• 更新日 : 2022年8月16日

マネーフォワードクラウドpresents「& money」 株式会社カオナビ取締役 CFO橋本公隆さんに聞く!(前編)

マネーフォワードクラウドpresents「& money」 株式会社カオナビ取締役 CFO橋本公隆さんに聞く!(前編)

さまざまな企業のリーダー、ファイナンス部門の方にフォーカスを当て、その仕事や企業の成長戦略の裏側、その仕事術に迫ります。今回お話を伺ったのは、株式会社カオナビ取締役 CFO橋本公隆さん。社員の個性・才能を発掘し、戦略人事を加速させる、タレントマネジメントシステム「カオナビ」を提供するIT企業。前編では、カオナビの事業について、そして2019年のIPOについてお話をお伺いします。

プロフィール

橋本公隆
三洋電機株式会社にて資金調達や金融機関との渉外業務を担当。その後、三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社にてM&Aアドバイザリーや資金調達等の投資銀行業務に従事。2018年株式会社カオナビにジョイン。現在、取締役CFO。趣味は旅行、釣り。

田中泉
インタビューをはじめ多方面で活動。9年間アナウンサーを務めたNHKでは「ニュースウオッチ9」「クローズアップ現代+」など報道番組を中心に国内外で最新のニュース・事象を幅広く取材。経済分野では数々の企業取材・経営者インタビュー・ノーベル賞受賞者への英語インタビューなどの実績がある。趣味は素敵なお店の開拓。1988年生まれ。

人材情報を可視化 企業の人事戦略を支援

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田中 まずはカオナビがどんな会社か教えていただけますでしょうか。

橋本 カオナビには「“はたらく”にテクノロジーを実装し、個の力から社会の仕様を変える」というパーパス=存在意義があります。そのパーパスのもと、テクノロジーによって、一人ひとりの個性や才能を理解することで、個人のキャリア形成や働き方、そういったものを多様化していくような社会の実現を目指しています。その実現のために、「人材情報を一元化したデータプラットフォームを築く」というビジョンを掲げ、企業の人材情報をクラウド上で一元管理して、データ活用のプラットフォームとなるタレントマネジメントシステム「カオナビ」を提供しています。具体的にプロダクトとしての「カオナビ」は、社員の顔や名前、評価やスキルといった人材情報を可視化することで、最適な人材の配置や抜擢など企業の人事戦略を支援するようなシステムです。これまではこういった人材情報がバラバラに管理されていたので、それらを一元管理したい、人事業務や評価運用を効率化したい、さらに採用のミスマッチを防ぎたい、スキル管理をしたいといった様々なニーズに応えるために導入いただいているプロダクトです。

田中 いわゆる人材マネジメントシステム、タレントマネジメントシステムの先駆者が「カオナビ」であった?

橋本 はい、そうですね。「カオナビ」以前だと、ERPの一部で人事情報を管理するというテキストベースのシステムがありました。名前があって、所属があってというエクセルがそのままシステム化されたようなイメージです。「カオナビ」は誰かを探そうと思ったときに顔写真があってパッとわかりやすいので、UIの面で大きな成果をもたらしたと思っています。

田中 「カオナビ」はどんな企業が導入しているのでしょう?

橋本 業界や企業の規模にはあまり特徴がなく、あらゆる業界で活用されています。企業の規模も、従業員が数十名の会社から数万名の規模の会社まで使われているので、結構幅広いです。

田中 幅広く受け入れられている理由は?

橋本 どんな組織でもやはり“人”がいますよね。人材管理というのは、どの業界にも必要なことだと思いますので、特定の業界に偏ることがないのかなと思っています。会社でなくても、例えば、学校法人、医療法人など色々な組織がありますが、そこにも人がいるので、幅広く人材管理のニーズがあると思っています。

田中 今日初めてオフィスにお邪魔して、まずカフェ風の「kaonavi」と英語で書いてある入り口に驚いて、中に入ったら、キャンプのようなテントがあったり、あるいはこのミーティングルームの名前もフキノトウという名前が付いていたり、とてもユニークだなと思いました。会社はどんな雰囲気ですか?

橋本 部署によって違うと思いますが、カルチャーという面で言うと、結構オープンかなと思います。それこそ会社の経営方針であったり、プロダクトのロードマップであったり、そういうものは、基本、全社員が知っているんです。そういった戦略的なことも含めて、すべて公開されているので、新しく入ってくる社員には透明度が高いと言われます。

田中 若い社員の方も多いのでしょうか?

橋本 若い社員も多いですね。また、転職で入ってくるメンバーが非常に多いので、そういう意味では、サポーティブなメンバーが多いかなと思っています。

田中 リモートでの業務も多い中で、社員をまとめて、一体感をつくるために、どんなことをされているのでしょう?

橋本 パーパスやビジョンがしっかりと一人ひとりの従業員に落とし込まれています。そこがブレなければ、たぶん大きな方向性はブレないと思うんです。だからそれを徹底しています。

田中 一人ひとりがそのパーパスをきちんと自分の中に落とし込んで、それぞれ行動できる社員の方が揃っているという感じでしょうか。

橋本 はい。自立性の高い社員が多いかなと思います。

田中 橋本さんが束ねる財務部門、コーポレート部門。こちらはどのくらいの方が所属されていてどんな雰囲気なのでしょうか?

橋本 所属は20人くらいです。コーポレート部門や私の所属している経営企画もそうですが、あまり和気あいあいという感じではないですね。自立性の高い人が多くて、それぞれの仕事にプロ意識を持って業務に取り組んでいます。

田中 マネジメントはどのようにされているのでしょうか?

橋本 リモートワークになってくると、結果が重要になってくるので、その結果や成果物を見ています。しっかりとした結果が出ているのであれば、それでうまくいっているなという感じです。

30代後半 転職の決め手は直感

田中 2019年3月に株式会社カオナビは当時の東京証券取引所マザーズ市場に上場されました当時のことをどう振り返られますか?

橋本 今回インタビューを受けるのに振り返ってみたのですが、結構いろいろと忘れていて、もう3年前じゃないですか。記憶が薄れてきていて、この3年のあいだにコロナとか環境変化もあって。IPO準備って開示の文章をつくったりとか、内部統制を強化して上場企業としてあるべき内部管理体制をつくったりとかあるんですが、それができたとしても、業績もあるし、さらに株式市場の状況によってはIPOができないということもあるので、そういった意味では、IPOをできるときにしっかりと出来たというのが良かったのかなと思います。

田中 橋本さんがカオナビにジョインされたのが、IPOの前の年、2018年。

橋本 はい。もともと新卒でメーカーに入って財務部門で働いていました。財務部門で働くと、いろいろな金融機関と折衝して一緒に仕事をする機会が多くなるのですが、なかなか経験値を積めないというか、自分たちの会社のことしか経験できないし、担当できる範囲も狭いんです。そうなってくると、ある程度の知識を得られ、経験が積めるタイミングがかなり先になると思って、それで、金融機関で働くほうがいろいろなものを先取りできるのかなと。それで証券会社に転職しました。そこで経験を積んで、また事業会社に戻るというキャリアプランがあったのですが、結構、その投資銀行、証券会社の世界が自分の中では面白くて、思ったよりも長く居てしまいました。でも年齢的に30代の後半に差し迫ったころに、自分は事業会社に行くんだったということを改めて思い返して、転職に動いたという感じです。

田中 何かキッカケがあったんですか?

橋本 直感ですよね。40歳を超えると、恐らくこういったスタートアップに転職するのはちょっと難しいんじゃないかなと思って。30代後半という年齢がトリガーになったかもしれないです。

田中 カオナビの会社については、どういうところに魅力を感じたのでしょうか?

橋本 まったく知らずに、転職のエージェントの方から紹介を受けて、代表の柳橋と話しましたが、第一印象としてすごいなと思いました。足元の状況だけではなくて、しっかりと将来を見据えていて、そのためにこの時点でこういうことが必要だとか、とてもロジカルに物事を考えていました。もっと言うと、カオナビが将来、より企業価値を高めていくために、自分たちに不足しているパーツは何なのかとか、そういうこともしっかりと考えていて、ロジカルに自己分析できているところはすごいなと思いました。

田中 そのロジカルな部分というのは、橋本さんとも共通するものがあったんですか?

橋本 そうですね。それはあったと思います。

IPOで大変だった3つのポイント

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田中 具体的な業務の中で、IPOされて大変だったことは?

橋本 テクニカルな言葉になりますが、エクイティ・ストーリーとバリュエーション、そしてオファリング・ストラクチャーという3つの論点があって、この3つは全部、独立しているわけではなくて、お互いに関連し合っています。バリュエーションとは、要するに一株当たりいくらで公募価格を付けますかっていう話です。エクイティ・ストーリーとは、そもそもカオナビという会社がどんな会社で、どんなプロダクトをつくっていて、どんな強みがあって、どのような市場でプレーしていて、どういう成長戦略でやっていくか。そうすれば、その市場が将来、どれくらい大きくなっていくとか、そういったことを投資家に訴求をしていくのですが、一般的なエクイティ・ストーリーは、そこまでで終わっている場合が多いですね。でも、それだけだと実は片手落ちで、大事なのはそのあとだと思っています。つまり、投資家とディスカッションした後、投資家は当然、それを受けて期待や懸念を持つわけです。そのときに持った懸念をどう打ち消すかというところまで、しっかりとロジックを持って考えることがエクイティ・ストーリーだと思っています。例が正しいかどうかわからないですが、例えば自分の子どもが「次の算数のテストで100点を取ります」と言うじゃないですか。まあ、これも立派なエクイティ・ストーリーです(笑)。でもそれだけだと、親としては、「いや、いや、1問もミスできないんだよ」とか、「ミスったりしない?」とか……。

田中 結構大変なんじゃないの?とかね。

橋本 それで子どもが、「自分は結構計算ミスをしたり見直しをしなかったり、そういうリスクがあるので、今回はそれをちゃんとやって100点を取ります」と言うと、「あ!なんかできそうだな」と思うじゃないですか?バックアップをしっかりと考えているなと。それは投資家も同じで、リスクを把握していない経営者って、あまり信頼できないと思うんですよね。リスクって、あまり言いたくないかもしれないですけど、自分たちにはこういうリスクがあるということを把握していて、それに対して、こうやって対処していきたいということを言えば、しっかりと考えているなという安心感にもつながるし、信頼関係がつくれると思うんです。なので、良いことだけ言うのではなくて、悪いところも踏まえたうえで受け答えを考えるというのが、大事かなと思っています。最後のオファリング・ストラクチャーとは、要するにIPOするときに、何株を市場に出すかという話です。その内訳は自由で、新株で発行してもいいし、既存の株主やVCに売ってもらってもいいわけです。ただ、最初に市場に出す株式の量が少なかったら、上場したあとにトレードされる株式の流動性が下がってきます。流動性が下がってくると、適正な株価が付きづらいんですよね。そうすると、やはり最初のファイナンスのときに、ある程度の規模の株式を出さなきゃいけない。そこでバリュエーションと絡みがあるのですが、バリュエーションが低いと、既存株主は売出しに消極的になります。IPOをして株価が上がったあとに売る方が、経済合理性で考えると良いですよね。売出しで株式の供給を増やせないからと、新株発行を増やそうとしても、やはり低いバリュエーションの中で新株発行をしようとすると、希薄化が大きくなって、当初想定していた資本戦略や株主戦略とは結構ズレてきたりもします。なので、そこのバランスが難しくて。どこを優先して、どこをギブアップするみたいなところは、悩んだところではありました。

田中 そこの舵取りはかなり大変だった部分ですか?

橋本 既存株主さんとも、議論を進め、最終的にはご協力していただいて、それなりのオファリングのサイズをつくることができたと思っています。

田中 それがうまく着地した。そのポイントというのは何だったとご自身ではお考えですか?

橋本 あきらめないこと(笑)。気持ちですけど。

田中 大事なことですよね。

橋本 あきらめないというか、投資家も頭のいい人たちなので、仮に売出しもなくて、カオナビがスモールのIPOをしたあと、株価がちゃんと付かなくてずっと低迷していたら、今よりももっと株価が下がるかもしれないというリスクが当然あるわけです。アップサイドを当然、狙いたいと思うはずですが、そのアップサイドを享受できないリスクだってあるじゃないですか。VCは、上場のときに自分たちだけが儲けるのではなくて、出資先を将来も成長させていくことに協力していく必要もあると思っていますので、そういうことをしっかりと議論することで、きちんとサポートしてくれました。

田中 エクイティ・ストーリーのときにリスクもきちんと伝えるとか、今のバリュエーションの話も、真面目にあきらめないという話も、今日、初めて橋本さんにお会いして冷静だなという印象があったんですが、客観的に本当に会社がどうすれば良くなるのかというところをしっかりと見つめて、それで冷静に伝えてらっしゃったのかなという印象を受けました。

橋本 投資家からも、淡々としているねって言われます(笑)。

IPO後に増した責任感

田中 IPO前と後で、会社、あるいは橋本さんご自身の中で何か変化はありましたか?

橋本 会社に変化はなかったですね。創業者もほかのメンバーも含めてIPOは通過点なんです。ゴールではなくて、それがスタート地点なので。上場パーティとかお祭り的なものは一切なかったです。「あ、上場したんだ」という感覚です。ただ、僕自身は違っていて、上場することで、知名度が上がるじゃないですか。そうすると、いろいろな投資家からIRのオファーをいただくのですが、投資家と接する機会が増えてきて、株主も増えていく中で、しっかりと情報開示をしなくてはいけないなとか、そういう責任感は増したなというのはあります。

田中 IPOが目的、目標ではなくて、そこから何をするのかっていうところに、当時から目線を据えていらっしゃったのでしょうか?

橋本 そうですね。私がカオナビを選んだ理由の一つでもあるんですが、最初に創業者の柳橋と話している中で、IPOはこのままいけばできると言っていました。ただ、IPOのあとに、企業価値を高めなければならない。そうすると資本市場とのコミュニケーションが大事になってくるわけで、そのノウハウとか、やり方が、自分たちには分からない。だからIPOはできるけど、IPO後のことを考えたら、絶対にCFOが必要だから、カオナビに入って欲しいということだったんです。やはり経営者自身がIPOを目的にしていないというところは、非常に大きかったですね。(後編に続く)

お話は後編に続きます。
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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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IPOサポートメディア編集部

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