• 作成日 : 2022年6月16日

グロース市場とは?他の区分との違いや上場基準を詳しく紹介

グロース市場とは?他の区分との違いや上場基準を詳しく紹介

株式上場を考えているけれど2022年4月から東京証券取引所の市場区分が変わって、ますます取引所の仕組みがわからなくなったという人はいませんか?今回の市場区分の再編によって、上場した企業と投資家双方が市場の本来の機能やメリットを享受しやすくなっています。市場区分を理解すると、自社がどの市場で上場すれば良いのか判断ができるようになります。これから上場を検討している方に役に立つ内容です。

グロース市場とは?

これまでの東京証券取引所(以降、東証)は、東証一部、東証二部、東証マザーズ、JASDAQ(スタンダード、グロース)の5つの市場区分から構成され、JASDAQは老舗企業が中心のJASDAQスタンダードと、新興企業が中心のJASDAQグロースに分類されていました。

2022年4月4日以降は、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つの市場区分に見直されました。グロース市場とは、今回新たに見直された、市場区分の1つ。クローズ市場のコンセプトについて、東証の公式サイトは、次のように表記しています。

【グロース市場のコンセプト】
高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向けの市場

引用:日本取引所グループ 新市場区分のコンセプト・上場基準 グロース

グロース市場は、従来の市場区分の東証マザーズと、JASDAQグロースを集約したものという位置づけになります。つまり、グロース市場は新興企業が多く、投資家にとってはハイリスク・ハイリターンな投資です。新たにグロース市場に上場する企業に対して、事業計画と進捗の開示など求めることで投資判断に利用できる情報が増加するため、よりリスク許容度の高い個人投資家や機関投資家が新興市場に参画しやすくなります。

東証の市場区分見直しの背景

今回、東証の市場区分が見直された背景には、次のような理由があります。

市場区分を明確に分ける必要がある

実績のある企業向け市場は、実績のある企業に対して上場する機会を提供し、投資家に対しては安心して投資をする機会を提供する目的があります。一方、東証マザーズのような新興企業向けの市場は、高い成長性を有する企業に上場機会を与え、産業育成を図っていくことを目的としています。市場区分を分ける必要があるのはこのためです。

しかし、従来は東証二部やJASDAQスタンダードに老舗企業が含まれるなど、市場区分が曖昧になっている問題がありました。

上場会社の持続的な企業価値向上につながっていない

従来の制度では新規上場基準よりも、上場廃止基準が大幅に低く、新規上場時の企業価値の水準を維持する意識が薄れてしまいがちでした。また、他の市場から東証一部にうつる方が、新規で東証一部に上場するより基準が緩和されているので、上場後に引き続き企業価値向上を積極的に行う仕組みになっていないという点も課題でした。

今回の市場区分の見直しにともない、既に上場している企業の市場区分変更は以下のスケジュールで行われました。

時期内容
2021年9月1日~12月30日上場会社の選択期間
2022年1月11日上場会社の新市場区分の選択結果公表
2022年4月4日一斉移行日

現在、東証に上場している企業が再編後に選んだ市場は、プライム市場が最も多く、グロース市場が最も少ないという結果になっています。ただし、上場基準に現状満たない企業もあり、変動が発生する可能性はあります。

再編後区分の上場企業数

プライム市場スタンダード市場グロース市場
1841社1477社459社

グロース市場の上場基準

グロース市場は、東証の市場再編前のJASDAQグロース、または東証マザーズなどの新興企業からの移行を想定しているため、株主数や流通株式数などの要件が、プライム市場やスタンダード市場と比べて最も緩和されています

新市場区分の上場基準

項目プライム市場スタンダード市場グロース市場
流動性株主数800人以上400人以上150人以上
流通株式数2万単位以上2千単位以上1千単位以上
流通株式時価総額100億円以上10億円以上5億円以上
売買代金時価総額250億円以上--
ガバナンス流通株式比率35%以上25%以上25%以上
経営成績
財政状態
収益基盤・最近2年間の利益合計が25億円以上
または、
・売上高100億円以上かつ時価総額1,000億円以上
最近1年間の利益が1億円以上-
財政状態純資産50億円以上純資産額が正(プラス)であること-

参照:日本取引所グループ 新市場区分のコンセプト・上場基準

グロース市場の上場維持基準

新市場には、「上場維持基準」が設けられており、上場維持基準を下回って、改善しない場合は、上場廃止となります。

項目上場基準上場維持基準
流動性株主数150人以上150人以上
流通株式数1千単位以上1千単位以上
流通株式時価総額5億円以上5億円以上
売買高-月平均10単位以上
ガバナンス流通株式比率25%以上25%以上
事業計画時価総額--

参照:日本取引所グループ 新市場区分のコンセプト・上場基準

市場区分再編前は、新規上場よりも上場廃止基準が大幅に低かったという問題がありましたが、再編後は、上場当初の基準を最低限維持することが求められている点がポイントです。また、JASDAQでは流通株式比率が求められていなかったので、上場にむけて努力を求められる企業が増えることが予想されます。JASDAQと比べると、流動性の面で上場廃止基準はやや厳格化されている点もポイントです。

グロース市場が適している企業

市場再編後のグロース市場への上場に向いている企業はどのような企業なのでしょうか?グロース市場のメリット、デメリットについて解説します。

グロース市場のメリット

グロース市場に上場すると、以下のようなメリットがあると考えられます。

  • 新興企業として認識される
  • コーポレード・ガバナンスや内部管理体制が整っている企業として認識される

 

市場区分の再編後は、各市場区分のコンセプトが明確になっているので、グロース市場に上場しているというだけで新興企業と認識され、リスク許容度の高い投資家から資金が集まりやすくなります。また、上場維持基準も、新規上場時と同等の水準なので、新興企業であってもグロース市場にいるだけで、一定の企業価値を維持している企業であると投資家から評価されるようになります。

グロース市場のデメリット

一方、グロース市場に上場するデメリットもあります。

  • リスクを避ける投資家から嫌気される
  • 上場基準維持に奔走する可能性がある

 

メリットの裏返しになりますが、グロース市場は新興企業中心の市場なので、リスクを嫌気する投資家から避けられてしまう可能性があります。また、新規上場時と同等の維持基準が求められるため、会社が急成長して忙しい最中、上場基準維持をするための業務に奔走しなければならない事態も考えられます。

グロース市場に新規上場する方法

市場再編にともなうものではなく、新規でのグロース市場上場として受理してもらうためには、新規上場日が2022年4月4日以降であることが必要です。上場申請エントリー後、グロース市場の上場に必要な手続きや書類の上、審査を受けて問題なければ上場承認という流れになります。

申請の流れ

グロース市場の上場申請から上場承認までの主な流れは次のようになります。申請から上場までかかる期間はおおよそ申請から2ヶ月です。

  1. 上場申請エントリー
  2. 事前確認・スケジュール調整…担当者、日本証券取引所自主規制法人の審査担当者、主幹事証券会社の間で行われる
  3. 上場申請、申請書類受理、ヒアリング…申請書類を提出し、上場申請の手続きをした後、審査担当者から上場申請理由や、会社の沿革、事業内容などのヒアリングを受けます
  4. 質問事項送付~回答、ヒアリング(やり取りは3回程度)…不明な点があれば、審査担当者から、質問事項を提示。質問に対する回答書をもとに再度ヒアリングを受けます
  5. 各種面談…審査担当者が審査項目に適合しているか確認をしていきます
  6. 社長説明会…代表が事業内容や事業計画などを東証に対して実施します
  7. 上場承認

【必要書類】
有価証券新規上場申請書
・新規上場申請有価証券訂正通知書
・反社会勢力との関係がないことを示す確認書
・反社会勢力との関係がないことを示す確認書(別添 個人法人リスト)
・新規上場申請に係る宣誓書
・主要な事業活動の前提となる事項について
・株券等の分布状況表
・独立役員届出書(ドラフト)
・コーポレート・ガバナンスに関する報告書
・提出書類一覧
・eラーニング受講対象者一覧

グロース市場の場合は、上場審査料が200万円。新規上場料100万円。その他、年間上場料として、上場時価総額に応じて以下の年間上場料がかかります。

【年間上場料(グロース市場)】

上場時価総額グロース市場
50億円以下48万円
50億円超250億円以下120万円
250億円超500億円以下192万円
500億円超2,500億円以下264万円
2,500億円超5,000億円以下336万円
5,000億円超408万円

審査内容

グロース市場の上場審査では、株主数などの形式要件とは別に「実質審査基準」が設けられています。リスク情報などの開示が求められている点が、グロース市場の審査内容の特徴です。
実質審査基準と各項目のポイントをまとめてみました。

グロース市場の実質審査基準

項目内容
企業内容、リスク情報等の開示の適切性・経営に重大な影響を与える事実などの会社情報を管理し、適時・適切に開示できる状況にあること。また、未然防止体制が適切に整備・運用されていること
・企業内容の開示に係る書類が、法令に準じて作成されていること。かつ、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項や、リスク要因として考慮されるべき事項、事業計画、成長可能性に関する事項について、投資者の投資判断上有用な事項、主な事業活動の前提となる事項などは、わかりやすく記載されていること
関連当事者やその他、特定の者と取引や株式所有割合の調整などで企業グループの実態の開示を歪めていないこと
・親会社がある場合、申請会社の経営に重要な影響を与える親会社に関する事実や、情報を申請会社が適切に把握できて、投資者に適時・適切に開示できる状況にあること
企業経営の健全性・特定の者との間での取引行為などにおいて、不当な利益の供与や享受をしていないこと
・親族関係や、他の会社などの役員などとの兼職の状況が、役員としての公正・忠実な業務の執行や、有効な監査の実施を損なうような状況でないこと
・親会社からの独立性を有する状態であること
企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性・役員の適切な職務の執行を確保する体制が、適切に整備・運用されていること
・内部管理体制が適切に整備・運用されている状況であること
・経営活動の安定、適切な内部管理体制維持のために必要な人員が確保されていること
・実態に即した会計処理基準が採用されており、会計組織が適切に整備・運用されていること
・法令順守の体制が適切に整備・運営されていること
事業計画の合理性・事業計画がビジネスモデル、事業規模、リスク要因などを踏まえ適切に策定されていること
・事業計画を遂行するための事業基盤が整備されていること、または、整備される合理的な見込みがあること
その他公益又は投資者保護の観点から当取引所が必要と認める事項・株主の権利内容やその行使の状況が公益または、投資者保護の観点で適当と認められること
・経営活動や業績に重大な影響を与える紛争などを抱えていないこと
・反社会的勢力による経済活動への関与を防止するための社内体制を整備していること

参照:日本取引所グループ 2022 新規上場ガイドブック(グロース市場編) 3.上場審査の内容

まとめ

グロース市場とは?他の区分との違いや上場基準を詳しく紹介

グロース市場とは、2022年4月から行われる東証の市場再編にともない、新たに生まれた市場区分の1つです。グロース市場は、新興企業市場中心の株式市場で、従来の市場区分の東証マザーズやJASDAQグロースにあたります。また、グロース市場は、新興企業のような将来性のある企業の成長を促していくという側面があるため、スタンダード市場やプライム市場に比べると上場基準が緩和されています。

今回の市場再編によって分類される市場区分は今回解説したグロース市場とプライム市場、スタンダード市場を加えた3種類となります。これから自社の上場を考えている人は、申請前にそれぞれの市場区分の特徴を理解することが大切です。

よくある質問

グロース市場とは?

2022年4月4日以降に新たに見直された市場区分の一つで、従来の市場区分である東証マザーズとJASDAQグロースを集約したような位置づけです。

グロース市場の上場基準は?

株主数150人以上、流通株式数1千単位以上、流通株式時価総額5億円以上、流通株式比率25%以上であることが条件です。上場を維持するには、さらに売買高を月平均10単位以上という基準を満たし続ける必要があります。

グロース市場の上場費用は?

上場審査料が200万円、新規上場料が100万円、その他に年間上場料として上場時価総額に応じた年間上場料がかかります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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上場までの道のりガイド

監修:福谷陽子

ライター・元弁護士
弁護士時代に企業法務や不動産取引、離婚や相続、労働問題など多数の法律案件にかかわった経験をもとに、法律記事を中心として精力的に記事を執筆、編集、監修している。法律だけではなく税務や経営にも明るい。
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