- 更新日 : 2024年7月12日
内部統制の強化にワークフローシステムが効果的!メリットや事例を紹介
内部統制のメリットは「オペレーションが安定する」「法令順守を徹底できる」ことですが、一方で誤った効率の悪い内部統制にしてしまうと、業務工数が想定より増加したり、経営の意思決定が遅くなったりといったデメリットにもつながる可能性があります。
上手く行っている会社は、ワークフローシステムといった最新のツールを入れて内部統制の目的を達成しながらも効率的に運営し、その内部統制のメリットをより受けています。本記事では、内部統制の効率的な運営方法について、他社事例も踏まえながら解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
目次
内部統制を強化できる「ワークフローシステム」とは
内部統制を強化する方法にはさまざまな方法がありますが、代表的な例として「ワークフローシステムの導入」があります。
ワークフローシステムとは、稟議申請書や通知書を電子化し、あらかじめ定められたプロセスに従って、決済や発信の処理を行うことができるツールです。
稟議・報告書・届出申請といった承認プロセスを電子化して、業務効率化やスピードアップだけでなく、システムによりプロセスが徹底されるため、内部統制の強化にもつながります。
内部統制強化に向けてワークフローシステムを導入するメリット
ワークシステムを導入するメリットは以下の通りです。
- 過去の稟議等の検索が容易になる
- ハンコを押すために出社する必要がない
- 権限に従った内部統制を確実に設計できる
- 支払や経費精算に紐付けることも可能
ワークシステムを導入することで、申請に必要な書類をすぐに探すことが可能です。また、支払や経費精算をシステムに紐付けられるため、予算管理が簡単にできます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
過去の稟議等の検索が容易になる
内部統制の運用状況について、監査法人から資料の提出を求められます。
また、日々の業務の中で過去の申請承認状況を確認する必要がある場面は多々あります。その際にワークフローシステムがあると、すぐに過去情報を検索することができることは効率的に運営する上で重要です。
ハンコを押すために出社する必要がない
紙書類を前提とした内部統制の場合、「ハンコを押すためにわざわざ出社…」といったこともありましたが、ワークフローシステムを導入すれば全てシステム上で手続きできるため、わざわざ出社する必要がありません。
リモートワークの推奨など働き方改革を意識した労働環境を考えれば、ハンコのために出社というのは従業員にとって負担となることが予想されるため、留意すべき点でしょう。
権限に従った内部統制を確実に設計できる
上場直前直後の会社は、まだまだ成長フェーズで組織異動も多いでしょう。組織異動に合わせて権限・承認者のフローを柔軟に変更していくことは、管理部の負担となります。
ワークフローでは、こうした組織変更についてもスピーディーに対応が可能です。
支払や経費精算に紐づけることも可能
最近のワークフローシステムでは、経費精算や支払に紐づけることも可能です。申請が形骸化することなく、最終的なキャッシュアウトまで確認できるため、内部統制機能の強化のみならず、予算管理といった業務にも貢献できるでしょう。
内部統制強化のためにワークフローシステムを導入するデメリット
内部統制の強化でワークフローシステムを導入するデメリットとして、社内に浸透させるまでに手間と時間がかかることが挙げられます。
新たにシステムの操作方法を覚えなければならず、業務内容が変更される可能性があるため、社内に浸透するまでに時間がかかる恐れがあります。
社内へのシステム導入を円滑に進めないと、従業員の負担が増え、システム化に反対する方も出てくるでしょう。社内に浸透させるために、マニュアル作成や社内研修を行って、働きやすい環境作りを心がけることが大切です。
内部統制強化のためにワークフローを導入する際の注意点
内部統制の強化でワークフローシステムを導入する際には、既存システムと連携できるか確認する必要があります。
データの流用ができず、手入力することが増え、業務効率化を図れません。手入力が増えることで、従業員のミスも増加する可能性があります。
システム導入の結果、ミスが増えることを防ぐためにも、既存システムとの親和性を確認しておきましょう。
内部統制の強化でワークフローシステムを導入した企業事例
財務報告の目的に関連した内部統制として「会計仕訳の申請承認」といったものがあります。従来は仕訳の承認のため、都度で仕訳帳を印刷し、そこに経理担当者と上長がハンコを押して承認を行うというのが一般的でした。
最近では、クラウド会計システムを導入する企業も多くなってきています。上場基準に耐えられ、上場実績のある会計システムを選ぶことが重要です。
上場を見据えてクラウド会計システムを導入した企業の導入事例もいくつかあるため、参照してみてください。
事例①ログ機能・仕訳承認機能で内部統制の強化に成功
株式会社クラスコムは、ライフスタイルを提案するECサイトを運営しています。
ワークフローシステム導入前は、仕訳業務をすべて会計事務所に委託しており、月次決算のPDFのみを受け取っているため、社内での財務状況の把握が難しい状況でした。また、上場に必要な内部統制の強化が十分に進んでいないことも課題としてあったそうです。
しかしシステム導入後は、ログ機能・仕訳承認機能によって内部統制の強化に成功しています。また、銀行とAPI連携することで、預金残高の最新情報をシステム内で常に確認できるようになりました。さらに、他サービスと連携したことでペーパーレス化も進んだそうです。
参考:Money Forward|導入事例|上場を見据え、内部統制に効果的なクラウド会計Plusへ移行
事例②作業時間の短縮でリモートワークの働き方が実現
Japan Digital Design 株式会社は、顧客の戦略立案や顧客調査、ブランディングまで一連のサービスを提供しています。
ワークフローシステムを導入前は、集計作業や書類作成後の確認に時間がかかり、勤怠管理が手作業で処理に半日かかることが課題でした。
しかしシステム導入後は、自動化により、チーム全体の作業時間が減り、勤怠管理はAIチャットボットを導入することで作業時間に短縮に成功しています。それに伴い、決算のリモート化以外のフローも見直しを行い、リモートワークも実現させたそうです。
参考:Money Forward|導入事例|決算業務のリモート化をきっかけに業務改革。チーム全体の工数が削減
まとめ
今回は、ワークフローシステムを導入するメリットやデメリット、企業事例について説明しました。システムを導入することで、過去の稟議をすぐに探せたり、経費精算が簡単にできたりします。
しかし、導入する前に既存システムと連携できるかどうか確認しないと、かえって業務効率が落ちるリスクがあります。システム導入にはメリットがある一方で注意しなければならない点もあるため、他社の事例を参考にしながら導入しましょう。
よくある質問
内部統制の強化に効果的なワークフローシステムとは?
ワークフローシステムは、業務の進行をスムーズにするツールで、決裁や稟議書などの申請・承認作業を行うために使用されます。システムを使うと、紙での申請書を使うよりも手続きが簡単になるため、業務の効率が向上します。
内部統制の強化にワークフローシステムを導入するメリットは?
ワークフローシステムを導入するメリットの1つは、申請と承認の流れをシステム上で見られる点です。 システム上、申請は正しい手順に従わなければ進まず、承認されません。そのため、申請が適切な流れで行われるため、不正の可能性が減らせます。結果的にワークフローシステムは、会社のルールや規則を守る内部統制の強化にも貢献します。
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