• 更新日 : 2022年8月26日

IPOにはなぜ監査法人が必要?役割や選ぶ際のポイントを説明

IPOを検討している企業にとって最初に決めるべき重要事項は、監査法人の決定です。IPOの際には、上場申請書類に含まれる財務諸表に対して監査法人から監査を受ける必要があります。

この記事では、IPOの際、重要な役割を果たす監査法人について詳しく解説します。監査法人の役割や選ぶ時のポイントなどを知り、計画的にIPOが準備できるよう役立ててください。

IPOにはなぜ監査法人が必要?

IPOにはなぜ監査法人が必要?役割や選ぶ際のポイントを説明

監査法人とは、公認会計士法に基づいて設立された法人で、設立には5人以上の公認会計士が必要です。企業の財務報告を公正な立場でチェックし、内容に誤りや粉飾がないことを証明します。監査法人は、企業の依頼で監査業務をおこないますが、依頼主との利害関係に影響されず独立性を保つことが要求されます。

IPOを目指す会社に対する監査法人の主な役割は、財務的な条件が上場の審査基準を満たしているか会計監査することです。また財務諸表の監査以外にも、内部統制をはじめIPO準備に関する助言や指導もおこないます。

上場時に必要となる財務諸表の監査は、申請前々期・前期・申請期の3期にわたっておこなうので、遅くとも直前前期の期首までには、依頼先の監査法人を決めておきましょう。上場後も四半期レビューと期末審査を受ける必要があり、監査法人の選定は非常に重要です。

また、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、リモート監査と呼ばれる方法での監査も実施されています。頻度は変わらないものの、必要に応じて現地での監査が必要になったり、資料の電子化が必要になったりします。リモート監査はあくまでも監査のひとつの方法として頭の片隅に置いておき、現地監査(訪問)のことも考えておきましょう。

監査法人の役割

IPOにはなぜ監査法人が必要?役割や選ぶ際のポイントを説明
監査法人は、法律や基準に基づいて、決算報告書や財務諸表が正しく記載されているかを確認、報告、証明します。監査はチームでおこなわれ、監査計画から決算報告まで1年を通しておこなわれます。

監査法人の主な役割は、大きく分けて次のふたつです。

  • 監査証明業務
  • 非監査証明業務

このふたつの業務内容について詳しく解説します。

監査証明業務

監査証明業務は、企業の決算書や財務諸表が正しく作られているかを監査し証明することです。監査の結果、意見を述べますが、その内容は「監査報告書」として企業に提出します。監査証明業務のうち主なものは以下のとおりです

  • 上場準備会社の金融商品取引法に準ずる監査金融商品取引法による会計監査
  • 会社法による会計監査
  • 子会社などに対する任意監査

決算書や財務諸表についてチームを編成して監査を行います。帳簿や領収書類のチェックのみならず、関係者への聞き取りや現地調査なども行います。

非監査証明業務

監査法人にとって財務諸表の監査が主な役割ですが、クライアントの課題を解決する非監査証明業務も同じくらい重要になります。具体的な業務内容は次のとおりです。

財務に関するもの以外に、人材育成や事業計画へのアドバイスなども含まれます。非監査証明業務の幅は広く、専門知識を活かしたアドバイザー的な役割が今後も増えていくでしょう。

監査を受けない場合の問題

IPOにはなぜ監査法人が必要?役割や選ぶ際のポイントを説明

IPOを目指す場合、上場申請直前期より以前の2年間分の財務諸表の監査が必要です。上場の要件として遡及監査は原則として認められておらず、最低3年前から監査を受ける必要があります。

会社法では、資本金5億円以上の会社、負債額200億円以上の会社を大会社と定義しています。大会社は監査法人の選定が求められており(会社法328条)、選定しない場合は100万円以下の過料が課されます(会計監査人選任懈怠―会社法976条22号)

さらに大会社は、会計監査人の設置義務だけでなく、内部統制の基本方針を決定する義務があります。これは事業報告へ記載するべきものであり、会計監査人を置かずに放置している場合、内部統制構築義務に反することにつながります。

監査法人を選ぶ際のポイント

IPOにはなぜ監査法人が必要?役割や選ぶ際のポイントを説明

監査法人は全国で271法人あります。(日本公認会計士協会 2022年2月)このうち上場会社を監査する上場会社監査事務所登録名簿に登録されているのは個人事務所などを含め143件(2022年7月)です。その中から適切な監査法人を選ぶため、次の3つのポイントをご紹介します。

  • 監査法人の規模から選ぶ
  • 専門知識を保有しているところから選ぶ
  • 実績から選ぶ

具体的に見ていきましょう。なお、本記事では参照元として「上場会社監査事務所登録情報」に基づいて記載しています。

監査法人の規模から選ぶ

監査法人は、規模によって大きく3つに分けられます。その分類がBIG4と呼ばれる大手監査法人、準大手監査法人、中小監査事務所です。それぞれの特徴とメリットは次のとおりです。

大手監査法人(BIG4)

BIG4とよばれる大手監査法人は次の4法人です。

  • 有限責任あずさ監査法人
  • 有限責任監査法人トーマツ
  • EY新日本有限責任監査法人
  • PwCあらた有限責任監査法人

公認会計士・監査審査会では「上場会社を概ね100社以上監査し、かつ常勤の監査実施者が1,000名以上の監査法人」を大手監査法人と定義しています。この4大監査法人は、国際的な4大会計事務所とそれぞれ提携しており、グローバルに展開する大企業を主なクライアントとしています。

大手監査法人のメリットは、大規模なチームを組み、専門部署による高度な業務にも対応可能な点です。コストは高めですが、海外展開を視野に入れている場合は、大手監査法人が適任です。

準大手監査法人

公認会計士・監査審査会は「大手監査法人以外で、比較的多数の上場会社を被監査会社としている監査法人」を準大手監査法人と定義しています。それが次の5法人です。

  • 太陽有限責任監査法人
  • 仰星監査法人
  • 東陽監査法人
  • 三優監査法人
  • PwC京都監査法人

準大手の監査法人も、海外の大手会計事務所と提携し、大手監査法人に匹敵する専門性の高さも兼ね備えています。ただし大手監査法人のような縦割りの専門性ではなく、公認会計士個人が手広く業務にあたります。大手監査法人に比べてスピード感があるのも特徴です。

中小監査事務所

個人事務所や数名の公認会計士が所属している程度の小規模なところから300人以上の比較的大きなところまで規模はさまざまです。また海外の会計事務所と提携している監査事務所もある一方で、上場企業の監査ができる事務所として登録していない監査事務所もあります。

近年、大手監査法人から準大手監査法人や中小監査事務所へ依頼先を変更する動きが増加しています。大手にはないスピード感やリーズナブルな報酬などを総合的に検討した結果、中小監査事務所を選択するのも悪くありません。ただし、海外展開を考えている場合に対応できるか、そもそも上場の監査ができるかなど、見極めて選ぶ必要があります。

専門知識を保有しているところから選ぶ

IPOに関する監査法人の主な役割は、会計監査の実施ですが、同時に財務諸表の作成に関して指導や助言をおこないます。また上場後に適用される内部統制報告制度に対応した社内管理体制の整備についても同様です。

IPOにおいて監査法人は、コンサルタント的な役割を担い、上場に関する幅広い知識と経験が必要とされます。そのため、IPOに関する専門知識を保有し、経験が豊富な監査法人を依頼先として選びましょう。

実績から選ぶ

監査法人を選定する際、実績の確認も重要です。チェックすべき実績の内容については、次のようなものが挙げられます。

  • 歴史
  • 監査している企業例
  • これまでのIPO実績

IPO支援を依頼するのであれば、今までどのような会社の上場支援をしたか、自社と同じ系統の会社を受け持っていないかなどを確認しましょう。監査法人のなかには、IPOを引き受けないところもあります。問い合わせ前にリサーチしておき、希望に適したサポートを提供している監査法人を選びましょう。

IPOをおこなう流れ

IPOにはなぜ監査法人が必要?役割や選ぶ際のポイントを説明
最後に、IPOについて外部からどのような協力が必要でしょうか。ここでは5つの種類について説明いたします。

  1. 監査法人(公認会計士)を決める
  2. 主幹事証券会社を決める
  3. 主な株主から了承を得る
  4. 印刷会社を決める
  5. 株式事務代行機関を設置する

順番に見ていきましょう。

    1. 監査法人(公認会計士)を決める

開示される情報が正確であるかを監査するため、監査法人を決定します。決定の時期は、IPOを決定したら前準備を行う意味でも早めにおこなうのが望ましいです。監査業務の依頼に先立って、課題を確認するためショートレビューを受けます。その結果に基づいて契約締結を検討するので、候補の監査法人とは早期のコンタクトが必要です。

    1. 主幹事証券会社を決める

財務会計や各種規定の整備、社内システムなど、前年度のショートレビューで指摘された事項が改善されていれば主幹事証券会社を決定します。主幹事証券会社は、上場に関して支援する幹事証券会社のなかでも中心的役割を果たします。

    1. 主な株主から了承を得る

上場のためには、事前に株主や取引銀行から了承を得る必要があります。通常、未上場の会社は株券を発行していませんが、なかには株券を発行している会社も存在します。しかし上場する場合、株券は電子化され、株券不発行となることを覚えておきましょう。IPO準備のためには、定款を変更し、発行済みの株券を回収しなければなりません。

また、上場の前後で株式の所有割合が変更することもありますのでその点で了承を得ることが重要となります。

    1. 印刷会社を決める

上場申請のための各種印刷物を用意する印刷会社を決定します。IPOに関する開示書類の印刷経験があり、上場申請書類に関する豊富な知識がある印刷会社が望ましいでしょう。

IPOに関する書類の印刷は特殊なので、印刷以外にも提出書類の作成指導やチェック作業、IR体制への助言などができる印刷会社が適任です。IPOを検討し始めたら、いわゆるディスクロージャー専門印刷会社にコンタクトを取っておきましょう。

    1. 株式事務代行機関を設置する

上場後には、株主名簿の管理や株主総会の運営をおこなう「株主事務代行機関」を設置します。株主事務代行機関は、発行会社に代わり、名簿所管事務をはじめ株券・優先出資証券の発行事務など、株式全般の事務を代行します。

まとめ

IPOまでに、監査法人の決定から内部統制の整備、株式公開準備など最低でも3年かかります。特に監査法人の担う役割は大きく、どのような監査法人と契約締結するかでIPO実現までの難易度に差が生じるでしょう。

近年、監査法人を引き受けてもらえない監査法人難民が増えているとの声もあります。IPOを検討している企業は、早い段階から候補の監査法人とコンタクトを取っておきましょう。

よくある質問

IPOに必要な監査法人の役割とは?

上場のためには会計監査の実施が必要です。監査法人は、IPOのための会計監査をおこないます。さらに適切な財務諸表作成のために、指導や助言をする役割も果たします。また、内部統制や社内管理体制の構築のためのアドバイスなど、その役割は多岐にわたります。

監査を受けないとどうなる?

IPOでは、上場申請直前期以前の2年間分の財務諸表の監査が必要です。上場の要件として遡及監査は原則として認められていないので、最低3年前から監査を受ける必要があります。上場をしない場合であっても会計監査人を選ぶべきなのに選ばなかった場合、会社方法の規定により罰則を受けることがあります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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監修:中川崇

田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。