• 作成日 : 2024年2月29日

資金調達のラウンドとは?各ステージの違いや特徴、調達時の注意点を解説

スタートアップが自己資金のみで社員の給料やプロダクト開発費などのコストを負担し、事業を運営していくことは、非常に難易度が高いです。
したがって、スタートアップの多くは外部の投資家から資金を調達する手段を採ることが一般的です。

資金調達の目的や金額は、事業のステージや企業の規模によって異なり、資金を調達するために複数の段階を経ることが一般的です。これらの段階を指標としてわかりやすくまとめたものが、資金調達ラウンドです。

本記事では、この資金調達ラウンドについて、ステージごとの違いや特徴などを解説します。

資金調達ラウンドの全体像

まず初めに、各ラウンドの違いや特徴について解説します。

資金調達ラウンドとは、スタートアップが成長や事業拡大のために資金を調達するために行う一連の資金調達プロセスのことを指します。

スタートアップと一括りにいっても、企業によって規模や状況は異なります。
これらをラウンドという形で分類することで、企業と投資家間の共通認識を得ることが可能になります。
また資金調達ラウンドは、投資家側からの目線で、投資ラウンドとも呼ばれます。

資金調達ラウンドの種類

資金調達ラウンドは定義次第で多少異なるものの、大きくは次の4つのステージごとに、それぞれ2~3のラウンドが存在します。

事業ステージ資金調達ラウンド概要
シード期エンジェル/プレシード/シード
  • 起業前の準備

  • アイデア段階またはプロダクトのプロトタイプのみがある段階
  • アーリー期プレシリーズA/シリーズA
  • 起業直後の検証

  • α版・β版をローンチした検証段階または本番リリース段階
  • ミドル期プレシリーズB/シリーズB
  • 事業や経営が軌道に乗り始める時期

  • 機能拡充や新プロダクトの開発段階
    (マーケティングによる新規顧客の獲得、商品の追加開発なども含む)
  • レイター期シリーズC/シリーズD/IPO
  • 上場直前における新規事業の開発、市場拡大、IPOの準備段階

  • 黒字経営を安定的に継続できるようになり、IPOなどを検討し始める時期
  • 各資金調達ラウンドの違い

    上記の4つのステージごとに、金額規模や調達期間、投資家の種類などが異なります。

    金額についていえば、シード期では数千万円単位の調達、アーリー期では数億円単位、ミドル期は数十億円、レイター期は百億円程度と徐々に規模が大きくなっていきます。

    後半のラウンドになるにつれて、調達期間も長くなります。最短数日で完了するケースもあるものの、長い場合には半年以上を要するケースも存在します。

    また資金を提供する投資家も、その規模に応じて種類が異なり、前段階のラウンドほどエンジェル投資家などの個人投資家が多く、成長するにつれてVCファンドやPEファンド、CVCへと変わっていくのが一般的です。

    各ラウンドの詳しい特徴や違いについては、ぜひ下記の記事も参考にしてみてください。

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    資金調達ラウンドにおける注意点

    次に、各資金調達ラウンドで資金調達を行うスタートアップが押さえておくべき注意点を紹介します。

    注意点1:事業ステージに合った資金調達を行う

    資金調達ラウンドは企業の規模やステージに応じて特徴が異なるため、企業の状況に応じて、適切な時期に適切なラウンドで資金調達を実施することが重要です。

    特にシード期は、収益の発生や実績がなく、信用力もないため、資金調達方法が限られます。資金を調達できるまである程度の時間がかかるため、先を見越した資金調達を行うことも必要となるでしょう。

    注意点2:資金調達時の契約や諸条件に留意する

    自社が望む金額の資金を調達できたとしても、契約や条件面で意外な落とし穴が見つかる場合もあるため、留意が必要です。

    例えば、資金調達額が大きいことで、起業家自身は求めていないにも関わらず経営権を投資家に奪われてしまったり、取締役が投資家から派遣されたりするケースが挙げられます。

    注意点3:複数の投資家から意見を募る

    上記のような落とし穴の見逃しを防ぐことや、客観性・比較検証の観点から、1人、1団体の投資家から意見をもらうのではなく、複数の投資家から意見を募るのが良いといえるでしょう。

    特定の投資家のみの場合、評価額が適正値から乖離したり、フィードバックが偏ったりする可能性があります。

    また近年では可能性が低いものの、反社会的勢力などに該当する投資家に出資を依頼したため、上場が承認されなかったというケースもあるため、出資者の選定にも注意が必要です。

    注意点4:ダウンラウンドを避ける

    企業が資金を調達する場合、1回の出資で終わることは少なく、複数のラウンドで資金調達を行うことが一般的でしょう。

    その際に、1つのラウンドでの評価を高めることに注力すると、次回の評価額が下がってしまう、いわゆるダウンラウンドを招いてしまう恐れがあります。

    ダウンラウンドが生じることで、市場や顧客、取引先から、当該企業に対して何らかのネガティブな要素があると思われてしまう可能性があるため、ダウンラウンドは極力避けたいものです。

    したがって、無理に期待以上の評価額を得ることにこだわらず、次回以降のラウンドも見据えた長期的な資金調達を計画することが重要です。

    資金調達ラウンドでのプレゼンのポイント

    投資家による出資の判断は、基本的にプレゼンテーションの評価によって行われます。
    資金調達を成功させるために、プレゼンのポイントを押さえておくに越したことはありません。

    本章では、資金調達ラウンドにおけるプレゼンのポイントを解説します。

    プレゼンで押さえるべき項目

    プレゼンのスタイルや好み、事業ステージによって項目や順番は異なりますが、基本的に次の点を包含していれば問題ないといえるでしょう。

    企業概要

    • 企業理念
    • ボードメンバーの経歴

    事業概要

    • 解決したい課題
    • 課題に対するソリューション
    • ビジネスモデル

    市場環境

    • 市場規模
    • 競合分析
    • 顧客分析
    • 自社の独自性・ケイパビリティ

    財務情報

    • 収益計画
    • 資金調達希望額

    資金調達ラウンドでのプレゼン事例

    ここでは、資金調達ラウンドでのプレゼン事例を2つ紹介します。

    Airbnb

    Airbnbは、世界最大手の民泊仲介ウェブサイトを運営する米国の企業です。
    Airbnbの創業期のプレゼンは、上記の内容が非常に簡潔で論点が明確に記載されていた点が特徴だといえます。

    その中で、民泊市場というユニークな市場のブルーオーシャン性と、勝てるポイントについて実際のプロダクトのデモやユーザーの声が反映されていたため、優れたプレゼンとして評価されました。

    Uber Technologies

    Uberは、ライドシェアなどのサービスを提供する米国の企業です。
    UberのプレゼンもAirbnbと同様に、端的かつ現状のタクシーに乗るという習慣をどのように変えていくのかを明瞭に示していました。

    特に現状の課題をスライドの1枚目に載せ、そこから技術や製品情報、市場および今後の成長戦略を詳細に述べている点が特徴で非常に分かりやすいプレゼンであったと高い評価を受けています。

    プレゼンでのポイント

    上記のAirbnbやUberなどの事例を踏まえると、資金調達ラウンドのプレゼンのポイントは下記の3点にあるといえるでしょう。

    • シンプルかつわかりやすいストーリーであること
    • 課題・論点が端的で、明瞭であること
    • その課題に対しての自社の打ち手に説得力のあるロジックや根拠があること

    こう見ると特別なスキルは必要なく、通常の業務におけるプレゼンや説明と本質的には大差ないことが分かると思います。

    この中でも特に重要なポイントは、1つ目のシンプルで分かりやすい点にあるといえます。資金調達を受ける上では、何よりもまず投資家からの理解と賛同を得ることが肝要であり、そのためには自社のアイデアや独自性を簡潔に伝えることが非常に重要です。

    まとめ

    本記事では、多くのスタートアップが必要とする資金調達について、各ラウンドの特徴や注意点、プレゼンでのポイントなどを解説しました。

    起業家は、自社の状況や規模に応じて適切なステージや投資家を選択し、中長期的な計画も見据えて戦略的に資金調達に臨むことが重要です。

    本記事での内容以外にも、資金調達に関する多くの事例をWeb上で参照することが可能です。それらの事例も参考にしながら、資金の調達に向けて準備しましょう。


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