• 更新日 : 2024年7月17日

赤字決算でも資金調達できる?メリット・デメリットや融資を受ける方法を解説

資金調達は、赤字経営を抱える企業にとって大きな挑戦です。赤字状態での資金調達の際、信用力の確保や資金調達先の選定が重要となります。

本記事では、赤字決算の概要やメリット、デメリットなどを詳しく解説します。

赤字決算とは

赤字決算でも資金調達できる?メリット・デメリットや融資を受ける方法を解説
赤字決算とは、企業が一定期間の経営活動を行った結果として、支出が収入を上回り、最終的に損失を出した状態のことです。

通常、企業の決算は年に一度行われ、この時に財務諸表を作成して収益と支出を計算します。

赤字決算の場合、企業の販売収入やサービスからの収益が、製品の製造コストや販売費、管理費、その他の運営費用をカバーできなかったことを意味します。

赤字決算になってもすぐに会社が倒産するわけではありませんが、赤字決算が続くと倒産のリスクがあるため、注意が必要です。

わざと赤字決算にする中小企業がある理由

赤字決算でも資金調達できる?メリット・デメリットや融資を受ける方法を解説
なかにはわざと赤字決算にする中小企業も存在します。

企業が赤字決算を申告することには以下のメリットがあります。

法人税を支払う必要がなくなる

中小企業が意図的に赤字決算を選択する一つの理由は、法人税の支払いを回避することです。法人税は企業の利益に基づいて課税されるため、利益がなければ税金の負担も発生しません。

法人税は以下の計算式で算出されます。

【法人税額=課税所得×税率−税額控除額】

赤字決算の場合、課税所得がないため、法人税もゼロになります。

そのため、一部の企業では、赤字を計上することで税金の支払いを避ける戦略を取ることがあります。

繰越欠損金控除を利用できる

繰越欠損金控除を利用するために、わざと赤字決算にする中小企業があります。

繰越欠損金控除とは、企業が一年で赤字を出した場合、その損失を将来の税年度に繰り越して利益から控除することができる税制上のメカニズムです。

赤字を計上した年には税金が発生しないため、その損失を翌年以降の利益が出た年に繰り越すことにより、その利益に対する課税額を減少させることができるのです。

参考:国税庁|No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除

法人税の還付金を受け取れる

法人税の還付金を受け取れることも、赤字決算を行うメリットです。

赤字決算をすると、その年の税務上の損失が発生します。もし企業が過去に予定納税で法人税を前払いしていた場合、実際の税負担が予定納税額を下回ることになり、過払い税金が発生します。

この過払い金は、企業に対して還付されるため、キャッシュ・フローに直接的なプラス効果をもたらすことがあるのです。

赤字決算のデメリット

赤字決算でも資金調達できる?メリット・デメリットや融資を受ける方法を解説
赤字決算のデメリットは、主に以下の通りです。

  • 金融機関から融資を受けづらくなる
  • 債務超過で倒産するリスクがある

詳しく解説します。

金融機関から融資を受けづらくなる

赤字決算は企業にとってさまざまなデメリットをもたらしますが、特に重要なのが金融機関からの融資を受けにくくなる点です。

金融機関は融資の際に企業の財務状況を詳細に分析し、返済能力を厳しく評価します。

赤字決算は、企業がその期間に収益を上げることができなかったことを示しており、その結果、収入が支出に追いつかず、財務上の不均衡が生じていることを意味します。

これにより、金融機関はその企業が将来的にも財務リスクを抱える可能性が高いと判断し、融資の承認を出しにくくなるのです。

債務超過で倒産するリスクがある

赤字決算が続くことは、企業にとって重大な財務的リスクを伴います。

赤字決算が何年にもわたって続くと、企業の収益力が損なわれ、その結果、負債の返済能力が低下します。

収益が生成されない場合、企業は運転資本を維持するためにさらに借入を重ねることが多く、これが債務の増大につながってしまうのです。

一度債務超過の状態になると、新たな融資を受けるのが困難になり、資金繰りの問題がさらに悪化する可能性があるでしょう。

赤字決済でも銀行融資を受ける方法

赤字決算でも資金調達できる?メリット・デメリットや融資を受ける方法を解説
赤字決算をしている企業が銀行融資を受けることは一般的に困難ですが、完全に不可能ではありません。

銀行は融資の際に企業の財務健全性や返済能力を重視するため、赤字の企業は通常、リスクが高いと見なされます。しかし、特定の条件下では、赤字企業でも融資を受けることが可能です。

赤字決算でも銀行融資を受けられるケースは、主に以下の通りです。

  • 起業2年目など創業期に当たる場合
  • 一時的な赤字ですぐに解消されると判断できる場合

起業初期は、初期投資や設備費用で赤字になることがよくありますが、売上が安定すれば利益を出すことができるため、この段階でも融資のチャンスは存在します。

また、災害や設備投資、固定資産の売却による一時的な赤字が発生しても、これらの要因が取り除かれた際に収益が回復する見込みがあれば、金融機関は融資の提供を検討する可能性があります。

赤字決算でも活用できる資金調達方法

赤字決算でも資金調達できる?メリット・デメリットや融資を受ける方法を解説
赤字決算のときにおすすめの資金調達方法として、主に以下の方法があります。

  • 日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金
  • 民間企業のファクタリングサービス

詳しく解説します。

日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金

赤字決算の状態でも利用可能な資金調達の選択肢の一つとして、日本政策金融公庫が提供する「経営環境変化対応資金」があります。

この資金は、経営環境の急激な変化に直面している企業を支援するために設計されており、経済的な困難を乗り越えるための手段を提供します。

経営環境変化対応資金は、外部環境の変化により一時的に業績が悪化した企業や、市場環境の変動に対応するための設備投資が必要な企業を対象としています。

例えば、自然災害による損害や急激な市場の変動、技術革新に対応するための新設備投資など、特定の理由による一時的な資金需要に応じることが可能です。

融資限度額直接貸付 7億2千万円
利率(年)基準利率(長期運転資金に限り、上限2.5%)
※信用リスク・融資期間などに応じて所定の利率が適用
※社会的な要因による一時的な業況悪化により資金繰りに著しい支障を来している方または来すおそれのある方のうち、次のいずれかに該当する方については、基準利率-0.4%(上限2.5%)
(1)原油価格上昇をはじめとした原材料・エネルギーコスト増の影響またはウクライナ情勢の変化の影響を受けており、かつ、最近における売上高総利益率または売上高営業利益率が前期に比し5%以上減少している方
(2)ALPS処理水の処分に伴う風評影響を受けており、かつ、最近における売上高が前期に比し5%以上減少している方
返済期間設備資金
15年以内(うち据置期間3年以内)
運転資金
8年以内(うち据置期間3年以内)

※2024年4月時点
出典:日本政策金融公庫|経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)

民間企業のファクタリングサービス

赤字決算の状態であっても、資金調達の方法として民間企業が提供するファクタリングサービスを活用する選択肢があります。ファクタリングは、企業が保有する未回収の売掛金を現金化する金融サービスで、資金繰りの改善や短期的な資金ニーズに応じるために有効です。

このサービスを利用することで、企業は売掛金を即座に現金に変換することが可能となり、融資を受ける際に必要とされる信用審査や担保の提供を回避できる場合があります。ファクタリングは特に、赤字決算による資金繰りの悪化を抱える企業にとって、直接的な資金供給源となるため、迅速な資金調達が必要な時に特に有効です。

まとめ

赤字経営を抱える企業が直面する資金調達の課題は大きく、信用力の維持や適切な資金調達先の選定が重要です。

赤字決算とは、支出が収入を上回り損失を記録することを指し、これが続くと倒産リスクも高まります。しかし、赤字決算時でも利用できる戦略として、法人税の負担軽減、繰越欠損金控除、法人税還付金の受け取りなどがあります。

これらを理解し適切に活用することで、資金繰りを改善し企業の持続可能性を高めることができるでしょう。

よくある質問

わざと赤字決算にする企業があるのはなぜ?

企業が赤字決算を申告すると、以下のメリットを享受できます。

  • 法人税を支払う必要がなくなる
  • 繰越欠損金控除を利用できる
  • 法人税の還付金を受け取れる
このメリットを目的に、わざと赤字決算とする企業も存在します。

赤字決算でも融資は受けられる?

結論から言うと、赤字でも融資は受けられます。とはいえ、審査を通過する難易度は高いです。 赤字決算でも、以下のようなケースに該当する場合は、銀行融資を受けられます。

  • 起業2年目など創業期に当たる場合
  • 一時的な赤字ですぐに解消されると判断できる場合


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