- 作成日 : 2024年10月15日
上場(IPO)に向けてやるべきことは?ワークフロー整備のポイントと合わせて解説
スタートアップにとって上場(IPO)は、1つの重要なマイルストーンとなっている場合も多いでしょう。上場によって開かれた株式市場に上がることで多くの投資家から資金を募ることができ、企業としての箔もつく一方、企業の成長や健全性に対してもその分更なる責任が求められます。
したがって、上場するための準備には多大な時間とリソースを割く必要があり、これらへの対応と効率化が重要になります。
本記事では、上場の準備に必要なタスクや期間などの全体像に加えて、効率化するためのワークフローの整備ポイントを解説します。
目次
上場(IPO)準備に必要なこと
まずはじめに、そもそも上場とは何を指すか、また、上場に要する期間ややるべきことなどの全体像について解説します。
上場(IPO)とは
上場とは、証券取引所で自社の株式を売買できるようにすることを指します。つまり、それまでの非上場の状態とは異なり、世界中の全ての人が自社の株式にアクセスできるようになります。
日本において上場が可能な証券取引所は東京証券取引所、名古屋証券取引所、福岡証券取引所、札幌証券取引所の4つで、これらのうち東京証券取引所がメインとなっています。
東京証券取引所の市場は、投資家への開かれ具合に応じて、プライム・スタンダード・グロースの3つに市場が分かれています。
このように多くの人が自社の株式を扱えるようになることは、言い換えれば、自社の存在および経営状況がそれだけ多くの人に影響を与えるということを意味します。
そのため、上場する企業には、体制やガバナンスなどの企業の健全性・安定性に関する審査基準が設けられています。
上場(IPO)に必要な期間
一般的に、上場を行うためには少なくとも3年が必要といわれています。
これは、上場審査に2期以上の監査証明の提出が不可欠なためであり、さらにその前から監査を受けるための体制作りや、監査法人からのショートレビューを受けるための期間も必要となるためです。
上場(IPO)に向けてやるべきこと
上場に向けた3年の期間の中で、それぞれの段階でやるべきタスクは異なります。上場準備を始めた初期段階、監査を行い出した中途段階、上場間際の直前段階に分けられます。それぞれの主なタスクは次のとおりです。
初期段階:上場3期前から2期前
- 上場に向けた事業計画・資本政策の策定
- 監査法人の選定
- ショートレビューの実施
- 主幹事証券会社の選定
- 上場準備プロジェクトチームの結成(外部コンサルの選定なども含む)
中途段階:上場2期前から1期前
- 監査法人の監査開始
- 内部統制の構築および内部監査部門立ち上げ
- 社内の規程整備
- 役員の選退任・組織体制の整理
- 会計制度の整備
- その他ショートレビューおよび主幹事証券会社からのレポートでのフィードバック対応
直前段階:上場1期前から申請まで
- 事業計画・資本政策の見直し
- 各種申請書類の作成
- 定款の変更
- 主幹事証券会社による引受審査
- 証券取引所による上場審査
また、上場準備のスケジュールについては、以下の記事で詳しく解説しておりますので、併せてご参照ください。
上場(IPO)準備のポイント
次に、上場準備において重要な3つの論点を解説します。
- 内部統制の徹底
- 必要な書類の整備
- 業務プロセスの明確性と透明性
それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
1. 内部統制の徹底
内部統制とは、企業が適正に業務を遂行するために、企業自身でルールや体制を整備して管理監督、改善を行う仕組みのことを意味します。
金融商品取引法(J-SOX)にも内部統制の重要性が規定されており、上場審査において重要視されるテーマです。
事業計画が合理的か、経営体制に不正などがなく健全か、開示される情報やリスク情報が適切かなどの観点で確認が行われます。
2. 必要な書類の整備
上場企業として、適切に管理されるべき書類というものがいくつか存在します。具体的には下記のような書類が挙げられます。
これらがきちんと存在し、また適切な頻度で更新されているかも上場審査における重要なポイントといえるでしょう。
- 企業概要および事業内容
- 企業の沿革
- 財務情報
- 有価証券報告書
- 社内規程
- 反社会的勢力との関係がないことを示す書類
3. 業務プロセスの明確性と透明性
主に監査対応の観点から、これまでの業務内容やプロセスが健全に運用されてきたかをチェックしましょう。
内容自体もさることながら、プロセスそのものが明確であり、高い透明性の中で運用されているかどうかも重要です。
例えば、一定期間の取引の証跡が残っていない、重大な取引に関する者が辞めてしまい詳細がわからない、などの問題が起きないように留意しましょう。
ワークフローシステム導入の重要性
続いて、上場準備においてワークフローシステムを導入することによるメリットや重要性を説明します。
結論としては、ワークフローシステムを導入することで、前章で紹介した上場準備のポイントを押さえられ、かつ効率化することができます。
具体的には、次の3つの重要性があるといえるでしょう。
- 不正を最小限にできる
- 書類手続きや管理を効率化できる
- 業務プロセスなどが見える化できる
それぞれのポイントを詳しく解説します。
1. 不正を最小限にできる
ワークフローをデジタル化することで、記録・履歴がシステム上に残るため、横領や契約書の改ざん、決算資料の不正などを抑制することが可能になります。
決裁権限や承認フローを整備することができるため、透明性も担保しやすくなるでしょう。
ただし、システム化によって不正を最小化できるものの、完全になくすことはできない点には注意が必要です。システム化は完璧なものではなく、あくまで効率化のための手段として位置付け、アナログな仕組みも含めた内部統制設計が重要です。
2. 書類手続きや管理を効率化できる
これまでは、紙面上でやり取りしていた契約書の押印や社内文書の作成・メンテナンスなどが、システム上で一元的に行えるようになります。
これにより、例えば遠隔拠点間でのやり取りなどがスムーズになり、工数削減につながるでしょう。
特に上場準備では、新たに管理しなければならない書類が膨大に増えるため、システム化が与える効果は大きいといえます。
3. 業務プロセスなどが見える化できる
上場審査のポイントの1つである明確で透明性の高い運用を行うにあたって、社内のプロセスや仕組みが誰でも簡単に理解できるように可視化されていることは非常に重要です。
例えば、組織図がシステム上で見える化されていて、ドキュメントの申請や決裁フローが一目で分かるようにしておくなどが挙げられます。このように、システム上でワークフローを整備することで効率化を図ることが可能です。
まとめ
本記事では、上場準備におけるタスクや重要なポイント、またそれをワークフローシステムで効率化することの必要性を解説しました。
上場の準備は長い期間をかけて、専任チームを組成しながら取り組む必要があるテーマであり、中でも内部統制の整備・書類の準備・業務プロセスの明確性と透明性がポイントになります。
また、これらを効率的に実施するにはワークフローシステムの導入がカギとなります。ただし、全てを一概的にシステム化するのではなく、効率化につながる領域に絞ったり、既存のシステムとの互換性・接続性なども加味するなど、自社にあったワークフローシステムを検討することも重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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