• 更新日 : 2022年7月28日

ストックオプションにおける会計処理(時系列)・税務処理について解説

近年、ストックオプションを導入し従業員や役員に付与することで業績の拡大を目指している会社があります。しかし、なかには会計処理や税務処理が複雑で、導入を見送っている企業もあるでしょう。

本記事では、ストックオプションとは何かについてと付与や行使・および失効に際しての仕訳方法、税務処理について解説します。ストックオプション導入を検討されている人や、会社で導入されているけど仕訳方法に疑問を持っている人は参考にしてください。

ストックオプションとは

ストックオプションにおける会計処理(時系列)・税務処理について解説

ストックオプションとは、会社が従業員および取締役に対して会社の株式をあらかじめ定めた価格(権利行使価格)を期間内に行使して株式を取得する権利を与える制度で、新株予約権の一種です。

例えばストックオプションの対象者に、「今後3年間であればいつでも1,000円で500株まで購入できる」権利を与えた場合、その後会社の業績が伸びて1株2,000円になっても対象者が権利を行使すれば、1株あたり1000円で株式を取得できます。その結果、最大(2,000円-1,000円)×500株=50万円の収入が得られるようになるのです。

ストックオプション制度を導入することにより、会社として以下のメリットがあります。

  • 従業員たちのモチベーションが上がる
  • 人材流出を回避できる
  • 優秀な人材を確保できる
  • 権利を付与された従業員たちにリスクがない

ストックオプションの詳細は「ストックオプションとは?発行前に知っておきたい仕組みやメリットを徹底解説!」を参考にしてください。

ストックオプションの会計処理を時系列で紹介

ストックオプションにおける会計処理(時系列)・税務処理について解説
ここでは、具体的な数字を示して会計処理を時系列で説明します。本記事で使用する数値は以下のとおりとします。

対象者50人
評価単価1,000円
ストックオプションの権利行使価額(1株当たり)2,000円

ストックオプションを付与したときの会計処理

会社がストックオプションを付与した時の仕訳は、次のとおりになります。

借方貸方
(株式報酬費用)50,000円(新株予約権)50,000円

計算方法は、評価単価に対象人数をかけた合計となります。この場合、評価単価1,000円×対象者50人=50,000円となり、借方には費用勘定の株式報酬費用として、貸方には資本勘定の新株予約権を勘定科目として起票してください。

ストックオプションの権利が行使されたときの会計処理

対象者50人中20人が行使した場合、以下のように会計処理を行います。

借方貸方
(当座預金)40,000円
(新株予約権)20,000円
資本金)60,000円

対象者20人がストックオプションの行使価額2,000円で行使したと仮定すると、対象者が会社に払い込む金額は2,000円×20人=40,000円となり、会社の資産勘定である当座預金が40,000円増加します。また、借方に対象者20人がストックオプションを行使したことで、資本勘定の新株予約権が減少した分を起こさなければなりません。この場合、1,000円×20=20,000円を借方に新株予約権20,000円を起こす必要があります。

貸方には借方の当座預金と新株予約権の合計額、つまり40,000円+20,000円=60,000円を資本勘定の資本金に振り替えなければなりません。

ストックオプションの権利が失効したときの会計処理

ストックオプションの権利行使期間が過ぎ、権利が失効したときの仕訳についても解説します。なお下表の数値と計算式は、先に出てきた権利行使をした従業員以外の30人が、権利を行使しなかったと仮定した場合です。

借方貸方
(新株予約権)30,000円(新株予約権戻入益)30,000円

対象者30人がストックオプションの権利行使を行わなかったため、貸方にある資本勘定の新株予約権(1,000円×30人=30,000円)が失効します。そのため、借方に新株予約権30,000円を起こすことにより、貸方の新株予約権を相殺するのです。

貸方には収益勘定である「新株予約権戻入益」を起こします。これは、当初費用勘定として「株式報酬費用」を起こし費用計上していたものの、実際には費用として20,000円しか使われていなかったためです。そのため、収益勘定の「新株予約権戻入益」を計上し、使われなかった費用を戻し入れしなければなりません。

【ケース別】ストックオプションの税務処理

ストックオプションにおける会計処理(時系列)・税務処理について解説
ストックオプションは、税制適格要件を満たすか否かで次の2種類に分けられます。

  • 税制適格ストックオプション
  • 税制非適格ストックオプション

それぞれの税務処理方法が異なるため、以下で詳しく解説します。

税制適格ストックオプションの税務処理

税制適格ストックオプションとは、付与者が権利行使し株式を取得したときに発生した利益に対する課税が、株式売却時まで繰り延べ(先送り)できる制度です。つまり、税制適格ストックオプションでない税制非適格ストックオプションの場合、付与者はストックオプションを行使したときに発生する利益および株式売却に発生する利益の両方に所得税がかかってきます。

税制適格ストックオプションとして認められるためには以下の条件をクリアしなければなりません。

【税制適格ストックオプションの適用条件】

  1. ストックオプションの取得者にかかる要件
  2. 付与対象者自社および関連会社の取締役・従業員、およびその相続人(監査役不可)。社外人材でも適用可能な場合もある
    所有株式数非上場の場合は発行済株式の3分の1を超えない。上場の場合は10分の1。

  3. ストックオプションの発行内容および行使の要件
  4. 権利行使期間付与決議日の2年~10年後
    権利行使価格契約締結時の時価≦行使価格
    権利行使価額の制限権利行使価額が年間で1200万円を超えない
    譲渡制限他人への譲渡禁止
    発行形態無償

  5. ストックオプションのその他の要件

株式の交付会社法に反しないこと
保管・管理等の契約証券会社等と契約していること(付与時は不要)
その他の事務手続き法定調書、権利者の書面等の提出(権利行使時)

従業員にストックオプションを付与する場合、税制適格ストックオプションになるよう設計するのが一般的です。税制適格ストックオプションにすることで、税制面で優遇を受けることができるためです。

権利を付与された従業員にかかる課税タイミングと会社の損金算入タイミングは以下のとおりです。

 付与者の課税タイミング会社の損金算入タイミング
ストックオプションを付与したとき課税なし損金算入しない
ストックオプションの権利を行使したとき課税なし損金算入しない
取得した株式が売却されたとき課税あり(譲渡所得)なし

例えば付与者が50万円の時価株式をストックオプションにより20万円で取得し、70万円で売却した場合は次のとおりになります。

  • ストックオプションの権利を行使したとき
    株式時価50万円-取得価額20万円=30万円となり、利益は出るものの税制適格ストックオプションの場合は課税なし。
  • 取得した株式を売却したとき
    売却価格70万円-株式取得価格20万円=50万円となり売却益である50万円が譲渡所得として課税対象となる。

会社としての税務処理は一切なく、権利を行使した従業員が株式を売却した際に発生した売却益に対して課税されるのみです。税制適格を受ける基準が厳しい反面、従業員・会社にとってもメリットが大きいストックオプションと言えます。

税制非適格ストックオプションの税務処理

税制非適格ストックオプションとは、付与者がストックオプションを行使した時に発生する利益、および株式売却に発生する利益の双方に所得税がかかってきます。課税・損金算入は次のとおりです。

 付与者の課税タイミング会社の損金算入タイミング
ストックオプションを付与したときなし損金算入しない
ストックオプションの権利を行使したとき課税あり(給与所得損金算入する
取得した株式が売却されたとき課税あり(譲渡所得)なし

先の例と同様に、税制非適格ストックオプションで付与者が50万円の時価株式をストックオプションにより20万円で取得して70万円で売却した場合、次のとおりになります。

  • ストックオプションの権利を行使したとき
    株式時価50万円-取得価額20万円=30万円となり、利益である30万円が給与所得として課税対象となる。
  • 取得した株式を売却したとき
    売却価格70万円-ストックオプション行使時の株式の時価50万円=20万円となり、売却益である20万円が譲渡所得として課税対象となる。

つまり、税制非適格ストックオプションでは、ストックオプションの権利行使時(給与所得)および株式売却時(譲渡所得)の2度課税されます。また、会社としても権利行使された際には損金算入をしなければなりません

注意する点として、ストックオプションを行使して得た株式を長期間保有する場合、権利行使時に発生した給与所得に対する納税資金を株式売却資金以外から調達する必要があります

まとめ

ストックオプションには、税制適格ストックオプションと税制非適格ストックオプションがあり、税制適格ストックオプションにはさまざまな条件があるため会社はクリアする必要があります。会計処理・税務処理は複雑ですが、従業員のモチベーションアップには大きく貢献できるでしょう。

ストックオプションを付与することにより従業員たちのやる気が向上し、業容の拡大が見込まれるよう、ストックオプションを正しく理解することが必要です。

よくある質問

ストックオプションの会計処理が必要なタイミングはいつ?

ストックオプションの会計処理が必要なタイミングに次の3つのケースがあります。

  • ストックオプションを付与したとき
  • ストックオプションの権利が行使されたとき
  • ストックオプションの権利が失効したとき

ストックオプションの仕訳はどうすればよい?

ストックオプションの仕分けは、付与・権利行使時・権利失効時で次のように分かれています。

【ストックオプションを付与したとき】

借方貸方
(株式報酬費用)×××(新株予約権)×××

【ストックオプションの権利が行使されたとき】

借方貸方
(当座預金)×××
(新株予約権)×××
(資本金)×××

【ストックオプションの権利が失効したとき】

借方貸方
(新株予約権)×××(新株予約権戻入益)×××


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:中川崇

田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。