- 更新日 : 2024年12月4日
ベンチャー企業が上場するメリット・デメリット|基準や申請の流れを説明
ベンチャー企業とは、設立数年程度の比較的若い企業を指します。明確な定義はなく、資本金や創業年数などに基準があるわけではありません。ベンチャー企業が上場する際は、ほとんどの場合東京証券取引所のグロース市場へ上場することが多いです。2022年4月より、東京証券取引所ではプライム・スタンダード・グロースの3つの市場が設定され、そのうちグロース市場はベンチャー企業のような新興企業中心の株式市場です。
この記事では、ベンチャー企業が上場するメリットやデメリット、上場の基準や流れを解説します。これから上場を目指すベンチャー企業に役立つ情報をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ベンチャー企業が上場するメリット
まずは、ベンチャー企業が上場するメリットを説明していきます。ベンチャー企業が上場を目指す際、期待できるメリットは以下のとおりです。
- 資金調達がしやすくなる
- 管理体制が強化される
- 知名度が強化される
それぞれのメリットについて、詳しくみていきましょう。
資金調達がしやすくなる
ベンチャー企業が上場するひとつめのメリットは、資金調達しやすくなることです。通常、企業の資金調達は株式発行でおこないます。上場・非上場にかかわらず、株式発行は可能ですが、上場企業の場合は証券取引所をとおして、投資家が直接株式を購入できます。
しかし非上場の場合、投資家が直接企業から購入する必要があるため、多数の人が利用する証券取引所で取引される上場企業の株式より資金調達が難しいのがデメリットです。ベンチャー企業が上場すれば、直接取引だけでなく証券取引所での取引が開始されるため、資金調達しやすくなります。
管理体制が強化される
社内の管理体制が強化されることも、ベンチャー企業が上場するメリットのひとつです。上場のためには、証券取引所の審査に合格する必要があるため、一定以上の管理体制が整っている企業でないと上場できません。そのため、上場を目指すベンチャー企業は自ずと管理体制が強化されます。
管理体制が強化されるメリットは、企業の問題点を発見し、それを改善することで業務の効率化や合理化へとつながることです。上場に伴う管理体制の整備は、自社にとってもよい影響を与えます。
知名度が向上する
ベンチャー企業が上場するメリットとして、知名度の工場も挙げられます。日本取引所グループの「上場会社数の推移」によると、2021年末時点の上場企業で3,822社です。上場企業は毎年50社程度増え続けてはいるものの、日本の企業のなかではほんの一握り。上場企業が少ないことから、上場すれば知名度も向上します。
知名度が向上すれば、資金調達しやすくなったり、採用時に人が集まりやすくなったりするメリットもあります。また自社のサービスや商品の認知度も向上し、業績を伸ばしやすくなることもメリットです。
ベンチャー企業が上場するデメリット
ベンチャー企業が上場すると大きなメリットはありますが、一方で以下のようなデメリットもあります。
- 高額な費用がかかる
- 株主との対応コストが発生する
- 買収される可能性がある
ここでは、ベンチャー企業が上場するデメリットについて、詳しく解説していきます。
高額な費用がかかる
上場すれば、知名度も向上し求人が集まったり、業績が上がったりといったメリットもあります。しかしその分、上場にはそれ相応の費用がかかることも知っておきましょう。かかる費用は、上場前と上場時、上場後のそれぞれで異なりますので、各時期に分けて上場費用を紹介します。
【上場前】
- 監査法人の費用:500万円〜2,000万円
- 証券会社にかかる費用:200万円〜500万円
- 株式事務代行機関の費用:400万円
- 証券印刷会社の費用:500万円
- コンサルティング費用・500万円〜1,500万円
- 管理体制拡充のための人件費
コンサルティング費用については、ベンチャー企業によっては不要なケースもあります。
【上場時】
- 上場審査料:200万円
- 登録免許料:資本組入額×7/1,000
- 証券会社への成功報酬:500万円程度
証券会社への成功報酬は、報酬無料となっていることもあるため、証券会社によって0円〜500万円ほどの幅があります。
【上場後】
- 年間上場料:48万円〜408万円(上場時価総額による)
- 監査法人の費用:1,000万円〜2,000万円
- 株式事務代行機関の費用:400万円
- 証券印刷会社の費用:500万円
- 株主総会運営費用
年間上場料とは、上場を継続するために必要な費用です。上記の金額に、TDnet利用料12万円を加算した費用がかかります。
株主との対応コストが発生する
ベンチャー企業が上場するデメリットとして、株主との対応コストが発生することも挙げられます。上場した場合、証券取引所を通して株式が発行されるため、不特定多数の株主を集められます。一方で上場すると企業側は、不特定多数の株主に対し、経営方針や事業内容への意見を反映させていかなくてはなりません。
また、上場すると有価証券報告書や四半期報告書など、株主へ向けた情報開示も必要です。株主総会の開催や株主の意見への対応、書類作成には人件費などのコストが発生します。
買収される可能性がある
買収される可能性があることも、ベンチャー企業が上場するデメリットのひとつです。メ証券取引所を通して不特定多数の投資家を集めやすいというメリットがある一方、買収のリスクもあります。経営権を奪われる敵対的買収を防ぐためには、買収防衛対策を講じておく必要がある点に注意しましょう。
ベンチャー企業が上場するために満たす基準
設立から数年の新規企業も上場は可能ですが、一定の基準を満たす必要があります。
前述のとおり、ベンチャー企業はグロース市場への上場が基本です。以下の表では、グロース市場とプライム市場、スタンダード市場の主な上場基準を比較しました。
項目 | グロース市場 | スタンダード市場 | プライム市場 |
---|---|---|---|
株主数 | 150人以上 | 400人以上 | 800人以上 |
流通株式数 | 1,000単位以上 | 2,000単位以上 | 20,000単位以上 |
流通株式時価総額 | 5億円以上 | 10億円以上 | 100億円以上 |
流通株式比率 | 25%以上 | 25%以上 | 35%以上 |
公募の実施 | ― | ― | 500単位以上 |
ベンチャー企業が上場するための手続きの流れ
最後に、ベンチャー企業が上場するための手続きの流れを紹介します。
ベンチャー企業の上場は、基本的に上記の図や以下の流れで進みます。
- 直前々期:管理体制の整備、監査実施、証券会社選定
- 直前期:管理体制の運用、申請書類作成、証券会社決定
- 申請期:申請、上場審査
申請までの流れ
まずは、申請準備が必要な申請までの流れを解説します。
1.管理体制の整備
内部統制の評価をもとに利益・業務管理制度の整備や組織運営体制の整備、関係会社の整備などを進めます。
2.会計監査の実施
会計監査は、上場審査の手続きとして必要な監査です。直前々期から始まり、2期間分の監査証明が必要となります。また、直前々期前の期間についてショートレビューを行い、課題の抽出を行うことも多いです。
3.主幹事証券会社の選定
監査法人が決まったら、株式発行の主幹事証券会社の選定を実施します。決まり次第、主幹事証券会社と監査法人、自社で定期ミーティングをおこなっていきます。
申請から承認までの流れ
管理体制を整備し、会計監査を実施したら申請書類を作成し、上場申請へと移ります。ここでは、申請から承認までの流れを説明します。
1.主幹事証券会社による審査
取引所審査の前に、まずは主幹事証券会社の引受審査部による中間審査があります。この審査を通過すると、取引所へ上場申請ができるようになります。
2.取締役会決議
上場申請書が完成したら、取締役会決議にて上場申請を決議し、申請をおこないます。
3.取引所審査
最終審査である証券取引所による審査が実行されます。この審査を通過すると、公募・売出へと移り、株式上場が決まります。
まとめ
設立から数年程度のベンチャー企業でも、上場を目指すことは可能です。ベンチャー企業の場合、まずはグロース市場への上場を目指す形になります。ベンチャー企業が上場するメリットは主に、資金調達力の向上・管理体制の強化・知名度の向上です。
株式が証券取引所で取引されるようになるため、不特定多数の投資家から資金調達できるメリットがあります。人の目に触れる機会も多くなるため、知名度も向上します。ベンチャー企業の上場準備には3年程度かかるともいわれており、できるだけ早い着手が必要です。申請準備の流れを把握し、早めの対策を始めましょう。
よくある質問
ベンチャー企業が上場するメリットは?
ベンチャー企業が上場するメリットは、主に以下のとおりです。
ベンチャー企業が上場するデメリットは?
メリットがある一方、ベンチャー企業が上場するデメリットもあります。
ベンチャー企業が上場するために必要な条件は?
ベンチャー企業は、主にグロース市場への上場を目指すことになると思います。グロース市場の主な審査基準は、以下のとおりです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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