- 作成日 : 2024年10月21日
ESGにスタートアップが取り組むメリットや課題、事例を解説
ESGとは、環境、社会、ガバナンスの各要素を重視する経営スタイルです。ESG経営により、スタートアップは「投資家からの評価獲得」や「売上増加」などのメリットを期待できます。本記事では、ESGとCSRの違いやメリット・課題、実施する際のポイントを解説します。
目次
ESGとは
はじめに、ESGに関して知っておくべき基本的な知識を解説します。
ESGおよびESG経営の定義
ESGとは、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の頭文字からなる概念であり、企業がこれらの要素を考慮しながら持続可能な経営を行うことを指します。
具体的には、気候変動対策や資源の持続可能性(E)、労働環境や人権の尊重(S)、透明性の高い経営やコンプライアンス(G)といった領域が含まれます。
また、ESGを単なるCSR(企業の社会的責任)ではなく、企業の長期的な成長戦略として位置づける考え方を「ESG経営」と呼びます。
投資家にとってESGは重要な投資判断基準となりつつあることから、ESG経営への取り組みは社会的評価のみならず、資金調達や市場での競争力向上においても有利に働きます。
CSRやSDGsとの違い
ESGは、CSR(企業の社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標)と混同されがちですが、それぞれに異なる役割や目的があります。
CSRとは企業が社会や環境に対して果たすべき責任を意味し、主にボランティア活動や寄付など、企業活動の副次的な取り組みとして扱われることが多いです。一方でESGは、環境や社会などに配慮した経営が企業価値の向上に直結するとみなし、これを経営戦略の中核に据える考え方を指します。つまり、環境や社会への配慮を「義務」として捉えるのがCSR、「戦略の一環」として捉えるのがESGであるといえます。
また、SDGsは国連が提唱する17の目標であり、社会全体が目指すべき方向性を示しています。ESG経営への取り組みが、結果的にSDGsへの貢献につながる場合もあります。つまり、SDGsを達成する手段の1つがESGであるともいえるのです。
以上から、ESGはCSRやSDGsの一部を包含しつつも、企業の持続的成長や市場競争力を意識した、より実践的な考え方であるといえるでしょう。
スタートアップがESG経営を行うべき理由
スタートアップにとって、ESG経営は積極的に取り組むべき戦略の1つです。
まず資金調達の観点では、多くの投資家がESGを重視しており、持続可能なビジネスモデルを構築することが資金獲得につながります。また、柔軟性が高い初期段階からESGの観点を取り入れることで、持続可能な成長を実現しやすくなります。
さらに、近頃は消費者や事業者の間でもESGへの意識が高まっているため、これに応じた経営を行うことで、ブランドイメージや競争優位性の向上が見込めます。特に、環境問題や社会課題の解決をビジネスモデルに組み込むことで、長期的な社会的価値と企業価値の両立が期待されます。
他にも、ESGの一部(ガバナンスや従業員の働きやすさなど)が上場要件の一部に含まれていたり、ESG経営に取り組む企業への就職を好意的に捉える動きが活発になっていたりもしています。
単なる社会貢献に留まらず、ビジネスとしての成功に直結する要因となり得ることから、スタートアップにおけるESG経営の重要性は高まっているといえます。
スタートアップがESG経営を行うメリットと課題
本章では、スタートアップがESG経営を行うメリットと課題を解説します。
ESG経営のメリット
最大のメリットは、従業員の採用促進や定着につながりやすい点です。理由としては、安心して働ける環境としてガバナンスや人権尊重の仕組みが整備されている企業が選ばれやすい点や、働く理由の一つとして社会貢献度を重視する労働者が増えつつある点などが挙げられます。
2つ目のメリットは、ブランド価値の向上が期待できる点です。前述のとおり、持続可能性を重視する消費者や事業者が増えていることから、ESGを重視することで企業イメージがアップします。また、競合他社との明確な差別化により、競争優位性の確立にもつながります。
こうした背景から、ESG経営への取り組みにより、自社商品やサービスの購入促進につながっていることを実感する企業も少なくありません。
上記以外にも、投資家からの評価が高まることによって資金調達で有利になったり、社内におけるコミュニケーション促進につながったりと、ESG経営には多様なメリットがあります。
ESG経営の課題
一方で、スタートアップがESG経営に取り組む際にはいくつかの課題もあります。
まず、初期コストやリソースの問題が挙げられます。ESG経営を行うには、従来と異なる仕組みづくりやシステム導入、人材確保、プロモーションなどを行う必要があり、これらは資金や人手に限りがあるスタートアップにとって大きな負担です。
また、ESG評価基準は曖昧で多岐にわたるため、どの指標に注力すべきかの判断が難しい点も課題です。さらに、短期的な利益を重視しがちなスタートアップでは、ESGを実施することで一時的に収益性が低下するリスクをとることも難しいでしょう。
以上により、ESG経営の取り組みを戦略的に進めるためには、慎重な計画と長期的な視点が求められるといえます。
スタートアップがESG経営に取り組む際のポイント
スタートアップがESG経営に取り組む際には、主に3つのポイントを押さえることが大切です。
可能な限りスピーディーに展開する
前述のとおり、ESGの成果を実感するまでには相応の時間がかかります。そのため、可能な限りスピーディーに、仕組みづくりや具体的な施策を実行することが大切です。これらを迅速に行うことで、ESGに未着手の競合企業に差をつけやすくなるでしょう。
収益性の視点も重視する
ESG経営は、単純なCSRと異なり、経営戦略の核を担う概念であるため、収益性の視点を重視することも大切です。例えば、環境に配慮した素材を使った商品を生産している場合、それをブランド価値として積極的に打ち出すことが求められます。
自社の取り組みを効果的に訴求できれば、SDGsに貢献したい消費者のニーズを満たし、自社の売上増加につながりやすくなるでしょう。また中長期的にも、強固なブランド形成を促すことによる、企業価値の向上も見込めます。
投資家とのコミュニケーションも徹底する
ESG経営では、投資家とのコミュニケーションによって、自社の取り組みを理解・評価してもらうことも重要です。具体的には、活動をまとめた報告書(ESGレポート)を作成し、広く投資家向けに公開することが求められます。ESGレポートの作成にあたっては、実際に投資家と話し合い「何を知りたいのか」をヒアリングしておくことが効果的です。
ESG経営に取り組むスタートアップの事例
ESGに取り組むスタートアップの例として、KAPOK JAPAN(カポックジャパン)を紹介します。
同社では、木の実由来の素材であるカポックを用いたアパレル製品を製造・販売しています。木の実を用いるため森林伐採を必要とせず、環境にやさしい点を強みとしています。また、強い農薬を必要とせずに育つ植物である点や、東南アジアでの雇用創出や緑化にもつながっている点などが特徴的です。
持続可能性の高い社会に貢献しているだけでなく、それをホームページや各種メディアで積極的にアピールしている点や、自社ブランドをプロモーションに用いている点などが、ESG経営を行う上で参考になるでしょう。
※参考:KAPOK JAPAN株式会社「KAPOK JAPAN 公式サイト」
まとめ
ESGの導入は、単なる社会貢献としてではなく、投資家からの評価獲得やブランディング、売上増加などに直結する効果的な経営戦略です。持続可能な社会作りを重視する消費者や投資家、事業者などが増えている昨今において、スタートアップが飛躍的な成長を遂げる上で、ESG経営への取り組みは効果的な戦略になると考えられます。
本記事を参考に、ESGに挑戦してみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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