• 更新日 : 2024年7月16日

自走とは?人材や組織の特徴・育成方法を紹介!

目まぐるしく変動する現代のビジネス環境に対応するためには、自主的な行動が求められます。そのために必要となる概念が、近年注目を集めている「自走」です。

当記事では、自走について注目の背景や意味、自走可能な組織の作り方などについて解説を行っています。自走について興味をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。

自走とは?

自走とは、「他の動力に頼ることなく、自分自身の動力で走る」ことを指す言葉です。「エンジンの故障により自走できない自動車」「自走可能な車両開発により、牽引車が不要となった」などのように使用されます。

例に挙げた通り、自走は自動車などの車両に対して使われることが多い言葉です。また、他の動力を不要とする意味から転じて、「指示されることなく、主体的に行動する」ことを指して使われる場合もあります。

主体的な行動を指す場合には、ビジネスシーンにおける人や組織に対して使用される言葉となります。「自走できる人材」「自走可能な組織」などのように使用されることが多いでしょう。当記事では、主にこちらの意味としての自走を取り上げています。

自走が注目されている背景

現代のビジネスシーンにおいては、自走が注目を集めています。注目の背景には、急速なビジネス環境の変化が挙げられます。

現代のビジネス環境は、急速なIT化やグローバル化の進展により、目まぐるしい速度で変化し続けています。コロナ禍などの予測不可能な事態の発生も変化に拍車をかけています。そのような環境にあって、旧来の指示待ち型の人材や組織では変化への対応は困難となるでしょう。

変化に対応できない組織は、競争に勝ち残ることができず、結果として淘汰されてしまいます。競争を勝ち抜き、成長を続けるためには、自走可能な人材を育て、組織自体も自走可能とする必要があります。

ビジネスにおける自走の意味

ビジネスにおける自走は、主に自主的・主体的な行動を指して使われます。「自走型の人」と「自走型の組織」のそれぞれの意味について、解説します。

自走型の人

「自走型の人」とは、単に指示されたことをこなすだけでなく、指示以上の目的を理解できる人材です。目的を達成するために、自ら適切な解決方法を見つけ出し、実行や改善を行います。指示待ちではなく、自分の考えで自発的に仕事を進め、自ら意思決定できる人材といえるでしょう。

自走型と対比されるのは、指示がなければ行動できない人です。このような人は、指示された仕事しかできないため、現代のビジネス環境では戦力として使いづらいでしょう。

自走型の組織

「自走型の組織」とは、他からの指示を待つことなく、自らの考えで行動し、成果を生み出す組織です。自走型の組織では、構成員それぞれが、自ら仕事を見つけ出し、主体的に実行することで成果を上げます。

従来のトップダウン型の組織では、改善が必要であっても、実行には上司の承認が必要でした。改善方法自体も上司が考える場合が多いでしょう。しかし、このような組織では、スピード感のある対応は不可能です。上からの指示を待っていたのでは、変化に対応することは困難となります。そのため、現代では、トップダウン型のような非自走型組織ではなく、自走型の組織であることが求められています。

自走できる人の特徴

自走できる人材は、現代の企業において必須となります。では、自走できる人にはどのような特徴があるのでしょうか。

ゼロから目標を設定し終わりまで完遂できる人

目標を自ら設定し、その目標を完遂できなければ、自走できるとはいえないでしょう。上から与えられた目標を達成しても、次の目標を自ら見つけられず、指示を待っているようではいけません。

報連相を的確に行える人

ビジネスにおいて、「報告」「連絡」「相談」の「報連相」は非常に重要です。自走可能な人材は、この報連相を的確に行うことができます。適切なタイミングを図って正確な報告や連絡を行い、必要であれば相談も行える人材は、企業にとって重要な戦力となるでしょう。

ロジカルシンキングが身についている人

自らの判断で行動するためには、物事の結論と根拠について筋道を立てて考えることが必要です。このような思考を「ロジカルシンキング」と呼びます。自走できる人材は、このロジカルシンキングを備えていなければなりません。

自走できる組織の特徴

変化の激しい現代のビジネス環境で生き残るためには、自走可能な組織であることが必要です。自走できる組織の特徴は、どのようなものがあるのでしょうか。

社員一人ひとりが主体的に行動できる組織

組織として自走するためには、組織の構成員一人ひとりが自走可能でなければなりません。一人ひとりが自ら考えて行動する主体性を持っていなければ、組織としての自走も不可能です。自走可能な組織とするためには、まず自走可能な構成員を育成することが必要となります。

マイクロマネジメントが不要な組織

上司やチームのリーダーが、部下やメンバーに細かい指示を出して、干渉や監視をするような組織は、自走可能とはいえません。このようなマイクロマネジメントは、部下やメンバーの主体性を奪ってしまうため、自走力が養えないのです。自走可能な組織であるためには、マイクロマネジメントを排することが必要でしょう。

自走できる人がいること・自走できる組織であることのメリット

自走が可能であることは、主体性を持ち自発的な行動が可能であるということです。具体的な自走のメリットを見ていきましょう。

マネジメントの負担軽減

自走可能な組織であれば、細かいマネジメントは必要ありません。もちろん、組織としての方向性などの大枠は示す必要がありますが、自走可能であれば、それ以上の指示は不要です。

自走可能な組織は、個々の構成員が自ら考え行動するため、現場に細かい指示を出す必要もなくなります。このことによって、上層部のマネジメントの負担は軽減され、より大きな課題にのみ注力可能となります。

トラブル・インシデント等にスピード感のある対応ができる

自走可能な人は、トラブルやインシデントなどが発生しても迅速に対応可能です。急なトラブル発生であっても、上司の指示を仰ぐことなく、自らの判断で解決できるからです。自走可能な人材を育成している組織であれば、組織としてもスピード感のあるトラブル対応が可能となるでしょう。

トラブル対応での初動ミスは、組織としての信頼を大きく損なう恐れもあるため、スピード感のある対応は大切です。もっとも、判断が誤っていれば、折角のスピードも意味がありません。しかし、ロジカルシンキングを備えた自走可能な人材であれば、その心配も無用でしょう。

現場から新しい事業・アイデアが生まれてくる

自走可能な人材は、指示された以上の目的を見つけ出し、自らその解決にあたります。このような現場の姿勢は、トップダウン型では生まれなかった新しいアイデアの創出につながるでしょう。

新しいアイデアは、これまでにない事業を生み出す可能性を秘めています。自走力を備えた組織であれば、環境の変化に対応した新しい事業を生み出し、成長を続けることが可能となります。

自走できる人を育てるためには?方法について紹介

ここまで自走がいかにビジネスにおいて、重要であるかを解説してきました。では、自走可能な組織に必要となる人材は、どのように育てればよいのでしょうか。

目標設定から行動設計を一人でやらせる

一から十まで上司が指示していては、部下の自走力は養われません。このようなやり方は、指示待ち型にとっては、合っているといえるでしょう。しかし、自走可能な人材となるためには、自ら目標を設定し、自らの考えで完遂することが必要です。そのため、上司は過干渉することなく、目標設定や行動設計を一人で行わせましょう。

実践をできるかぎり行ってもらう・経験値を溜める

経験がないことについて、自分の考えで行動することは困難となります。そのため、まずは実践し経験を積むことが重要です。

実践による経験値の蓄積は、正しい決断を下すための判断材料となります。自走可能な人材となるためには、でき得るかぎりの実践経験を積むことが重要です。経験を積んでいけば、不測の事態にも対応可能となります。様々な仕事を経験し、自らの成長の糧としましょう。

実践したことを振り返り・フィードバックする

自走可能となるためには、実践経験が必要です。しかし、単純に実践しただけでは足りません。実践経験を振り返って、フィードバックすることが求められます。

ただ闇雲に経験を積むだけでは、自らの成長につながらないだけでなく、時間も浪費してしまいます。目まぐるしく変化する現代のビジネス環境では、時間も大切な要素です。しっかりと実践をフィードバックして、無駄な時間のロスを防ぎましょう。

学ぶ姿勢・チャレンジを奨励する

指示されたことだけ行っていればよいという風土の組織であれば、そこに所属する構成員の自発力も養われません。自発的な人材を育成するためには、積極的な学習や新しいチャレンジを推奨することが必要です。

新しいチャレンジや、常に知識を得る姿勢を奨励する組織であれば、自ずと構成員も自主性を獲得し、自発的な人材へと成長できるでしょう。

目標に対する評価制度を明確化する

走力を養うためには、自主的な目標設定とその達成が必要です。しかし、目標達成が正当に評価されなければ、次の目標を設定しようとは思えなくなるでしょう。そのため、自走可能な人材を育てたいのであれば、明確な評価制度を設けなければなりません。

曖昧な評価制度のもとでは、目標達成のためのモチベーションも維持できません。自走可能な人材育成には、明確な評価制度を設け、継続的な目標設定と達成を促すことが重要です。

自走できる組織にするためには?

自走可能な組織として、成長を続けるためには重要なポイントが存在します。ポイントごとに解説を行います。

経営理念・MVVCを明確化する

目標がぶれていては、達成することも困難です。そのため、進むべき道としての経営理念やMVVCを明確化することが必要となります。MVVCは、「ミッション(M)」「ビジョン(V)」「バリュー(V)」「クリード(C)」から取られた略語で、経営方針を表します。

組織としての経営理念や経営方針が明確でなければ、自走のための目標設定もままなりません。明確な道を示すことで、組織として矛盾のない行動が可能となります。

マネジメント層とプレイヤー層の認識のずれをなくす

マネジメント層とプレイヤー層の認識にずれがあれば、明確な目標は設定できません。また、評価の基準も曖昧なものとなってしまい、プレイヤー層は目標を自分のためにすべきことと認識できなくなってしまうでしょう。自走可能な組織となるためには、認識のずれを解消し、明確な基準を設けることが重要です。

デザイン志向・アジャイルスタイルを取り入れる

自走可能な組織となるためには、「デザイン思考」が重要です。デザイン思考とは、論理的積み上げとは異なったクリエイティブな思考法であり、未知の問題への対応策となります。

迅速な対応のために、「アジャイルスタイル」を取り入れることも効果的でしょう。アジャイルは、素早いなどの意味を持つ単語であり、自走可能な組織に必要なスピード感のある対応のために重要となります。

自慢ができる・勧めたくなるような会社に成長する

環境保護活動を行うなど、誇れるような会社であれば、従業員も貢献したいと考えるようになるでしょう。逆に利益のみを追求し、グレーゾーンの取引を繰り返す会社であれば、従業員はその会社のために成果を上げようと思いません。自慢ができる、勧めたくなるような会社であれば、従業員も自走力を高めようと思うはずです。

支援型リーダを設置する

自走可能な組織とするためには、支援型のリーダーを設置することも有効です。支援型リーダーは、サーバントリーダーとも呼ばれ、部下のパーソナリティに寄り添います。

支援型リーダーは、これまでの支配的なリーダーとは異なり、部下を支援することで行動を促します。自ら考え行動することが必要な自走可能な組織では、支援型リーダーの設置が重要となるでしょう。

心理的安全性を確保する

自発的な行動を咎められるような組織では、自走力は培われません。そのため、自走可能な組織においては、発言や行動に対する心理的安全性を確保することが求められます。心理的安全性が確保されていれば、安心して行動を起こせるようになり、自発力が高められます。

自走できる組織の例

レーザー専門の商社である日本レーザーは、会長がリーダーシップを発揮することで自走可能な組織を構築した企業です。同社には、ノルマがなく個々の営業担当が自ら目標を設定しています。

自ら設定できるからといって、低い目標を設定するような社員はいません。社員は、自ら定めた目標に向かい、責任感を持ってチャレンジを続けています。このような姿勢の社員を育成し、自走可能な組織を構築したことが、同社の29年連続黒字という結果につながっているといえるでしょう。

自走力を備えた組織作りを

現代の変化を続けるビジネス環境では、自走可能な組織であることが重要となります。しかし、自走力を身につけることは容易ではないでしょう。自走可能な組織の特徴や、自走可能な人材の育成方法を参考にして、自走可能な組織を構築してください。


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