- 更新日 : 2024年7月17日
マネーフォワード クラウド presents「& money」 株式会社じげん 代表取締役社長執行役員 平尾丈CEOに聞く!(後編)
さまざまな企業のリーダー、ファイナンス部門の方にフォーカスを当て、その仕事や企業の成長戦略の裏側、その仕事術に迫ります。今回お話を伺ったのは株式会社じげん 代表取締役社長執行役員CEO 平尾丈さん。後編では、初の著書『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』について、そして今、平尾さんの一番ホットなテーマ、社会貢献について伺いました。
目次
プロフィール
平尾丈
1982年生まれ、慶応大学在学中、2社を創業。1社を経営したままリクルート入社。2006年、じげんの前身となる会社を設立し、25歳で代表取締役社長に就任。27歳でMBOを経て独立。2013年、東証マザーズ上場。2018年東証一部上場。創業以来12期連続で増収増益を達成。著書にダイヤモンド社『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』がある。
聞き手:瀧口友里奈
経済キャスター/東京大学工学部アドバイザリーボード
東京大学卒。セント・フォース所属。「100分de名著」(NHK)、「モーニングサテライト」(テレビ東京)、「CNNサタデーナイト」(BS朝日) 、日経CNBCの番組メインキャスターを複数担当。ForbesJAPANで取材•記事執筆も行い、多くの経営者を取材。東京大学大学院在学中。
“起業家の能力の民主化”の実現を目指して初の著書を出版
瀧口:初のご著書『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』をダイヤモンド社から出版されました。サブタイトルにある「別解力」とは?
平尾:「私は起業家マニア」で・・・
瀧口:「起業家マニア」(笑)。
平尾:芸能の世界も一緒かもしれないですが、俳優になりたい方が俳優に詳しい。そういったことと同じだと思うんです。自分も起業家になりたかったので、起業家の先輩方にたくさんお会いしてきました。それぞれ強みとか個性とかとてもはっきりしている方が多いので大変面白かったです。自分も含め、起業家の方々に何か共通項がないのかなと思い、今回『起業家の思考法』を執筆させていただきました。起業家が持っている5つの力を発見力、別解力、実現力、失敗力、そして成長力の5つに大別しました。その中の1つが「別解力」です。起業家の中の5つ力の中でも、問題を発見する力と、実現、解決する力に大別されるんですが、発見が大事だよねって言っている方は多いのですが、発見は出来た、もしくは発見しようと頑張ろうというところから、どうやって解決するのかというのが、意外と書籍ではなかったんです。「自分らしくて、優れていて、別の」というこの3要素を合わせた別解力が問題解決には大事だと考えています。IPOを目指されている方もそうですし、色々な業界でこの書籍が役に立てると思っています。この本で「起業家の能力の民主化」が出来るんじゃないかと思いました。
今、人生のKPIは社会貢献にある
瀧口:「起業家の能力の民主化」というのが面白いですね。それが、平尾さんがこの書籍を通してやりたかったこと?
平尾:そうですね。これはコロナも相まってなんですが、仕事を学ぶ環境が今なくなってきているなと思っていて。隣に先輩、仕事の師匠がいないんです。自宅で隣にお子さんやペットはいたりするんですけど。もう一つは起業家の能力って意外と汎用性があって、それが一般的に皆さんのフレームワークになったら世の中がもっと良くなるだろうと思っています。それが2つ目の目的です。3つ目は社会貢献です。20代30代のころは自分が何かを獲得する、成し遂げるというところが人生のKPIだったのですが、今は「何を残せるのか」を考えないといけないと思っています。私の父が53歳で亡くなったのですが、自分がその年齢に近づいてきているということと、コロナで多くの方が亡くなられているということがあり、改めて死について考え、アショカ・ジャパンとTeach For Japan(ティーチ・フォー・ジャパン)という団体に書籍の印税を全て寄付するという形を取っていています。直接的に寄付をする方法もあると思いますが、フィランソロピー2.0というか、次の社会貢献の仕方ではプロセスでも社会貢献できると私は思っています。この書籍では、私が共感した2団体に対して、私が死んだ後でもこの書籍が売れ続ければ、そこに寄付が流れる仕組みを作っておこうと、そういった形を取っています。こういう仕組みを作ることはやはり起業家は強いと思うんです。だから書籍以外にも色々なやり方があると思いますし、社会貢献×別解力が、今自分のホットなテーマの一つです。
瀧口:経営者の方、上場企業の方、そうでない方も含めて、このフィランソロピーの考え方を導入したり、熱心に取り組まれる方、増えてきている感じがします。
平尾:そうですね。社会全体がサステナビリティとか、ソーシャルに流れてきていると感じています。ESGの観点でも投資家の方も変わってきているので、どんどん変えていこうという流れの中で、私たち起業家も何か出来ることがあると思っています。
瀧口:社会貢献×別解力は、まさにこの書籍のテーマでもある?
平尾:はい。色々な観点で社会貢献が出来たら素晴らしいなと思いました。全プロセスに社会貢献を組み込んだら良いんじゃないかと思っているんです。最初からそういったフレームで考えていったらもっともっと出来ることがあるんじゃないかなって思います。寄付も継続できる仕組みの方が優れているなと思っています。
好き嫌いから自分ならではの「別解力」を見つける
瀧口:自然とそういう善意に貢献出来るというのは、いいことですよね。平尾さんが、この別解力に辿り着かれたきっかけは?
平尾:これは偶然です。私は小学校受験に失敗をして、その後、公立の学校に行って勉強していたんですが、テストが終わった後に残っている時間で、違う方法で答えを導くことを自分で勝手にルールを課してやっていたんです。それが最初の原点だったかなと。
瀧口:義務教育の中だと特に「これが答えです」というものを決められていますよね。
平尾:かっこいい言葉で言うと「反骨精神」でしょうか?(笑)。
瀧口:別解、つまり別のやり方でというところは、まさにブルーオーシャンをどう探すかというところでもあるわけですよね。そこがビジネスの感覚にまさに落とし込まれている。また、別解に辿りつく「自分らしいやり方、優れたやり方、別のやり方」で、この「自分らしいやり方」に結構困っている方が多いのではないでしょうか?平尾さんの場合は、どう自分らしさ、自分らしいやり方を見つけたのでしょうか。
平尾:最初は自分の好きなものとか、嫌いなものから入っていくのが良いと思います。待つのが嫌いとか、人と同じ答えが嫌いとか。自分の発明とか発見を褒めてもらったとき嬉しいとか。何でもいいと思うんです。そういったところをどんどん拡大再生産していくこと、色々な方々からフィードバックをもらっていくと自信に繋がったり、相対的に「あ、ここ強いんだな」と思うことってありませんか。誰かに褒められたときとか。
瀧口:原点としては、自分の好き嫌いを知るっていうところから。
平尾:そうですね。究極「好きか嫌いか」っていうのが一番簡単な意思決定だと思っていて。理由もなく好きとか、理由もなく嫌いとかあるじゃないですか。最初は「好きか嫌いか」から入っていって、その後で実践してみて、それが得意だったらもっと強くすればいいし、どんどん広げていくと良いのではと思いますね。
「サステナビリティ×ダイバーシティ×別解力」で激変の社会を生きていく
瀧口:激変する社会の中で不安を抱えている方が多いと思いますが、これからの未来を見通していく、力強く生きていくためのキーワードって何でしょう?
平尾:いつも考えていてなかなか難しいのですが、やはり「サステナビリティ×ダイバーシティ×別解力」の3つが必要だと思っています。今までのやり方が通じない時代になってきている中で、既存にはない方法論が必要だというのが別解力です。自分の領土に我田引水するとかじゃなくて、地球規模全体で環境を考えるとか、それが継続する方法を考えるとか、地球外を考えるとか。スケールしながら、それが点で終わらずにしっかりと線、面になって、時が経っても風化しない構造を作っていかないといけないですよね。
別解の連鎖で新しい時代の働き方を考える
瀧口:日々変わって行く世の中で、これからの組織のあるべき姿、新しい時代の働き方は?
平尾:“いつでもどこでも誰とでも”と「ユビキタス」が語り始められてから久しいですが、ようやく働き方のダイバーシティが実現できてきたと思っています。そして、より個の時代になり会社とは何なのかが今問われています。経営者が経営しづらい時代というか、会社が箱でしかなくなってきている。さらにコロナ禍によってリモートワークが当たり前となって、会社がリアルな箱じゃなくなったときの価値ってなんだろう、ということを考えなければいけなくて。そういった中で、会社としてコミュニティの形成をどうしていくのかと。先ほどの“いつでもどこでも誰とでも”というのが掛け算でどうなっていくのかを考えていく。それはメタバースかもしれない、オンラインかもしれない、地方にオフィスを作ることかもしれない。
瀧口:そこにも別解力ですね。
平尾:そうです。別解の連鎖を繋いでいくんです。
瀧口:今後、じげんをどう導いていかれますか。
平尾:じげんの理念として「生活機会の最大化」と等しく言いつづけてきているのは、「事業家集団」という言葉です。今、ウェルビーイングの時代になってきていいなとは思っているんです。ただ、リモートワークなどによって研鑽の場や学びの場が薄れてきているタイミングだなとも思っています。じげん出身者は様々な企業の方に非常に熱心に採用していただけています。これは、エンプロイアビリティの結果だと思っていて、じげんで働いていた経験が社会的に価値があるよねと言ってもらえるのが、一番私は嬉しいんです。でも、こういう会社はまだ少ないと思います。ウェルビーイングもやるんですけど、ウェルドゥーイングをスーパードゥーイングでやりたいと思っています。「ウェルドゥービーイング」って自分は言っているんですけど、今のリモート環境の中では非常に難しいのですが、それにチャレンジしたいと思っています。
瀧口:平尾社長ご自身のこれからの挑戦についてはいかがでしょうか。
平尾:先程の社会貢献は考えてもなかった大きいなマーケットです。上場企業の社長としても、個人としてもまだまだ色々なことが出来ると思っています。そこを別解でやろうという人があまりいないのでぜひ挑戦していきたいです。
瀧口:これからのご活躍も楽しみです。平尾社長ありがとうございました。
平尾:ありがとうございました。
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