- 更新日 : 2024年7月12日
コーポレートガバナンス・コードにおける社外取締役の位置づけと役割
2015年にコーポレートガバナンス・コードが制定され、社外取締役の重要性が増しています。東京証券取引所プライム市場に上場している会社は取締役の3分の1以上でなければならなくなりました。同時に、社外取締役の活用が明示されており、今後の日本企業の発展に役立つ存在として注目されているのです。
本記事では、コーポレートガバナンス・コードにおける社外取締役についての位置づけや役割について解説します。社外取締役の重要性を理解したい方はぜひ参考にしてください。
目次
コーポレートガバナンス・コードとは
コーポレートガバナンス・コードとは、企業が顧客や株主・社員や地域社会等の立場を踏まえた上で、透明で公正でかつ迅速で果断な意思決定を行うための原則や指針を表したものです。「Corporate Governance」の頭文字を取ってCGコードと略す場合もあります。
コーポレートガバナンス・コードは実効的な企業統治の実現に役立つ主要な原則を取りまとめたもので、それに関連する基本原則が5つあります。
- 株主の権利・平等性の確保
- 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
- 適切な情報開示と透明性の確保
- 取締役会等の責務
- 株主との対話
また、社会の変化から2度の改定が行われており、最新の2021年版では新たに3つの重要なポイントが明記されました。
取締役会の機能発揮
(社外取締役数の充実や取締役の有するスキル等の公開等)
企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保
(将来的に女性、外国人、中途採用者の管理者への登用や多様性の確保に向けた人材育成の実施等)
サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取り組み
(サステナビリティに関する基本的な方針の策定、取り組みの開示等)
コーポレートガバナンス・コードに関する具体的な説明は、こちらの記事を参考にしてください。
▶ コーポレートガバナンス・コードの基本原則5つ!特徴や改訂のポイントを説明
社外取締役とは
社外取締役とは、取引や資本関係のない社外から迎え入れる取締役のことです。社内取締役と異なる点として、会社の業務に従事せず、株主の視点を持って会社を監視できる点です。経営の透明化やコーポレートガバナンスの強化が見込まれます。
社外取締役の要件は会社法第2条15号に定められており、「現在において」「過去において」に分けると以下のようになります。
現在において | 過去において |
---|---|
・自社または子会社の代表取締役・業務執行取締役・執行役・支配人その他使用人(以下、「業務執行取締役等」)でないこと ・親会社等(親会社または持株会社の支配者)の取締役・執行役・支配人その他使用人でないこと ・兄弟会社の業務執行取締役等でないこと ・自社の取締役、執行役、支配人その他使用人の近親者(配偶者及び2親等以内の親族)でないこと | ・過去10年間、自社または子会社の業務執行役員等であったことがないこと ・過去10年間に自社または子会社の取締役・会計参与・監査役になったことがある場合には、その取締役・会計参与・監査役への就任の前10年間に業務執行者等でないこと |
コーポレートガバナンス・コードにおける社外取締役の位置づけ
コーポレートガバナンス・コードの基本原則において、 独立した客観的な立場から経営陣や取締役に対する実効性の高い監督を行うことが求められています。
【原則4-7 独立社外取締役の役割・責務】では、社外取締役の位置づけとして以下の点が期待されています。
- 経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと
- 経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を行うこと
- 会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること
- 経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること
2021年のコーポレートガバナンス・コード改定により、社外取締役について言及しています。【原則4-8 独立社外取締役の有効な活用】 では独立社外取締役の人数について、プライム市場では独立社外取締役を3分の1(その他の市場の上場会社(スタンダード市場、グロース市場)においては2名)以上選任すべきであるとしています。
また会社属性等を総合的に判断して、上記に示した数にとらわれず十分な人数の独立社外取締役を選任も可能としており、違いがあるのです。
コーポレートガバナンス・コードにおいて社外取締役の位置づけは、今後ますます重要なポジションとなるでしょう。
社外取締役の役割
コーポレートガバナンス・コードにおける社外取締役の役割には次の4点があります。
- 取締役会への参加
- コーポレートガバナンスの強化
- 株主と経営陣の利害調整
- 経営に関する助言
それぞれ詳しく解説します。
取締役会への参加
コーポレートガバナンス・コードの【原則4-7 独立社外取締役の役割・責務】にて、社外取締役の取締役会の参加については次のように記載されています。
- 経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと
- 経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を行うこと
- 会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること
- 経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること
上記のように、社外取締役は取締役会に参加し、助言や経営の監督、利益相反の監督やステークホルダーの意見を適切に反映させなければなりません。社内のしがらみにとらわれない立場で、社外取締役は多様な視点から会社の持続的成長に向けた経営戦略を考えることが必要です。
コーポレートガバナンスの強化
コーポレートガバナンスの強化とは、会社経営を監視する仕組みを強化することです。虚偽表示や粉飾決算、情報漏えいなどの不祥事から会社を守る仕組みを強化することを指します。コーポレートガバナンス強化には、経営陣や従業員一人ひとりの意識を高めなければなりません。経営理念や各部署の規定の策定や見直しが必要になる可能性もあります。
社外取締役はコーポレートガバナンスの強化には必要です。社内の利害関係にとらわれることがないため、中立な立場で判断が可能であるためです。社外取締役のチェック機能が強化されると、株主や従業員をはじめとするステークホルダーの利益を守ることにつながり、企業価値の向上にもつながります。
株主と経営陣の利害調整
株主は運用を委託する者(委託者)であり、経営陣は受託者として出資を受けている以上、株主に最大限の利益が還元できるよう経営活動を行う責任(受託者責任)があります。
社外取締役は、独立した客観的な立場から経営陣に対する実効性の高い監督を行うことが求められています。経営陣の受託責任がコーポレートガバナンス・コードにある「会社の持続的な成長と中長期的な企業価値」に合致しているか判断しなければなりません。
経営に関する助言
コーポレートガバナンス・コードの【原則4-7 独立社外取締役の役割・責務】において、「経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと」と記載されています。
社外取締役の役割は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上の観点から適切に行われているか評価・確認することです。また、必要に応じて軌道修正を行うよう助言しなければなりません。社外取締役の今までの知識や経験から、会社にとって今後の持続的な成長に向かっていない経営方針であれば積極的に助言することが必要です。
まとめ
2021年のコーポレートガバナンス・コード改定により、社外取締役数は東京証券取引所プライム市場上場会社では、2人から3分の1以上へ大幅に変更になりました。一方で社外取締役が増すことで社内の透明性が増し、株主をはじめとするステークホルダーとの適切な協働が図れるでしょう。
上場会社には社外取締役が必要です。社外取締役が外部から会社を俯瞰することによって、社内の経営陣に見えない事象が発見できるかもしれません。会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を、社外取締役を活用して目指していきましょう。
よくある質問
コーポレートガバナンス・コードにおける社外取締役の位置づけは?
コーポレートガバナンス・コードにおける社外取締役の位置づけとして以下の点が期待されています。
社外取締役の役割は?
社外取締役の役割として、取締役会への参加、コーポレートガバナンスの強化、株主と経営陣の利害調整、経営に関する助言があります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
三様監査とは?役割の違いや連携の重要性などを解説
現代のビジネスにおいて企業経営の透明性と信頼性を確保することはますます重要になっていますが、「三様監査」は企業経営の健全性を高めるための有力な手法とされています。 そこで本記事では、三様監査の基本的な概念、三者の連携の重要性、そして実際の連…
詳しくみる内部統制とコンプライアンスの違いは?メリットや強化の流れ・方法を説明
IPOの準備を進めている企業の担当者であれば、内部統制の構築も同時に進めているのではないでしょうか。上場審査を受ける際は、最近3年間における法令違反や不祥事について確認が行われることもあるため、内部統制を徹底してコンプライアンスを強化してお…
詳しくみる内部統制システムとは?どんな会社に運用が義務付けられているのか、事例も交えて解説
内部統制を整備することで、企業の経済的損失や信頼の失墜を未然に防ぐことができます。この内部統制を正常に運用するための仕組みが「内部統制システム」です。企業価値を向上させるには欠かせないシステムでもあります。 本記事では、内部統制システムの概…
詳しくみる金融商品取引法における内部統制システムとは?対象企業やメリットを説明
内部統制とひとことで言っても、金融商品取引法と会社法とで考え方や内容が異なります。同じ内部統制という言葉を使用していても、指すものが異なるため注意が必要です。 本記事では金融商品取引法についての内部統制について、内容を解説します。内部統制を…
詳しくみるPLC(業務プロセスにかかる内部統制)とは?意味や評価の流れを解説
企業の公正な運営には、トップダウン型のリスクアプローチである内部統制が欠かせません。内部統制とは、金融商品取引法における組織のルールに基づき適正に企業を運営するための仕組みです。全体および業務プロセス単位の2段階で実施され、J-SOXにより…
詳しくみる内部統制を実施する際のチェックリストを一挙紹介|成功させるポイントも
コンプライアンスなど、会社を見る世間の目は以前にも増して厳しくなってきています。そのためにも内部統制を整えることが必要です。内部統制を実施するには4つの目的と6つの基本的要素があり、それらが達成できているかを確認していく必要があります。 本…
詳しくみる