- 更新日 : 2024年10月25日
マネーフォワードクラウドPresents「& money」 THECOO株式会社 取締役CFOコーポレート本部長 森茂樹さんに聞く!(前編)
さまざまな企業のリーダー、ファイナンス部門の方にフォーカスを当て、その仕事や企業の成長戦略の裏側、その仕事術に迫ります。今回お話を伺ったのは、THECOO株式会社 取締役CFOコーポレート本部長 森茂樹さん。インフルエンサーマーケティングを中心とした広告代理店事業、そして会員制ファンコミュニティアプリ「Fanicon」の運営を主事業としているTHECOO株式会社。前編ではTHECOOの事業や2021年12月のIPOについてお話を伺います。
目次
プロフィール
森茂樹
京都府生まれ、神奈川育ち。慶應義塾大学商学部卒、南カリフォルニア大学MBA。 外資系企業数社にて、マーケティング、経営企画、ファイナンスの要職を経て、 前職はファッションアパレルEコマースの受託開発・コンサルティングを手がけるスタートアップにて、執行役員経営管理本部長として管理部門構築、資金調達などに携わる。2018年より現職。
趣味はスノーボード
聞き手: 田中泉
インタビューをはじめ多方面で活動。9年間アナウンサーを務めたNHKでは「ニュースウオッチ9」リポーター「クローズアップ現代+」キャスターとして報道番組を中心に、国内外の現場で最新のニュース・事象を幅広く丁寧に取材・リポート。2022年秋より政策研究大学院大学の英語修士課程に在籍中。趣味は素敵なお店の開拓。1988年生まれ。
Faniconはファンコミュニティプラットフォーム
田中 改めましてTHECOO株式会社取締役CFOコーポレート本部長、森茂樹さんです。今日はよろしくお願いいたします。
森 よろしくお願いいたします。
田中 まずはTHECOO株式会社の事業について教えていただけますでしょうか。
森 当社は二つの事業をメインに展開しております。一つは法人向けの広告代理店事業です。インフルエンサーマーケティングとオンラインの運用広告のコンサルティングを行っています。二つ目は会員制のファンコミュニティプラットフォームです。サービス名がFanicon(ファニコン)という商材になります。FanとIconというのをくっつけた造語でこちらはアプリベースになります。Faniconはアーティストや俳優さらにスポーツ選手やアイドルの方、あとはインフルエンサーやユーチューバーの方が運営し、自身の熱狂的なファンの方々が月額利用料金で参加し利用できるようになっています。その中でポイントを購入してゲームをしていただくようなアクティビティもできる仕組みになっています。月額利用料金をお支払いしていただくので、とてもクローズドなコミュニティになっていて、いわゆるファンクラブというよりはクローズドなファンコミュニティという位置づけで運営させていただいております。
田中 特に若い人は誰でも自分の“推し”という存在がいる時代だと思うので、時流に乗っているサービスですね。
森 法人のインフルエンサーセールスの事業をやってきた中からつくり出したプロダクトになりますので、非常にうまく認知をされてきたと考えております。
田中 うまく認知をされてきたという話もありましたが、昨今のファンコミュニティやインフルエンサーマーケティングを取り巻く状況というのはいかがでしょう?
森 ファンコミュニティはSNSの一部ですので、コミュニケーションツールとしてスタンダードになっている無料のものがたくさんある中で、一方でこの人たちにこの熱い思いを伝えたいという動きがSNSのトレンドが高まるに従って出てきました。その中で、だからこそ月額利用料金を払っていただいて、アンチのいないクローズドな環境で自由に発信していただけているのかなと考えています。また、コアなファンの方々ですので、いろいろな想いがありながらもインタラクションが非常にたくさんある環境を準備できています。そういった状況の中でいうと、ニッチではありますがそういったトレンドもあるのかなと考えています。一方でインフルエンサーセールスはいわゆる同業の方々がたくさんいらして、昨年もインフルエンサーというキーワードで調べていただくとおわかりかと思いますが、非常にホットな業界となっています。20%以上市場が成長していて、いつ飽和するんだといわれながらも、まだ成長していますので、その中で当社は7年ほどずっとインフルエンサーセールスをしておりまして、非常に高い評価をクライアント様にいただいております。
自由と責任に基づき「『できっこない』に挑み続ける」
田中 THECOO株式会社はどんな雰囲気なのでしょう。
森 代表の平良真人が自由と責任というのを愚直に創業のときから訴えております。私も2017年12月、THECOOが創業して3年目ぐらいに誘われてジョインしまして、やはりいかなる状況においても代表の思いを大切にしたいと思っています。ですから、その思いを常に踏まえたうえで、従業員が自分の意志とか思いを発することができて、かつ上長だけでなく同僚ともそういう思いを共有しながら日々を送っていける。箸の上げ下げというよりは、自分で考えて動くという雰囲気を非常に大切にしておりますので非常に闊達な雰囲気かなと思います。
田中 事業内容からしても、森さんのようなベテランもいらっしゃれば、若い方も活躍されているのかなと想像します。
森 そうですね。僕が最年長かもしれないです。平均年齢が33歳、34歳。新卒の方も採り始めて3年目ですのでレンジが22歳ぐらいから私ぐらいまで。
田中 Z世代の方々も活躍されているんですね。
森 たくさんいます。
田中 会社のビジョンには、「『できっこない』に挑み続ける」とあります。これはどういう姿勢を表しているんでしょうか。
森 これも代表の平良が非常に大切にしている信条です。平良を見ていただくと体育会系的な印象を持たれるかもしれませんが、簡単に言うと、いまできることから一歩、ちょっと踏み出してそれを続けてみようということです。日々の仕事において大きな目標を掲げて達成するのではなく、ちょっとチャレンジしてコツコツ続けてみようということを言いたい。そんな言葉になります。
誰とやるのか?この人たちに賭ける
田中 森さんがTHECOOにジョインすることになった経緯は?
森 背景から申し上げると、平良とあともう一人、取締役の下川弘樹の二人がTHECOOを立ち上げたのですが、実は僕の前職の会社がこのTHECOOの立ち上げときに40%の出資をしたという背景がございます。ですから、創業のときからの長い付き合いがありました。その中で、彼らが非常に苦労しながら営んでいるというのは知っていましたので、僕が前職で、ひと段落付いたときにタイミングが合ったので、来てくれないかということでジョインしました。思いとしては、出資してから約3年間、平良と下川が苦労しながらもやっている姿を遠目に見ておりましたので、この人たちに賭けてみようかなと思ったんです。よくいわれるように誰とやるかというのはとても重要だと思うんですが、それを自分で経験したことがある方って、そんなにはいらっしゃらないと思うんです。
田中 誰とやるかが大事だという。
森 はい、そうですね。スポーツにしても仕事にしても、何にしても、これ誰とやるのかって。もちろん結婚もそうだと思うんですけども。仕事において、この人たちとやるとどういうふうな世界がつくれるんだろうと。あと自分がどういうふうに変われるんだろうというのを、自分でチャレンジしてみたかったということです。ですから、スタートアップ企業でIPOを目指したいとか別の形のエグジットを目指したいんだということではなく、この人たちと一緒にやることに賭けてみたいと思いました。
田中 森さんの経歴を拝見すると、割と外資系企業に在籍することが多かったという印象ですが、外資系企業ですと人も短いスパンで変わりますし、また誰と一緒に仕事をするかに重きを置くような雰囲気ではないのかなとも思います。
森 僕もいろいろ時代の流れを経験してきましたので、やはり2008年のリーマンショックではもう終わってしまうかなっていうぐらい大変でした。外資の金融機関におりましたので。正直、それまでのキャリア、約15年、20年ぐらいは外資を転々としていたんですね。3年ぐらいいるとだいたい一つのことができて、カントリーマネジャーが替わったり、本国のCFOが替わったり、そうするとガラッと別の会社になるので、そろそろかなと思って。ほんとに誰とやるっていうよりは、自分が何をするのかって、それしか考えてなかったんです。それがリーマンショックでもう世の中が変わってしまったので、これはなんか違うと思ったんです。あとは、自分の人生はやはり自分でコントロールしたいとそのときに初めて思いました。ですから、平良と下川に会ったときに、あ、この人たちとやれば自分も変われるかもしれないと思いました。
田中 とても大きなタイミングのときに自分が信じられる方々と出会えたということ。
森 そうですね。はい。
IPOまで、そしてIPO後の日々
田中 2021年12月に当時の東証マザーズ市場、現在のグロース市場に上場=IPOされました。
森 僕がジョインした時点でもうB種2度目の調達まで入っていましたので、いずれはM&AなのかIPOなのかイグジットをあるタイミングでしなければということだったんですが全くそんな規模ではなかったので、まずは成長すること、企業の業績を伸ばすこと、それを考えておりました。
田中 2017年にジョインされてから2021年12月の上場=IPOまでの日々を振り返ってみていかがでしょうか。
森 2017年12月にジョインして18年をすぐ迎えて、カレンダーイヤーで1月が会計年度になりスタートになりますので、代表は「IPO行くぞ」って言っているんですが、いやちょっと待ってという状況でした。まずは共に実行する監査法人さんを決めつつ、ですけど、やはり僕がやるにあたっては、形式をそろえるのではなく、パブリックカンパニーとしてふさわしい形に持っていくには、一人一人のメンタルを変えないといけないというのがありましたので、まずはコンプライアンスの意識や経理フローはどうあるべきか、僕がジョインした時は二十数名の組織でしたので、少しずつ自分を受け入れてもらいながら、こういうものなんだよというところからスタートしました。
田中 社員一人一人とのコミュニケーションみたいなところですかね。
森 そうですね。偶然にもGoogleの出身者が多かったので、いわゆるビジネス的なターミノロジーというか、言葉でお話しすれば、ビジネスのある程度のスタンダードなところは通じるという恵まれた環境でした。とはいえスタートアップ企業で上場を目指す、いずれ上場を目指すというフェーズの中でいうと、また違った世界の中でそれをつくっていかなければいけないので、その理解をお互いに深めながら、結果的にはいろいろな意味で内部統制とか縛りを入れていかなければいけないので、それを突然やるのではなく、なぜそこに向かっていくのかというところをつくっておりました。
田中 IPOに向けて具体的に一番大変だったところは?
森 正直そういう意味でいうと、ビジネスセンスのある人たちが多かったので、話せばわかるという状況でした。一度わからなくても何度か話せばわかるということがありました。あとは、そうですね、確かに苦しい日々でしたが、僕も忘れてしまうのか、やはり一番大変だったのが申請期ですね。証券会社さんと実際いろいろな話を一つ一つ詰めていく中で、そうじゃないだろうという思いを一つ一つのことに感じ始めたときに、これでいいのかなって思いました。大変だったというよりはIPOって非常にニッチな世界なので教科書もあるようでなくて、出版されている本ってほとんど使えないんですね。そんなストーリーないよっていうきれいなことが書いてあるんで。
田中 それぞれの会社によってストーリーが全然違うから。参考になる部分もあるかもしれないけれども。
森 ですから、壁にぶち当たったときに、これはどうやって解決するのがうちの会社にとってベストなのかということを一所懸命考えながら、いろんな情報を集めて、いくつかのオプションをつくって、取締役と共有しながら、自分の導きたいほうに持っていくという過程が一番大変でしたね。
田中 IPOまでの過程というのは、社内の方とのコミュニケーション、いかにこの会社をどうしていきたいかを考える日々だったんですね。
森 そうですね。
田中 実際にIPOされてから1年と少し経ちますけれども、IPO前と後で、会社内、そしてご自身では何か変化は感じてらっしゃいますか。
森 2021年12月22日にIPOさせていただいて、言い訳ではないんですが、非常にマーケットは厳しくて、昨年も株価を見ていただけると非常に厳しい評価をいただいていますので、それはもう日々、いい思いはしたことはないです。朝の9時から必ずチェックしてということをしておりますので。一方でいまさらながらですけど、IPO前に証券会社様にこういうことが重要なんだって言われたことを、もう時すでに遅しなんですけれども、あ、こういうことだったんだと一つ一つ思い出しながらやっております。だからこそIPO後のいま、株価的には非常に厳しいところではありますが、とはいえ、これから上を向いて進んでいくにあたって、またさらに事業を成長させるにあたって、改めてこういうことが必要なんだということを話すときに、IPOがほんとうに通過点で、IPO前、IPO後というのは特に通過点を基準に考えただけなので、企業が成長していくにあたっては一つの流れの中で考えていくべきなのかなと思っています。
田中 IPO後の一年は今後どうしていきたいかっていうのを考える日々、これからの指針ということを改めて感じられる日々だったという。
森 反省しつつですね(笑)。はい。
情報を集めカスタマイズする
田中 いま通過点だというお話もありましたし、教科書どおりにはいかないというお話もありましたが、これからIPOを考えている企業の財務担当者、CFOの方々にお伝えしたいことはどんなことがありますか。
森 そんな偉そうには言えないんですが、僕は投資銀行出身でもなく会計士でもなくハイブリッド系のCFOです。かつ、CFOの方々が所属されている環境やビジネスモデルがまったく異なりますので、やはり情報を集めて、集めたうえでどうカスタマイズしてやっていくのかを考えていくと、非常にいいと思います。なんていうんですかね、ステップが見えてくるかなと思いますね。ですので、例えばマネーフォワードの金坂さんはよく自身の考えを発信されているので彼の発信の99%はフォローしていると思います。
田中 いろいろな情報を吸収、インプットしながらされている日々。
森 FacebookがあったりSNSがあったりするので、突然連絡を取って教えてくださいっていうふうに行きます。
田中 面識がない方にでも?
森 はい。けっこう教えていただけるんですよ。例えばセミナーで講師として登壇されていて、キーワードを発せられたときに、そのときはご挨拶できなくても、実はセミナーをお聴きして、教えを乞いたいんですということで、会いに行ったことも何度もあります。
田中 ファイナンスの仕事も大変で奥深いなって、いまの話を伺っていても思いましたが、ファイナンス、CFOの仕事の大変さ、逆に醍醐味というのはどんなふうに感じてらっしゃいますか。
森 会計は時系列で考えると過去のこと、実績。ファイナンスは未来のことになりますので、やはり未来を見通しながら数字を使って語っていくので答えはないんですね。その答えがないものを、いくつかの選択肢を用意する。それを最終的には代表がデシジョンメイク、決断をするので、その最適なものを用意する。形のないものからいくつかの目に見えるものを用意してというところで、とは言いながら、自分はこの答えがいいんだけれど、というようなものを匂わせながら、そういうような役割を担えるところですかね。
お話は後編に続きます。
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