• 作成日 : 2024年4月24日

私募債とは?概要、メリット、デメリット、発行の流れを解説

私募債は、スタートアップ企業やベンチャー企業が利用できる資金調達方法の一つです。資金調達といえば銀行からの融資を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、私募債を上手に活用すれば、短期間で資金を調達でき、事業成長を促進することにつながります。
そこでこの記事では、私募債のメリット・デメリット、注意点、そして発行のプロセスついて説明します。

私募債とは

私募債とは、企業が資金調達をするために有価証券を発行し、少数の投資家などが引き受ける社債の一種です。非上場企業が、株式を公開せずに資金を集める方法として利用します。
特に、金融機関や限定された投資家グループに向けて発行され、広く一般に公募されることはなく、企業は比較的柔軟な条件で資金を集めることが可能です。

私募債には3つのタイプがあります。
「プロ私募債」は銀行や証券会社などの専門機関を対象にしています。
「少人数私募債」は一般の投資家に債券を提供します。特に、経営者の友人や親族、取引先などが購入することが一般的です。
そして「銀行引受の私募債」は銀行が投資家を集める債券です。銀行が債券を買い取り、その後投資家に販売します。

公募債との違い

私募債と公募債は社債の種類を示します。これらの違いは非上場株式と上場株式との関係に相似しています。

私募債は、少数の個人や投資家に個別に打診して販売されます。一方公募債は、上場株式の取引のように証券会社を通じて広く購入者を募ります。

基本的に公募債の方が広範囲から資金を調達できますが、証券会社などに支払う手数料も発生します。一方、特定の個人に社債を買ってもらえる見込みがある場合、私募債の方がより経費を抑えることが可能です。

私募債のメリット

この章では私募債のメリットについて説明します。

メリット1.資金調達コストが低い

資金調達の際にかかる費用が少ないことが、私募債の大きなメリットです。私募債は公募債と比べて資金調達の規模が小さく、社債管理者の設置などの手続きが不要です。投資家などから直接的に資金を調達することでコストを削減できます。

メリット2.資金調達を実施しやすい

銀行などの金融機関からの借り入れは、企業が資金を調達する際によく使われる方法の一つです。しかし、事前に担保を用意することなどが必要です。一方私募債であれば、事前の担保などが不要ですので、資金調達が容易でスムーズに行えます。

メリット3.信用力の向上につながる

発行された社債は証券保管振替機構に記録・公開されるため、高い信用力を持つ企業であることを広く知らせる効果も期待できます。

また銀行保証付私募債と信用保証協会保証付私募債は、銀行・信用保証協会の審査を通過した企業だけが発行できるため、高い信用力をアピールできます。一定の財務基準を満たした優良企業のみがこれらを発行できます。

メリット4.発行手続きが簡単

私募債は、公募債と比べて手続きが簡単です。

公募債は大規模な資金調達を目指し、多額の社債を発行して幅広い投資家に販売しますが、法律による厳格な規制があります。公募債を発行する場合は、有価証券届出書や有価証券報告書の提出など、約1ヵ月程度の手続きが必要です。また、発行後も社債管理者を設置し、債権者の保護に努めるための社債管理委託契約を結ぶ必要があります。

一方、私募債ではこれらの手続きを省略して社債を発行できます。そのため、資金を早く調達したいスタートアップ企業などにとって、都合の良い方法といえます。

メリット5.安心して契約できる

私募債は、個人間の貸し借りと比べて、契約や条件が一定のフォーマットに従っているため、双方が安心して取引できます。

スタートアップ企業などに出資する場合、口約束や簡素な契約書での取引となるケースもあるとされています。しかし私募債では、「金銭貸借契約書」などの書類を使用し、契約内容や不利な点を見極めることで、トラブルや問題を未然に防ぐことができます。

私募債のデメリット

この章では私募債のデメリットについて説明します。

償還条件の変更ができないこと

銀行からの融資では、業績が悪化して返済が難しくなった場合に、銀行に返済条件の変更を依頼することがあります。しかし、私募債では発行時に設定した条件を変更することはできません。
そのため、長期的な資金計画を厳格に管理し、償還期限になったら元金は一括で返済しなければなりません。

大きな資金を集めにくい

私募債は購入者数が制限されており、一度に多額の資金調達を図ることが難しい場合があります。特に少人数私募債では、募集人数が50人未満に限られているため、大きな資金を集めることが難しいです。

銀行引受の私募債は手数料が高いこと

私募債を発行したいが、関係者や取引先から十分な資金を集めることができない場合もあります。そのような場合でも、銀行に私募債を引き受けてもらえます。

ただし、銀行が私募債を引き受ける際には、事務手数料や引受手数料、保証会社の保証料などさまざまな手数料がかかります。金額は銀行によって異なりますが、数百万円から数千万円かかることもあります。

節税効果はない

以前は、少人数私募債において源泉分離課税を利用して節税する手法が一般的でした。しかし、2013年に税制改正が行われ、現在ではこの方法での節税が難しくなっています。

具体的には、2013年の税制改正により、同族会社の役員などが受け取る社債利息には、以前の源泉分離課税ではなく総合課税が適用されるようになりました。その結果、役員などの高所得者が利子所得を得た場合、給与所得と合算されて高い税率が課されることになりました。

私募債発行の流れ

この章では私募債発行の流れを説明します。

1 事業計画を作成し決議を受ける

まず、社債の目的となる事業計画を策定し、必要な資金額や償還期間を明確にします。募集要項や勧誘書などの作成に際しては、社内会議や株主総会での決議が必要です。

2 社債引受人の決定・勧誘

社債を引き受ける人を決め、説明会に参加してもらって勧誘を行います。

3 申込受付・審査

引受希望者に対して審査と申込手続きを行い、認識の相違がないかを最終確認します。

4 発行金額の決定・募集決定通知書の作成

発行総額や引受人数、発行件数を確定し、口数や金額、振込口座などを記載した募集決定通知書を引受人宛てに送ります。

5 申込金額の受領・社債券の発行

引受人から社債の購入金額を受け取り、社債券を発行します。引受人に関する個人情報や購入金額などは社債原簿に記録します。

6 社債の償還

償還期間が終了すると、引受人に元本を償還します。全ての社債が償還されると、私募債に関連する手続きは完了です。

まとめ

この記事では、私募債の概要、メリット・デメリット、発行以降の流れについて詳しく解説いたしました。

私募債は通常の借入や公募債とは違い、手続きが簡単で最低限のコストで資金調達できます。ただし、私募債の発行には一定のリスクがあることや、万が一の事態を想定しておくべきだということを忘れないようにしましょう。

本記事を参考にしながら、ぜひ私募債の発行を検討してみてください。


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