- 更新日 : 2024年7月17日
マネーフォワードクラウドpresents「& money」 株式会社manaby取締役CFO 河治惇一さんに聞く!(前編)
さまざまな企業のリーダー、ファイナンス部門の方にフォーカスを当て、その仕事や企業の成長戦略の裏側、その仕事術に迫ります。今回お話を伺ったのは、株式会社manaby取締役CFO 河治惇一さん。「一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」をミッションに障害のある方への障害福祉サービスを提供しています。前編では、そのmanaby事業について、そして今年2022年4月のIPOについてお話をお伺いします。
プロフィール
河治惇一
慶応大学法学部卒業。中小企業向け投融資業務に従事した後、事業再生ファンドにて中小企業に対する投資実行、社外取締役就任、経営改善支援、エグジットを経験。2019年10月にCFOとしてmanabyに入社。2020年4月に取締役へ就任し現在に至る。趣味は読書。
堤友香
1987年8月13日生まれ。北海道出身。福島テレビ アナウンサー(2010.4~2014.3)を4年間務め、フリーアナウンサーに。TOKYO MX NEWSほか、フジテレビONEでは「プロ野球ニュース」など、幅広く活躍。現在は、日経CNBCで「FX経済研究所」キャスターを務めている。
「一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」をミッションに
堤 まずはmanabyがどんな会社か教えていただけますか?
河治 manabyは働きづらさを抱える人々に対して、その方が自分らしく働けるための就労支援サービスを提供しております。
弊社代表、岡﨑衛が2016年に現在のコーポレートミッション「一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」を掲げて仙台で創業した会社になります。
堤 具体的な事業は?
河治 障害者総合支援法で定められた障害者への福祉サービスの一つに、就労移行支援事業所があります。その運営がメインの事業になります。
現在は、東北、関東、関西で28の事業所を運営しています。一般の方にとって就労移行支援はなかなか馴染みがない言葉だと思いますが、これは障害を持つ方が民間の企業などで働くための道程を包括的にサポートするサービスです。働くために必要なスキルのトレーニングや実際にどんな職業とか職種に就くかを一緒に考えてその方らしい働き方を実現できるように、manabyスタッフが二人三脚で伴走していくという事業になっています。
この就労移行支援事業所というのは全国に3000箇所以上あり色々な会社が運営しています。manabyの特色としては、独自にeラーニングシステムを開発していて、それを使って在宅でも訓練ができたり、在宅就労を目指すためのオフィス系のスキルやプログラミング、デザインといったITスキルを学ぶことができます。これが特色の一つです。
もう一つの特色が、実際の現場の支援において、ダイアローグを大事にしていることです。つまり事業所を使っていただく障害者の方々との対話というのを非常に重視しています。「あなたはこれが合っているのでは?」と一方的に決めつけるのではなく、他者との対話を通じて自己理解を深めていただき「自分らしい働き方」を実現してもらえるようmanabyスタッフがお手伝いをしています。
堤 対話を大事にし、しかも学びの場から一緒にサポートしてもらえると、働きたくても働けずにいた障害者の方が一歩踏み出すきっかけになりそうですね。
河治 私もこの会社に入って初めて知りましたが、障害のある方は全国に1000万人ぐらいいらっしゃいますが、実際、障害者雇用で働いている方は60万人ぐらいなんです。この数字をどう解釈するかは人それぞれだと思いますが、やはりまだまだ障害のある方が働くための社会的なインフラは整ってないと思っています。manabyでは2016年からサービスを提供していますが、まだまだやることはたくさんあり、実際デザインやプログラミングのスキルを持ちたいという方もたくさんいて、我々はそこのお手伝いができればと、日々頑張っております。
manabyの社風
堤 manabyという会社はどういう雰囲気なんですか?
河治 manabyには「一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」というミッションに共感したメンバーが集まっています。先ほどお伝えしたダイアローグを重視しているということもあるので、社内的にも対話を大事にしていて、ある意味では上下関係が少ない組織になっています。ちょっと上司としては非常にやりにくい部分もあるんですけれども・・・。ただ歯に衣着せず言ってくれるのは、会社全体が大事にしているところだと思いますので、社内イベントや社内のコミュニケーションにはそういった雰囲気がかなり色濃く反映されていると思っています。
堤 本社は仙台なんですね。
河治 代表の岡﨑が仙台出身であり東北ってIPOする会社が少ないんです。あえてそこに本社を置いて、地域の経済を盛り上げていこうという意図があり、本社を仙台に置いています。
堤 河治さんが束ねてらっしゃる財務部門、コーポレート部門の雰囲気は?
河治 コーポレート部門ではルールや合理性、そういったことを大事にしています。社内で少数派ではありますが。まじめで、プロ意識が高い方が多く、私は日々感謝しながら(笑)、ありがとうと心の中で唱えながら、一緒に仕事をしてもらっているという雰囲気です。私の方が「もっとちゃんとやってください」とよく叱られています。
堤 風通しがいいからこそですね。
河治 ちょっと良すぎるかなと思うんですけれど(笑)。
今年4月のIPOについて
堤 manabyは今年2022年4月21日に東京証券取引所、TOKYO PRO MarketにIPO、上場をされました。おめでとうございます。
河治 ありがとうございます。3ヵ月くらい前のことです。
堤 その日を迎えられたそのときの思いは?
河治 IPOの準備をしている1年ぐらい前はその日を迎えたら感慨深いのかなと思っていたんですが、実際そうなってみると、ようやく終わったなという安心感の方が色濃かったです。感慨というよりはホッとしたという感じです。
堤 ホッとした(笑)。
河治 あとは、IPOの日に社員のみんなにも伝えましたが、ここからが会社として次のステージに行く段階なので、ここからが勝負だよという話をしつつ、自分でもそれを強く感じた日でありました。
堤 やっとスタートラインに立ったぞということですね。河治さんがジョインされたのが2019年。その時にすでにIPOするという明確な目標があった?
河治 そうですね。当時、社長の面接でジョインを決めたのですが、IPOを目指していて、そのための人を採用したいと言われたので入社当時からそれを目標にするというのはありました。
堤 ジョインされてからIPO、上場までを振り返って如何でしょう?
河治 もう1回って言われるときついなというのが(笑)あるんですけれど・・・ただちょうどIPOと関係なく会社が組織的に大きくなってきた段階でもあって、IPOそのものというよりも会社の成長フェーズが大変な時期だったということもあり、その両方をうまくやらなければいけなかったというのが一番大変な点でありました。
堤 具体的な業務の中で、IPOされて大変だったことをもう少し深く聞いてもいいですか?
河治 私が入社したときはスタートアップだったのであまりお金もない、さらに管理部門にもあまり人がいないという状況で、IPOの準備からはほど遠い感じでした。なので、まず会社をしっかり維持するところからスタートしたというのが最初の大変なところでした。
そこから、すぐにコロナ禍になり、福祉事業所だとどうしても対面で仕事をしなければならない中で、その対応が大変でした。あとは、私が入社したときは50人ぐらいの組織だったのが、そこから2年ほどで100人ぐらいに増えていきました。ほかの会社もみんなそうだと思いますが、そのくらいの規模になりいろいろな問題が起きてくるという中で、それに対して一つ一つ対処していかなければならなかった。
そうですね、もう言うときりがないんですけれど(笑)。大きくまとめるとそのあたりが大変だったと思います。
堤 会社が大きくなっていく成長フェーズに重なっていたということなんですね。上場、IPO前と後で、社内の雰囲気は、何か変わりましたか?
河治 IPOを社内で大々的にアピールしていたわけではないので、いい意味で大きく変わってはいないんですが、一方でパブリックな会社になったというところで、みんな物事をしっかりとやろうという雰囲気にはなりました。そこは良かったかなと思っています。
私自身に関しては、業務内容的には180度変わったかなと思っています。IPOする前は、まず経理をしっかりとやろうとか、財務をしっかりとやろうとか、コンプライアンスをしっかりとやろうとか、あとは証券会社や監査法人への対応が比重としては大きかったんですが、IPO後は役員の一人として、しっかりと事業を成長させていかなければいけないので、現在はそれに完全に舵を切っているという感じです。
IPOが4月で5月に管理部長を新たに採用をして自分は実務から少し離れようと、180度舵を切ったという感じです。
堤 そういったことで新しく見えてきたもの、変化ってありますか?
河治 一つは自分の部下や現場スタッフとの会話量が減ってしまって寂しいという・・・自分にそういう感情があったんだと実感しています(笑)。あとは、IPOの準備をしているときは割と没頭していた感じが大きかったんですが、より将来のことを深く考えるようになってきました。
CFOのやり甲斐と醍醐味
堤 これからIPOを考えている企業の方、CFOの方、ファイナンスの担当者の方に、何か伝えるとしたらどういうことがありますか?
河治 あまり大きなことも言えないんですが、CFOと呼ばれる職種に求められることが年々増えてきているので大変ではあるんですが、逆に言うと、それができるかどうか、広くカバーができるかどうかが、より重要なスキルになってくると思っています。
CFOというと財務やっているんでしょ、と思われますが、実際は、財務以外のことがかなり多いので。例えば予実というか事業そのものを深く理解しないとステークホルダーとコミュニケーションが取れないし、今はファイナンスの手法もたくさんあるのでその中から何を選んでどうすれば事業成長が最短でできるのかも考えなければいけない。さらに内部統制とか様々なスキルが求められますが、そのプロフェッショナルにすぐになれるわけではないので、思考するCFOというポジションの中で、いかにトータルの要素で事業成長に必要な判断をしていくか、というのが一番大事だと思っています。
抽象的になりますが、かなり幅広くのカバーをしなければならない一方で、やりがいも非常にあるので、そういった大変さを楽しめる人だと向くんだろうなという気がしています。
堤 コンサル的な要素だったり、リーダーシップの要素だったりとか、資質が幅広く求められるんですね。
河治 会社によると思いますが、社長と事業のトップができない、やらないことは、基本的にCFOがやらなきゃいけないという(笑)文化というか、そういう暗黙の了解があるので、ほかの役員ともコミュニケーションをとりながら、何が必要なんだろうって自分から率先して動ける人が一番向いていると思います。
堤 改めてCFOの醍醐味、楽しさみたいなところってどういったところでしょう?
河治 先ほど申し上げたとおり社長と事業のトップ以外がやれること以外をやらなければいけない。ある意味、CFOはなんでも屋のようなところがあるんですが、一方で管理部とかCFOというのは黒子に徹するべきだと私は思っているので、日の目を見ないというところがいいとも思っています。
また、CFOはもちろんお金に関わる業務をするわけですが、お金に関わることって、社内にかなりあるんです。そのお金にかかわる意思決定をCFOがやらなければいけない。お金って何にでも紐づくので、基本的には細かい意思決定も含めてCFOが一時的な判断をする機会がたくさんあるんです。
責任も重く、黒子で、常に意思決定をしなければいけないという大変さを楽しめる人だととても成長できるかなと思います。そしてそういったところが醍醐味かなと思っています。
お話は後編に続きます。
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