• 更新日 : 2023年6月30日

内部統制とは?目的ややるべきことリストを公開、徹底解説します!

IPOを実現するためには、避けては通れない内部統制の構築・運用。証券市場で認められるために「正しい会社運営を担保する仕組み」として不可欠のものとなります。
内部統制を整えることは上場要件を満たすだけではなく、会社内部の運営上のメリットも多くあります。本記事では、内部統制の目的・メリット・デメリット・やるべきことを解説します。しっかりとしたスケジュールを立てながら取り組んでいきましょう。

内部統制とは

内部統制の定義について、金融庁では以下のように規定しています。

内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令などの遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動) 及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される

【引用】財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準

金融庁の定義を要約すると以下となります。

内部統制とは

  • 4つの目的を達成するために業務に組み込まれるプロセス・ルールのこと
  • 4つの目的とは、経営していくうえで不可欠な「攻めと守り」に関するもの
  • 6つの基本的要素とは、内部統制であるプロセス・ルールは6つの項目から成り立つので、欠けている観点がないか6つの項目を利用してチェックするもの

となります。

4つの目的および、6つの基本的要素については下記記事を参照ください。

「内部統制強化を効率的に行っている企業は何をしてる?ワークフローシステムの他社事例を公開!」

内部統制のメリット・デメリット

内部統制の定義・目的を理解したところで、次はメリット・デメリットについて見ていきましょう。

内部統制のメリット

内部統制は基本的に、

  • 業務を分業化して相互チェック体制を強化すること
  • チェックリストに財務報告の適切性や法令順守といった経営目的に適合させること

が行われます。

そのため各業務・オペレーションの目的が明確になり、業務・オペレーションの効率性が向上するほか、法令順守の徹底や社内不正の防止、財務・会計状況をより適切に把握できるなどのメリットが期待されます。

メリットを最大化するためにも「何のためにこの業務をやっているのか」、そして「その目的を達成するために何を守らないといけないのか」という点をしっかりと言語化およびフロー図に落とし込むようにしましょう。後述する「3点セット」と呼ばれるものは、まさにこの言語化とフロー図を作成したアウトプットとして求められるものになります。

内部統制のデメリット

内部統制のデメリットとして大きく上げられるのは、「業務負荷の増加」です。内部統制を0→1で立ち上げるフェーズでの負荷増大も当然ありますが、その後の運用についても負荷が全社的にかかります。このデメリットを極力避けながら、より有効性のある内部統制を作り上げていくことが担当者の腕の見せ所となります。

担当者として、オペレーション設計能力だけでなく、内部統制を監査する側である監査法人との交渉能力も求められるため、ワークフロー設計の知識経験だけでなく、日々の監査法人とのコミュニケーションも重要です。

デメリットについてまとめると以下となります。

  • 構築時の負荷増加
  • 運用に関する継続的な負荷増加
  • 経営意思決定スピードの鈍化(意思決定までのプロセス増加)
  • 監査対応コストの増加

【事例】Netflix創業者の著書『No rules』から学ぶ、コンテキスによる内部統制

ネットフリックスでは、内部統制に関する変わったカルチャーを持っています。ネットフリックスでは「経費使い放題」「就業時間が決まっていない」といったNo rulesを掲げる一方で、経費全体の25%は内部監査を行い、私的利用と知った不正を行った社員には解雇または厳罰処分を下すなどの責任を課しています。

経費使い放題にした理由は「社員の意思決定能力の信頼」「それによる経営意思決定速度が上がる」ことを重視した結果であり、細かく厳しく見るのではなく、社員を信じてコンテキストで統制を行っていくという会社のカルチャーを強く反映したものになっています。

内部統制も会社のカルチャー(企業文化)に大きな影響を与えるものになるため、自社の文化と照らし合わせながらどういった統制がベストか考えてみるとよいでしょう。

IPOに向けた内部統制の際に準備することとやるべきことを公開!

ここまで定義・目的からメリットやデメリットについて解説してきました。最後に具体的に内部統制を構築するにあたって何を準備したらよいのか、何からやるべきなのかについて説明します。

内部統制・やることリストを公開

IPOに向けて内部統制としてやるべきことは以下のSTEPとなります。

  1. 監査法人によるショートレビュー
  2. 組織構造の整備
  3. 社内規程ルールの整備
  4. 内部統制の設計
  5. ワークフローの導入といった内部統制の具体的な構築作業
  6. 内部統制の運用徹底および監査対応

1.監査法人によるショートレビュー(N-3期)

まず初めにやるべきこととしては、公認会計士または監査法人のショートレビューが挙げられます。ショートレビューは短期調査とも呼ばれ、「IPOに向けた初期健康診断」のようなものになります。IPOを行うためには、監査法人による証明書が2期分必要なため、IPO予定日から3年より前(N-3期)には実施をしましょう。

IPOをする上で会社の仕組みとして何が足りていないのか、何が大きな問題なのかについて2~3カ月ほどの調査を行い、最終的には「報告書」という形で問題点と改善案までまとめたものを提出してもらえます。

会社にとっては、この報告書が内部統制構築に向けた最初のスタート地点(キックオフ)となります。

費用としては50~200万ほどかかります。今後IPOを目指すうえで、監査法人とは長期の付き合いになるため、金額だけでなく担当者との相性も含めて慎重に選定しましょう。

2.組織構造の整備(N-2期)

内部統制では基本的に「申請者と承認者」といったようにピラミッド型の組織構造が前提として想定されています。もし現時点ですべての意思決定が社長に集中している場合には、部長職の設定や執行役員制度の導入を行い、意思決定に関する権限移譲を進め、内部統制を運用できるだけの組織構造を整備しましょう。

3.社内規程のルール整備(N-2期)

組織構造ができたら、今後は具体的に社内規程と呼ばれるルール整備を行いましょう。例えば、経費規程や稟議規程といった組織構造を前提とした申請・承認のルールを定めていきます。それ以外にもハラスメント規程といった禁止事項と、禁止事項を破った際に会社としてどう罰するのか、いわゆる社内の法律にあたるものを定めていきます。

4.内部統制の設計(N-2期)

組織構造・社内規程が整ってきたら、それらの情報をベースに内部統制の設計を行っていきましょう。内部統制の設計については監査法人がコンサルティングを行ってくれるため、相談をしながら設計を進めていきましょう。

5.ワークフローの導入といった内部統制の具体的な構築作業(N-2期)

内部統制の設計が完了したら、それを実現するためのワークフローシステムの導入などを進めていきましょう。また設計内容について「3点セット」と呼ばれるものを作成する必要があります。3点セットとは以下となります。

  • フローチャート
  • 業務記述書
  • リスクコントロールマトリックス

業務内容の明文化およびそのフロー図、そして全社のそれぞれのリスクに対してどの内部統制が機能しているのかを図示化したものを作成いただくこととなります。こちらについても監査法人が支援を行ってくれるため、適宜相談しながら進めていきましょう。

6.内部統制の運用徹底および監査対応(N-1期)

内部統制の構築ができたら、今度はその内部統制について年間を通じて正しく運用していく必要があります。社員に必要性やメリットをしっかりと説明して、運用を徹底していきましょう。監査法人も整備された内部統制が、正しく運用されているかについて厳しく監査を行いますので、しっかりと運用をしていきましょう。

仮に、運用上の問題があったとしてもその都度監査法人に相談をしていけば問題ないので、運用フェーズにあたっても監査法人とのコミュニケーションは大事にしていきましょう。

内部統制報告制度とは

内部統制報告制度について、内部統制の整備・運用に関して監査法人から報告書が提出される制度のことを指します。こちらは、上場後の適用(基本的には上場してから3年間は免除)になりますので、まずは内部統制の構築と運用に集中をしましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。本記事では内部統制の目的・メリット・デメリット・やるべきことについてご説明しました。別の記事では、内部統制の目的やコーポレートガバナンスとの違いなどについても詳しく解説していますので、ぜひ参照ください。

 


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