• 作成日 : 2024年10月28日

IPO準備企業の経理の役割とは?上場準備における業務内容を解説

IPOを実現するためには、透明性の高い財務報告とコンプライアンスの遵守が欠かせません。

上場企業として遜色のない内部体制を構築し、監査も増えることから、経理業務をしっかりと行える人材を配置することが大切です。

そこで本記事では、IPO準備における経理部門の重要性や経理が担当する具体的な業務などを解説します。

IPO準備における経理部門の重要性

IPO準備企業の経理の役割とは?上場準備における業務内容を解説
IPO準備における経理部門の重要性としてあげられるのは、投資家や監査法人に正確で詳細な財務情報を共有する必要があることです。

本項では、以下2つについて詳しく深掘りしていきます。

  • IPOに向けた経理の役割と責任
  • 上場準備企業と一般企業の経理業務の違い

IPOに向けた経理の役割と責任

IPOを実現するには、証券取引所の審査に通過しなければなりません。そのためには、経理がIPOの準備段階で財務諸表の整備を行い、過去の財務データを適切に管理する必要があります。

投資家や監査法人に正確で詳細な財務情報を提供することが求められるため、ミスが許されない業務です。特に会計基準に従った適正な処理が必要となるため、会計知識と規則への理解が必要です。

また、経理はIPOに向けた内部統制の強化に必須な業務となります。

内部統制は、財務情報の正確性を保証するだけでなく、コンプライアンスの徹底も図るため、経理部門は監査法人や証券会社との連携を保ちながら、これらの体制を整える責任を負います。

上場準備企業と一般企業の経理業務の違い

上場準備企業は、証券取引所に上場するための準備を進める段階で、特に厳格な財務管理と透明性が求められます。

具体的な業務は、以下の通りです。

  • 金融商品取引法に基づいた会計基準の適用
  • 部門別やセグメント別での会計
  • 予算と実績の対比(その説明も含む)
  • 監査法人による財務諸表の監査対応
  • 財務諸表の開示

特に財務報告の頻度や内容が厳格に定められており、内部統制の強化や外部監査対応が必要不可欠です。

一方、一般企業の経理業務は、主に日常的な取引の記録と財務報告の作成が中心となります。

財務報告の形式や頻度は、上場企業に比べて比較的自由度が高く、内部統制も比較的簡素なものとなることが一般的です。

IPO準備企業の経理が担当する具体的な業務

IPO準備企業の経理の役割とは?上場準備における業務内容を解説
IPO準備企業の経理が担当する業務は、大きく以下に分けられます。

  • 財務諸表の作成と管理
  • 内部統制システムの構築
  • 外部機関への対応

財務諸表の作成と管理

IPO準備企業の経理部門は、通常の中小企業に求められる企業会計とは異なり、一般に公正妥当と認められる会計基準に則った財務諸表を作成することが求められます。

具体的には、決算短信有価証券報告書などに掲載する財務諸表の作成が必要です。

これらの業務は、企業の財務健全性を示すための基盤であり、IPOの成功に直結する要素です。

内部統制システムの構築

内部統制とは、企業が適切な経営判断を行い、不正や誤謬を防止するための仕組みで、財務報告の信頼性を確保するために必要です。

内部統制システムの構築は、主に以下の通りです。

  • 経理規程の整備と運用
  • 経理と財務の分離

具体的には、取引の記録や承認プロセスを透明化し、適切な監視体制を確立することが求められます。例えば、複数の部署によるチェック体制を導入することで、誤った取引や不正な処理が行われないようにするのが基本です。

経理部門は、こうしたプロセスの整備と運用を通じて、財務報告における正確性と一貫性を確保します。

外部機関への対応

IPOを目指す企業では、金融庁や証券取引所、監査法人、証券会社など、複数の外部機関と密接に連携することが求められます。

財務報告や内部統制の状況を外部監査法人に適切に開示し、監査を受ける必要があります。

経理部門は、財務諸表の作成に加え、監査法人からの質問や指摘に対応し、資料の提供や改善案を迅速かつ正確に行う責任があるのです。

IPO成功に向けた経理部門の強化ポイント

IPO準備企業の経理の役割とは?上場準備における業務内容を解説
IPO成功に向けた経理部門の強化ポイントは、主に以下の通りです。

  • 経理業務の内製化と人材育成
  • 上場企業レベルの経理スキルの習得
  • 経理業務の年間スケジュール管理

経理業務の内製化と人材育成

IPO成功に向けた経理部門の強化には、経理業務の内製化と人材育成が大切です。理由は、企業が上場プロセスを順調に進め、投資家や規制当局の信頼を獲得するために重要だからです。

内製化の主な利点は、企業の財務情報がよりリアルタイムで把握できる点にあります。

上場を目指す企業は、財務諸表の正確性と透明性が特に重要であり、内製化することで、データの取り扱いや報告のプロセスを一貫して管理することが可能です。

上場企業レベルの経理スキルの習得

上場企業レベルの経理スキルの習得が大切です。ここでいう上場企業レベルの経理スキルとは、主に以下の通りです。

上場企業レベルの経理スキル

上記スキルを踏まえると、会計・税務などの知識は必ず持っておかなければなりません。

特に決算短信や四半期報告書、有価証券報告書の作成などがあるため、日商簿記2級相当のスキルが必要となります。

経理業務の年間スケジュール管理

上場準備においては、財務報告や監査対応、内部統制の強化など、多岐にわたるタスクが発生するため、それらを計画的に管理することが大切です。

特に決算作業や監査、開示など一般企業の経理業務にプラスした業務が発生します。

まずはどんなタスクがあるかを明確にし、「いつこなすのか」「どのくらい時間をかけて対応するのか」をしっかりと定めることが重要です。

進捗管理シートをエクセルやGoogleスプレッドシートで作成し、社内で管理するようにしましょう。

IPO準備段階で経理が取り組むべき重要タスク

IPO準備企業の経理の役割とは?上場準備における業務内容を解説
IPOを達成するために準備段階で経理が取り組むべき課題として、主に以下が挙げられます。

  • 財務基盤の強化と業績向上
  • 経理業務のスリム化と効率化
  • 前倒しでの準備と計画的な対応

財務基盤の強化と業績向上

財務基盤の強化は、企業の財務的な安定性を確保することが目的です。IPOに向けて、経理部門は現状の財務状況を徹底的に見直し、資産や負債の健全性を高める必要があります。

具体的には、キャッシュフローの安定化や負債の圧縮、資金調達の最適化を図ることが求められます。

企業が長期的に安定した経営を維持できる体制を整え、投資家に対してリスクが低く魅力的な投資先であることを示すことができるでしょう。

経理業務のスリム化と効率化

IPOを成功させるためには、社内外の多くのステークホルダーに対して透明で信頼性のある財務情報を提供することが求められます。

無駄が多ければ作業時間がそれだけ多くなり、ミスが増えてしまう要因になりかねません。

業務プロセスを見直し、無駄を省きながら正確かつ迅速な財務報告が大切です。

例えば、手作業で行っている処理をデジタルツールやクラウドベースのシステムを導入し、複数の部門や関係者がリアルタイムでデータにアクセスできる環境を整えるといった感じです。

財務報告のスピードや精度が向上し、上場に向けたプロセスが円滑に進むことが期待できます。

前倒しでの準備と計画的な対応

IPOに向けた準備は多岐にわたるため、突発的な対応ではなく、十分な時間をかけた計画的な進行が求められます。

前倒しの準備とは、通常の業務に加えて、IPOのために必要となる特別な手続きや開示資料の作成を、事前に整えていくことです。

これには、財務諸表の整備や内部統制システムの構築、外部機関との連携といった作業が含まれます。

特に過去数年分の財務諸表を厳密に管理し、監査を受けることが求められるため、通常の決算業務に加えて、追加の負担がかかります。

IPO後を見据えた経理体制の構築が重要

IPO準備企業の経理の役割とは?上場準備における業務内容を解説
IPOに向けて経理業務の見直しをする際、上場後を見据えた準備が重要です。ここでいう準備とは、主に以下2つが該当します。

  • 定期的な監査対応の準備
  • 適時開示体制の整備

定期監査に対応するためには、日々の財務処理が正確かつ一貫性を持って行われるように、経理業務の全体を見直し、改善することが求められます。

特に資産管理や債権債務の記録、収支管理の精度が求められ、ミスや不備がないようにすることが大前提です。

また、財務状況の変化、業績の見通し、重要な契約の締結や解消、その他の経営に関わる重要な事項を早期に察知し、経理部門を中心にこれらの情報を取りまとめることも大切です。

まとめ

IPO準備において経理部門は、投資家や監査法人に正確で透明性の高い財務情報を提供するための重要な役割を果たします。

特に財務諸表の作成や内部統制の強化が求められるため、経理部ではIPO実現に伴いやるべきことを明確にし、それぞれの役割を担うことが大切です。

計画的な対応と前倒し準備がIPO達成への大きなステップとなるため、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

よくある質問

上場企業と非上場企業の経理の違いは?

上場企業は証券取引所に株式を公開しているため、法律で定められた基準に従う必要があります。 財務諸表の作成において国際財務報告基準(IFRS)や日本基準(J-GAAP)などのより厳密な会計基準を遵守することが求められます。 加えて、四半期ごとの決算発表や、有価証券報告書などの定期的な財務報告が義務付けられており、企業の財務状況や業績について詳細な情報を公表しなければなりません。 一方、非上場企業は株式を公開していないため、財務報告の義務は比較的軽くなります。 非上場企業でも、法的には企業会計原則等に基づいて財務諸表を作成する必要はありますが、その内容や形式は上場企業に比べて柔軟です。

IPO準備企業の経理職は激務?

IPO準備企業の経理職は、通常の経理業務に加えて、上場に向けた業務もあるため、中小企業の経理業務に比べると忙しくなる傾向があります。 IPOを成功させることで、企業全体の財務基盤を強化し、自身のキャリアにおいても非常に価値のあるスキルや知識を習得できるため、激務ながらも大きなやりがいを感じられる場面が多い職務です。


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