• 更新日 : 2024年7月17日

ファクタリングに担保は必要?ABLとの違いや利用するメリットを解説

ファクタリングは担保不要で利用できるため、動産・債権担保融資(ABL)とは異なる資金調達の手法です。迅速に融資を受けられる点と信用力がない企業でも利用できる点が主なメリットです。

本記事では、ファクタリングや担保の基礎知識および利用時の注意点を解説します。また、ファクタリングとABLの違いについてもお伝えします。

ファクタリングと担保の基礎知識

はじめに、ファクタリングと担保の基礎知識をお伝えします。

ファクタリングとは

ファクタリングとは、事業者が保有している売掛債権売掛金など)を買い取るサービスです。
事業者側から見ると、入金前に売掛債権をファクタリング会社に売却することで、入金を待たずに現金化することができます。

法的には、債権譲渡契約(債権の売買)に該当します。

担保とは

担保とは、「債務者が債務を履行しない場合に備えて、債権弁済を実行する手段となるもの」を意味します。
例えば、事業者が借入金を返済できなくなった場合に、現金化によって弁済できる資産(株式や不動産など)が該当します。

融資を受ける際などは、資金の回収可能性を高める目的で金融機関から担保の提供を求められるケースも少なくありません。

ファクタリングに担保は不要

ファクタリングは売掛債権の売買契約であるため、担保の提供は不要です。
なお、売掛金の回収が不可能となった際に、債権を事業者が買い戻すことになっていたり、事業者自身の資金で支払う義務が課されたりしている場合には、ファクタリングではなく「貸金業」に該当する恐れがあります。

※参考サイト:金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起

ファクタリングとABL(動産・債権担保融資)の違い

ファクタリングと類似する資金調達の手法に「ABL(動産・債権担保融資)」があります。
ABL(Asset Based Lending)とは、売掛金や在庫商品などの動産を担保として資金を調達する手法であり、売掛金(売掛債権)担保融資などとも呼ばれます。

この章では、ファクタリングとABLの違いを4つの観点から解説します。

契約内容・方式

ファクタリングでは売掛債権の売買契約を締結しますが、ABLでは売掛債権などを担保とした融資契約(金銭消費貸借契約)を締結します。

また、ファクタリングでは主に売掛金を活用する一方、ABLでは売掛債権だけでなく、動産(在庫商品など)も対象となります。
ちなみにABLでは、事業者側が担保に設定した在庫などを引き続き利用できるように、金融機関などに提供する動産を「譲渡担保」とすることが多いです。

資金調達までの所要時間

ファクタリングは、最短即日から2〜3日という短期間で資金調達できるケースが多いです。
ABLの場合は、1〜3週間ほどの時間を要する場合が一般的です。

審査基準

ファクタリングの審査では、売掛先の信用力や財務状況が重視されます。
一方でABLでは、資金調達する企業の信用力・財務状況や、担保の資産価値が重視されます。

調達金額

ファクタリングでは、売掛債権の金額から手数料を引いた額が調達額となります。
ABLの場合は、信用力や担保の価値次第で調達額が変動するため、担保提供した売掛債権よりも多額の資金を調達できる可能性もあります。

担保不要で利用可能なファクタリングに期待できる4つのメリット

ファクタリングを活用することで期待できる4つのメリットを解説します。

メリット1:スピーディーな資金調達が可能

前述のとおり、最短即日から資金調達できる点が強みです。
売掛金をスピーディーに現金化できるため、急な資金需要にも素早く対応できます。事業拡大やIPO準備などのために、臨時の資金需要が発生しやすい企業にとっては大きなメリットだといえます。

メリット2:信用力が低い企業でも利用できる

通常、信用力が低い企業が融資を受けようとすると、審査基準を満たさないことを理由に資金調達できない(もしくは著しく不利な条件となる)ケースが多いです。
一方でファクタリングは売掛金を担保とするため、信用力が低い企業でも資金調達できる可能性が高いです。特に創業して間もない企業は実績面が乏しいため、有力な選択肢の1つとなるでしょう。

メリット3:貸倒れリスクに対処できる

売掛金には、売掛先の倒産などを理由に回収できなくなる(貸倒れが発生する)リスクがあります。

ファクタリングでは、売掛債権の売却により、売掛金の貸倒れリスクをファクタリング会社に移すことができます。貸倒れのリスクがなくなるため、安定的なキャッシュフローの確保につながるでしょう。

メリット4:負債を増やさずに済む

ファクタリングは売掛金を現金化する手段であり、融資ではありません。そのため、貸借対照表上の負債は増加しません。

自己資本比率を維持しながら資金を調達できるため、対外的な財務状況が悪化する事態を防げます。
健全な財務状況を保つことで、IPOに向けた他社との契約や提携などもスムーズに進みやすくなります。また、利子の支払いなどによって資金繰りが悪化するリスクも軽減できるでしょう。

担保不要のファクタリングを利用する際に気をつけたい3つの注意点

ファクタリングを利用する際の注意点を3つ解説します。

注意点1:手数料が高い

ファクタリング会社の視点で見ると、売掛金を「買い取る」ため、回収できない場合には多額の損失を被るリスクがあります。そのため、銀行からの融資と比較すると手数料が高い傾向にあります。

手数料の水準は、貸倒れになるリスクの大きさを考慮して決定されるため、売掛先の財務状況や信用力によっては10%〜20%ほどとなるケースも少なくありません。

より多くのキャッシュを確保したい場合には、融資や投資といった手段も視野に入れるのがおすすめです。

注意点2:偽装ファクタリングのリスクがある

表向きにはファクタリング会社を装っているものの、実際には貸金業に該当する「偽装ファクタリング会社」も少なくないため注意が必要です。

例えば、ファクタリング会社から受け取る金額が債権額と比較して著しく低いケースなどは、偽装ファクタリングの疑いがあるとして金融庁が注意喚起をしてています。
他にも、表向きはファクタリングとされているものの、実態として貸付けと同様の契約内容であれば、偽装ファクタリングとなり得ます。偽装ファクタリングを利用すると、回収不能となった際に自社の資金で支払う義務が生じたり、不当に安い金額で売掛金を買い取られたりする事態になり得ます。

こうしたリスクを回避するには、法律の専門家に相談したり、契約書の内容を精査したりすることが求められます。

注意点3:取引先の信用力がないと審査に通りにくい

前述のとおり、ファクタリングでは売掛先の信用力が重視されます。
取引先の信用力が低い場合、ファクタリング会社は資金を回収できなくなるリスクが高まります。そのため、売掛先の信用力が低いと審査に通らず、資金調達できない可能性が高まります。

ファクタリングを利用する際は、信用力が高い売掛先であるかを事前にチェックする必要があります。

まとめ

ファクタリングは担保不要で利用できる上に、最短即日で売掛金を現金化できる手法です。そのため、緊急かつ迅速な資金需要が生じやすいIPO準備企業にとっては有力な選択肢の1つとなります。

ただし、偽装ファクタリングのサービスを展開する悪徳業者の存在や、取引先の信用力がないと利用しにくい点などには注意が必要です。


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