• 更新日 : 2023年7月7日

なぜIPOに失敗してしまうのか?上場準備や審査に向けて注意する点や失敗例を解説

新規株式公開と言われているIPOですが、資金調達のルート拡大や自社のブランディング向上などを目的として、IPOを目指しているスタートアップやベンチャー企業の経営陣も多くいるでしょう。経営を活性化させれば、従業員のモチベーションにもつながり、業績アップの効果も期待できます。そのためには、IPOを成功に導くために必要な戦略や注意点などを把握しておきたいところです。

本記事では、IPO準備を進めていたものの失敗してしまう場合の例を紹介したうえで、IPO準備や上場審査で失敗しないためのポイントなどを解説します。上場企業を目指している会社経営者の方は、ぜひ最後までご一読ください。

なぜIPOに失敗してしまうのか?失敗例を紹介

なぜIPOに失敗してしまうのか?上場準備や審査に向けて注意する点や失敗例を解説
上場企業を目指している経営者の多くはIPOを目的としていると思いますが、中には途中で失敗してしまう企業もあります。

本項では、IPOの失敗例として以下の5つのケースを紹介します。

  • 内部統制に不備がある
  • IPO準備中に業績不振に陥る
  • 制度会計で失敗する
  • レピュテーション(評価)が低下する
  • 上場延期になる

IPOを成功させるための施策を打てるよう、失敗例を参考にしてみてください。

内部統制に不備がある

内部統制に不備があると、IPOの失敗に陥る可能性が高まります。内部統制とは、経営者が会社全体の業務を効率良く遂行し、健全に運営できるように整える仕組みのことです。

内部統制の不備といっても、さまざまな要因が考えられますが、主に以下の2点が挙げられます。

  • 整備に関する不備
  • 運用に関する不備

整備に関する不備は、対応する業務のチェック体制が整っていないことが要因で起きる事象であり、会社の損失に繋がってしまうリスクがあります。一方で運用に関する不備は、内部統制はできていても、それが実行されていないケースです。

これらの内部統制に関しては、J-SOX(内部統制報告制度)をもとに、自社の内部統制について評価が行われます。報告した内容をもとに監査を受け、不備がある場合は弾かれてしまうのです。

内部統制における不備については、以下の記事でも詳しく解説しているため、本記事とあわせて確認してみてください。

IPO準備中に業績不振に陥る

IPO準備中に、業績不振に陥ってしまうケースもあります。例えば、市場競争の激化や業界の景気後退、商品やサービスの需要の減少などが挙げられます。

また、企業自体の経営不振や戦略の失敗も業績低下の原因です。IPOは企業の成長や将来の投資を目指すものですが、業績が低下している企業は投資家の関心を引くことが難しくなるだけでなく、上場することを妨げる要因にもなるのです。

また、上場後にも維持するために時価に関する規定があります。例えばグロース市場では、上場後10年経過後に時価総額が40億円を維持し続けなければ、上場維持基準以下と判断されてしまい、仮に上場できたとしてもIPO失敗になってしまうでしょう。

参考:日本取引所グループ「上場維持基準の詳細」

制度会計で失敗する

また、上場企業の制度会計基準に達していなければ、IPOも失敗となります。制度会計とは、会社外部の利害関係者に向けて説明責任を果たすことで、企業の財務情報を公正かつ信頼性の高い形で提供するために設けられています。上場企業の会計基準は中小企業に比べて細かいものとなっているため、より慎重な対応が求められるのです。

制度会計の失敗は、情報の操作や改ざんのような内部不正や、会計処理や財務報告の不備、開示の不足など適用の失敗が原因となる場合が考えられます。

IPOでは、投資家は企業の財務情報を基に投資判断を行うため、正確で信頼性の高い財務情報の提供が不可欠です。制度会計の失敗は投資家の信頼を損ない、企業の評価を低下させる恐れがあります。

上場後の制度会計基準に満たすような会計フローができていなければ、監査で指摘されてしまい、結果的に上場することが難しくなるでしょう。

レピュテーション(評価)が低下する

IPOに失敗する要因の1つとして、企業のレピュテーション(評価)低下も挙げられます。レピュテーションは、企業の評判や信頼度を示し、投資家や市場参加者にとって重要な要素です。

レピュテーションの低下は、さまざまな要因で起こる事象であり、企業の倫理的な問題や不正行為の発覚や製品の品質問題、社会的な責任の怠慢などが挙げられます。

このように、レピュテーションの低下問題が表沙汰になると企業の評判に傷がつき、投資家や市場からの信頼も失ってしまうでしょう。その結果、IPOが困難となってしまうのです。

上場延期になる

上場が延期してしまうのも、IPOの失敗を引き起こしてしまう要因です。上場延期とは、企業が予定していた時期にIPOを実施できずに延期されることを指します。

上場延期の理由はさまざまですが、一般的には以下のような要因が考えられます。

  • 不安定な市場状況
  • 企業自体の内部事情や調整の遅れ

IPOの計画が遅れると、企業の成長や資金調達の機会が制限され、市場や投資家の関心も低下する恐れがあります。そのため、IPOを計画する企業は適切な時期や条件を見極め、上場延期を回避するための準備を適切に行う必要があるでしょう。

以下の記事では、上場のスケジュールや時期別でやるべきことを詳しく解説しているので、ぜひご一読ください。

IPO準備や上場審査で失敗しないためのポイント

なぜIPOに失敗してしまうのか?上場準備や審査に向けて注意する点や失敗例を解説
IPO準備や上場審査で失敗しないためのポイントとして、主に以下の5点が挙げられます。

  • 段階を踏んで組織体系や管理体制を変更する
  • キーマン(社長)の権限移譲を行う
  • 自社に合った会計ソフトを導入する
  • アサテーションについて押さえておく
  • IPO予定の市場の実質基準を把握する

それぞれ、順番に解説します。

段階を踏んで組織体系や管理体制を変更する

まずは、組織体系や管理体制を変更することが大切です。

スタートアップやベンチャー企業に多いのが、経営者に権限が集中してしまい、経営における意思決定を経営者のみで行っているケースです。このような状態でIPOへの準備のために組織体系や管理体制を急に厳しくすると、経営の自由度が急激に落ちてしまい、業績に響きかねません。

このような場合、内部統制の整備を行うことで権限を分散化できます。結果的に、業績向上も期待できるため、段階を踏んで組織体系や管理体制を整えましょう。

内部統制の整備を重要視する理由や上場承認されるための基準については、以下の記事で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

キーマン(社長)の権限移譲を行う

IPO準備や上場審査において失敗しないためには、キーマン(社長)の権限移譲が重要です。キーマンの権限移譲は、組織内における責任の分散や専門知識の活用を促し、IPOプロセスの円滑な進行に寄与します。

先述した通り、ベンチャー企業やスタートアップでは社長(経営者)に権限を集中させるケースが多いため、責任を分散させれば各部門の責任者が明確となり、専門的な業務を遂行できるようになります。

IPOプロセスが効率的かつ円滑に進行できるため、業績アップにつながり、上場審査にも良い影響を与えられるでしょう。

自社に合った会計ソフトを導入する

自社に合った会計ソフトを導入することも、IPOの失敗を抑えるコツです。自社の業務内容や職場環境に合わない会計ソフトを導入してしまうと、会計処理に必要なリソースを確保できないなどの事態を招きかねません。また、会計ソフトは財務データの迅速な集計や分析も可能にし、意思決定をサポートしてくれる点もメリットです。

以下の記事では、上場準備におすすめの会計ソフトを紹介しているため、会計ソフトの導入を検討している経営者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

アサーションについて押さえておく

IPOを成功させたいのであれば、アサーションについて押さえておく必要があります。アサーションとは本来、「自己主張」という意味を持ちます。

内部統制におけるアサーションの場合は、独立した専門家による財務情報の確認や適合性の保証を意味します。投資家に対して信頼性の高い情報を提供する上で、欠かせない要素です。

詳しくは、以下の記事でも解説しているため、あわせてご確認ください。

IPO予定の市場の実質基準を把握する

IPOの失敗を防ぐためには、IPO予定の市場の実質基準を把握する必要があります。市場の要件や期待に合致することが、投資家の関心を引き、IPOの成功を後押しする要素となるからです。

市場によって基準は異なり、流通株式数や利益水準などの形式基準だけでなく、以下のような実質基準も満たさなければなりません。

  • 企業の継続性や収益性
  • 企業経営の健全性

詳しくは、以下の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

IPOを行う際の注意点

なぜIPOに失敗してしまうのか?上場準備や審査に向けて注意する点や失敗例を解説
IPOを行う際は、以下の2点に特に注意しましょう。

  • IPO申請には時間がかかる点
  • IPO準備には膨大な作業量が発生する点

それでは、順番に解説します。

IPO申請には時間がかかる点

IPO申請はすぐには通りません。一般的に、上場企業への申請準備には3年程度かかると言われています。なぜなら、資本政策の策定や社内管理体制の整備などに時間を要するからです。

IPO申請は慎重な計画と準備が必要であり、時間的な余裕を持って取り組むことが重要です。

上場申請へのスケジュールや期間については、以下の記事で詳しく解説しているため、あわせて確認しておきましょう。

IPO準備には膨大な作業量が発生する点

IPOを行う際には、IPO準備には膨大な作業量が発生することを認識しておく必要があります。正確な財務情報の整理や内部体制の強化、監査報告書の作成など、多くのタスクを遂行する必要があるからです。

特に財務情報の整理では、過去数年間の財務データの収集と分析、財務報告書の作成が必要ですし、内部体制の強化では、コンプライアンスの整備や組織の改善、内部統制の確立が求められます。これらの準備には、多くの人がさまざまな役割を持って会社を立て直す必要があるため、それだけ時間や工数がかかるのです。

以下の記事では、上場に向けた課題を明確にさせるための調査である「ショートレビュー」について解説しています。ぜひ、あわせてご一読ください。

まとめ

IPOが上手くいかない理由として、内部統制の不備や制度会計での失敗などが挙げられます。段階を踏んで組織体系や管理体制を変更したり、自社に適した会計ソフトを導入したりといった対策を講じて、入念にIPO準備を進めましょう。IPO申請に向けて具体的にどういった計画や準備が必要になるのか、ぜひ本記事を参考にしてください。

よくある質問

IPOの失敗とはどのようなケース?

先述した通り、IPOの失敗事例として挙げられるケースは、主に以下の通りです。

  • 内部統制に不備がある
  • IPO準備中に業績不振に陥る
  • 制度会計で失敗する
  • レピュテーション(評価)が低下する
  • 上場延期になる
どれか1つでも該当していると、IPOは上手くいきません。 特に、内部統制の整備や業績改善などは期間がかかるため、早めに手を打ちましょう。

IPOで成功するためのコツは?

IPOで成功するためのコツは、主に以下の通りです。

  • 段階を踏んで組織体系や管理体制を変更する
  • キーマン(社長)の権限移譲を行う
  • 会計ソフトを導入する
  • アサテーションについて押さえておく
  • IPO予定の市場の実質基準を把握する
一般的に、IPOの準備期間は3年程度と言われています。上記の内容を押さえて、滞りなく準備が進むように努めましょう。


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