- 作成日 : 2024年10月28日
IPOの業務フロー|フローチャート作成の重要性や作り方のポイントも解説
IPOの実現を目標としている企業は、必要な書類作成や経営管理体制の構築などの業務に多くの時間を要します。
そのため、準備期間が長い傾向にあり、円滑に進めるためにも業務フローを理解しておくことが大切です。本記事では、IPO準備の業務フローやフローチャートの作り方などを解説します。
目次
IPO準備の業務フロー
IPO準備の業務フローは、大きく4つの期間に分けられます。それぞれで業務内容や必要な作業などが異なるため、注意が必要です。
流れ | 業務内容 |
---|---|
➀直前々期の期首前(N-3期以前) | |
➁直前々期(N-2期) | |
③直前々期(N-1期) | |
④申請期 |
IPO準備の各業務の詳細は下記の記事で詳しく解説しているため、合わせてご確認ください。
IPO準備における業務フローチャートの重要性
IPO準備においては、業務フローチャート作成の必要があります。
経営陣、財務チーム、法務部門、監査法人、証券会社など、様々なステークホルダーが関与する中で、各々の業務を効率的に進めるためには、全体の流れを視覚的に整理することが求められるためです。
なぜ業務フローチャートが必要なのか
IPO準備で業務フローチャートが必要な理由は、主に以下の通りです。
- 複雑なIPO準備業務を可視化し、関係者間で共有するため
- 業務の抜け漏れや重複、非効率な部分を明確化するため
- スケジュール管理や進捗管理をスムーズに実行するため
IPOには法務、財務、監査、内部統制の各専門分野が絡み合い、それぞれが異なる手続きや期限を持つため、全体の流れを理解することは難しくなります。
そのため、関係者全員が同じ情報を共有し、共通の理解を持つことが必要です。フローチャートがあれば、業務の抜け漏れや重複、非効率な部分が明確になり、スムーズな業務進行ができるようになるでしょう。
業務フローチャート作成のメリット
IPO準備で業務フローチャートを作成するメリットは、主に以下の通りです。
- 担当者間での認識齟齬の防止
- 新規担当者へのスムーズな業務引継ぎ
- 内部統制の強化によるリスク管理の向上
複数の担当者が関与するプロジェクトや業務において、各自が異なる認識や解釈を持つことは珍しくありません。
業務フローチャートを作成することにより、全員が共通のフレームワークを基に動くことができ、プロジェクトの全体像や各ステップの位置付けを明確に共有することが可能です。
業務の全体像を視覚的に示しながら、各プロセスの具体的な流れや関係性を明確に整理できるため、新規担当者へのスムーズな業務引継ぎができるのも大きなメリットと言えます。
IPO業務フローチャートの作り方
IPO業務フローチャートの作り方は、主に以下手順で行います。
- IPO準備業務の全体像を把握
- フェーズごとに業務フローチャートを作成
詳しく解説します。
1.IPO準備業務の全体像を把握
IPO業務フローチャートを作成する際、最初に行うべき重要なステップは、IPO準備業務の全体像をしっかりと把握することです。
IPOは企業が株式を公開するために、多岐にわたる業務を効率的かつ正確に進める必要があり、これらの業務がどのように関連しているかを理解することが、フローチャート作成の土台となります。
IPO準備の各フェーズ(検討段階、準備段階、申請段階、上場後)と、大まかなスケジュール感を理解し、各フェーズにおける主要な業務内容を洗い出しましょう。
2.フェーズごとに業務フローチャートを作成
IPO準備業務の全体像を把握した後は、フェーズごとに業務フローチャートを作成します。
IPO準備の初期フェーズでは、企業内部の体制整備やIPOを進める上で必要な基礎的な手続きが中心となります。この段階でのフローチャートは、内部統制の構築、会計基準の適用、社内規定の整備などが主な業務です。
中期フェーズでは、企業としての成長戦略の策定や、監査法人、証券会社との協議が始まります。このフェーズのフローチャートでは、これらの外部関係者とのやり取りをスムーズに進めるため、どのタイミングでどの資料を準備し、どの部門が関与するのかを明確にします。
最終フェーズでは、上場申請書類の提出などがあります。申請書類の作成や法的手続き、さらには投資家への説明会など、細かな業務の流れを詳細に示すことが必要です。
各業務の開始と終了を明確に定義し、丁寧に作成しましょう。
IPO業務フローチャートの作成時のポイント
IPO業務フローチャートを作成する際のポイントは、主に以下の通りです。
- シンプルで分かりやすい表現を心がける
- 目的に応じた適切な記号や図形を使用する
- 最新の情報や法改正を反映する
- 関係者間でレビューを行い、内容の精度を高める
詳しく解説します。
シンプルで分かりやすい表現を心がける
IPO準備は複雑なプロセスであり、多くの関係者が携わるため、フローチャートがあまりに複雑であったり、専門的な表現が多用されたりすると、関係者間での情報共有が困難になります。
これを避けるためには、できる限りシンプルで明快な表現を用いることが必要です。
複数の視点や立場が絡み合うIPOのプロセスにおいては、情報が一貫して伝わることが求められます。
そのため、専門用語や技術的な表現は最小限に抑え、関係者全員が容易に理解できる言葉を選ぶことが大切です。
最新の情報や法改正を反映する
業務フローチャートに最新の法規制やガイドラインを反映させ、各プロセスが法的要件に基づいて適切に進行するように設計する必要があります。
IPOのプロセスは、法律や規制が頻繁に改正される分野であり、企業が適切な対応を怠ると、準備の過程でトラブルが生じる可能性があるからです。
フローチャートに新しい規制を取り入れることで、各部門や担当者が最新のルールに従って業務を遂行できるようになり、企業全体がIPOプロセスを法的に正しい形で進められます。
関係者間でレビューを行い、内容の精度を高める
IPO業務フローチャートを作成する際には、関係者間でのレビューを徹底し、内容の精度を高めることが重要です。
フローチャートは、複雑なプロセスや業務の流れを視覚的に整理するためのツールですが、作成段階での精度が不十分だと、実際の業務進行に支障をきたすことがあります。
これを防ぐためには、フローチャートの各要素が正確であることを確認するための関係者によるレビューが必要です。
レビューを行う際は、業務の流れや各プロセスの順序、責任者の役割分担などが、実際の業務と一致しているかをチェックし、誤りや不整合があれば修正しましょう。
まとめ
IPO実現のためには、準備を入念に行う必要があり、そのために業務フローチャートの作成が欠かせません。
正確な業務フローチャートを作成することで、フェーズごとにやるべき業務が明確になり、IPO実現に向けてスムーズに動けるようになります。
作成する際は、誰が見てもわかりやすく、最新の情報を取り入れたり、関係者からフィードバックを受けたりするなど、作成するようにしましょう。
よくある質問
J-SOX(内部統制)のフローチャートとは?
J-SOX(内部統制)のフローチャートは、企業が内部統制システムを視覚的に表現し、効果的なリスク管理とコンプライアンスを実現するために必要なツールです。 内部統制の各プロセスがどのように連携し、リスクを管理し、業務が適切に実行されるかを明確にすることを目的としています。 詳しくは下記の記事で解説していますので、合わせてご確認ください。 参考:J-SOX(内部統制)の3点セットとは?基本的な作り方を解説【サンプル付き】 参考:J-SOX法(内部統制報告制度)とは?目的や対応の進め方・改正のポイントをわかりやすく解説【テンプレート付き】
内部統制におけるフローチャートの作り方は?
内部統制におけるフローチャートの作り方は、エクセルやワードなどを用いて、各業務の流れや関係者の役割、重要な決定ポイントを明記します。 それぞれのステップがどのように連携しているかに明確に定義しておくことで、内部統制の各要素がどのように機能し、リスクを管理しているのかが可視化されます。 詳しくは下記の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてください。 参考:内部統制におけるフローチャートとは?作成方法や使用記号を紹介
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