• 更新日 : 2022年7月28日

上場が承認される基準は2種類!審査の流れや準備をわかりやすく解説

上場とは、証券取引所で自社の株式を売買できるようになることを指します。上場の意味はわかっていても、上場が承認されるための2種類の基準を理解している人は少ないのではないでしょうか。

本記事では、東京証券取引所への上場に関して知りたい初心者に向けて、基準の具体例を挙げながらわかりやすく紹介しています。さらに、上場するまでの流れや、上場が承認をされるためにやるべきことも解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。

上場承認されるための基準の種類

上場が承認される基準は2種類!審査の流れや準備をわかりやすく解説
上場が承認されるための基準(承認基準)には、形式基準と実質基準の2つがあります。承認基準は、各証券取引所が公開しており、上場する企業はこれらを満たすことが求められます。

形式基準では、上場にあたってクリアしなければならない流通株式数や利益水準といった数値関連の基準が定められています。一方、実質基準とは、上場を認めるかどうかを判断する基準となる、具体的な項目を指します。例えば、東京証券取引所では、後述する5つの項目が定められています。

上場承認されるための形式基準

上場が承認される基準は2種類!審査の流れや準備をわかりやすく解説
形式基準は上場する3つの市場、すなわちプライム市場、スタンダード市場並びにグロース市場によって異なります。各市場の概要は、以下の通りです。

  • プライム市場:高いガバナンス(企業統治)を備えている企業のための市場
  • スタンダード市場:基本的なガバナンス水準を備えている企業のための市場
  • グロース市場:相対的にリスクが高い企業のための市場

形式基準の1つの項目が、株価と流通株式数を乗じた時価総額です。時価総額の基準は、グロース市場、スタンダード市場、プライム市場になるにつれて高くなります。また、プライム市場のみに、純資産が50億円以上という厳しい基準が設けられています。ちなみに、他の2つの市場では、純資産が「プラスであること」が基準です。

プライム市場

プライム市場とは、多くの機関投資家の投資対象となるような時価総額(流動性)があり、安定株主の株式の保有比率が高くならないような高いガバナンス(企業統治)を備えている企業のための市場です。プライム市場に新規上場する基準は、以下の表の通りです。

項目基準値
株主数800人以上
流通株式数2万単位以上
流通株式時価総額100億円以上
売買代金時価総額250億円以上
流通株式比率35%以上
財政状態連結純資産50億円以上、かつ単体で純資産が負でない

スタンダード市場

スタンダード市場とは、一般投資家が円滑に売買できるほどの適切な時価総額(流動性)があり、上場会社として基本的なガバナンス水準を備えている企業のための市場です。スタンダード市場に新規上場する基準は、以下の表の通りです。

項目基準値
株主数400人以上
流通株式数2千単位以上
流通株式時価総額10億円以上
売買代金-
流通株式比率25%以上
財政状態連結純資産額が正(プラス)であること

グロース市場

グロース市場とは、高い成長性を実現するための事業計画、またはその進捗が適時・適切に開示されていて一定の市場評価があり、そのうえで事業実績から判断して相対的にリスクが高い企業のための市場です。グロース市場に新規上場する基準は、以下の表の通りです。

項目基準値
株主数150人以上
流通株式数1千単位以上
流通株式時価総額5億円以上
売買代金-
流通株式比率25%以上
財政状態-

上場承認されるための実質基準

上場が承認される基準は2種類!審査の流れや準備をわかりやすく解説
上場が承認されるためには、形式基準だけでなく、実質基準も満たす必要があります。実質基準には以下の5つの項目があります。

  • 企業の継続性および収益性
  • 企業経営の健全性
  • 企業のコーポレートガバナンスおよび内部管理体制の有効性
  • 企業内容などの開示の適正性
  • その他公益または投資者保護の観点から東証が必要と認める事項

各項目をわかりやすく解説していきます

企業の継続性および収益性

商品やサービスを販売する事業が、一時的な活動ではなく長期間にわたって行われているか。また、売上から原価や税金などを差し引いた金額がプラスであり、利益を生みだしているかを証券取引所が審査します。さらに、利益は今後も継続的に生み出せるか、といった将来性も重要視されます。

企業経営の健全性

法律を守って事業活動が行われているか、あるいは子会社が親会社に頼ることなく、自らの裁量によって事業を営んでいるか、などが審査されます。また、役員は親族のみで構成されていないか、あるいは他社の役員を兼業しても業務に支障がないか、なども審査の対象です。

企業のコーポレートガバナンスおよび内部管理体制の有効性

コーポレートガバナンスとは、企業統治と訳されます。会社は経営者ではなく、株主のものという考えに基づき、経営を監視する仕組みです。例えば、役員が親族のみで構成されるのではなく、社外取締役が設置されているか、などがあります。

内部統制とは、不祥事を防ぎ、業務が適切に行われるための仕組みです。例えば、事業活動に必要な予算の予定と実績が管理されているか。あるいは、社員が出退勤した時刻が管理されており、企業が不当な時間外労働をさせていないか、が審査されます。

企業内容等の開示の適正性

投資家が正しい判断をするために必要な情報を、企業が定められた時期に不足なく公開できる体制が整えられているかが審査されます。また自己の利益のために、公表する前の自社情報を使った内部取引を未然に防ぐ仕組みが整備されているかもポイントです。

その他公益または投資者保護の観点から当取引所が必要と認める事項

投資家を保護するために必要な項目、例えば反社会的勢力との繋がりがないかなどが審査されます。

上場申請から承認までの流れ

上場が承認される基準は2種類!審査の流れや準備をわかりやすく解説
上場を申請する企業が、証券取引所に上場を申請して承認されるまでのおおまかな流れは以下の通りです。

  1. 書面による質問・ヒアリング
    数百にものぼる質問に答えていきます。通常3回ほど行われます
  2. 実地調査
    本社や工場といった現場の視察がなされ、事業実態の把握および会計帳簿の管理状況の確認などが行われます。
  3. 監査法人/代表者/監査役/独立役員へのインタビュー
    どのような運用で役割を果たしているのか、会社が抱える問題点はないかなどが問われます。
  4. 証券取引所への会社説明会
    証券取引所に対して、会社の沿革や事業内容、事業計画等の説明を実施します。
  5. 上場承認公表
    上記プロセスを経て、晴れて証券取引所ホームページにて、株式の上場承認がなされた旨が公表されます。

詳しい手順と項目の詳細は、以下の記事で説明しています。
内部リンク:IPO(上場)審査概要とポイント、近年の傾向について

上場承認されるためにやるべきこと

上場が承認される基準は2種類!審査の流れや準備をわかりやすく解説
上場が承認されるために企業がやるべきことを、準備期と申請期に分けて紹介します。上場するまでの期間は、3年間を見ておくとよいでしょう。なぜなら、上場する直前の2期間の監査が義務付けられているからです。つまり、「過去2年の経営が適切におこなわれたか?」を第三者から評価されます。したがって、上場の3年前から準備にとりかかるのが望ましいと言えるのです。

準備期にやるべきこと

準備期は、直前々期(N-2期)以前、直前々期(N-2期)、直前期の3つに分けられます。

直前々期(N-2期)以前は、上場に向けた体制の構築にあてられます。具体的には以下の通りです。

  • IPOに向けた事業計画・資本政策の策定
  • 監査法人の選定
  • 主幹事証券会社の選定
  • IPO準備プロジェクトチームの結成
  • IPOコンサルタントの選定

なお、プロジェクトチームの結成やコンサルタントの選定は、紹介したよりも早い段階で行われることもあります。

直前々期(N-2期)は、主に社内の体制整備にあてられます。具体的には以下の通りです。

  • ショートレビューの実施
  • 内部管理体制の整備

直前期は、上場の申請に必要な手続きの準備にあてられます。具体的には以下の通りです。

  • 内部管理体制の運用
  • 信託会社(株式事務代行機関)の決定
  • 上場申請書類の作成

申請期にやるべきこと

申請期は、上場するのに適性があるかを審査される期間です。上場を申請する企業が、やるべきことは以下の通りです。

  • 証券会社の引受審査
  • 証券取引所による上場審査
  • ファイナンス業務

なお、証券会社の引受審査は、直前期に行われることもあります。

上場承認されためにやるべきことは、こちらの記事で詳しく解説しています。
内部リンク:IPOスケジュールを公開。上場までにやるべきこととは?

まとめ

上場が承認されるための基準には、形式基準と実質基準の2種類があります。形式基準は、上場する市場により設定されている数値基準が異なります。また、実質基準は投資家を保護する観点から、5つの項目が定められています。上場が承認されるまでに企業がやるべきことは、準備期と申請期によって異なります。審査には、上場する直前の2期分の決算情報などが必要となるので、3年以上前から準備に着手する必要があることを覚えておくとよいでしょう。

よくある質問

上場承認に関する、よくある質問について答えていきます。

上場承認されるための基準は?

形式基準と実質基準の2種類があります。形式基準は、上場する市場によって基準が以下の様に異なります。

上場維持基準プライムスタンダードグロース
株主数800人以上400人以上150人以上
流通株式数20,000単位以上2,000単位以上1,000以上
流通株式時価総額100億円以上10億円以上5億円以上
流通株式比率35%以上25%以上25%以上
財政状態連結純資産50億円以上
かつ単体純資産の額が負でないこと
連結純資産が正
利益の額(連結)最近2年間の利益の額の総額が 25 億円以上であること
または
最近1年間における売上高が 100 億円以上である場合で、かつ、 時価総額が 1,000 億円以上となる見込みのあること
最近1年間における利益の額が1億円以上であること

また、実質基準は5つの項目があります。

  • 企業の継続性および収益性
  • 企業経営の健全性
  • 企業のコーポレートガバナンスおよび内部管理体制の有効性
  • 企業内容などの開示の適正性
  • その他公益または投資者保護の観点から東証が必要と認める事項

上場承認されるまでの流れは?

上場が承認されるまでの流れは、以下の通りです。

  1. 書面による質問・ヒアリング
  2. 実地調査
  3. 監査法人/代表者/監査役/独立役員へのインタビュー
  4. 証券取引所への会社説明会
  5. 上場承認公表

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:中川崇

田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。