• 作成日 : 2022年1月24日

IPO(上場)審査概要とポイント、近年の傾向について

IPO(上場)審査概要とポイント、近年の傾向について

IPOの重要なポイントのひとつに「IPO(上場)審査」があります。上場審査には、引受審査・公開審査といったいくつかの種類があり、それぞれのポイントを押さえておく必要があります。この記事では、このIPO審査について、近年の傾向とあわせて解説します。

IPO(上場)審査は2つある

上場審査とは、証券取引所に自社の株式を上場をするためにあたって通過しなければならない審査のことを言います。上場審査には、2種類の審査があります。ひとつが主幹事証券会社の引受審査部門による「引受審査」、そしてもうひとつは各証券取引所による「公開審査」です。

引受審査

証券取引所に上場の申請を行う前に、主幹事証券会社の引受審査部門にて事前に対象となっている証券取引所の「上場審査基準」に適合しているか、基準に従って項目ごとに厳格な審査が行われます。

引受審査を通過したうえで、証券取引所へ正式に上場申請ができるようになります。上場の直後に企業に問題が発覚すると、証券取引所の引受審査上の問題を問われるリスクがあるため、証券会社としても、厳格にチェックを行います。

上場審査

引受審査を経て上場申請がなされた後に、証券取引所による公開審査が行われます。この公開審査は、各取引所の上場審査部にて行われます。

質問内容としては、基本的に引受審査と同じで、上場審査基準に従って形式的にも実質的にも基準をクリアしているかのチェックが行われます。公開審査をクリアすると上場承認がおり、無事、上場となります。

上場審査のスケジュール

IPO(上場)審査概要とポイント、近年の傾向について

主幹事証券の引受審査は、概ね5~6カ月かかり、引受審査の通過を受けて株主総会にて直前期の決算を承認した後に、上場申請を行います。公開審査は、取引所にもよりますが、新規上場の場合は約2カ月の審査期間が前提となっており、上場承認後、約1カ月のファイナンス期間を経て、上場となります。

上場審査における審査基準の概要

各証券取引所は、株式を公開申請する会社に対して、公開審査基準と呼ばれる一定の資格要件を定めています。証券取引所に株式を公開する場合には、この審査基準を充足することが必要になります。公開審査基準には「形式基準」と「実質基準」があります。

形式基準

形式基準では、上場にあたってクリアしなければならない流通株式数や利益水準といった数値関連の基準が定められています。形式基準は対象となる市場によって異なり、特に近年では東京証券取引所において市場の区分見直しが行われ、「グロース市場」と呼ばれる高い成長が見込まれる企業向けのマーケットにおいては、形式基準の要件が緩和されています。

参考:日本取引所グループ「上場審査基準」

実質基準

一方、実質基準とは、上場審査で上場を認めるかどうかを判断する基準となる、具体的な項目を指します。例えば、東京証券取引所では、有価証券上場規程で市場ごとに5つの適格要件が定められ、「上場審査等に関するガイドライン」に基づき判断されることになります。

具体的には、以下の5つが適格要件となります。

  1. 企業の継続性および収益性
  2. 企業経営の健全性
  3. 企業のコーポレートガバナンスおよび内部管理体制の有効性
  4. 企業内容等の開示の適正性
  5. その他公益および投資者保護の観点から各取引所が必要と認める事項

企業として継続的に収益を上げる体制にあり、そのうえで経営が健全で、株主の利益が毀損されるような不祥事や不正が行われない管理体制が整っていることなどが、審査のなかでチェックされます。

上場審査の具体的な流れ

ここまで、上場審査の基準を具体的にみていきました。次に実際の証券取引所による上場審査は、どのような流れに沿って審査が行われていくのかをみていきましょう。

具体的には、以下の流れに沿って審査が行われます。

  1. 書面による質問・ヒアリング
  2. 実地調査
  3. 監査法人/代表者/監査役/独立役員へのインタビュー
  4. 証券取引所への会社説明会
  5. 上場承認公表

書面による質問・ヒアリング

書面による質問および書面の回答に対するヒアリングが実施されます。通常3回ほど行われ、質問数は数百にものぼります。これらの質問に対して、数週間程度の回答期限内に対応していくことが求められるため、上場担当者としては十分なリソースを確保して準備に臨む必要があります。

特にこのヒアリングを通じて、上場審査の実質基準に準拠していくか、確認をとっていくため、回答が不十分だったり、正確でなかったりする場合は、証券取引所から追加確認が発生し、上場全体のスケジュールに影響を及ぼす可能性があります。

実地調査

本社や工場といった現場の視察がなされ、事業実態の把握および会計帳簿の管理状況の確認などが行われます。

監査法人/代表者/監査役/独立役員へのインタビュー

コーポレート・ガバナンス上、重要性の高い組織(経営者・役員・監査役・会計監査人※監査法人)に対してインタビューが実施されます。インタビューは、監査法人→その他という順番で実施されるのが一般的です。

インタビュー内容としては、各組織としてどのような運用で役割を果たしているのか、会社が抱える問題点はないかなどがあります。特に代表者に対しては、事業のビジョンや会社としてのIRの方針などについてもインタビューされます。

社長説明会(各種ヒアリング終了後7〜8営業日前後)

証券取引所に対して、会社の沿革や事業内容、事業計画等の説明を実施します。

上場承認の公表

上記プロセスを経て、晴れて証券取引所ホームページにて、株式の上場承認がなされた旨が公表されます。

近年の上場審査の傾向とIPO審査通過のポイント

上場審査の流れについて解説していきましたが、近年の上場審査の傾向としてどのようなポイントがあるのでしょうか。

近年では、上場直後に業績の下方修正や不正が発覚していることから、審査の厳格化が進んでいると言われています。日本取引所グループでは、2015年3月に「最近の新規公開を巡る問題と対応について」を公表しており、近年の上場に関する問題点の整理をしています。

参考:日本取引所グループ「最近の新規公開を巡る問題と対応について」

企業側に関する問題として以下の2点の強化が掲げられています。

  1. 新規公開会社の経営者による不適切な取引への対応
  2. 上場直後の業績予想の大幅な修正への対応

特に②に関しては、上場時に公表される業績予想について、前提条件やその根拠の適切な開示が要請され、業績予想情報の正確性についても以前より高いものが求められています。

①についても上場にあたって経営体制として実質的に内部管理体制およびコーポレートガバナンス(経営を正しく運営されていくにあたって必要な体制が定められたもの)が機能していれば、防げるものがほとんどの内容になっています。

「実態は違うが、見かけ上は守れている」という体制ではなく、実質的にも機能する管理体制を上場準備期間中に構築していきましょう。

まとめ

以上がIPOの審査に関する全体的なまとめとなります。さまざまな各論が多くありますが、まずは全体的なスケジュールを抑えたうえで、外部関係者(監査法人/証券会社/IPOコンサルタント等)に協力を仰ぎながらIPOプロジェクトを進めていきましょう。

よくある質問

証券会社とは、いつ契約を結べばいいですか?

上場から2年前程度のタイミングで結ぶとよいでしょう。

証券会社の選び方は?

自社をどこまで評価してくれるのか、また引受審査体制の成熟度、担当者との相性など、さまざまな角度から評価をして選ぶようにしましょう。特に、自社をどこまで理解しているのかは重要な観点となります。

審査で特にみられるポイントは?

「特に」というのはありません。会社によっても抱える問題点が違うため、担当の証券営業部と相談しながら問題をクリアにしていきましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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上場までの道のりガイド

監修:伊藤達也 (伊藤達也税理士事務所)

伊藤達也税理士事務所
2013年、EY新日本有限責任監査法人金融事業部に入所。証券会社、インターネットメディア事業などの法定監査だけでなくIPO支援や内部統制構築支援に従事。また、創業手帳株式会社、弁護士ドットコム株式会社にてバックオフィス全般及び資金調達業務に従事。会計、税務、内部統制にかかる業務を行う中で、直接会社にサービスを提供するコンサルティングサービスに意義を見出し、2021年事務所設立。慶應義塾大学経済学部卒。