• 更新日 : 2022年7月12日

マネーフォワードクラウドpresents「& money」 株式会社カオナビ取締役 CFO橋本公隆さんに聞く!(後編)

マネーフォワードクラウドpresents「& money」 株式会社カオナビ取締役 CFO橋本公隆さんに聞く!(後編)

さまざまな企業のリーダー、ファイナンス部門の方にフォーカスを当て、その仕事や企業の成長戦略の裏側、その仕事術に迫ります。今回お話を伺ったのは、株式会社カオナビ取締役 CFO 橋本公隆さん。カオナビは社員の個性・才能を発掘し、戦略人事を加速させる、タレントマネジメントシステム「カオナビ」を提供するIT企業。後編では、CFO橋本さんの仕事の流儀、そしてこれからの働き方、これからのカオナビについてお伺いします。

プロフィール

橋本公隆
三洋電機株式会社にて資金調達や金融機関との渉外業務を担当。その後、三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社にてM&Aアドバイザリーや資金調達等の投資銀行業務に従事。2018年株式会社カオナビにジョイン。現在、取締役CFO。趣味は旅行、釣り。

田中泉
インタビューをはじめ多方面で活動。9年間アナウンサーを務めたNHKでは「ニュースウオッチ9」「クローズアップ現代+」など報道番組を中心に国内外で最新のニュース・事象を幅広く取材。経済分野では数々の企業取材・経営者インタビュー・ノーベル賞受賞者への英語インタビューなどの実績がある。趣味は素敵なお店の開拓。1988年生まれ。

CFOの醍醐味は意思決定にあり

田中 これからIPOを考えている企業のCFO、ファイナンスの担当の方に伝えたいことは?

橋本 多くのCFOは、IPOはゴールではないと当然そう思っていると思います。ですので、IPOのあとを見据えた戦略を検討していくべきだと思っています。例えば投資家と上場したあとにコミュニケーションを図るとき、会社を見るうえで、どの指標を見れば、その会社の成長が見てわかるのかというのがあるじゃないですか。自分たちはどの指標をもって、今後、コミュニケーションをしていくとか、そういったことをしっかりと決めて、その数字をIPOのときに出したら出し続けるということですよね。IPOのバリュエーションを上げるために数字を出して、あとはちょっと都合が悪くなったので、出さなくなるというのは良くないかなと思います。

田中 CFOの仕事の大変さ、逆に醍醐味、楽しさは?

橋本 意思決定に尽きるかなと思っています。自分で意思決定できる楽しさもあって、でも、逆に自分で意思決定する怖さもあります。誰も答えがわからない中で、それでもやっぱり経営をしていかなければいけない。意思決定をしなければいけない。できる限り情報収集をして、いろいろな仮説を立てて、それでその時点ではベストだと思えるような意思決定をしていく。その過程で、成長することもできるし、うまくいったときには、満足度も高いし、そういった意味で意思決定に尽きるなと思います。

会計はアートだ!

田中 橋本さんがファイナンス、財務関係の道に進んだのは、いつごろ?またその理由は?

橋本 大学時代ですね。私が大学のときは就職氷河期だったんです。それで何か得意なものや武器を持たないと就活がうまくいかないかなと思い、それで会計の勉強を始めたのがキッカケでした。ぶっちゃけて言うと、会計でもいいし、法律でもいいし、プログラミングでもいいし、何でも良かったんです。もう何でもいいから武器が欲しいという状況で、たまたま目に留まったのが会計でした。会計は最初、簿記の勉強からスタートするのですが、企業活動って実にさまざまで、その活動の一つひとつがすべて仕訳という数行の処理によって記帳されていくんです。その仕訳が溜まっていって、最終的に損益計算書とか、貸借対照表というのが出来上がっていくのですが、そういった活動が数行で全部表わされていくというのは、アートだなと思って、すごいなっていうのが最初のイメージでした。

田中 会計がアート。あまり聞いたことないんですけど(笑)、出合い、その美しさ、
ある種、美しさに魅せられたということですか?

橋本 そうですね。最後、こんなきれいな形でガチッと嵌まるんだっていうのは、ビックリしました。

田中 出合いは偶然だったけれども、勉強し始めていったら、もう私にはこれだという形で。

橋本 おもしろいなと思いましたね。それで、こうやって財務諸表はつくられるんだというのを理解し、つくり方がわかってくると今度は見方がわかるんです。その数字を見ると、この会社は今、こういう領域にフォーカスしているとか、ここにリソースを張っているとかわかってきて、戦略が見えてくるんです。ちょっと違ったアングルで企業を分析できるので、そこはおもしろかったですね。だから就職活動するときに、一般的には、業界であったりとか、あとは会社名であったりとか、そういう縛りで就活する人が多いと思いますが、私は財務というミッション縛りで就活をしました。

田中 アートとして魅せられて、そこにもう「財務だ-!」って。今のCFO、財務関係の仕事というのは、子どものころになりたかった仕事と特に合致していることではない・・・

橋本 そうですね。子どものときは、プロ野球選手でしたね。小学校の卒業アルバムにも、プロ野球選手って書いています。途中、肘を怪我してできなくなりましたけど、それまでは結構のめり込んでいて、中学のときには、甲子園に行くためにどこの高校に入ればいいかというのを真剣に考えていましたね。結局、野球ができなくなったので、普通科がある高校に行きましたが、それまでは商業高校に行こうと思っていました。

田中 ちなみにポジションはどちらだったんですか?

橋本 サードでした。

人間は経験を積んで成長していく

田中 話は変わりますがご自身はどんなタイプのCFOだと認識してらっしゃいますか?

橋本 攻めのタイプとか、守りのタイプとかありますよね。でも正直、意識してないです。バックグラウンドで言うと、投資銀行出身なので攻めのタイプとなるかもしれないですが、会社にとっては両方、大事なんです。攻めも大事だし、きちんとガバナンスをつくっていくということも大切だし。だから、その会社の状況に応じて、臨機応変に対応できるようなCFOでありたいと思っています。

田中 ご自身のステップアップ、自己研鑽のために何をされていますか?

橋本 他社のCFO、投資家、まったく違うジャンルの方、いろいろな方の話を聞くようにしています。結局、人間って経験を積んで成長していくんですよね。でも、自分が経験できることには限りがあって。そういう意味では、いろいろな方の話を聞いて、それを共有体験として自分の経験に落とし込めれば自分も成長できるんじゃないかと思っています。

田中 趣味は旅行、釣り。この趣味が仕事に及ぼす影響は?

橋本 とてもあります。旅行はビーチとか、温泉が好きなんです。釣りもそうですけど、ボォ~とできるじゃないですか。ボォ~とすることによって、頭の中をリフレッシュして、仕事をするときの意思決定に役立つと思っているので、オンとオフの関係は大事だと思っています。

不確実性の時代に対応するためには?

田中 このコロナの影響もありこの数年、社会が激変していますが、これから未来を見通す財務のキーワードは?

橋本 不確実性のコントロールだと思っています。コロナもそうでしたが、本当に先がわからないじゃないですか。でもそんな中でも経営者というのは経営をしていかなければいけないのでいろいろな戦略を考えますよね。でも、環境が変わるとその戦略の前提になっていることも変わってくると思うんです。自分たちが思いもしなかったこと、想定していなかったことが起きているかもしれない。起きているとしたら、どこで起きているのか。そういったことをスピーディに把握していくことが大事で、それは常に自分たちが考えている前提に疑問を持ち続け、疑い続けるということにもなります。そうすれば、財務指標かもしれないし、KPIかもしれないし、何かしらが変わってきたときに、適切に前提条件というのを、もう一回考え直すこともできるし、そうすれば、環境変化にもしっかりと対応できると思っています。

田中 コロナはカオナビの事業にどんな影響を及ぼしましたか?

橋本 最初はネガティブな影響があって、営業ができないとか、そういったことで新規の獲得が鈍化したというのはありました。ただ、リモートワークが普及していくと、人材マネジメントがより難しくなってきて、それを解消するために弊社のタレントマネジメントを導入するという流れも生まれてきました。

田中 その間、CFOとして橋本さんはどのように陣頭指揮を取られたのでしょう?

橋本 財務的な観点で言うと、会社を潰さないということ。あとは、CFOというより会社の一メンバーとして、エンゲージメントに力を入れたという感じです。コロナで業績がスローになり、もしくは普段、一緒に仕事していた人が離れ離れになり、組織力が弱くなった時期というのがあったんです。そういう中で、3年後や5年後、この会社がどうありたいかとか、どんなプロダクトをつくったらおもしろいかとか、メンバーとそういうワクワクする話をして、自分も社員もモチベーションを高めるようなことをしました。

自分の個性、才能を活かせる時代に

https://biz.moneyforward.com/ipo/wp-content/uploads/2022/07/IMG_3750-1カオナビ2.png

田中 これからの組織のあるべき姿、新しい時代の働き方について、ヒントがあれば、教えてください。

橋本 これまでは会社のために自分のキャリアや生活を犠牲にする時代だったと思うんです。でも、これからは自分がどうありたいかとか、どんなふうに働きたいかとか、自分の個性や才能、そういうものを生かせる時代になっていくと思っています。自分自身の個を起点にして、さまざまな組織で働いていけるような、そういう時代が来ると思っています。

田中 まさしくそういった個性、個というものがカオナビを通して、わかるということだと思います。カオナビのこれからについては、どのようにお考えですか?

橋本 そういった時代に備えるとともに、そういった時代をつくっていきたいという思いがあります。カオナビではすでに、会社と従業員の関係は相互選択なんです。お互いがお互いを選んでいる状況なんです。従業員に選んでもらうためにも、成長機会を常に提供できるような、そういう魅力的な会社にしていきたと思っています。具体的には仕事の内容やミッションだと思いますが、その個人をストレッチできるような、そして、それが達成できたら成長できるような。退屈だとつまらないじゃないですか。

田中 財務担当、CFOというお立場からこれからのカオナビをどう導いていきたいとお考えですか?

橋本 パーパスを実現していくためには、今のプロダクトだけでは不足していて、プロダクトのラインナップや事業の数自体も増やしていく必要があると思っています。そのためには、投資が必要なので、その投資を支える財務基盤をしっかりとつくることが、最大の役割かなと思います。

田中 最後に橋本さんご自身のこれからの挑戦、あるいは野望があれば、教えてください。

橋本 CFOって結構な人数がいますけど、カオナビのCFOは私しかいないんです。カオナビのパーパスや独自性、カオナビらしさを資本市場に伝えられるのは、私一人しかいない。なので、そういったカオナビのユニークネスを広く認識、理解してもらうよう努めるのが自分にとって最大のチャレンジかなと思っています。理想どおりにはいかないと思いますが、努力して、がんばっていきたいなと思います。

田中 今日はありがとうございました。

橋本 ありがとうございました。

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