定

企業と投資家との対話を通じてコーポレートガバナンス改革をより実質的なものへと深化させていくため、またコードの改訂が提言されたことを踏まえて、提言に沿って改定されました。

2021年の改定

コロナ禍やそれに伴う働き方の変革、コロナにおける企業戦略の検討などの課題に向き合っていた時期。近年世界的な課題となっているESGやSDGs、サステナビリティ・気候変動対応などの課題があり、企業の存在意義の再確認が求められました。さらに2022年に東京証券取引所が「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」に市場区分されることも手伝って改定に至りました。

2021年に改訂されたコーポレートガバナンス・コードのポイント

コーポレートガバナンス・コードとは?基本原則や特徴・改定ポイントを解説

2021年に改定されたコーポレートガバナンス・コードのポイントとして、押さえておくべき以下の3点があります。

  • 取締役会の機能発揮
  • 企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保
  • サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取り組み

それぞれの詳細を詳しく解説します。

取締役会の機能発揮

取締役会の機能発揮として、以下の点を挙げています。

  • プライム市場上場企業において、独立社外取締役を3分の1以上の選任し、必要であれば過半数の選任の検討が望ましい
  • プライム市場上場会社は構成員の過半数を独立社外取締役が占める指名委員会や報酬委員会の設置が望ましい
  • 中長期的経営の方向性や事業戦略と照らして、必要なスキルが確保されているのかは重要。各取締役の有するスキルを開示することにより適切な取締役会が機能発揮できる

取締役会の機能が迅速かつ実効性のあるものにするために規定されています。社外取締役の存在が形式的にならないために、細かく規定が設けられたのも特徴です。

【原則4-11】

取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、ジェンダーや国際性、職歴、年齢の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである。また、監査役には、適切な経験・能力及び必要な財務・会計・法務に関する知識を有する者が選任されるべきであり、特に、財務・会計に関する十分な知見を有している者が1名以上選任されるべきである。 取締役会は、取締役会全体としての実効性に関する分析・評価を行うことなどにより、その機能の向上を図るべきである。

【補充原則4-11①】

取締役会は、経営戦略に照らして自らが備えるべきスキル等を特定した上で、取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したいわゆるスキル・マトリックスをはじめ、経営環境や事業特性等に応じた適切な形で取締役の有するスキル等の組み合わせを取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。その際、独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべきで取締役会の機能発揮に関する原則・補充原則は以下のとおりです。

【原則4-8】

独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、プライム市場上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも3分の1(その他の市場の上場会社においては2名)以上選任すべきである。 また、上記にかかわらず、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、過半数の独立社外取締役を選任することが必要と考えるプライム市場上場会社(その他の市場の上場会社においては少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社)は、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。

【補充原則4-10①】

上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名(後継者計画を含む)・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする独立した指名委員会・報酬委員会を設置することにより、指名や報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり、ジェンダー等の多様性やスキルの観点を含め、これらの委員会の適切な関与・助言を得るべきである。 特に、プライム市場上場会社は、各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とし、その委員会構成の独立性に関する考え方・権限・役割等を開示すべきである。

引用:コーポレートガバナンス・コード ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~

企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保

企業の中核人材に多様性(ダイバーシティ)を持たせることが求められています。それらを確保するには、経営陣の意識改革が必要とされており、以下のポイントでの実行が求められています。

  • コロナ後の不連続な変化に対応し、新たな成長を実現するには、経営陣にも多様な視点や価値観が必要
  • 取締役会や経営陣を支える管理者層にジェンダーや国際性、職歴、年齢等の多様性(ダイバーシティ)が確保され、中核人材が経験を重ねて取締役や経営陣に登用されるしくみを構築するのが必要
  • 将来的に女性、外国人、中途採用者の管理職への登用、中核人材の登用における多様性の確保についての考え方や自主的かつ測定可能な目標を明示
  • 多様性の確保に向けた人材育成、社内環境整備方針を実施状況とあわせて開示

企業の中核人材に多様性(ダイバーシティ)の確保に関する原則・補足原則は以下のとおりです。

【補充原則2-4①】

上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである。 また、中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針をその実施状況と併せて開示すべきである。

引用:コーポレートガバナンス・コード ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~

サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取り組み

改定されたコーポレートガバナンス・コードでは、上場会社にサステナビリティに関して基本的な方針を策定するほか、その取り組みの開示を求めています。

  • 中長期的な企業価値に向けて、リスクとしてではなく、収益機会としてサステナビリティに注目
  • サステナビリティは従来要素の強かったE(環境)より、近年の人的資本の投資等のS(社会)の要素に有用性も指摘されており、効果的な取り組みが望ましい
  • 従来は「取締役会はサステナビリティの課題に積極的・能動的に取り組むよう検討すべきである」という記述が、今回の改定で「検討を深めるべきである」と踏み込んだ表現となっており、上場会社はさらなるサステナビリティを促進してもらいたいといった表現に変化している

サステナビリティをリスクと捉える企業も少なくはなく、その考え方にストップをかけた形です。文言も一部変更されており、今後の企業経営に欠かせない要素となるでしょう。

サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取り組みに関連する原則・補充原則は以下のとおりです。

【補充原則2-3①】

取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り組むよう検討を深めるべきである。

【補充原則3-1③】

上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。 特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。

【補充原則4-2②】

取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、自社のサステナビリティを巡る取組みについて基本的な方針を策定すべきである。 また、人的資本・知的財産への投資等の重要性に鑑み、これらをはじめとする経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行が、企業の持続的な成長に資するよう、実効的に監督を行うべきである。

引用:コーポレートガバナンス・コード ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~

まとめ

コーポレートガバナンス・コードは、2015年に東京証券取引所と金融庁とで策定された上場会社が遵守する決まりがあり、5つの基本原則のほかコンプライ・オア・エクスプレインを採用しているなどの細かいポイントがあります。しかし、正当な理由を説明すれば基本原則を遵守する必要はないため、そこまで恐れることではないでしょう。

上場を検討する場合、コーポレートガバナンス・コードを理解することが必須です。会社は経営者だけのものでないことを認識し、コーポレートガバナンス・コードの基本事項を理解して上場を目指す際の参考としてください。

よくある質問

コーポレートガバナンス・コードとは?

コーポレートガバナンス・コードとは、企業が顧客や株主・社員や地域社会などの立場を踏まえた上で、透明で公正かつ迅速で果断な意思決定を行うための仕組みを意味します。

コーポレートガバナンス・コードの基本原則とは?

コーポレートガバナンス・コードの基本原則は5つあり、 株主の権利・平等性の確保、 株主以外のステークホルダーとの適切な協働、適切な情報開示と透明性の確保、取締役会等の責務、株主との対話です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

コーポレートガバナンスの関連記事

新着記事