• 作成日 : 2023年9月6日

内部監査の目的をわかりやすく解説|設置義務のある会社や不正事例も紹介

内部監査は上場企業に設置義務があり、経営目標の達成やリスクマネジメントを目的に行われます。その際、企業ごとに計画を実施するため、専門的な知識が必要です。

本記事では内部監査の目的を説明したうえで、内部監査の設置義務のある会社や不正事例などを解説します。これから内部監査の実施を検討している企業の担当者はぜひ参考にしてください。

内部監査の目的

内部監査の目的をわかりやすく解説|設置義務のある会社や不正事例も紹介
内部監査の目的は、以下の3つがあります。

  • リスクの低減や不正の防止
  • 経営目的の達成に向けた助言
  • 業務の有効性や効率性の向上

それぞれ詳しく見ていきましょう。

リスクの低減や不正の防止

内部監査では、重大なトラブルを起こして企業の信頼を失わないよう、リスクの低減や不正を防止します。

社内の不正行為や問題点の有無を調査することで早期に発見し、改善するのです。その結果を企業の監査役などが分析・評価し、リスクを管理します。

内部監査の際に活用されるのが、業務プロセスが適切に守られているか確認するための内部監査チェックシートです。監査対象の業種や職種に応じて、チェック項目が変わります。

内部監査チェックシートを活用することで、企業の業務プロセスが適切に実行され、業務効率化や不正防止、目標達成がされているか可視化できます。

経営目的の達成に向けた助言

企業の経営目標を達成するために、リスクマネジメントやガバナンスプロセスの観点から業務の実施状況や組織を評価し、アドバイスします。

結果に基づいて意見を述べ、改善策を提案することは、組織体制の強化・改善に繋がるからです。

組織が経営目標を効果的に達成するには以下が必要です。

  • 適切な経営管理体制を確立する
  • 事業活動を効率的に推進する
  • 組織のメンバーが規律を守る
  • 組織のメンバーが士気を高める
  • 社会的な信頼を築いていく

内部監査はこれらの要素を評価し、有効な改善策を提案し、実現に向けて支援します。

業務の有効性や効率性の向上

内部監査では、企業の目的設定状況や社内規定に則った業務の実施状況を調査し、業務の有効性や効率性の向上を図ります。

業務の有効性や効率性の向上を図ることで、「経営者が組織を適切にコントロールしているか」「従業員が働きやすい環境の構築に繋がっているか」などを把握できるからです。

有効性とは、計画した活動が遂行され、結果が達成されているかを評価することです。評価とは、計画に沿った管理が求められる「方針管理」と「日常管理」のことを指します。

  • 方針管理:経営者が策定した品質方針に基づいて管理者が品質目標を設定し、トップダウンのアプローチで管理を行う
  • 日常管理:各プロセスオーナーが担当するプロセスを日常的に管理し、監視項目や管理基準を設定・監視し、異常を検出した場合には原因追及と是正対策を確実に実施する

内部監査の設置義務がある会社

内部監査の目的をわかりやすく解説|設置義務のある会社や不正事例も紹介
内部監査は、主に企業の目標達成やリスクマネジメントをするために行われています。内部監査を実施していない企業もあるものの、一方で設置が義務化されている企業もあります。

設置義務がある企業は、以下の通りです。

2006年の会社法により、大企業に内部監査の実施が義務付けられました。取締役会を持つ会社は監査役を、大規模な会社は監査役会を設置することが求められます。また、上場会社は「有価証券報告書」および「内部統制報告書」の提出が必要であり、内部統制報告書の作成には内部監査の実施が不可欠です。

一方で、中小企業は内部監査を義務付けられていませんが、リスク管理の観点から、自主的に内部監査を設置する企業も存在します。中小企業でも不正行為や問題の見逃し、隠蔽などが日常化している企業もあり、内部監査なしでは気づけない場合があるからです。

実際、重大なトラブルが突然発生し、倒産や大きな損害賠償金の支払いが発生した事件も起きています。

内部監査を実施することで異常事態や不正を未然に防ぐことができるでしょう。

企業の不正事例

内部監査の目的をわかりやすく解説|設置義務のある会社や不正事例も紹介
では、不正行為や問題の見逃し、隠蔽から具体的にどのような重大なトラブルが発生するのでしょうか。

本項では、内部監査の必要性を理解してもらえるよう、企業の不正事例について説明していきます。

  • 架空請求で金銭を騙し取った事例
  • 借入増額部分を親会社に環流させた事例
  • 個人的な儲けのために子会社から不正に引き出した事例

それぞれ詳しく見ていきましょう。

架空請求で金銭を騙し取った事例

元社員が一緒に働いていた同僚や外部の関係者と協力して、実際に業務を行っていない業者に仕事を発注し、架空の請求を作り出してお金を騙し取る事例がありました。被害金額は7億8,910万円です。

元社員は、優れた営業担当者として周囲から評価されており、自身も「売上や利益に貢献しているのだから、その一部は自分の報酬として受け取っても差し支えない」と考えていたと言います。営業の幹部としてかなりの収入を得ていましたが、高級クラブでの飲食や高級車、ゴルフ会員などを維持するには会社からの給与だけでは不十分だと感じたそうです。

そのため、会社の内部統制システムやガバナンスの脆弱性を狙って、架空の請求を作り出しお金を騙し取りました。

2012年2月、国税局の税務調査により判明し、銀行が発注したプロジェクトに対して支払われた外部委託費用に対応する実際の作業が行われていなかった点を調査され、犯罪行為が明るみに出ました。

借入増額部分を親会社に環流させた事例

親会社からの強い配当要請により、会社がリファイナンス(資金の借り換え)の借入金を増やす際に、金融の仕組みを利用してお金を親会社に渡していた事例もあります。

この会社は親会社が全株を所有しているため親会社の意向に強く影響を受けており、取締役会や各委員会、執行役会のメンバーは基本的に親会社の指示に従う形になっていました。そのため、親会社の要望に従って金融機関とのリファイナンスを進めたことについては、「問題行動ではない」との認識があったのです。

事件の発端は、親会社からの強い配当要請でした。会社は臨時執行役会を開催しましたが、その詳細は公開されませんでした。

また、直近決算で、会社の合併財務諸表において「のれん勘定残高」が総資産に対して大きな割合を占めていることが判明し、これに対して監査法人が意見を述べ、監査室が内部統制のプロセス評価を行う中で明らかとなりました。

個人的な儲けのために子会社から不正に引き出した事例

創業家出身の経営者が2010年4月から2011年9月までの間に子会社から計105億円を不正に引き出し、その資金を海外のカジノで使い込んで会社に大きな損害をもたらした事例もあります。

この経営者は、「会社は創業家の所有物であり、会社の資金をどのように使用するかは自分で決められる」という自己中心的な意識を持っていました。またグループ内でも「会社は創業家の所有物である」という意識とともに、彼らに絶対的な服従が求められる企業文化が浸透しており、「創業家が会社の資金を浪費するはずがない」という固定概念があったのです。

この事件は、連結子会社が会長の個人口座に3億円を振り込んだというメールが関連事業部宛に届き、発覚しました。

まとめ

内部監査は、リスクマネジメントやコンプライアンスの順守、ガバナンスの強化が正しく行われているかを調査するために行われます。企業の経営目標を達成するための重要な役割であるため、会社法上で大企業に分類される企業や取締役会がある企業、上場予定の企業において設置は義務です。

とはいえ、不正行為を見逃すことは後に大きなトラブルを招きかねないため、中小企業であっても内部監査の実施は検討する余地があるでしょう。

よくある質問

内部監査を実施する目的は?

内部監査を実施する目的は、主に以下の3つです。

  • リスクの低減や不正の防止
  • 経営目的の達成に向けた助言
  • 業務の有効性や効率性の向上
社内の不正行為やリスクの有無を調査し、早期に発見して改善し、不祥事を未然に防ぎます。内部監査の際には、業務プロセスが守られているか確認するための内部監査チェックシートが必須です。

内部監査の設置が義務なのはどのような会社?

内部監査の設置が義務づけられているのは、主に会社法上の大企業の一部や上場している企業です。2006年の会社法改正などにより、決定しました。 上場企業は、有価証券報告書と内部統制報告書の提出が必須であり、内部統制報告書の作成には内部監査の実施が必要です。 中小企業には内部監査の義務は課されていませんが、多くの中小企業がリスク管理などの観点から自主的に内部監査を導入しています。中小企業でも社内の不正行為や問題の見逃し、隠蔽などが恒常化していると、気づかないうちに重大な事件を引き起こしかねないためです。


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