- 更新日 : 2024年7月12日
外部監査とは?IPOで実施することや流れ・スムーズに行うポイントを解説
「外部監査」とは、一般的には独立した監査機関が企業の財務報告の正確性と公正性を評価するプロセスです。この監査は、企業が公開している財務諸表が、適用される会計基準に従って適切に作成されているかどうかを検証します。
外部監査は、投資家やその他の利害関係者に対して、企業の財務状態に関する信頼性の高い情報を提供するために不可欠です。
本記事では、IPOを目指す企業が外部監査を理解し、適切に対応するために必要なプロセスを詳しく解説します。
目次
外部監査とは
外部監査とは、通常、決算書の作成が正しいかなどを確認するために会社の外部から来た監査人が行うチェックのことをいいます。
外部監査を受ける組織は、企業だけでなく地方公共団体も受けることがあります。
会社が正しく公正に運営されていることを確認する重要なプロセスなため、会社の株主や従業員、社会全体がその会社を信頼する公平を保証する大切なルールです。
企業の財務報告の信頼性を高め、市場の透明性を促進し、投資家や債権者にとって重要な意思決定の基盤となります。
内部監査との違い
内部監査とは、企業内の独立した監査組織が財務会計や業務などについて調査・評価し報告や助言を行うことです。
外部監査と内部監査の主な違いは、以下の通りです。
外部監査 | 内部監査 | |
---|---|---|
実施目的 | 会社の信頼性を第三者に提供する | 不正の防止や業務の効率化を図る |
監査を行う人 | 会社の外部からくる専門家 | 企業内の独立した監査組織 |
監査対象 | 財務諸表や会計記録 | 業務プロセスや内部統制 |
外務への報告義務 | 監査結果を外部に公表することもある | 監査結果を経営陣に報告する |
外部監査と内部監査はそれぞれ異なる目的と役割を果たし、企業の健全な運営と成長を支える重要な要素となっています。
外部監査の必要性
外部監査は、企業が公正かつ透明に運営されていることを投資家や顧客などの第三者に伝えるのに必要なプロセスです。
本章では、外部監査の必要性についてご紹介します。
適正な情報を開示するため
外部監査は、企業の財務諸表が公正かつ適切に表示されているか確認できます。確認することで、投資家や金融機関は、企業の財務状況や業績に関する正確な情報を得ることが可能です。
適切な情報を開示することは、投資判断をするのに重要な基盤になるため、第三者と企業の双方にメリットがあります。
不正を防止するため
外部監査人は、企業の財務諸表や会計記録を詳細に確認するため、不正行為や誤りがあると発見することが可能です。そのため、企業の経営陣や従業員は外部監査を行うこと自体が不正行為の抑止力になります。
監査結果は公表され、企業の評価や信頼性に大きな影響を及ぼす可能性があるため、外部監査の存在が不正行為を未然に防ぐ効果があります。
リスクを回避するため
外部監査を行うことで、法的な問題や罰則を回避できます。法令遵守の確認は、企業の社会的信頼性を維持するためにも重要です。
また、法的問題だけでなく、経営リスクや評判リスクも回避できます。財務諸表や会計記録を確認したり、不正行為を早期発見したりできるため、外部監査は様々な企業のリスクを回避するのに必要です。
外部監査の種類
外部監査には、特に知られているものとして会社法監査と金融商品取引法監査の2つがあります。
本章では、監査の対象となっている書類リストをご紹介します。
会社法監査
会社法監査は、会社の財務状況や業績を評価するための監査です。監査人は会社法に基づき、会社の財務諸表や会社の業績に関する情報を検証します。
具体的な、主な書類は以下の通りです。
会社法監査は会社法で定められた計算書類について適切かどうかを調べる監査です。
金融商品取引法監査
金融商品取引法監査とは一般的には上場している会社について投資家保護を目的とした監査です。
主に決算書を監査する「財務諸表監査」、内部統制について会社がまとめた書類である内部統制報告書を監査する「内部統制監査」の2種類があります。
財務諸表対象となる主な書類は、以下の通りです。
- 連結財務諸表
- 財務諸表
外部監査が義務付けられている会社
外部監査は、一定の規模以上の会社や上場企業に対して義務付けられています。
具体的には、以下のような条件を満たす会社が対象となります。
- 資本金が5億円以上の株式会社
- 負債の額が200億円以上の株式会社
外部監査は、企業の信頼性と市場の健全性を維持するための重要な手段です。
IPOを目指すなら外部監査は必須
IPO(初公開株式公開)を目指す企業にとって、外部監査は必須のプロセスとなります。
理由は、投資家に対して企業の財務状況が適切に開示され、適切に管理されていることを照明するためです。
外部監査により、企業は投資家に対して、自らの財務報告が信頼できることを証明できます。これは、投資家が株式購入の決定を下す際の重要な要素です。
したがって、IPOを検討している企業は、早い段階で適切な監査機関と協力し、外部監査を通じて財務報告の品質を高めるべきでしょう。
IPOの外部監査で実施すること
IPOの外部監査では、以下のようなプロセスが実施されます。
- ショートムービーを行う
- 財務諸表を監査する
- 内部統制・管理に関して指導する
- コンフォートレターを作成する
それぞれ詳しく解説します。
ショートレビューを行う
「ショートレビュー」とは、外部監査の一環として行われる、財務諸表の迅速かつ簡易的な評価プロセスです。
このレビューの目的は、企業の財務報告における主要な問題やリスクを素早く特定し、監査全体の方向性と焦点を定めることにあります。
ショートレビューは、財務諸表の精査を行う前の段階で、主に以下の点を調査します。
- 会計処理の適切性
- 内部統制の有効性
- 予算との差異分析
外部監査の初期段階で行われることが多く、企業の財務諸表における主要な問題点や潜在的なリスクを素早く特定します。
これにより、監査プロセス全体の効率性が向上し、後続の詳細な監査における焦点がより明確にできるのです。
財務諸表を監査する
財務諸表の監査では、以下の点が確認されます。
- 会計原則の適用状況
- 財務諸表の公正性
- 会計エラーの有無
また、会計処理に関するアドバイスや指導も行われます。
内部統制・管理に関して指導する
IPOの過程における外部監査では、内部統制と管理プロセスに対する指導が重要です。
内部統制・管理に関しては、以下のような指導が行われます。
- 内部統制の強化
- リスク管理の改善
- コンプライアンス体制の整備
内部統制の強化は、財務報告の誤りや不正を防ぐために不可欠です。外部監査人による指導は、企業がその内部統制システムを適切に設計し、実施していることを保証します。
特にIPOに向けては、投資家や規制当局からの信頼を確保するために、内部統制が重要な役割を果たします。
コンフォートレターを作成する
コンフォートレーターは、監査法人が財務諸表の信頼性を証明するための書類です。これは、投資家に対する信頼性の証明となります。
IPOプロセスにおいて、この確認は投資家に対する企業の信頼性を高め、資本市場における透明性を促進するために重要です。
外部監査の流れ
外部監査の主な流れは、以下のようになります。
- 監査法人と契約する
- 監査計画を策定する
- 期中監査を行う
- 在庫の棚卸の立会
- 実査
- 確認
- 期末監査を行う
①監査法人と契約する
この段階では、企業は信頼できる監査法人を選び、契約を結びます。監査法人の選び方は、その経験、専門知識、信頼性などを考慮に入れます。
監査法人との契約は、独立性を持つ専門家による客観的な財務評価を保証するために必要です。適切な監査法人を選ぶことで、企業は財務報告の信頼性を高め、法的要件の遵守を確実にします。
②監査計画を策定する
監査計画は、監査の目的、範囲、タイミング、手順などを明確にするためのものです。
監査計画を策定することで、監査の範囲、重点領域、および時間枠を明確に定義できます。
これにより、監査チームは目的に沿って効率的に作業を進めることができ、財務報告の信頼性を高めるために重要な領域に集中することが可能です。
③期中監査を行う
期中監査は、会計年度の途中で行われ、主に内部統制の有効性や会計処理の適切性を確認します。
期中監査の頻度は企業の規模や業績により、期中に複数回に分けられて監査が行われます。
監査計画を策定することで、監査の範囲、重点領域、および時間枠を明確に定義することが可能です。
これにより、監査チームは目的に沿って効率的に作業を進めることができ、財務報告の信頼性を高めるために重要な領域に集中することができるでしょう。
④在庫の棚卸の立会
監査の主な手続きとして在庫の棚卸の立会があります。
これは会社が行う棚卸しに立ち会い、適正に行われているかどうか、チェックすることです。
これによって在庫が過大や過小に計上されていないか、棚卸しが内部の規定などに沿って行われているかを確認することによって、期末在庫が適切に決算書に反映されているか、社内の手続きが適切に行われているかを確認することができます。
⑤実査
実査とは、現金や切手、固定資産等について現物を確認して行う調査です。
これによって対象となるものが実在し、それのみが決算書に反映されているかを確認します。
⑥確認
監査手続の中で重要なものとして、確認の工程があります。外部の第三者に手紙を送り、取引内容を聞き出す手続きのことです。
例えば、銀行に対して預金残高や借入金残高を聞いたり、取引先に対して売掛金や買掛金を聞いたりします。
これにより、内部の不正が及びにくい第三者の情報を取得し、決算書に反映されているか確認します。
⑦期末監査を行う
期末監査では、会計年度末の財務諸表全体を対象に、その公正性と正確性を確認します。
この段階では、一年間のすべての財務活動が詳細に検証され、誤りや不整合がないかが厳密にチェックされます。
この監査により、会計年度の終わりに正確で信頼できる財務情報が提供され、企業の透明性と信頼性が強化されるでしょう。
スムーズに外部監査を受けるためのポイント
スムーズに外部監査を受けるためには、以下のポイントが重要です。
- 事前に資料を用意する
- 資料の内容を把握する
- 重点的に確認される項目を把握する
それぞれ詳しく解説します。
事前に資料を用意する
外部監査をスムーズに進めるためには、事前に必要な資料を整理して用意することが重要です。
資料の事前準備は、監査人が迅速かつ効果的に作業を進めるための基盤を提供します。すぐに利用可能な資料があれば、監査人は関連情報を迅速に確認し、分析を開始できます。
これにより、監査の進行において無駄な時間を削減し、より正確な評価を可能とするでしょう。
特に日々の会計業務で使う書類は、すべて必要になると考え、あらかじめ準備しておきましょう。
資料の内容を把握する
外部監査を円滑に進めるためには、監査対象企業が提出する資料の内容を十分に把握しておくことが重要です。
資料の内容を十分に理解しておくことで、監査人からの質問に迅速に対応できます。
また、可能な限りシミュレーションを行い、予想される質問に対する回答を準備しておくことも有効です。
重点的に確認される項目を把握する
監査では、特定の項目が重点的に確認されます。これらの項目を事前に把握し、それらに関連する情報を整理しておくことで、監査がスムーズに進行します。
重要な項目は事業内容や状況によって左右されますので会社ごとで異なりますが、ほぼ共通しているのは以下の通りです。
- 売掛金や買掛金の残高
- 現預金や借入金の残高
まとめ
今回は、外部監査の重要性とその流れについて詳しく解説しました。企業が上場を目指す際には、これらの基準を満たすだけでなく、適切な内部管理体制を整備し、信頼できる財務情報を提供することが求められます。外部監査はその一環であり、企業の透明性を高め、投資家からの信頼を得るために不可欠です。
IPOを目指す企業は、これらの情報を十分に理解し、早期から準備を始めることが重要です。この記事が、その一助となることを願っています。
よくある質問
外部監査とは?
外部監査とは、一般的には企業の財務諸表が会計原則に従って適切に作成されているかを確認するために、独立した第三者(監査法人や公認会計士など)が行う監査のことを指します。
外部監査と内部監査の違いは?
外部監査と内部監査の違いは、目的と実施主体です。外部監査は、企業の財務諸表が公正かつ適切に作成されているかを確認するために独立した第三者が行います。一方で内部監査は、企業の内部統制が適切に機能しているか確認するために行われ、企業内の独立した監査組織が行います。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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