• 作成日 : 2024年10月28日

M&AとIPOの違いとは?その意味や仕組み・メリット・デメリットを比較

中小企業やベンチャー企業が自社の成長を促進させるために、IPOやM&Aを実現させることは1つの手法です。

本記事では、IPOとM&Aの違いや仕組み、成功させるポイントなどを詳しく解説します。

IPOとは|IPOの意味・仕組み

IPO(Initial Public Offering)とは、企業が初めて自社の株式を一般投資家に公開し、証券取引所に上場することです。

本項では、下記3点について深掘りしていきます。

  • IPOの一般的な流れ
  • IPOのメリット
  • IPOのデメリット

IPOの一般的な流れ

IPOの一般的な流れは、以下図面の通りです。
上場(IPO)のスケジュール|期間の目安や期間別にやるべきことを解説

IPOの流れについては以下記事で詳しく解説しているため、詳しくは下記記事をご覧ください。

IPOのメリット

IPOのメリットは、主に以下3つです。

  • 資金調達をスムーズかつ多様化できる
  • 企業の知名度や信用度の向上につながる
  • 採用力や従業員のモチベーション向上につながる

詳しく解説します。

資金調達をスムーズかつ多様化できる

IPOにより企業は一般投資家に向けて株式を公開し、広範な資金を得ることができます。

従来のように銀行からの借り入れや限られた投資家からの出資に依存することなく、株式市場という大規模なプラットフォームから資金を調達できるため、企業の成長に必要な資金を一度に大規模に集めることが可能です。

公開市場での株式発行は、資本市場全体から資金を引き寄せるため、スムーズに必要な資金を調達できる点が大きな強みです。

企業の知名度や信用度の向上につながる

IPOを通じて企業は証券取引所に上場することになり、幅広い投資家や金融機関の注目を集めることができます。

これまで限られた関係者にしか知られていなかった企業が、公の場に登場することで、ブランドや事業内容が一気に認知され、知名度が急速に高まります。

特に株式公開は大々的なニュースやメディア報道の対象となるため、企業の知名度を一気に押し上げることが可能です。

採用力や従業員のモチベーション向上につながる

IPOを達成した企業は、そのステータスにより市場での評価が上がるため、信頼性や安定性が証明されます。

この信頼感は求職者に対しても強い印象を与え、IPO企業はキャリアの成長や将来の安定を求める優秀な人材を引きつけやすくなります。

特に上場企業になることで、社内外からの評価が向上し、働きがいのある企業として認知されやすくなるため、トップクラスの人材からの応募が増加する可能性が高くなるでしょう。

IPOのデメリット

IPOのデメリットは、主に以下2つです。

  • 上場準備に時間と費用がかかる
  • 経営責任や社会的責任が大きくなる

詳しく解説します。

上場準備に時間と費用がかかる

上場に向けた準備は、通常の業務にプラスして必要になってくる業務が多数存在します。

例えば、財務状況の整理や内部統制の強化、法的コンプライアンスの確保などと言った感じです。

これらの準備作業は、既存の業務に加えて行うため、経営陣や従業員に大きな負担がかかってしまうでしょう。

経営責任や社会的責任が大きくなる

IPO後は株主が存在するため、企業は株主の利益を最優先に考えなければならなくなります。

株主は企業のパフォーマンスや株価の上昇に強く関心を持っており、経営陣は四半期ごとの業績報告や財務開示を通じて、常に株主に対する説明責任を果たさなければなりません。

そのため、業績が低迷した場合や期待に応えられない場合、経営陣への批判が高まり、株価が下落すれば経営トップの交代要求やリーダーシップの問責を受けることもあるのです。

IPOに向いている企業の特徴

IPOに向いている企業の特徴として、市場から調達した資金を使って、継続的かつ安定的に事業を拡大できる見込みがある企業が挙げられます。

IPOは、企業にとって多額の資金を調達できる絶好の機会であり、その資金をどのように活用するかが重要です。

大前提として、IPOに適した企業は、事業の拡大余地があり、持続的に成長できる市場を持ちます。

投資家は、株式市場を通じて企業の成長に参加し、その過程でリターンを得ることを期待しており、新市場への進出や既存事業の強化、新製品の開発など、成長を促進する具体的なビジネスモデルを持っていることが大切です。

M&Aとは|M&Aの意味・仕組み

M&Aとは、企業の「合併(Merger)」と「買収(Acquisition)」を指し、他の企業と統合したり、一方の企業がもう一方の企業を買収したりすることを通じて、事業拡大やシナジー効果を狙う手法です。

本項では、下記3点について深掘りしていきます。

  • M&Aの一般的な流れ
  • M&Aのメリット
  • M&Aのデメリット

M&Aの一般的な流れ

M&Aには、下記3つのフェーズが存在します。

フェーズ流れ
準備フェーズ1.M&Aの相談/検討
2.M&A仲介業者/アドバイザー選定
交渉フェーズ3.ノンネームシートや企業概要書の作成
4.M&Aスキームの選択
5.トップ面談
6.基本合意
7.デューデリジェンス
最終契約フェーズ8.M&Aの最終契約締結
9.クロージング
10.M&Aの事後処理

まず企業間での交渉が行われ、双方の合意が得られた場合に法的な手続きや契約が進められます。

この過程では、企業価値の評価、財務・法務面でのデューデリジェンス(調査)、買収価格の決定が重要なステップです。

M&Aの流れについては以下記事で詳しく解説しているため、ぜひ確認してみてください。

M&Aのメリット

M&Aの以下メリットは、主に以下の通りです。

  • スピーディーな事業承継ができる
  • 柔軟なスキーム設定ができる
  • 事業の成長とシナジー効果が期待できる

詳しく解説します。

スピーディーな事業承継ができる

M&Aの大きなメリットの1つは、スピーディーな事業承継が可能である点です。

特に中小企業や家族経営の企業では、後継者不足が深刻な問題となることが多く、経営者が引退や交代を検討していても、適切な後継者が見つからないことが少なくありません。

このような状況でM&Aを活用することにより、外部から企業を買収してくれる相手を見つけることで、スムーズに事業を引き継ぐことができます。

柔軟なスキーム設定ができる

M&Aはさまざまな形態や条件で行われるため、企業のニーズや状況に応じて最適な手法を選ぶことが可能です。

たとえば、合併、買収、株式譲渡、資産譲渡など、目的や戦略に応じて最適なスキームを選択することができ、企業間の取引の複雑性を緩和できます。

柔軟なスキーム設定により、企業は資金調達や事業の統合を効果的に行うことができます。

事業の成長とシナジー効果が期待できる

企業がM&Aを実施する目的の一つは、他社との統合を通じて新たな成長機会を創出することにあります。

特に異なる市場や製品ラインを持つ企業同士が合併または買収を行うことで、相互に補完し合う形で事業が拡大する可能性が高まります。

競争力の向上や新たな市場への進出が実現し、全体的な売上の増加につながるでしょう。

M&Aのデメリット

M&Aのデメリットは、主に以下の通りです。

  • 経営権を喪失する可能性がある
  • 従業員や取引先に影響が及ぶ可能性がある

詳しく解説します。

経営権を喪失する可能性がある

M&Aのデメリットの1つに、経営権を喪失する可能性がある点が挙げられます。

特に企業が他社に買収される場合、元の企業の経営陣や創業者は、その企業に対する影響力を大幅に失うことが考えられます。

これは、買収後に新たな親会社が経営権を持つため、経営方針や戦略が変更される可能性が高いからです。

創業者や経営陣が意図していた事業の方向性が無視され、新たなオーナーの意向に従わざるを得なくなることが少なくありません。

特に、買収した企業が大企業である場合、その企業の全体戦略に沿った形での運営が求められ、元の企業の独自性が失われることもあるでしょう。

従業員や取引先に影響が及ぶ可能性がある

企業の買収や合併は、内部の組織構造や文化、さらには外部との関係に大きな変化をもたらすことがあります。

そもそも、M&A後には組織の再編が行われることが一般的です。この再編に伴い、役割や職務が変更されたり、不要な人員が削減されたりする可能性があります。

また、M&Aによって企業が新たな親会社の方針に従うことになると、既存の取引先との関係が再構築されることも考えられます。

特に取引先が中小企業の場合、買収された企業の経営方針が大企業のものに変更されることで、取引条件や取引先との信頼関係が揺らぐことがあるでしょう。

M&Aに向いている企業の特徴

M&Aに向いている企業の特徴として、安定したビジネスモデルを持つ企業や特定の技術を有する企業が挙げられます。

安定したビジネスモデルを持つ企業は、既存の顧客基盤や収益源が確立されており、持続的な収益を上げる能力が高いと言えます。

このような企業は、外部環境の変化にも強く、リスク管理がしっかりと行われているため、M&Aにおいても安定した基盤を持つことが強みです。

特定の技術を持つ企業は、独自の技術やノウハウを持ち、それが市場での競争優位性となっている場合が多いです。

M&Aを通じて、この技術を他の企業と統合することで、製品やサービスの向上を図ることが可能になります。

【目的別】M&AとIPOの比較

M&AとIPOは目的によってどちらが有利か異なります。

目的どちらが有利か
資金調達IPOの方が有利
企業価値向上M&Aの方が有利
人材獲得IPOの方が有利
経営の自由度M&Aの方が有利
事業承継後継者問題の解決:M&Aの方が有利
創業者利益の確保:IPOの方が有利

資金調達

IPO(新規株式公開)は、企業が株式を一般投資家に販売することで資金を調達する方法です。

IPOを通じて得られる資金は、企業の成長や事業拡大、負債の返済、研究開発への投資など、幅広い用途に使われます。

また、株式市場に上場することで、企業の知名度が向上し、将来的にはさらなる資金調達がしやすくなるというメリットもあります。

一方、M&Aは、企業が他の企業を買収したり、合併したりすることで資金を調達する手法です。

この方法では、対象企業の資産や顧客基盤を活用することにより、即座に事業の拡大や収益性の向上が期待できます。

企業価値向上

IPOもM&Aも企業の価値向上という観点ではどちらも期待できます。

IPOを通じて企業が上場すると、透明性が向上し、企業情報の開示が求められるため、投資家や顧客からの信頼を獲得しやすくなります。

これにより、企業は市場での評価が向上し、結果として株価が上昇する可能性が高まるのです。

M&Aを行うことで、企業は新しい技術や資産を取得し、既存のビジネスモデルを強化したり、新たな市場に進出したりすることが可能になります。

特にシナジー効果を活用することで、コスト削減や効率化が期待でき、これが直接的に企業の収益性を高める結果につながり、企業の競争力を高め、長期的には企業価値の増大に寄与できるでしょう。

人材獲得

上場企業としての地位は、ブランド力を向上させ、優秀な人材を惹きつける要因となります。

特に、上場企業は安定性や成長の可能性を示すため、求職者に対して魅力的な選択肢となることが多いです。

一方、M&Aは、企業が他の会社を買収することで、既存の人材を活用したり、新しい人材を取り込んだりする機会を提供します。

特にM&Aを通じて優れた人材や専門知識を持つ企業を取得することができれば、その企業が持つ技術力や知識が即座に自社の資産となるでしょう。

経営の自由度

IPOを選択する企業は、上場企業としての義務を果たす必要があるため、経営の自由度は制限される傾向があります。

具体的には、上場企業は株主の利益を最優先に考えなければならず、業績に対する透明性を求められるため、やらなければいけない業務が多数出てきます。

一方で、M&Aを通じて企業が他社を買収する場合、経営の自由度は比較的高まります。特に、買収した企業が統合される際には、経営戦略の見直しや新たなビジョンの策定が可能です。

事業承継

事業承継は、主に以下2つに分けられます。

  • 後継者問題の解決
  • 創業者利益の確保

後継者問題の解決

M&Aにおいては、企業のオーナーが自身の企業を他社に売却することで、スムーズな事業承継を実現できます。この方法は、特に後継者がいない場合や後継者が企業を継ぐ意欲がない場合に有効です。

創業者利益の確保

M&Aの場合、創業者は自らの企業を他の企業に売却することによって、即座に利益を得ることができます。

この方法は、特に後継者がいない場合や経営を続ける意欲がない場合に有効で、創業者は自分が築いてきた事業の価値を直接的に現金化することが可能です。

一方、IPOは企業の株式を公開し、多くの投資家からの資金調達を可能にします。これにより、創業者は株式を売却することができ、資金を得ることが可能です。

事業の成長戦略

事業の成長戦略は、主に以下2つに分けられます。

  • 売上拡大
  • 新規事業進出

売上拡大

M&Aは、競合他社や関連業種の企業をターゲットとすることで、新たな顧客基盤や販路を獲得することが可能です。

このような戦略は、シナジー効果を通じてコスト削減や効率化を図ることにもつながり、結果として売上の増加が見込まれます。

一方、IPOは上場により得た資金を活用して新規事業の立ち上げや既存事業の拡大、マーケティング活動に投資することで、売上を増加させることができます。

IPOを実施することで、企業は広範な投資家層からの資金を受けることができ、その結果、成長のための資本をより容易に調達することが可能です。

新規事業進出

M&Aによってまとまった資金を獲得できるため、新事業への投資や既存事業の強化を迅速に行えます。また、買収企業の技術やノウハウを活用してシナジー効果を生み出し、競争優位性を確立することも可能です。

さらに、ブランド力や顧客基盤を活用して新製品やサービスを効果的に市場展開できるほか、専門性の高い人材を確保して組織力を強化できます。経営資源の効率化やコスト削減も可能となり、事業ポートフォリオの多様化によるリスク分散も図れます。

M&AやIPOの成功率を上げるには

M&AやIPOの成功率を上げるには、それぞれどんなことを意識して運用していけばいいかを明確にしておく必要があります。

本項では、以下2つについて深掘りしていきます。

  • M&Aの成功率を上げるポイント
  • IPOの成功率を上げるポイント

M&Aの成功率を上げるポイント

M&Aの成功率を上げるポイントは、主に以下の通りです。

  • 明確な戦略を持つ
  • 適正な評価を行う
  • 適切な専門家のサポートを受ける

企業はM&Aを通じて何を達成したいのか、具体的な目標を設定することで、取引先選定や交渉の際に一貫した判断基準を持つことができます。

M&Aを成功させるためには、対象企業の財務状況や業務プロセス、文化などを徹底的に分析することが求められるため、この過程で見つかったリスク要因や潜在的な問題点を事前に把握し、契約内容に反映させることが大切です。

もし複雑でわかりにくかったら、専門家のサポートを受けながら進めていくのも1つの手法です。

IPOの成功率を上げるポイント

IPOの成功率を上げるポイントは、主に以下の通りです。

  • 計画的な準備
  • 適切な引受け業者の選定
  • マーケティング戦略の明確化

企業がIPOを目指す際には、十分な時間をかけて内部体制や財務状況の整備を行うことが必要であり、具体的には、過去の財務データの整理や、法令遵守のための内部監査体制の強化を進めます。

また、証券会社や引受け業者は、IPOの過程で必須であり、過去の実績や業界における評価などを確認し、自社に最適な業者を選定することが大切です。

さらに、IPOを成功させるためには、ターゲットとする投資家層を明確にし、そのニーズに応じたメッセージを発信するようにしましょう。

まとめ

IPOは企業が証券取引所に上場し、一般の投資家から資金を調達するプロセスです。一方でM&Aは、他の企業と合併したり企業を買収したりして、既存の事業を強化したり新しい市場に算出したりすることが主な目的です。

目的やプロセスには違いはありますが、どちらも企業が成長や資金調達を目指す際に選択する代表的な手法となります。

成功させるためには、それぞれ異なるポイントがあるため、ぜひ本記事を参考にしてIPOやM&Aを検討してみてください。

よくある質問

M&AとIPOの違いは?

M&A(合併・買収)は、ある企業が別の企業を買収するか、あるいは二つの企業が合併して一つの新しい企業を形成するプロセスです。 この手法の主な目的は、事業の拡大や市場シェアの増加、シナジー効果の創出などです。 一方で、IPO(新規株式公開)は、企業が自身の株式を初めて公に市場で販売し、資金を調達するプロセスを指します。 IPOの主な目的は、資金調達を通じて事業の拡大や研究開発への投資、さらには企業の知名度向上や信用度の向上を図ることです。

M&AとIPOはどちらがおすすめ?

M&AとIPOは、それぞれ特徴があり、向いている企業とそうでない企業があります。 M&Aが向いている企業は、主に以下の通りです。

  • 安定したビジネスモデルを持つ企業
  • 特定の技術を有する企業
IPOが向いている企業は、市場から調達した資金を使って、継続的かつ安定的に事業を拡大できる見込みがある企業であることが多いです。

M&AとIPO準備にはどれくらいの期間がかかる?

M&Aに関しては、一般的に買収プロセス全体が数か月から1年程度かかることが多いです。具体的な期間は、対象企業の規模や業種、そして両社の交渉の進捗状況に大きく関係します。 通常、M&Aプロセスは、対象企業の選定、デューデリジェンス(適正評価)、条件交渉、契約締結という段階を経て進められます。 一方で、IPOの準備は、一般的には6か月から2年以上かかるとされます。 IPOに向けた準備は、企業の財務状況や内部統制の整備、法令遵守の確保、そしてIPO市場への適応など多岐にわたるプロセスを含みます。

M&Aは中小企業でもできる?

M&Aは中小企業でもできます。中小企業がM&Aを行うことで、シナジー効果を享受できる点も重要です。 例えば、同業種の企業を買収することで、顧客基盤や市場シェアを拡大したり、特定の技術やノウハウを取得することで競争力を高めたりすることが可能です。 中小企業においても、特定のニッチ市場や地域に強みを持つ企業を対象とすることで、相互に補完し合う関係を築くことができるでしょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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