- 更新日 : 2024年7月12日
上場準備企業でも内部統制の整備は必須!基準や目的についてわかりやすく説明
内部統制は、企業活動の適正性を確保するための体制を構築するシステムです。上場企業に求められる体制と思われがちですが、上場準備企業にも内部統制の整備は必要なのでしょうか。この記事では、上場準備企業も内部統制の整備が必要なのか、その理由について解説します。また、上場承認の基準2つと内部統制の基礎知識も説明しますので、上場審査に役立ててみてください。
上場準備企業でも内部統制の整備は必要
上場企業は内部統制報告制度によって、内部統制報告書の提出が義務付けられています。上場準備企業においても、上場企業と同様に内部統制の整備が求められており、上場前からしっかりと準備をしておく必要があります。
上場準備企業でも内部統制の整備が必要な理由として、一つには上場後に内部統制報告書の提出が義務付けられているためです。実際には、内部統制報告書及び内部統制監査報告書の提出は、上場申請時は義務付けられていません。しかし、内部統制の整備は上場審査の対象項目であるため、上場前から準備しておく必要があります。
上場準備企業が上場承認されるための基準
上場準備企業が上場承認されるための基準は承認基準と呼ばれ、形式基準と実質基準の2種類があります。承認基準は、証券取引所が公開しており、これを満たすことで上場承認がなされる仕組みです。上場承認に必要な形式基準と実質基準について解説します。
形式基準
形式基準とは、流通株式数や利益水準など、上場申請を行うに当たって最低限クリアしなければならない定量的な側面を確認する基準です。上場企業として、必要な数値基準をクリアしているかどうかが判断されます。
プライム市場・スタンダード市場・グロース市場、それぞれに以下に代表される基準が定められています。
項目 プライム市場 スタンダード市場 グロース市場 株主数 800人以上 400人以上 150人以上 流通株式数 20,000単位以上 2,000単位以上 1,000単位以上 流通株式時価総額 100億円以上 10億円以上 5億円以上 時価総額 250億円以上 10億円以上 5億円以上 流通株式比率 35%以上 25%以上 25%以上 財政状態 連結純資産50億円以上
かつ単体純資産の額が負でないこと連結純資産の額が正 ー
実質基準
実質基準とは、上場企業にふさわしいかどうかを判断する基準となる具体的な項目です。5つの項目が定められており、形式基準とは異なり定性的な基準となります。
企業の継続性および収益性
事業が継続的におこなわれているか、利益を生み出しているか。さらに今後も継続的に利益を生み出せるか、といった将来性も含めて証券取引所が審査します。ここでいう「利益」とは、売上から仕入れや経費を差し引いた金額が正となっている金額のことです。
企業経営の健全性
法律に則った企業活動・事業がおこなわれているか、子会社が自らの裁量によって事業を営んでいるか。また、役員が親族のみで構成されていないかなど、健全な企業経営がおこなわれているかが審査されます。
企業のコーポレートガバナンスおよび内部管理体制の有効性
コーポレートガバナンスとは企業統治と訳され、企業経営において公正な判断・運営がされるように監視・統制する仕組みです。企業は経営者のものではなく、株主のものという考え方をします。また、内部体制が整っているかも審査されます。
企業内容等の開示の適正性
上場企業は、投資家が正しい判断をできるように必要な情報を、決められた時期に不足なく開示できる体制が求められます。そのため、実質基準でも企業内容等の開示が適正かどうか審査されます。
その他の公益または投資者保護の観点から当取引所が必要と認める事項
この項目で審査されるのは、たとえば普通株とその他株の株主の権利におよぼす恐れのある影響や開示状況、経営活動や業績に与える紛争の有無などが挙げられます。そのほかにも、投資者保護のために証券取引所が必要と判断した場合に審査される部分です。
内部統制の目的
内部統制の目的は、金融庁が財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準では1業務の有効性および効率性、2財務報告の信頼性、3事業活動に関わる法令などの遵守、4資産の保全の4つを達成させることとされています。ここでは、その内部統制の目的4つを説明します。
業務の有効性および効率性
情報共有の徹底やITの効果的な活用など、内部統制を整備することにより、「時間・人・お金」といった資源を整備前より有効に活用することが可能です。有効性や効率性が上がることで、事業活動全体の目標を達成できるようになります。
財務報告の信頼性
財務諸表などの財務情報は、株主の投資判断や取引先の取引判断に大きな影響を与えます。内部統制を整備し、財務報告の信頼性を高めることで、株主や取引先からの評価を高めることが可能となります。
事業活動に関わる法令などの遵守
企業活動をするうえで法令の遵守は基本ですが、内部統制を整備することで法令遵守の徹底を図ることができます。親会社はもちろん、目の届きにくい子会社での法令違反を防ぐためにも、内部統制の整備は重要です。
資産の保全
資産は企業にとってなくてはならないものです。当然ではありますが、資産がなければ企業活動は続けられません。内部統制を整備することで、企業の資産を効率的かつ適切に管理でき、資産の保全につながります。
内部統制の目的達成に必要な要素
内部統制の目的達成には、6つの基本的要素が必要です。ここでは、内部統制の目的達成に必要な6つの要素を、それぞれ説明します。
統制環境
統制環境とは、ほかの基本的要素の基礎となる要素です。企業の基本理念や基盤となるだけでなく、経営方針や経営戦略、経営者の姿勢、誠実性および倫理観といった重要な項目も含まれます。
リスクの評価と対応
企業目標を達成する際に影響を与えるすべてのリスクを識別・分析・評価することで、リスクを軽減できるよう対応措置を講じていく一連のプロセスです。このリスクというのは、企業目標の達成を阻害する要因を指します。
統制活動
統制活動とは、経営者の指示が適切に実行されている状況を確保するために定める方針です。つまり、各部門の担当者が経営者の指示通りに業務を遂行するための仕組みづくりを指します。
情報と伝達
組織内のすべての人が、職務の遂行に必要な情報が伝達されることは非常に重要です。情報と伝達とは、必要な情報が識別・把握・処理され、組織内外や関係者相互に正しく伝えられるような仕組みづくりを指します。
モニタリング
モニタリングとは、内部統制の有効性を継続的に検討・評価する手続きです。整備した内部統制は、モニタリングにより常に監視・評価・是正されることになります。部署内で実施されるモニタリングではありますが、日常的に実行することで内部統制の有効性向上に役立ちます。
ITへの対応
企業目標を達成するため、あらかじめ適切な方針を定め、それをもとに業務の実施においてITに適切に対応することです。IT環境への対応と、IT利用および統制の2つの項目からなります。
上場後に提出しなければならない内部統制報告書とは
内部統制報告制度とは、金融商品取引法に基づいて、内部統制報告書の作成を義務付けた制度です。2008年4月1日以降に開始する事業年度から適用されており、作成した内部統制報告書は公認会計士に監査を受けることが定められています。
もともとはアメリカで誕生した制度で、1929年の世界恐慌をきっかけに制定された証券法や証券取引法により、上場企業に財務諸表の監査が義務付けられたことに始まります。日本では、カネボウなど上場企業の粉飾決算により、2006年の証券取引法の改正が実行されました。さらに上場企業による有価証券報告書の不実記載が発覚し、内部統制の整備の重要性が評価されるようになっています。
内部統制報告書とは、企業が実施する内部統制が有効に機能しているかを評価し、その結果を報告した書類です。
- 内部統制報告書の記載事項は、以下のようになります。
- 財務報告にかかる内部統制の基本的枠組みに関する事項
- 評価の範囲、基準日及び評価手続きに関する事項
- 評価結果に関する事項
- 付記事項
- 特記事項
まとめ
上場準備企業も、内部統制の整備は必要です。上場企業には内部統制報告書の提出が義務付けられており、上場審査でも内部統制の整備が求められます。上場承認されるための基準には、形質基準と実質基準があります。それぞれの基準をクリアすることで、各証券取引所に上場承認される仕組みです。
まずは内部統制の仕組みを理解し、整備のために必要な項目を確認することがから始めましょう。
よくある質問
上場準備企業も内部統制の整備は必要?
上場企業はもちろん、上場準備企業も内部統制の設備は必要不可欠です。というのも、上場企業には内部統制報告書の提出が義務付けられているためです。また、上場審査では内部統制の整備も求められます。
上場するための基準は?
上場するための基準には、形式基準や実質基準の2つがあります。形式基準とは、流通株式数や利益水準など、上場申請を行うに当たって最低限クリアしなければならない定量的な側面を確認する基準です。実質基準とは、上場企業にふさわしいかどうかを判断する基準となる具体的な項目です。 実質基準には、企業の継続性および収益性・企業経営の健全性・企業のコーポレートガバナンスおよび内部管理体制の有効性・企業内容等の開示の適正性など5つの項目が含まれます。
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