• 更新日 : 2022年10月28日

上場企業における関連会社とは?上場審査の項目や整理する時期・方法を説明

上場企業における関連会社とは?上場審査の項目や整理する時期・方法を説明

自社の上場を予定している場合、関連会社の取り扱いに困ることがあるかもしれません。状況によっては、関連会社が上場審査に悪い影響を与える可能性があるためです。

この記事では、関連会社の定義や子会社との違い、関連会社がある場合の上場審査項目、関連会社の整理方法について解説します。これから上場を目指す場合、この記事を読めば関連会社をどのように整理すれば上場に有利になるかがわかります。

関連会社とは

上場企業における関連会社とは?上場審査の項目や整理する時期・方法を説明

関連会社(企業)とは、会計学や会計実務用語で、親会社と出資・人事・資金・技術などの関係がある子会社以外の会社です。これは、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」に詳しく書かれています。

この規則を読み解くと、つまり親会社が議決権の20%以上を所有している企業で子会社ではない会社は関連会社となる可能性が非常に高いです。ただし議決権が20%以下でも、出資や人事、資金など企業にとって重要な部分を親会社に依存する場合は関連会社との判断です。

子会社との違い

子会社は財務及び営業又は事業の方針を決定する機関をある会社に支配されている会社です。関連会社は他の企業の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる会社を指します。

議決権で言えば、通常、子会社はある会社から50%超えを関連会社は同じく20~50%を持たれている点が違っています。表にまとめると以下の通りとなります。

関連会社議決権20%以上50%以下
子会社議決権50%超

気になるのは、子会社の決算書での取り扱いではないでしょうか。実は、親会社の決算で連結財務諸表を作成するとき、子会社に対して連結会計を行います。一方、関連会社は持分法を用いて連結財務諸表に組み込まれます。

連結損益計算書連結貸借対照表は、どちらの方法でもフォーマットは変わりません。ただし、連結損益計算書の一部項目、連結貸借対照表の一部項目の表示はそれぞれでは少し異なる部分があります。

関係会社との違い

関係会社とは、ある会社の親会社や子会社、関連会社、およびその会社を関連会社としている会社を含めた会社です。議決権の割合にかかわらず、会計上影響を与え合う関係にある会社を指します。簡単にいうと、主従関係に関係なく「お財布が同じ企業グループ」と考えてよいでしょう。

関連会社がある場合の上場審査の項目

上場企業における関連会社とは?上場審査の項目や整理する時期・方法を説明

ここまで関連会社と子会社、関係会社の違いを説明してきました。では、上場を目指す場合、関連会社があるケースはどのような審査項目があるのでしょうか。注意したい上場審査の項目は、以下のとおりです。

  • 存在理由を合理的に説明できるか
  • 取引内容を合理的に説明できるか
  • 経営状況は良好か
  • 役員の就任状況に問題はないか
  • 管理体制は整っているか

関連会社がある場合の上場審査の項目を紹介します。

存在理由を合理的に説明できるか

上場審査では、関連会社の存在理由を合理的に説明できるかが問われます。たとえば、親会社と関連会社の事業が被っている場合、親会社の一部事業を担っていると判断され、上場審査に影響する可能性があります。

また、親会社だけでなく子会社や関係会社のなかで、類似した事業を行なっている場合も同様に上場審査に悪い影響を与えるリスクがある点に注意しましょう。上場審査では、関連会社を含めた関係会社の存在理由をそれぞれ説明できる必要があります。

取引内容を合理的に説明できるか

取引内容を合理的に説明できるかも、上場審査で見られるポイントです。関連会社に対し、親会社が通常とは異なる条件で取引を強制されている場合、独立性の確保がなされていないと判断されてしまいます。

上場企業は親会社や関連会社から独立していることが条件で、通常の取引条件と著しく条件が異なる場合は取引条件や内容の見直しが必要です。

経営状況は良好か

上場審査では、関連会社の経営状況も重要です。「関連会社の経営状況は関係ないのではないか?」と思うかもしれませんが、上場審査は関連会社も含めてグループ全体で実施されます。そのため、関連会社の経営状況が悪いと審査に影響を与える可能性があります。

経営状況の回復に向け合理的な計画が立てられているかを確認し、もし計画が立てられていないなら施策立案を検討しましょう。

役員の就任状況に問題はないか

上場審査にあたり、役員の就任状況を調査する必要があります。役員の就任状況は、関連会社の経営に伴う意思決定が適切に行われているかを判断できるためです。たとえば、関連会社の役員構成が同族色の強い場合、意思決定の場でも同族役員の影響力が強いことが想定されます。このケースでは、同族役員の意見に偏ってしまいがちなため、適切な意思決定が行えない可能性があります。

上場企業は同族役員による偏った意思決定は避けるべきであり、審査にも影響を与えるため、役員構成や業務執行状況を見直す必要があるでしょう。

管理体制は整っているか

関連会社の管理体制が整っていることも、上場審査でポイントになる部分です。管理体制とは具体的に、以下のポイントが挙げられます。

  • 関連会社を管理する部署が定められている
  • 管理に関する規定が整備されている
  • 意思決定に関する報告様式が定められている
  • 報告の頻度が定められている

主に上記の点を実施すれば、関連会社の管理体制が整っていると主張できます。

上場時に関連会社を整理する時期

上場企業における関連会社とは?上場審査の項目や整理する時期・方法を説明

株式上場に向け、どのような流れで準備すればよいのか、まずは簡単に全体の流れを紹介します。

N-4期準備期間上場予定から3年前以上に上場の意思決定をする時期。監査法人または公認会計士を選定する。
N-3期直前々々期監査に向け、必要な人材確保や管理体制を構築する時期。課題の洗い出しと改善に努める。
N-2期直前々期上場企業と同様の管理体制の整備や運用に切り替わっている時期。予備調査を受けるのもこの時期で、その後監査契約を締結する。
N-1期直前期期首から上場企業と同様の管理体制の運用が求められる時期。IPOに向けた課題対応も必要になる。
N期申請期管理体制を継続し、上場申請書類等を完成させて申請を行う時期。審査には通常2〜3か月必要となる。

上場申請を行う場合、上場までのプロセスを特定の時期に分け、N-◯期と呼びます。上場時に関連会社を整理する時期は、N-2期にあたる直前々期です。N-2期には、以下の上場準備も同時並行で必要になります。

  • IPOに向けた会計監査
  • 内部統制報告制度への着手
  • 主幹事証券の選定
  • 上場申請書類の準備着手

上場時に関連会社を整理する方法

上場企業における関連会社とは?上場審査の項目や整理する時期・方法を説明

上場時に関連会社を整理する方法として、以下の2つの方法があります。

  • 株式を売却する
  • 吸収合併する

そもそも、上場時に関連会社の整理が必要なのは、株主に対する信頼や利益を守るためです。万が一、関連会社で不適切な取引があった場合、上場審査や上場後の経営に大きな影響を及ぼすリスクがあります。また、上場に伴って関連会社を整理し、より効率的・合理的な運営体制を整える狙いもあります。

ここからは、上場時に関連会社を整理する2つの方法を見ていきましょう。

株式を売却する

上場に伴い、関連会社の整理をする方法の一つとして、関連会社の株式を売却する方法があります。関連会社の株式を売却するメリットは、以下のとおりです。

  • 売却益が見込める
  • 独立関係を作り、上場審査に影響させない

関連会社の株式に含み益があれば、その売却益が利益となり新規事業の開拓や、利益を見込める部署にリソースを避けることがメリットです。また、関連会社と事業内容が被っているなど、上場審査に影響を及ぼしそうなケースでは、独立関係を築くことができます。

しかし、一方で、関連会社の株式を売却するデメリットもあります。

  • 今後、事業領域が制限される可能性もある
  • 含み損の場合は損失になる

実は関連会社の株式売却により、一定期間、同市区町村や隣接エリアでは同事業を行えない「協業避止義務」が発生します。関連会社で積み上げた知識や技術を用いた同一事業の展開ができなくなるため、デメリットを理解して売却する必要があります。

吸収合併する

上場時に関連会社を整理するもう一つの方法は、関連会社を吸収合併する方法です。関連会社を吸収合併するメリットは、以下のとおりです。

  • 赤字経営を黒字に転換できる
  • 同一事業を統一できる
  • 優秀な人材を確保できる

上場審査では、関連会社の経営状況も含めて審査されます。関連会社が赤字なら、経営状況が悪いと判断され、上場審査に通らない可能性もあります。そこで関連会社を吸収合併すると、当社が黒字経営なら関連会社の赤字を相殺できるケースもあり、上場審査に影響しません。

また類似事業を行なっている場合も、上場審査の改善点です。しかし吸収合併して、同一会社にして部署を統一することで、審査条件を満たすことができます。ただし、関連会社の吸収合併にもデメリットがあります。

  • 時間がかかる
  • 場所や人材の確保などコストもかかる

関連会社の吸収合併には、時間とコストがかかります。上場準備に加え、吸収合併に必要な書類作成や人材確保、専門家との契約など、多大な労力がかかることを理解しておきましょう。また、人員増によるオフィスの確保や従業員にかかるストレスなども考慮しなくてはなりません。

まとめ

関連企業(会社)とは子会社以外の会社で、親会社と出資・人事・資金・技術などの関係がある企業です。議決権が少なくとも20%以上ある企業は、関連会社に位置付けられます。ただし、議決権が20%以下でも出資・人事・資金・技術など、親会社との関連性が強い企業は関連会社と認められる可能性があります。

上場審査では、関連会社も含めたグループ全体が審査対象となるため、関連会社との関係によっては整理が必要です。整理する方法は、関連会社の株式を売却するか、吸収合併する方法があります。どちらを選ぶにせよメリットとデメリットを理解し、自社に適した方法で関連会社を整理するようにしましょう。

よくある質問

関連会社と子会社の違いとは?

関連会社と子会社の違いは、議決権をどれくらい持っているか、また親会社による影響をどれくらい受けるのかです。
基本的には、議決権が50%超の場合は子会社として位置付けられます。通常、関連会社の議決権は20〜50%ですが、20%以下の場合でも親会社による支配の度合いが高い場合は、関連会社に分類されることもあります。

関連会社がある場合の上場審査の項目は?

関連会社がある場合の上場審査の項目は、以下のとおりです。

  • 存在理由を合理的に説明できるか
  • 取引内容を合理的に説明できるか
  • 経営状況を良好か
  • 役員の就任状況に問題はないか
  • 管理体制は整っているか

  • ※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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    内部統制を構築する5ステップを解説

    監修:中川崇

    田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。