- 作成日 : 2024年7月29日
危機管理広報とは 重要性やプロセス、成功のポイントを解説
危機管理広報とは、自然災害や不祥事などの危機発生時に行う広報対応を指します。スピーディーかつ真摯な態度での広報対応により、企業のイメージ低下を防ぎやすくなります。
本記事では、危機管理広報の重要性や事前準備、危機発生時の対応プロセスなどを解説します。また、危機管理広報を成功させる4つのポイントも紹介します。
目次
危機管理広報とは
はじめに、危機管理広報の定義と重要性を解説します。
危機管理広報の定義
危機管理広報とは、自然災害や事件、不祥事などの危機が発生した際にに行う広報PR対応です。またその対応を行う部門や担当者を指すこともあります。
危機管理広報の重要性
危機管理広報は、発生した危機による悪影響を最小限に抑えて、企業のイメージ低下や事業停止などの事態を回避する目的で行います。
企業活動は、常に自然災害や事件・事故のリスクにさらされています。また、それらの対策を施しても労働災害や企業不祥事(データ改ざんや不正会計など)が発生するリスクを0にすることはできません。
こうした危機が顕在化した際の広報を適当に行うと、投資家などのステークホルダーのみならず、社会や世論から批判を受ける恐れがあります。特に近年は、SNSの普及によりちょっとした不用意な発言が大きく波及し、企業イメージの低下を招く事態も想定されます。
こうした事態を避けるためにも、企業にとって適切な危機管理広報が不可欠です。
危機管理広報に関する事前準備
危機管理広報を行うにあたっては、危機が顕在化する前の事前準備が不可欠です。具体的には、以下の3つの業務を行います。
リスクの把握と評価
危機管理広報の業務では、想定されるリスクを全て洗い出し、それぞれの重大度を評価する必要があります。
どのような危機が生じ得るかを事前に把握することで、いざというときに的確な方法・内容で広報を行いやすいためです。また、重大度を特定し各リスクに優先順位をつけることで、同時多発的に複数の危機が生じた際に、効果が大きいものから迅速に実行し被害を最小限に留めやすくなります。
広報担当者だけでなく、実際の職場(工場やオフィスなど)で働く人の意見を参考にすると、抜け漏れなくリスクを把握することができます。
マニュアルの策定
リスクを把握したら、広報視点で危機対応のマニュアルを策定します。
具体的には、危機発生時における各従業員の対応や役割、責任者、広報(情報発信)のツールや方法、情報収集のプロセスなどを盛り込みます。事前にマニュアル化しておくことで、危機発生時に迅速かつ円滑な対応が可能となります。
社内関係者に向けたトレーニングの実施
マニュアルを策定したら、日頃から社内関係者に広報のトレーニングを実施しておくことも重要です。日頃から訓練していないと、メディア対応で不用意な発言を行うなどして、企業イメージの低下を招く恐れがあるためです。
危機管理広報のプロセス・業務内容
実際に危機が発生した場合、危機管理広報として以下の業務を実施します。
1.代表者や責任者への連絡
2.情報収集および現状把握
3.対応方針の策定
4.情報開示
5.事実誤認の確認と訂正
この章では、危機管理広報として行う業務内容を上記の流れに沿って解説します。
手順1:代表者や責任者への連絡
危機が発生したら、即座に組織や企業の代表者(または責任者)に連絡します。
代表者の指示によって緊急対策本部が設置され、それ以降は本部が情報収集や各種対応を一手に担います。
代表者指揮によって危機対応の窓口を一本化することで、情報の錯綜や混乱を回避することができます。
手順2:情報収集および現状把握
次に、発生した危機に関する情報収集および現状把握を実施します。
発生現場に足を運び、事情を知る社員などから直接ヒアリングすることが重要です。情報収集に際しては、以下の着眼点に沿って現状を整理します。
- 事実の把握(何が、どこで、いつ、どのように発生し、どのような被害が生じたのか)
- 責任の所在
- 発生原因
- 追加で発生し得る危機の有無
上記事項を把握したら、緊急対策本部を中心に関係者全員で共有を図ることが重要です。
手順3:対応方針の策定
事実を把握したら、それに沿って今後の対応方針を策定します。
具体的には、情報開示・謝罪の方法やコメント内容、企業方針、再発防止策などを検討し、これらの事項をまとめた「ポジションペーパー」を作成します。作成したポジションペーパーは、弁護士などの専門家からチェックしてもらうことが一般的です。
なお、日頃から想定される対応方針や報道用資料のひな型などを作成しておくと、よりスピーディーに方針を策定できる可能性があります。
手順4:情報開示
方針策定が完了したら、それに沿って情報開示を行います。
自社HPにおける報道用資料(プレスリリース)の公開や緊急記者会見(必要であれば)などを実施します。
手順5:事実誤認の確認と訂正
SNSやニュース、新聞などにおいて、事実を誤認されていないかをチェックします。
仮に事実と異なる情報が報道されたりSNSで拡散されたりした場合、企業イメージの低下を招く恐れがあるためです。事実と異なる内容を見つけた際には、報道機関やSNSアカウントの持ち主などに連絡し、修正を依頼します。
危機管理広報を成功させる4つのポイント
危機管理広報の対応を誤ると、かえって企業イメージの低下につながるリスクが高まります。こうした事態を防ぎ広報活動を成功させるには、以下4つのポイントを押さえることが重要です。
ポイント1:スピーディーに情報開示する
危機管理広報では、迅速な情報開示が最も重要です。
なぜならば、重大な危機であるほど、開示が遅れた際に企業イメージやブランド力の低下につながりやすいためです。またSNSなどで事実無根の情報が拡散されてしまい、イメージ低下に拍車をかける恐れもあります。
遅くとも危機発生から8時間以内、人命などを左右する場合は2〜4時間以内の公表が望ましいでしょう。
ポイント2:誠実で真摯な対応を徹底する
スピードと同じくらい重要なのが、誠実さや真摯さです。
たとえ迅速に情報開示できたとしても、言葉遣いが悪かったり、嫌々または投げやりな態度が出ていたりすると、企業イメージが大きく悪化してしまいます。
また表面上の言葉遣いなどは丁寧でも、会見の際に華美な格好であったり、高級ホテルなどで会見していたりすると、緊急時の対応として相応しくないと判断され得るため注意が必要です。
ポイント3:事実をありのまま的確に説明する
危機管理広報を行う際には、事実をありのままに説明することも重要です。
特に不正会計などの不祥事の場合、不都合な事実を隠したいという意図が開示内容に反映されてしまうことがあります。
後から虚偽の情報であることが判明すると、より印象を悪化させることになるため、事実のみを伝える姿勢が不可欠です。その時点で不明な情報に関しては、正直に調査中である旨を伝えましょう。
ポイント4:広報戦略の見直しと改善を図る
事前に計画策定やトレーニングを行っていても、緊急のトラブルに対して100%完璧な対応を行うことは困難です。1つのトラブルに対する危機管理広報の対応が完了したら、対応の過程や結果に関する分析を行い、広報のプロセスや発表内容・形式などの改善を図ることが重要です。
これによって、次回以降の危機管理広報の質を高めることが可能になります。
まとめ
危機管理広報は、企業のイメージ低下などを防ぐ手段として非常に効果的です。特に近年はSNSの普及によって、短時間で事実無根の情報や自社の瑕疵が拡散されやすい傾向があります。
そのため、今後はより一層スピーディーかつ真摯な態度で危機管理広報を行う重要性が高まると考えられます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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